ライブホールが紫と銀の光に染まった。スクリーンにはオープニング映像が流れ、ファンの歓声が天井を突き刺す。
「これが、ライブ」
そう、ライブスタッフとして、働いているショウマにとって、それは新鮮だった。
会場に、一度、入った事はあったが、その時は戦いの為に入った為、実際にどんなライブが行われるのかは分からなかった。
スタッフ室を後にし、ショウマは搬入口の扉に手をかけた。その時、ふと視界の端に黒い影が動いた。照明区画の死角で、誰かが荷物を下ろしたまま佇んでいる。
「あの人は……スタッフさんかな?」
好奇心からではない。長く戦っていた勘が警鐘を鳴らしていた。ショウマはゆっくりと足音を忍ばせ、非常階段を一段ずつ上がっていく。
照明ブースの天板から降り注ぐ青いスポットライトの下。黒いジャケットを羽織った若い男が立っていた。
その様子を陰から見ていたショウマは、その男の行動を見ていた。
そして。
「っ」
服を捲り、それを取りだした。
同時に、男の姿は人間からグラニュートの姿へと変わっていた。
「へへっ、やっぱりこういうライブならば盛り上がっていて、上質な闇菓子の材料が大量にあるじゃないか」
そう、動物の狐を思わせるグラニュートは、そのままライブ会場の客達を吟味している。
それが分かった瞬間、ショウマはすぐに立ち上がる。
「待て」
ショウマは、そのまま声を出し、グラニュートを睨む。
「ちっ、まさかっ人間がここに紛れ込んでいたとはな」
「・・・お前、ここの人達を闇菓子のスパイスにするつもりか」
「何だ?それを知っているという事はお前も同じバイトか?だったら、どっか行け!ここは俺の縄張りだ!それ以上やるんだったら「させないよ」あぁ?」
グラニュートの言葉。
それを聞いただけで、既にショウマの行動は決まっていた。
服のジッパーを開き、剥き出しになったガヴ。
それは、ショウマが普通の人間ではない証。
そして、グラニュート達にとって、そのガヴは。
「てめぇまさか赤ガヴ!」
「ここは、ラプラスちゃん達の舞台だ!貴様なんかに邪魔させない」
同時にショウマは、ゴチゾウの一体を手に取る。
『グミ!EATグミ! EATグミ!ガヴ……ガヴ……』
ショウマがゴチゾウを装填すると共にレバーを回し、ゆっくりと構える。
それと共に溢れるグミは、ショウマの周囲を舞うと。
「……………変身!」『ポッピングミ! ジューシー!』
鳴り響く音声。
同時にショウマは仮面ライダーの姿へと変わる。
「ちっ、邪魔をしやがって!」
それと共に、グラニュートは瞬時に剣を出現させる。
そのまま赤ガヴへと斬り掛かる。
同時に赤ガヴもガヴブレイドを鞘から抜き放つ。
「ふんっ!」
赤ガヴは片手で弧を描くように刃を滑らせた。その動きは流水のように淀みがない。
刃同士がぶつかる刹那、白銀の閃光が閃いた。
甲高い金属音と共に火花が噴き上がり、両者は弾かれるように後退する。
「ぬぁっ!」
グラニュートが唸る。だがその傷は浅い。即座に再度踏み込み、乱撃を繰り出した。
鋭い斬撃が雨のように降り注ぐ。赤ガヴはガヴブレイドを盾代わりに使いながら受ける。鍔迫り合いが十数回続いた末に──
ガキンッ!
「絶対にライブを中止させない!」
激しい火花が舞い散る。赤ガヴが振り下ろす刀がグラニュートの肩を掠めた。
「くっ!この野郎!」
グラニュートが返す刀で胴を薙ぎ払う。赤ガヴは身を捩って回避するが、わずかに装甲に傷が入った。
互いの呼吸が荒くなり、戦いは佳境を迎えていた。
次の瞬間——
「えっ」「なっ」
足場となっていた鉄骨が悲鳴を上げる。戦闘の衝撃で脆くなっていたのだろう。ミシミシと軋む音を立てながら折れ落ちていく。
それと共に、俺達はライブ会場に落ちてしまう。
「あっしっしまった?!」
それと共に俺は顔を青くしてしまう。
当然だ。
ここで変身している所を目撃すれば。
「どうしようどうしようどうしよう!」
俺は内心で叫ぶ。
(あわあわあわあわあわ)
内心で叫ぶだけだ。
変身をしている以上は声に出すことすらできない。
俺は焦ってしまう。
「おいおい!あいつ!突然現れたぞ」
「えっえっ?あれって?」
周囲にザワザワと声が広がる。