森を抜けると、そこには小さな町があった。活気はなく、どこか寂れた雰囲気が漂っている。町を歩いてみると、通りの人々が珍しいものを見るみたいに、飛竜を横目にひそひそとささやいていた。
その張本人は気にも留めず、悠然と通りを歩く。
「おっす、お兄さん!」
すると、店の主人に話しかけられた。
「ここらで見ない顔だね。あんた、どっから来たんだい?」
「地球だ」
「地球? 聞いたことないな。どこの村だい?」
「…」
「いや待てよ。そのチキュウっての、どこかで聞いた気ぃするよ」
「なに?」
飛竜は一ミリほど目を見開いた。
「確かにそうだ。聞いたことあるよ、絶対!」
「誰からだ?」
「誰だったかな…? えーと…確か、町長のペリカンさんが言っていたな」
「そいつは何処にいる?」
「案内するよ。ついてきな」
主人が手招きするので、飛竜は無言でその後をついていった。
言われるがまま進んでいくと、道は次第に狭く、薄暗くなっていく。地面にはゴミや吐瀉物が点々と落ちており、湿った腐臭があたりを漂っていた。
「ここだよ」
主人がそう言ってたどり着いた先には、柄の悪そうな男たちが数人、刃物を携えながら群れていた。
「おーっす、今日のカモはそいつか? よく連れてきたな、報酬だな」
「へい。これで何ゼニーでしょうかい?」
「500ってところか」
「それはあんまりですぜ…。もう少しだけ。連れてくるのだって苦労するんですぜぇ…」
「調子乗んなよ。町の商人が盗人と裏で繋がってるって分かりゃあどうなると思う?」
男の一人は、刃物を遊び道具のように空中に投げながら、店の主人を睨み付けた。威嚇しているように見えた。
「わ、分かりましたよ…。500にしときます」
「利口だ」
茶色い袋がジャリンと音を立てて、主人の胸元に放られた。
「おっし、待たせたな。赤マフラー君」
薄暗い路地で男たちは刃物を手に、一斉に飛竜を取り囲み、にやつきながらナイフを突き立てた。
「ぐへへ…命までは取らねーよ?」
「あんたが大人しくすれば…な。それだけで助かる命があるんだぜ」
「上等な服着てんじゃんかよ。おい見ろよ、この布地。もしかしたら結構高値で売れんじゃねーの」
「こいつの持ってる剣(?)もかなり高………………え?」
サイファーに手を伸ばした男の一人が、急にすっとんきょうな声を上げた。
「おいどうした?」
「手が……感覚が……」
「お前ぇ手が切れてるじゃねぇか!?」
青ざめた声が闇に響き渡り、にわかに男たちは騒がしくなる。
男の腕は肘から先が失くなっており、血がどくどくと石畳に流れ落ちていた。
「…」
飛竜は一歩も動かず、頬に血を浴び、冷ややかに盗人たちを捉えていた。
「お前ぇがやったのか!? 命が惜しくねぇのか…………がっ」
言葉が途切れる。
仲間の一人が首を撥ね飛ばされ、血を噴水のように流した後、すぐに絶命した。
「お、おめーらナイフ出せ! 突き付けろ!」
「お、おうよ…!」
「手が痛ぇよ…………痛ぇよっ」
慌てた盗人たちはやっとナイフを構える。状況の深刻さにやっと気付いた。
だがもう遅い。
飛竜はサイファーを振り終えており、もう既に全員、一人残らず全員がこの世から旅立っていた。
「…かっ」
ボトボトと肉片が鮮血とともに石畳に降り注いだ。
血の雨が降った。
「ひぃっ!」
腰を抜かした主人が飛竜を恐ろしそうな目で見る。血の雨を浴びた飛竜の顔は赤く染まり、その奥にある瞳が淡く光っていた。
「ペリカンは何処だ?」
「……え?」
飛竜が訊ねる。
「ペリカンは何処だ?」
「あ、さ、さっきの話ですかい? あれは嘘なんですよ。嘘。ご、ごめんなさい!」
主人は震えながら、全力で土下座をする。
だが、飛竜は無言でサイファーを握りしめ、彼の頭部をじっと眺めていた。
「…」
サイファーを掲げる。
「って許してくれませんよねー…!」
「死の前では誰もが平等だ」
「ひぃーっ!」
主人の悲鳴があたりに響くと
「ちょい待ちな!」
という幼げな声が聞こえてきた。
奥からバンダナを巻いた一人の少年が、彼らの前に現れた。飛竜はサイファーを振り下ろす手を止め、その少年を冷たい目で見た。
「お兄さん、ストップだよ」
少年はそう言って、飛竜をいさめた。
年若く見えるが、目には場慣れした光が宿っている。
「そいつは町の商人だ。殺したら商会に目を付けられるかもしれない。安易に殺すのは承服できねぇな、俺っちは」
「そ、そうだ! 殺すと面倒だぜ!」
「だから殺すなら、人目の付かない場所がいいと思う」
「結局殺されるの!?」
主人は叫んだ。
「…」
飛竜は無言でサイファーを腰に戻す。
殺すのが面倒になったようだ。
「それがいいね」
「…貴様、何か知っているか?」
「あ? ああ、まあ一応ね。じゃあ情報が欲しいなら、俺っちのところに来なよ。お兄さんの必要としている情報があるかもしれない」
「……」
「ああ、怪しい者じゃないさ。俺っちはズライ。ただの情報屋さ」
飛竜はその少年──ズライについていくことにした。
「た、助かった…」
主人はホッと安心しながら、股ぐらを尿で濡らした。
たぶん需要はありません
ストライダー飛竜の世界観めっちゃすこ