エンガノ岬に沈んだ零戦乗り   作:爆走!

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前回のあらすじ。

知っているけど知らない世界。
一式戦闘機。
妖精。
瑞鳳。


邀撃

 

「全機進撃だ!」

 

迫りくる敵を打倒する。ただそれだけ。人の形をしていないなら…

 

「殺しやすい…!」

 

96式艦戦の動きが先ほどまでとは比べ物にならに程良くなっている。先の状況とは一転した!攻めろ!攻めろ!攻めろ!

96式艦戦の妖精たちはニ対一、三対一を心がけ敵機を翻弄していく。だが恐ろしいのは敵機だ、あれほどの被害を出したのにも関わらず退くことをしない。彼らの目的は本部襲撃、それか目の前の彼女たちを消し去ること。制空権を失った今退くことを考えるはずだ。では、彼らを退かせない何かが此処にあるのか?

 

「どちらにしろあいつらを此処から追い出さないことには話にならん。」

 

その時頭の中に声が響いた。

 

「こちら航空母艦、瑞鳳です。窮地を救っていただき感謝します!…。ですが陸軍の戦闘機がなぜここに?倉庫の隼を操れる妖精はこの鎮守府にはいません。」

 

そうか、一式を操れる妖精はここにはいないのか。しかし、後ろの方からこちらに真剣なまなざしを送る彼女。弓を持った彼女が瑞鳳なのか?こちらからも質問したいことはあるが今は戦闘中だ。それに応答の仕方がわからん。無線機でもあるのか?

 

「今は戦闘中です。話なら後にしていただきたい。」

「…。そうね、申し訳ありません。今はこの場を退くため協力していただきたい。」

「元より…。」

 

通じた?俺の知らない技術がこの機体には積まれているのか?

視線を外し敵機を確認する。

前方に艦爆と思わしきもの、艦攻の確認はできず。だが今は九六式の援護だ。動きが変わったもののこれではすぐに先程の状態に戻る。まずは右の敵機を片す!

意気込みとともに指さし確認をし、敵の編隊に潜り込む。

 

「いける!」

 

side:瑞鳳

 

男性の、声?妖精は女の子だけじゃなかったの?ううん。考えるのはあと!まずは敵の戦意を挫く。

 

「第二次攻撃隊は準備でき次第各々発艦!護衛艦を撃破してください!」

 

敵は彼が来てから進軍速度を緩めた。足を止めている今が絶好の好機!これ以上駆逐艦の子たちの被害を広げるわけにはいかない!

 

「瑞鳳さん!敵の足が止まっています!魚雷使用の許可を!」

「なのです!」

「そうね、なら…。」

 

目を閉じ艦攻隊に指示を出す。

雷撃準備!

 

「やっちゃいますか!魚雷の使用を許可します!」

「はーい!」

「なのです!」

「まかせて。」

 

大丈夫、いつもの演習と同じ要領よ。焦らず、状況をよく見て、慎重に!戦況は有利。それに、これが終わったらいろいろ聞かせてもらうんだから!

 

「いけるわ!反撃よ!」

 

side:佐藤

 

雷撃準備?足が止まったところを狙うのか、ならば邪魔をさせないよう敵機の視線を釘づけにする!

 

「各機雷撃隊を援護、ささっと終わらせようや!」

 

自然と手に力が入る。勝ちを取ることなどなかった俺の戦争に初めての勝利だ。興奮せずにいられるか!

俺は九六式に雷撃隊を支援するよう指示し、敵機の殲滅に移る。

 

「狭い操縦席ともおさらばだな!」

 

軽口とともに機銃を放ち敵機の行く手を阻む。すると敵機は編隊を解除しばらばらにこちらに攻撃を仕掛けてくる。さすがにこれは予想外のことで対応が遅れてしまう。

っ!油断した!今のは敵機がこちらの行動を読んでいたのか!すると下に向かった敵機は!?

目を向けるが早いか下からは敵機の銃弾が飛んでくる。さすがにこの銃弾の雨を避けることは適わず胴体に何発も被弾する。弾は貫通し燃料が胴体下から噴き出す。

 

「くぉ!油断した…。敵を馬鹿にしすぎたか…!俺のあほうが!」

 

これでは次銃弾が来た時出火の危険性がある。一度倉庫まで戻るのが先決か…!しかし此処で戻れば戦況は分からなくなる。どうすれば!

