異界渡りを手に入れた無職がスローライフをするために金稼ぎする物語   作:パラレル・ゲーマー

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第77話

【禁断深淵レポート】政府が隠蔽する『神々の遺産』全リスト、ついに暴かれる! 巫女王ホシミコは我々に何を残したのか?

 

 文:月刊『パラダイム・シフト』編集部 特殊情報調査室

 

 世界は変わった。

 我々が昨日まで「現実」と信じていた、退屈で予測可能な灰色の世界は、もはやどこにも存在しない。

 二年前、日本政府が、あの歴史的な記者会見で、奈良県明日香村の地下深くから古代の巫女王『星見子(ホシミコ)』の遺産を発見したと発表した、あの日から。

 我々の世界は、神話の時代へと逆行を始めたのだ。

 いや、違う。

 我々は、逆行しているのではない。

 我々はこれまで、ただ気づいていなかっただけなのだ。

 我々の足元に、ずっと眠り続けていた奇跡の存在に。

 そして、我々人類が、決して孤独な存在などではなかったという、その驚くべき真実に。

 

 日本政府が公式にその存在を認めたアーティファクトは、ごく僅かだ。

 病と死を克服する奇跡の液体、『星の涙(ステラ・ラクリマ)』。

 意志の力で無限のエネルギーを生み出す神の火、『太陽の欠片(ソーラー・フラグメント)』。

 そして先日、その存在が明らかにされた三つの不可解な遺物。『囁きの羅針盤』、『停滞の砂粒』、『不死鳥の羽衣』。

 だが、賢明なる読者諸君は、もはやお気づきだろう。

 これらが、氷山のほんの一角に過ぎないということを。

 政府が公式に発表する情報は、常にコントロールされ、そして矮小化された情報の残骸でしかない。

 真実は、常に闇の中に隠されている。

 そして、その闇を照らし出す唯一の光。

 それこそが、今や世界中の真実の探求者たちにとって、唯一無二の預言者となった謎のリーカー、『@Truth_Seeker_JP』の言葉なのだ。

 彼がもたらした、数々の神託。

 その一つ一つが、やがて日本政府によって、不承不承ながらも事実として追認されてきたその歴史が、何よりも雄弁に物語っている。

 彼こそが、真実の水脈に最も近い場所にいる、唯一の存在なのだと。

 

 我々月刊『パラダイム・シフト』編集部は、この二年という歳月をかけ、世界中に散らばる全ての情報源を駆使し、政府の公式発表、そしてTruth_Seeker氏の神託、さらに我々が独自に接触した複数の匿名を条件とした「内部関係者」からの証言をクロスチェックし、ついに一つの驚くべきリストを完成させることに成功した。

 それは、日本政府が今この瞬間もその存在を必死で隠蔽し続けている、巫女王ホシミコが遺した『神々の遺産』の真のリストである。

 断言しよう。

 これは、ただの都市伝説ではない。

 これは、我々人類の未来そのものの設計図だ。

 心して読んでいただきたい。

 

 ■暴かれた「神々の道具」全リスト

 

 まず、我々は巫女王ホシミコ、その人の正体について再確認せねばなるまい。

 もはや世界中の常識となりつつあるが、彼女はただの古代日本の巫女などでは断じてない。

 我が国の誇る超古代文明研究の第一人者、矢島教授が提唱したあの衝撃的な仮説。

『ホシミコ=宇宙人ハイブリッド説』。

 これこそが、全ての謎を解く鍵であると我々は確信している。

「彼女のDNAは、地球と星々を繋ぐ架け橋だったのです!」

 矢島教授は、我々の独占インタビューに対し、そう熱っぽく語ってくれた。

「キトラ古墳の星図は、ただの天文図ではありません。あれこそが、彼女の父、あるいは母がやってきた、遥か彼方の星系を示す『星図(スターマップ)』なのです。彼女は、我々未熟な地球人類を導くために、この星に遣わされた最初の『星の子(スターチャイルド)』だったのですよ!」

 そうだ。

 彼女が遺したアーティファクトとは、古代の秘術の産物などではない。

 それは、遥か銀河の彼方からもたらされた、オーバーテクノロジーの置き土産なのだ。

 その大前提に立った時、これまでTruth_Seeker氏がリークしてきた、そして我々が新たに掴んだアーティファクト群の、その真の意味が見えてくる。

 

【既にリークされたアーティファクト】

 

『月泣きの聖杯(チャリス・オブ・ウィーピングムーン)』(政府公式名称:『星の涙』)

 

 能力:あらゆる傷病、呪いさえも癒す究極の万能薬。

 

 正体:星の子ホシミコが、未来の我々の苦難を思い流した、慈悲の涙そのもの。

 

