また、リクエストでも追記事項を書きましたので、興味がありましたら、ぜひ。
照明班の悲鳴が轟いた。
「誰か!第二ブロックのスモークマシン止めてくれ!!」
「はーい!今行きまーす!!」
井上ショウマは人間とは思えない兎のように跳躍し、廊下を一直線に駆け抜けた。その速度は明らかに常人のそれを超えている。
「……あのスタッフヤバくない?」
バックステージのスタッフたちが戦慄する中、その男は問題の機械に到達し──片手でポンと蓋を開け、素手で複雑なバルブを弄り始めた。動作は軽やかで遊び半分にも見える。だが結果は劇的だった。一分も経たず煙が収束し、スモークマシンは沈黙した。
「はい、終わりましたー!」
「お前……何者……」
唖然とするスタッフの視線を受け流し、ショウマは額の汗を拭うこともなく微笑んだ。彼が舞台裏の通路に戻ると、今度は反対方向から狐耳がひょっこり覗いた。
「──へぇ。噂は本当だったんだね」
白上フブキはタオルを首にかけたまま目を細めた。ライブ前の緊張を解くために会場を散策していたのだ。
「こんにちは!新人スタッフさん?」
「あっ初めまして!井上ショウマです!」
「……ホロライブに配信者の『井上ショウマ』なんていたっけ?」
「いえ、ただのアルバイトです!」
「なんでそんな筋肉ついてるの?」
「毎日トレーニングしてるんで!」
「毎日!? そっか……肉体派かぁ……」
フブキは納得半分、不審半分の顔でショウマを眺めた。現場で噂になっている“とんでもない新人”がまさかこんな爽やかな青年だとは想像していなかったのだ。
「それで、あなたは?」
「知らない?それじゃ、せっかくだから!こんこんきーつね!白上フブキです!」
そう、フブキはすぐに挨拶すると。
「そう言えば、フブキさんに聞きたいんだけど」
「何々?」
「フブキさんの隣にいる人って、誰ですか?」
「えっ?」
その一言を聞くと、フブキは一瞬だけ止まる。
フブキはすぐに横を見るが、そこには誰もいなかった。
少なくともフブキとスタッフ以外には。
『ほぅ、俺の姿が見えたか。という事はもしかして、別の世界の住人か、いやこの場合はお前も仮面ライダーなのか』
ショウマは、フブキの隣にいた人物が笑みを浮かべながら、答える。
「えぇ!俺の事も知っているの!えっと、あなたは一体」
「しょっショウマ君、その、人は一体」
『俺か?まぁ、今は神様をやっているんだ』
「神様か?えっ、でもなんでフブキさんの隣に?」
「神様!えっ、本当に待って!ショウマ君!その人は一体!」
『俺も最初はびっくりしたがな、けれど彼女がコンが生まれ変わった姿だと知ってな。思わず見に来たんだ』
「へぇ、けれど、そのコンって誰?」
「私はその神様ってのが気になるんだけど!!」」
『そこは秘密だ、まぁ本当だったら、実体を持って、応援したかったけど、俺が実体化したら迷惑がかかるからな。花だけ贈らせて貰った。その帰り道でな』
「そうだったんですか、それじゃまたねぇ!」
「待って!えっ、その神様って本当に、どうなっているの!」
困惑を隠せないフブキを余所に、神はそのまま立ち去っていった。
「よしっそれじゃ、俺もスタッフとして頑張るぞぉ!」
「待ってぇ!お願いだから、さっきのどういう意味かだけでも教えてよぉ!!」
ショウマは、その後も、何事もなく去っていた。
だが、フブキだけは残された謎だけに思わず叫んでしまう。