男が少なすぎるこの世界で、自分を負けヒロインだと思い込んでいる幼馴染と俺の【遺伝的相性】が最高だと判明してしまったんだが   作:メソポ・たみあ

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第3章 告白された幼馴染
第9話 あの後どうなった?


 

 ――〝ボフッ!〟という重い音と、腹の上になにかが乗っかってくる衝撃。

 

 深い眠りについていた俺は、そんな感覚を味わわされて僅かに瞼を開ける。

 

「お兄ちゃ~ん。おはよ~」

 

「……一二三、重い」

 

 朝一番に俺の視界に移り込んだのは、俺の身体の上に跨って兄を起こそうとする我が妹、一二三の姿だった。

 

 妹は幼い頃、よくこうやって俺を起こそうとしていた。

 

 ……そして今でも、たまにやる。

 

 兄との距離感が近くて嬉しいやら、流石にそろそろやめてほしいやら……。

 

 ちなみに今日は休日。

 

 特に予定もなかったはずなので、一二三に朝早く起こされる理由はないのだが――

 

「それでお兄ちゃん、昨日はなのかお姉ちゃんに告白したんでしょ?」

 

「……なんで知ってるんだ?」

 

「あ、ホントにしてたんだ」

 

 パアッと表情が明るくなる一二三。

 

 しまった、カマをかけられたか。

 

「それでそれで? どうなったの? ホラホラ教えて~」

 

 俺の身体の上でゴロゴロと寝そべり、実に楽しそうに尋問してくる一二三。

 

 一二三は小柄だし体重も軽いので大して苦しくはないが、それでも人一人が身体に乗ってゴロゴロしていると圧迫感はある。

 

 それに一応、一二三も女の子なワケで。

 

 実の兄妹だし興奮するとかはないけど、掛け布団越しだとしても身体が密着するのは頂けないかなって。

 

 来年になっても同じことをやろうとしたら、流石に本気でとめようと思う。

 

「早く白状しろ~。吐くまでここを退かないぞ~」

 

 ……このままだと本気で退きそうにないな。

 

 やれやれ、おませさんなお年頃め。

 

「……黙秘権を行使する」

 

 俺は頭まですっぽりと掛け布団を被り、黙秘を慣行。

 

 そんな俺を見た一二三は「あ~! 容疑者に黙秘権はな~い!」と言ってさらに身体の上でゴロゴロ。

 

 これはもう我慢比べになりそうだ。

 

 ……それに、言えるワケないだろう。

 

 昨日あの後どうなった(・・・・・)かなんて――俺となのかだけ知ってればいいんだから。

 

 

 

 ▲ ▲ ▲

 

 

 

「お、俺たち――付き合おう(・・・・・)!」

 

 なのかに対し、思いの丈をぶつける俺。

 

 それは文字通りの〝告白〟だった。

 

 遠回しな言い方も、まどろっこしい言い方もしない。

 

 好きだと――

 付き合ってほしいと――

 ま正面から、そう伝えた。

 

 今俺にできる、精一杯の気持ちの伝え方。

 

 そんな俺の告白を受けたなのかは――

 

 

「――――」

 

 

 頬から耳たぶまで真っ赤に紅潮し、これ以上ないくらい驚いた表情で目を丸くする。

 

 もはや言葉が出ない様子だった。

 

 まさか今このタイミングで告白されるなんて、思ってもみなかった――そう内心で叫んでいるであろうことが、ありありと伝わってくる。

 

「――えっ、あ、その――わ、私――」

 

「なのかに……俺の彼女になってほしいんだ」

 

 ベンチの上で身体を動かし、なのかとの距離を詰める。

 

 彼女は身を強張らせて僅かにのけぞるが、俺は構わず幼馴染(なのか)に接近していく。

 

 ――いつの間にか、公園で遊んでいる子供たちの姿はかなり少なくなっていた。

 

 さっきと比べて随分と静かになり、ざあっという風の音を感じられる耳元で感じられる。

 

 まるで今この場所には俺と幼馴染(なのか)しかいないかのような――そんな錯覚すら覚えた。

 

「なのかの答えを……聞かせてほしい」

 

 手を伸ばさなくたって、いつでも触れられる距離。

 

 なのかの可愛らしい顔が目と鼻の先にある状況で、俺は答えを求める。

 

 彼女から答えを聞くまで、俺は一ミリでも離れる気はなかった。

 

「わ、私、なにも取り柄とかない女だし……」

 

「取り柄ならある。俺はたくさん知ってる」

 

「も、もし付き合っても、すぐに飽きられちゃうかもしれないし……」

 