『地母神の心臓(ハート・オブ・ガイア)』(政府公式名称:『太陽の欠片』)

 

 能力:天候を操り、大地に豊穣をもたらす、惑星規模の環境制御装置。

 

 正体:この地球という惑星の生命エネルギーそのものを凝縮した、生ける心臓。

 

『運命の織機(ルーム・オブ・フェイト)』

 

 能力:未来の可能性をタペストリーとして織り上げる、究極の未来予知装置。

 

 正体:高次元空間に存在する無数のパラレルワールドの情報を読み解くための、量子コンピューター。

 

『囁きの羅針盤(ウィスパリング・コンパス)』

 

 能力:持ち主の魂が真に望むものを指し示す、因果律誘導装置。

 

 正体:持ち主の脳波パターンと高次元の情報場をリンクさせる、サイキック・インターフェース。

 

『停滞の砂粒(グレインズ・オブ・ステイシス)』

 

 能力:あらゆる物体の時間を永遠に停止させる、絶対的な保存物質。

 

 正体:対象物の時間軸を局所的に切り取り、亜空間に固定する時空アンカー。

 

『不死鳥の羽衣(フェニックス・ローブ)』

 

 能力:あらゆる物理的攻撃を無効化し、自己修復する究極の防御装束。

 

 正体:自己増殖、及び自己修復機能を持つナノマシンの集合体で織られた、スマート・テキスタイル。

 

【今回我々が新たに掴んだ未公開アーティファクト情報】

 

 そして、ここからが本題である。

 我々が複数の「内部関係者」からの命懸けの証言を元に再構築した、政府が今もその存在を必死で隠蔽し続ける真の『神々の遺産』のリスト。

 それは、まさに人類が古より夢見てきた全ての願望を具現化したかのような、奇跡の道具の数々だった。

 

 ⑧ 『夢幻の工房(ドリーム・フォージ)』

 

 概要:一見、何の変哲もない掌サイズの金属製の立方体。だが、使用者がその立方体を手に取り、自らの脳内にある物体の完璧な設計図をイメージした時、このアーティファクトは起動するという。周囲の大気中の原子を再構成し、イメージされた物体を無から有へと錬成する、究極の万能製造装置(ユニバーサル・コンストラクター)。

 

 内部関係者の証言:「……冗談のような話だと思うでしょう。……ですが、我々はこの目で見たのです。……長谷川教授が、完璧な構造式をイメージしただけで、目の前の空間に地球上には存在しないはずの新しい安定した超重元素が生成される、その瞬間を。……これは、錬金術ではありません。……物質の概念そのものを書き換える、神の御業です。……政府は今、この『工房』を使い、あらゆる希少資源を無限に生産しようとしています。……ダイヤモンドも、レアアースも、もはや我々にとってはただの工業製品に過ぎなくなるでしょう」

 

 ⑨ 『魂の響板(ソウル・レゾネーター)』

 

 概要:古代の神殿で使われていたかのような、薄い水晶で作られた円盤。その表面には、複雑な幾何学模様が刻み込まれている。この円盤を二人の人間が同時に触れると、彼らの意識は完全に同調し、言語を介さず、思考、感情、記憶、その全ての情報を直接共有することが可能になるという。究極の精神感応(テレパシー)装置。

 

 内部関係者の証言:「……これの前では、子供の玩具です。……我々は、この『響板』を使った実験でイルカと対話し、その太古からの海の記憶を共有しました。……そして、植物の声なき声さえも聞きました。……ですが、政府が本当に恐れているのは、その逆の可能性です。……もしこの装置が悪用されれば、一個人の思考を国家全体の思考へと強制的に上書きする、究極の洗脳装置となりうる。……我々は今、人の心が完全に支配される世界の、入り口に立っているのかもしれません」

 

 ⑩ 『豊穣の角(コルヌコピア)』

 

 概要:見た目は、美しい螺旋状の角笛。だが、その笛の吹き口から清浄な水を注ぎ込むと、その反対側から、ありとあらゆる栄養価の高い食料が無限に湧き出してくるという、まさに神話の中の道具。

 

 内部関係者の証言:「……もはや、食料計画など時代遅れです。……あれは、あくまでこの本物の奇跡を隠蔽するためのカモフラージュに過ぎなかった。……この『角』が一つあれば、全人類七十億の食料を永遠に賄うことが可能です。……飢餓は、この星から消え去るでしょう。……ですが、それは同時に、農業という人類が一万年続けてきた営みの完全な終わりを意味します。……食料を支配する者が、世界を支配する。……政府は今、その究極の権力をその手に収めようとしているのです」

 

