男が少なすぎるこの世界で、自分を負けヒロインだと思い込んでいる幼馴染と俺の【遺伝的相性】が最高だと判明してしまったんだが   作:メソポ・たみあ

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第7話 外堀埋める系妹

 

「……俺はこれから、なのかとどう付き合ったらいいんだろう」

 

 ――夕方。

 学校から帰宅した俺は、自室の中でため息を漏らしていた。

 

 今日なのかは、放課後テニス部の練習。

 なので下校時は俺一人だった。

 

 彼女と違って、俺はこれといってなにかの部活動には参加していない。

 

 そもそも在校生が九割九分女子なので、部活動も基本女子メインのモノにどうしてもなってしまう。

 

 だから男の居場所がないのだ。

 

 まして運動部ともなれば、部室とか着替えとかどうするの……って話。

 

 まさか女子と一緒に着替えるワケにもいかないしさ……。

 

 だから男子で部活動に参加するなら、比較的性別を気にする必要のない文化部系に入る場合が多い。

 

 事実、ウチの高校に在籍してる数少ない男子たちで部活動に参加している者は、全員文化部系の部活に所属している。

 

 俺も一年の時にちょっと入部は考えたのだが、これといってやりたい活動もなくて。

 

 だから現状、帰宅部として学校と自宅を往復する毎日を送っている。

 

 まあ家に帰ったら帰ったでゲームをやるとか漫画を読むとか出来ることは色々あるし、退屈だとは思わない。

 

 とはいえ……ここ数日は、部屋にいてもなにも手に付かなかった。

 

 ゲームをやっても漫画を読んでも、全く集中できない。

 

 理由は勿論――幼馴染(なのか)である。

 

「なのか……本当にどうしちゃったんだろう? この部屋に来た時も、屋上の時も、なんだか様子がおかしかったし……」

 

 正直に言って、俺の内心は嬉しい気持ちと困惑の気持ちが半々だった。

 

 ずっと大好きだった幼馴染(なのか)に迫られて、嬉しくないワケがない。

 

 でも……最近のなのかは、なんだかおかしい気がする。

 

 いや、おかしくなる時がある――と言った方が正確かも。

 

 ……俺の〝匂い〟を嗅いだ時。

 その時、決まってなのかはおかしくなる。

 

 どっちかというと普段は消極的でネガティブ思考なのに、俺の匂いを嗅いだ後はまるで別人になったかのように積極的になって迫ってくる。

 

 ……なんだろう、なんと言っていいのか、表現の仕方に困るんだけど……。

 

 俺の匂いを嗅ぐと、なのかは女の顔(・・・)になる――というか、なんというか……。

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

 ……正直、あの時のなのかはエロかった(・・・・・)

 それはもう、最高にエロかった。

 

 あんなエロい表情で迫られたらさぁ、そりゃもうさぁ、男としては嬉しくもなっちゃうじゃん?

 

 むしろ嬉しくない方がおかしいじゃん?

 

 据え膳食わぬはなんとやら、とも世間では言ったりするし……。

 

 ――でも、なのかとは幼い頃から一緒にいたからわかるんだ。

 おかしい(・・・・)って。

 

 彼女があんな風になるのは、これまで見たことがない。

 

 俺が嬉しいかどうかの問題じゃなく、なんだか心配になるんだよな……。

 

 う~む……と俺が悩んでいると――

 

『お兄ちゃ~ん』

 

 ドアの向こう側から声が聞こえてくる。

 妹の、一二三《ひふみ》の声だ。

 

 一二三は『入るよ~』と一声かけると、俺の返事を聞くよりも早くガチャリとドアを開ける。

 

 そうして、俺と同じ黒髪をサイドアップに結わえた幼い妹が部屋へと入ってきた。

 

「どうした、一二三?」

 

「お母さんからRINE(ライン)。買い物して帰るから、お夕飯なにがいいかって~」

 

「別になんでもいいけど。一二三が食べたいのでいいよ」

 

「じゃあ中華って送っとくね~」

 

 スマホをペタペタと弄りながらメッセージを送る一二三。

 

 兄である俺がこう言うのもなんだが、一二三は結構な美人だ。

 

 まだ中学一年生なので顔立ちは幼く童顔。

 しかし元々可愛い系の顔立ちであるため、童顔であることも手伝ってとても愛くるしさがある。

 

 性格も素直だし、家族仲も良好。

 俺のことも慕ってくれており、一緒にゲームしたりすることも多い。

 

 幼馴染であるなのかのことも慕ってくれているため、我ながら自慢の妹だ。

 

 ……まあ、なのかと違ってちょっと勉学の方はイマイチかもだが……。

 

「あ、そうだ」

 

 ふと思い出したように、一二三はスマホを弄る手を止める。

 

「なのかお姉ちゃん、あの後大丈夫だった?」

 

「? あの後って?」

 

「一昨日。なのかお姉ちゃん、久しぶりに遊びに来たのに具合悪かったんでしょ?」

 

 ――あっ、と思った。

 

 そうだ、そういえばあの時、俺となのかが一線を越えそうになったのを一二三の声が止めたんだった。

 

 昨日の屋上での出来事で記憶が上書きされたせいで忘れてたけど。

 

 あの時部屋の中でなにが行われていたのかなんて、一二三が知る由もないもんな……。

 

「あ、ああ! なのかなら大丈夫だったよ、うん! 元気になって帰ってった!」

 

「そっか~」

 

 一二三は「う~ん」と考える素振りを見せると、

 

「ねぇお兄ちゃん。お兄ちゃんとなのかお姉ちゃんは、付き合わないの(・・・・・・・)?」

 

「――――ブフォッ!?」

 

 ――思わず、反射的に吹き出してしまう俺。

 

 あまりに思いがけない質問が、妹の口から出たものだから。

 

「つ、つ、付き合うって……! なんでそんなこと聞くんだよ!?」

 

「最近ウチの中学で、外堀を埋める……? っていうのが流行ってて~。アタシもやってみよっかなって」

 

 なに、それ?

 一二三の中学でいったいなにが流行ってるの?

 

 今時の中学生って、そういう意味合いでの〝外堀を埋める〟を理解してるの???

 

 俺、怖いよ……。

 最近の中学生女子って、そんなに進んでるのかよ……。

 

「い、いやあの、俺となのかはだな――!」

 

「なのかお姉ちゃん、絶対お兄ちゃんのこと好きじゃん」

 

「う……」

 

「なのかお姉ちゃんが本当のお姉ちゃんになってくれたら、アタシも嬉しいし」

 

 一二三は俺に背を向けてドアの方へと歩き出し、

 

「アタシ、お兄ちゃんの彼女はなのかお姉ちゃんがいいから。じゃね~」

 

 そう言い残して、部屋を後にした。

 

「…………一二三の奴……」

 

 一体いつの間に〝おませさん〟になってたんだか……。

 

 幼いと思ってたら、もう色恋の話ができるようになったのか……。

 子供の成長は早いな……。

 

 いやまあ、俺も年齢的には子供ではあるんだけども……。

 

 やれやれ……と内心でため息を漏らす俺であった。

 




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