エンガノ岬に沈んだ零戦乗り   作:爆走!

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お初になります。
支離滅裂なところなどございますが、至らぬところを指摘していただいたらありがたいです。

ちなみに零式艦上戦闘機52型丙はこのとき完成していません。試作機という扱いでみていただきたいです。


特攻

その日は快晴だった。

我々大日本帝国海軍は米国へと大打撃を与えるべく進路をレイテへと向けた。

 

 

side:正規空母瑞鶴

 

全機!爆装!!

その掛け声とともに戦闘機の搭乗員は自分の機体の点検を始め、不調のない者から飛び立っていった。

俺はというと、

 

「くそっ!発動機の調子がおかしい!」

 

我が愛機、零式艦上戦闘機52型丙の不調を訴えた。

 

「佐藤少尉の機体に不備ありー!」

 

大きな声で整備長が叫ぶ。すると周りの整備員が駆けて集まってきた。

 

「発動機の調子がおかしい。始動はするが同じ状態を保てない!」

 

すると整備班はその場で発動機の調子を見始めた。

だが、このままでは出遅れてしまう!

 

「治りそうか!?」

 

整備班に聞いてみるものの返答は、否。

 

「しばらくは飛んでいられますが、その先はなんとも…」

 

しばらくは飛べる。それだけきければ十分だ。

 

「下がれ!このまま行く!」

「しかし!発艦さえ怪しい状態です!」

「しらん!飛べればよし!」

 

甲板にいる乗船員を集めエレベーターまで行く。

 

「このままでは犬死だ!」

 

整備員が叫ぶが知ったことではない。この作戦は敵を誘導することだ。どの道俺らは死ぬ。遅いか早いかの違いしかない。

エレベータが動き海の様子が見え始める。

 

「海戦だ。すでに始まっているんだ!」

 

すでにこちら側は押され始めている。

 

「佐藤少尉、発艦準備よし!」

 

大丈夫、丙がいれば怖いものなしだ。

総員が帽子を振りまわし見送ってくれる。操縦桿を握る手が震える。武者震いだ。何も問題はない。

 

「発艦!」

 

徐々に前進する機体が振動を発する。とても心地がいい。今から向かうのはあの戦場。

 

しばらく速度を一定に維持し進み続けると…

 

「隊列も何もないじゃないか!乱戦だ!!」

 

佐藤少尉がたどりついた頃には乱戦になっていた。第二次攻撃隊の発艦が始まるのも時間の問題。彼らに与えれた任務は敵の誘導。だが、裏を返せばこれは囮作戦。

 

『見つけたぞ!ゼロファイター!!』

「馬鹿な!取り付かれた!?」

 

手薄な部分を攻めようと試み探す佐藤少尉。

だが、いつのまにか現れた敵の戦闘機グラマンに真上をを取られていた。

 

side:佐藤

 

「直上!?いつの間に!」

『尾翼にチェリーのゼロ!貴様にやられた仲間の恨みここで…!』

 

真上からの一斉掃射!早くに弾切れを起こせばいいが…!

 

「いつの間に真上を!いや…」

 

いきなり真上を取られるなんてことなんてありえない。なにかがあるはずだ。

 

『悠長だな!回避行動も取らずに速度も上げない!』

「発動機の調子がおかしいのさよ!」

 

操縦桿を右に曲げ、回避を試みる。

どうにかして回避。まずは回避。一対一だ、負ける通りはないっ!

 

「ん?空の向こう…敵影?」

『どこを見ている!』

 

あれは敵か?ここからではよく見えない。それよりも今は後ろの蠅だ!

 

「しっかりついてこいアメ公!」

『速度を上げた?その程度…!』

 

俺の丙では振り切るのに時間がかかりすぎる。ならば、乱戦に持ち込めば!

徐々に速度を上げるが、丙が悲鳴を上げるかのようにガタガタと唸る。

 

「ぬお!?発動機が泣きやがった!まずい…」

 

速度は上がるが音が鳴りやまないぞ!このままじゃいつか爆発しちまう!

 

『また速度があがった?どういうことだ。あの機体はあんなに速かったか?』

 

速度を際限なく上げグラマンとの差を作る。

あれ?アメ公の野郎諦めたのか?なら好機だ!