その時。後方の敵機が爆散した。

 

「な、にが?」

 

見れば九六式艦戦が護衛から数機裂いてこちらの援護に来たではないか。同時に瑞鳳から通信が入る。

 

「一度滑走路に戻ってください!その被弾では危険です!」

「りょ、了解した。この場を頼みます」

 

ふふふ。と瑞鳳から笑みが漏れる。同時に九六式艦戦が二機護衛に付く。

 

「元より、ですね!」

 

…。恥ずかしい。あそこまでいろいろ指示を出していたのに突然の被弾。そして撤退。これでは勝利とは呼べない。ただの恥だ…。

 

「…帰還します。」

 

side:整備妖精

 

あれから敵機はきていません。佐藤さんがうまくやっているのでしょう。こちらも帰ってくる方たちのためにも弾薬や燃料などの準備をしましょう!…てあれ?向こうが騒がしいですね。様子を見に行きましょうか。

 

「あ、あ、あれー!隼が被弾していますぅー!」

 

ひ、被弾?隼ってさっき飛んで行ったって、ひーだーんんんんんん!?それって佐藤さんは大丈夫なのですか!?生きているのですか!?

あわてて降りてくる隼に近づき輪止めをかける。すると中からキャノピーを開き無傷のままで降りてくる佐藤さんの姿が。

 

「生きてるよ。他に使える機体はないのか?すぐに出たい。ないなら応急処置で構わない。」

 

ふぅ。大丈夫みたいです。ですが機体の方は処置に時間がかかります。

 

「処置には結構な時間を要しますが…。」

 

その馬を伝えると佐藤さんは苦い顔をしました。拳を握りしめ地面を殴り座りこみました。

 

「俺がしっかりしていれば!油断なんてしているから!馬鹿が!」

 

悔しいのでしょう、目尻に涙を貯めながら淡々と続けました。でも確か先日できたばかりの機体があったはずです。

 

「待っていてください!先日完成した機体がありますそれを取りに行ってきます!」

「え、おい…。」

 

私は彼の呼びかけを無視して数人の仲間とともに駆けだしました。

あんな弱々しい姿なんて見たくありません!それに一人戦線から離脱するのがどれだけ恐ろしいことか、今は速くあの機体を届けなければいけません!

 

 

side:佐藤

 

おい。と、いったものの見向きもせず倉庫内にもぐってしまった。…それにしても敵機の動き、まるで違う。先ほどまでは本気ではなかった。俺は今まで敵に威力偵察されていただけなのか?敵機のあの反転の仕方、鮮やかだった。それに上下左右からの多重攻撃。そして、敵の反撃も今始まったのではないのか?だとしたらとても恐ろしい…。

思考の海に耽る中倉庫の方から何かを運ぶ影を見た。そして、唐突に俺は立ち上がった。

 

「その機体は!」

「はい!司令官殿は不要とのことでしたが、こんなこともあろうかと残していたのです!出来立てほやほやです!」

 

零式艦上戦闘機。五二型。

 

「はは、一式よりも俺に合ってる機体があったんじゃないか…。すぐに出る!弾みを付けてくれ!エナーシャだ!」

「了解!」

 

その掛け声とともに妖精が二人係で発動機の後ろにイナーシャスターターを装着し回し始める。回転させしばらく経つと音がかわる。その瞬間に。

 

「離れてくれ!」

 

次に。

 

「コンタクトッ!」

 

と叫ぶ。叫ぶと同時に主電源を入れる。すると、発動機から爆音が聞こえ排気筒から一瞬炎が噴き出てくる。炎が消えると次は白煙があたりを包み込む。プロペラは規則正しく回転し推力を得る。

 

「車輪止めを外してくれ。すぐに出る!」

「了解!それとボーキサイトです!ご武運を!」

 

ボーキサイトの塊を手に取り右手で敬礼をし、滑走し始める。

まさか、五二型があるとは思わなかったな。この機体なら何回も乗ってきたんだ多少の無理もできる。どうせなら丙が欲しいところだが無い物ねだりはだめだ。

しばらくすると、機体は離陸し片方ずつ主脚をたたむ。

 

「次は油断しない。遅れた分全部取り返してやる!それまであの子たちがもっていればいいが…。」

 

ボーキサイトを体内に取り込み景気を付ける。

 

「シャァッ!!」

 

機体速度を最高速まであげ先を急ぐ。戦いはまだ始まったばかりだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 




佐藤さんがエナーシャと言っているのは、イナーシャスターターの訛りです。
MT車を運転したことがある方は分かると思いますが、今の車にはセルモータという電動機があります。セルモータが付いている物はキーを回すだけでエンジンがスタートします。ですが零戦にはセルモータが付いていません。セルモータの役割をするのがイナーシャスターターというわけです。エンジンスタートの補助装置だと思っておいてください。

文字数減ったなー…
戦いは始まったばかりだ!
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