「絶対に飽きたりしない。俺はなのかがいいんだ」

 

「ハ、ハジメの匂いを嗅いで興奮しちゃう、変態女だし……っ」

 

「匂いなんて、いくらでも嗅いでくれ」

 

 俺はそう言って、彼女の手をそっと握る。

 

「なのかが自分のことをどう思ってたとしても――俺はなのかが好きなんだ。なのかがいい(・・)んだ!」

 

「ハジ、メ……」

 

「だから……俺を、なのかの彼氏にしてくれ」

 

 ――俺は手の震えを必死に抑える。

 

 手を握るなのかにバレないようにと。

 

 いや、もしかしたら抑えているのは気持ちだけで、実際には全然抑えられてないかもしれない。

 

 それくらい俺の手の感覚は曖昧になり、頭の中は真っ白になってる。

 

 だがそんな状態となっても、幼馴染(なのか)の手を握っているという感覚だけはしっかりとある。

 

 彼女の手の温かみだけは、ちゃんと感じ取れる。

 

 それに――もしかしたら、なのかの手も震えているのかもしれない。

 

 お互いに手が震えすぎて、震えが混じり合って判別できなくなっているだけで。

 

「あっ――わ、私、あの、その……」

 

 なのかは俺から目を逸らして、あちこち目を泳がせる。

 

 俺の気持ちをどう受け止めたらいいのか、もうわからないのだろう。

 

 しかし、徐々に顔を俯かせ――

 

 

 

「…………ふ、不束者ですが……よろしくお願い、しましゅ……」

 

 

 

 微妙に言葉を噛みながら、そう答えてくれた。

 

 

 

 ▲ ▲ ▲

 

 

 

 俺となのかは、晴れて恋人同士となった。

 

 ……なのだが、改めて思う。

 恋人になったらなったで、なにをすればいいんだろう?

 

 正直今までの距離感が近すぎて、恋人になったからってなにをしたらいいのやら……ポッと思い浮かばない。

 

 ――現在、時刻は昼の十二時を少し回った頃。

 

 妹である一二三とかれこれ三十分ほどベッドの上で格闘した俺だったが、それも午前中の話。

 

 流石に一二三も諦めてくれたというか兄に構い続けることに飽きたらしく、今はリビングのソファに寝転んでゲームで遊んでいる。

 

 ちなみに遊んでいるゲームは新作のソニ〇クレーシング。

 

 ……何故かはわからないが、一二三はSE〇Aのゲームが大好きだ。

 

 ぷよ〇よとか、テ〇リスとか、ペル〇ナとか……。

 少し前から龍が〇くもやりたいとか言い出してしまい、流石に俺も両親も止めている。

 

 一二三は熱心なS〇GA信者らしい。

 本当に何故かはわからないが。

 

 一方兄の俺は、自室の中でぼ~っとしているだけ。

 

 俺もゲームでもしていればいいのかもしれないが、なにも手に付かなくて……。

 

 う~ん……とりあえず今日は休日なんだし、なのかにRINE(ライン)でメッセージでも送ってみようかな?

 

 いやまあ家がお隣なんだし、直接会いに行けばいいのかもだけど。

 

 なんて思いつつ、スマホを手に取ろうとした――まさにその時だった。

 

〝ピコン〟という音と共に、スマホが振動する。

 

「ホワッ――!?」

 

 まさに触れようとした直前の着信音だったため、俺は思わずビクッと肩を揺さぶって驚き、身を仰け反らせる。

 

 どうやらRINE(ライン)のメッセージが届いたらしく、点灯した画面を見ると――そこには送り主の〝なのか〟という名前が表示されていた。

 

「! なのかからメッセージだ……」

 

 俺はすぐにスマホを手に取る。

 

 そしてRINE(ライン)を開いてメッセージを確認すると、そこには――

 

 

『今なにしてる?』

 

 

 ――とだけ書かれてあった。

 

「い、今なにしてるって……」

 

 ……なんか、あまりにも普段通りのメッセージだな……。

 

 幼馴染である俺たちは以前から頻繁にRINE(ライン)でやり取りしていて、暇だからと中身のないメッセージを送り合うなんてのも日常茶飯事。

 

 そしてこの『今なにしてる?』は、なのかが俺にメッセージを送ってくる時のいつもの最初の一言。

 

 決まり文句ならぬ決まりメッセージ、みたいなモノだ。

 

 ……なのか、暇してるのかな?