一転。機体を上に向け速度を落とし相手の後ろに捻りこむ。

 

『馬鹿なっ!?あの速度からの反転!?』

 

アメ公、仲間の恨みだ受け取れ!

機銃掃射しかし。発動機の調子がさらに悪くなる。速度が勝手に落ちていく。だが機銃から放たれる銃弾は的確に相手の右翼と尾翼を貫いた。

 

「くっそ!整備班のやつら仕事しろよぉ!!」

『被弾した!くそ!』

 

グラマンは尾翼から出火。丙は発動機から煙を発する。

落ちるのか?速度が落ちてこのままじゃ!

 

『出火?ええい!このままでは終わらせない、覚悟しろチェリー!』

 

馬鹿が!出火したなら帰ればいいものを、突進してくる馬鹿があるか!

グラマンの出火は沈静化していく。だが丙の発動機は不良のまま。

 

「特攻?」

 

グラマンは機銃を撃ってこないが速度を維持しこちらに直進してくる。

 

『弾切れを起こすとは!運のいいやつだ、だがこのまま帰れん!!』

 

グラマンは速度を上げていく。

冗談。このまま発動機の不調で死ぬってか?ありえねぇ…。なんならかっこよく特攻でもした方がましだ!

 

「動けポンコツ!!」

 

勢いよく正面にあるメーターを殴るが、それで調子がよくなるわけでもなく機体はさらに速度を落とす。

 

『チェック…!俺も、貴様も!』

 

グラマンが丙に狙いを定め猛追する。

動け間抜け!何もこんなときじゃなくてもいいじゃないか!発艦してものの数分で落とされる?なんて無様だ…。こんなとこで終われる俺じゃない、まだ敵影の確認も済んでいない。

すると発動機の振動が弱くなりコントロールが戻ってくる。

 

「しっかり動く?敵は!」

 

後ろを振り向くと敵機があと数十mの距離に迫っていた。

この距離、操縦桿をいっぱいに傾ければ速度の影響で相手は曲がってこれない。行けるぞ。

 

『うぉぉぉぉぉぉ!!』

「どっせい!」

 

操縦桿を左に勢いよく曲げる。機体はしばらくしてから左に大きく傾く。

 

『今さら遅い!!』

 

どうかな!

なんとなく相手の言いたいことが分かった。あいつは決死の覚悟を抱いて俺は必死の覚悟を抱いている。同じ戦場にいて心が通じているのかもしれない。

 

「当てて見せろよ」

『このっ!』

 

左に大きく旋回。グラマンは寸でのところで尾翼を掠らせるだけに終わった。

機体を立て直し、照準を合わせる、抜け目なくだ!

 

『このっ!』

「そのまま、動くな!」

 

機銃のレバーを引く。放たれた弾丸は相手のプロペラ、操縦席、機体を余すとこなく埋め尽くす。

 

『ぐぉ…ゼロ…!』

 

爆散。

 

「手ごわい相手だった…しかし、敵影は?」

 

見上げれば敵影はしっかりと見えるほどに近づいていた。

あれは、大編隊だ。このままでは第二次攻撃が狙い撃ちだ!

 

「一度引き返すしかあるまい。」

 

方向転換し船への帰路を急ぐ。

速く伝えなければこの作戦は早急に片が付いてしまう。そういえば乱戦はどうなった?

首を後ろに向け戦況の確認を急いだ。

 

「なっ!」

 

目にしたものは青一色の編隊。緑の機体を確認することはできなかった。

これは、この作戦は…失敗こそしないが、成功なんてありえない。そして今戻ったところでどうなる?

 

「どうすれば…」

 

一人帰って何ができる。俺たちはもともと捨て駒だろ…?この作戦は敵の誘導、陽動。

自ら囮となり敵をひきつける。

 

「囮か、悲しいな…」

 

捨て駒。そんなものだ、所詮。

俺の死に場所はここだ。どこでもない、ここが俺たちの死に場所だ!手始めにそこら中を飛んでる青い蠅どもを道連れにしてやる!!