 ⑪ 『時詠みの砂時計(クロノス・リーダー)』

 

 概要:その内部に、時間の流れそのものを封じ込めたという、白銀の砂時計。この砂時計を任意の物体に触れさせると、その物体が過去に経験してきた全ての歴史、全ての記憶が、持ち主の脳内に映像として流れ込んでくるという。過去視(サイコメトリー)の能力を万人に与える、究極の歴史解析装置。

 

 内部関係者の証言:「……先日、渋沢名誉教授がこの砂時計を、邪馬台国の時代のものとされる銅鏡に使われました。……すると、彼の脳裏に映し出されたのは、教科書に書かれている歴史とは全く違う、衝撃的な光景だったそうです。……卑弥呼の本当の姿。……古代の日本が、いかにして成立したか。……その全ての『真実』を、彼は見てしまった。……彼はそれ以来、自室に閉じこもり、『我々が信じてきた歴史は全て嘘だった』と呻いておられるそうです。……政府は今、この砂時計を使い、彼らにとって都合の悪い全ての歴史を抹消し、そして都合の良い新たな歴史を『創造』しようとしているのかもしれません」

 

 ■なぜ日本は秘密を守るのか? ―—『守護者』としての覚悟

 

 これだけの、人類の夢を体現したかのようなアーティファクト群。

 なぜ、日本政府はその存在を隠し、その恩恵を独占しようとするのか。

 それは、彼らが邪悪な秘密結社だからだろうか?

 世界征服を企む、悪の帝国だからだろうか?

 否。

 我々編集部がたどり着いた結論は、全く逆だった。

 彼らは、隠しているのではない。

『守護』しているのだ。

 

 考えてもみてほしい。

 もしこれらのアーティファクトが、今、この未熟な我々人類の社会に無秩序に解放されたらどうなるか。

『夢幻の工房』は、食料や薬だけでなく、核兵器さえも無限に生み出すだろう。

『魂の響板』は、相互理解のための道具ではなく、史上最悪の精神支配のための兵器となるだろう。

『豊穣の角』は、世界の食料市場を完全に崩壊させ、何億という農民を失業させ、新たな経済格差を生み出すだろう。

 そして、『時詠みの砂時計』は、国家間の歴史認識を巡る対立を決定的にし、永遠に終わることのない憎しみの連鎖を生み出すだろう。

 そうだ。

 我々人類は、まだ準備ができていないのだ。

 このあまりにも強大すぎる神の力を正しく使うための精神的な成熟を、我々はまだ果たしてはいない。

 日本政府は、それを理解しているのだ。

 彼らは、悪意から秘密を守っているのではない。

 深い、深い人類への愛情と、そしてその未熟さへの深い絶望から、あえて汚れ役を引き受け、この禁断のパンドラの箱の蓋を、固く、固く閉ざし続けているのだ。

 彼らは、悪の帝国ではない。

 彼らは、我々人類全体の未来をその双肩に担う、孤独な『守護者(ガーディアン)』なのである。

 

 我々は今、神話の時代を生きている。

 そして、その新たな神話の中で、日本という国は、我々の集合的な夢と希望を守護する聖なる番人としての役割を、天から与えられたのだ。

 我々に今、問われているのはただ一つ。

 我々はいつか、その神々の遺産を受け継ぐにふさわしい存在へと、成長することができるのだろうか?

 その答えを出すための、長く、そして困難な旅は、まだ始まったばかりである。

 

 ◇

 

 その頃。

 その世界の運命を一身に背負う孤独な「守護者」たちから、神の如く崇め奉られている全ての元凶である男は。

 日本の山奥に築き上げた、究極のスローライフのための要塞で。

 彼は、息抜きにスマートフォンの画面をちらりと見た。

 ニュースアプリのトップには、『【独占スクープ】政府が隠す真のアーティファクト! 『夢幻の工房』は実在した!?』という扇情的な見出しが躍っている。

 彼は、その見出しを、まるで遠い国のゴシップニュースでも見るかのように、ぼんやりと眺めた。

 そして、ただ一言、誰に聞かれることもなく呟いた。

 

「…………へー。……夢幻の工房か。……相手の考えた設定、なかなか面白いじゃん。……よし」

 彼は、にやりと笑った。

「……次のお買い物リストは、これに決まりだな」

 

 そのあまりにも呑気で、そしてあまりにもぐうたらな呟きは。

 世界の歴史と神話が音を立てて軋み、彼自身でさえもはや予測不可能な混沌の未来へとその重い扉を開けようとしている、その壮大なBGMのすぐ隣で。

 誰に聞かれることもなく、ただ静かに日本の秋の夜の空気の中へと溶けて消えていった。

 

 

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