 

 昨日の今日で、俺なんてまだ微妙にドギマギしてるのに。

 

 俺はスマホをタップし、なのかにメッセージを返送。

 

 

『暇してる。暇暇~~~』

 

 

 メッセージを送ると、またすぐに返事が戻ってきた。

 

 

『ホントに暇?

 やることない?』

 

『ないないないないない』

 

『ないは一回でいいから』

 

『 』

 

 

 ――そんなメッセージを送り合うが、少しの間なのかから返事が戻ってこなくなる。

 

 まるで、なんて文章を送ろうか悩んでいるかのような、空白の時間。

 

 そして二分ほど経過した後、

 

 

『窓』

 

 

 ――と、ただ一言だけメッセージが送られてきた。

 

「ん? 窓?」

 

 え、なに?

 窓がどうしたって?

 

 と思った瞬間――

 

〝コンコンッ〟

 

 という音が、俺の部屋の窓から聞こえてきた。

 

「ホワアァッ――!?」

 

 さっきと同じように、思わずビクッと肩を揺さぶって驚いてしまう俺。

 

〝ドキーンッ!〟と心臓が跳ね上がるが、どうにか冷静さを取り戻し、音が聞こえた窓の方へと足を向ける。

 

 ……窓はカーテンが閉められており、向こう側は全くと言っていいほど見えない。

 

 このカーテンはかれこれ五年近くも閉めっぱなしになっており、もう長らく開かれていない。

 

 言うなれば〝開かずのカーテン〟だ。

 

 カーテンが閉めっぱなしなのにはそれ相応の理由があるのだが……そこから音が聞こえた以上、開けざるを得ない。

 

 俺はかなり久しぶりに、開かずのカーテンをシャッと開いた。

 

 すると、透明な窓ガラスの向こうに見えたのは――どことなく不安げな表情でこちらに手を振る、幼馴染(なのか)の姿だった。

 

 ちなみに今日は休日なので、彼女も私服姿である。

 

 俺はガラッと窓を開け、

 

「おはよ、なのか」

 

「……おはよう、ハジメ」

 

「なのかがこの窓(・・・)をノックするなんて、随分久しぶりじゃないか」

 

「う……そ、それは、RINE(ライン)で話すより直接話した方がいいと思って……」

 

 微妙に気まずそうにしながら、なのかは自分の長い金髪をクルクルと指先で弄る。

 

 ――我が光永家となのかの愛染家は、お隣さん同士。

 

 つまり家が限りなく隣接している。

 

 そして俺の部屋は家の二階にあり、なのかの部屋も家の二階にある。

 

 要するに――だ。

 俺の部屋の真向かいには、なのかの部屋があるのである。

 

 それも家と家の距離感が極めて近いため、やろうとさえ思えば俺となのかの部屋は互いに窓から行き来できてしまう。

 

 小学校低学年の、お互いの性別をさほど気にしないくらいの年齢の頃は、この部屋と部屋の近さを喜んだものだ。

 

 ……じゃあなんで、今は開かずのカーテンで封をしてるのかって?

 

 ある程度年齢が進むと、そう無邪気に喜べなくなってきたんだよ……。

 

 決定的な出来事となったのが、俺となのかが中学一年の頃。

 

 なのかに一声かけようと、俺がカーテンを開けた時――なのかが部屋の中で着替え中(・・・・)だった、なんてことがあって……。

 

 その時に思いっ切り見ちゃったんだよな、なのかの下着姿(・・・)……。

 

 中学一年にもなれば、流石に異性のことは意識するようになるから。

 

 あの時のなのかは、それはそれは可愛らしいピンク色の下着(ランジェリー)を付けていたっけ……。

 

 俺としては眼福だった……。

 

 ……でも下着を見られたなのかは流石に怒って、数日間まともに口を利いてくれなくなっちゃったんだよなぁ……。

 

 俺としても気まずくなって、以来なのかの部屋が見える窓のカーテンは閉じっぱとなった……という経緯。

 

 高校生ともなれば、余計に異性の部屋(プライベート)を覗き見るような真似には抵抗を感じるようになって……。

 

 まあ連絡を取り合うだけなら、別にRINE(ライン)でメッセージを送ればいいから。

 

 それに会って話したいなら、一歩家から出ればいいだけの話だし。

 

 そんなこんなで、もう長らくこの窓は開けられていなかったのだけど――

 

 なのかは少しモジモジとしながら、

 

「わ、私たち、もう恋人同士、なんだよね?」

 

「あ、ああ」

 

「それでその……今日って休日でしょ?」

 

「休日、だな」

 

「だ、だから――〝デート〟なんてどうかな……なんて」

 




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