 

side:米軍

 

「ん?ゼロが一機突っ込んでくるぞ!」

 

鶴の一声のごとく青い戦闘機は四方に散開する。そして散開した中央をものすごい速さで通り過ぎる零戦。

 

「なんだ!あれはほんとにゼロか!?」

「速い!あんなに速いゼロなんて見たことがない!!」

「敵の新型か!?」

 

通り過ぎたゼロの尾翼にはチェリーのエンブレム。即ち桜の絵柄。

 

『お前ら覚悟しろ!』

 

ゼロは勲章の多く付いた戦闘機の後ろを取る。

 

「速いっ!こいつ秘密兵器というやつか!」

『お前は俺らの仲間を人一倍多く落としたんだろう?だからそんなに偉いもんを機体に張り付けている!』

 

追いつけるはずのないゼロがおい越しそうな勢いで後ろをついてくる。

 

「ば、化け物…!」

『結構!』

 

ゼロの機銃掃射。米軍の機体は成す総べなく火を上げて落ちていく。もちろんゼロも無傷とはいかない。

 

「エンジンから火をあげながらとんでいる…。」

 

発動機は一旦調子が悪くなるものの火を上げてからは速度を上げるばかり。

 

『お前らの視線を俺のゼロに釘付けにすれば味方だって…!』

「いつまでも、やれると思うな!!全機フォーメーションだ。敵を落とす!」

 

ばらばらに動いていた米軍機が一つになりゼロを追い立てる。

 

『なんだ!?』

「一機だけで勝てると思っているのか!!」

 

米軍機からの一斉掃射。だが、ゼロはそれをことごとくかわす。

 

「なぜ当らん!」

「速すぎるんだ…」

 

米戦闘機部隊に衝撃が走る。勝てない。そう本能で悟ってしまう。

地獄の業火を纏い進撃するさまに恐怖を抱いてしまう。

彼らに戦意は残っておらずただゼロから逃げ回るだけの時間が続いた。

数十分後、米戦闘機部隊は12機の損失を余儀なくされた。

しかし、ことが動いた。今まで攻勢一方だったゼロが進路を下に向ける。突然のことに米機は反応が遅れる。だが、ゼロの向かう先には我らの母艦があったのだ。

 

「俺たちは、いつの間にここまで戦線を下げていたのだ…」

 

ゼロは彼らの母艦プリンストンに進路をとった。

 

「奴を、ゼロを止めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「撃ち落とせ!何としてもだ!」

 

ゼロはさらに速度を上げていく。

 

side:佐藤

 

誰も丙についてこれない。この丙は命を燃やしながら俺を運んでくれる。あの敵母艦まで。

 

「このまま振り切る。12機も落とした、十分だろ…」

 

対空砲火が鬱陶しいが全て来る位置が分かってしまう。だが。

 

「くぅ!被弾したのか?左腕が…!」

 

後ろから追撃してくる米機の機銃をもろに受けてしまった。せっかくここまで運んでくれた丙の発動機も今では動きを見せずただ小爆発を繰り返すだけ。傍から見たら俺の乗っている丙は火だるまになっているのだろう。

左腕は肘から下が千切れそうになっている。

満身創痍だ。

 

「せっかくここまで運んでくれたのに、余計なことばかりをする!」

 

だが不思議と痛みはない。俺はこれから死ぬ。ただでは死なない、奴らに一矢報いる。ゼロの燃料計は0を指した。だが増槽は捨てずに抱え込む。

 

「行けるぜ、俺は!」

『止まらない!?何なんだ!お前はぁ!!』

 

我敵艦ニ特攻ス。

 

轟音に次ぐ轟音。

増槽を積んだ零戦は敵の母艦に大打撃を与え炎の海に消えていった。

 

我特攻ニ成功セリ。

 

 

 

10月25日  1406

       佐藤 ■■ 少尉

                    戦死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side:佐藤

 

見渡す限りの青、海の上を漂っているのだろう。俺はあの後どうなったのだろうか。

千切れそうだった左腕は何事もなかったかのように治っている。

俺は死んだはっきりとわかる。

 

だが、

 

「体が小さい。」

 

15cmくらいしかないのではないだろうか。

何がどうなっている。説明を要求する。

 

 

 

 

 

 




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