ZZZ×ARMORED CORE 6 作:ジョシュア・オブライエン
再びアーキバス・コーポレーションにやってきたC4-621こと”独立傭兵レイヴン”。
目的はただ一つ。任務でルミナスクエアにて開催されるオークションに出席できない陰険オールバックメガネの企業戦士V.Ⅱスネイルから招待状を奪いに来たのだ。
受付に居たV.Ⅷペイターに案内してもらいスネイルのデスクまでたどり着いた。
「……。何故ウォルターの猟犬である貴方が私の目の前にいるのです?」
「単刀直入に言う。ルミナスクエアにてTOPSの開催するオークションの招待状をよこせ。「NO」と言ったなら「ルミナスクエアの周囲で讃頌会と戦闘できるかも」とフロイトにチクる。」
「……。いいでしょう。私はヴェスパー、アーキバスです。オークションのチケット如きでフロイトの暴走を阻止できるのならくれてやりましょう。」
スネイルはそう言って、丁寧に作られている一枚の招待状をデスクから取り出し、621に渡した。
『安心してください。これは本物です。レイヴン。』
エアのお墨付きが入った。確実に信用できる代物だろう。
「……確かに本物だ。じゃあな。」
そう言ってアーキバスを後にした。
◇◇◇
オークション当日。
621は非武装のAC*1を装着してルミナスクエアのVIPラウンジへと向かった。
なお、知能機械人扱いされ、参加に問題なかった。
生身だとガキ扱いされ門前払いだっただろう。
少し先を進んだ後にアキラとリンこと「パエトーン兄妹」を見つけた。
「わあ、さすがVIPラウンジ…なんかこう、ラグジュアリー…だね!ちょっと早く着いちゃったかな、ライカンさんたちはまだ来てないみたい…お兄ちゃん、先にここを見て回っとく?お高そうなスイーツに飲み物もあるし…えへへ」
リンは完全に浮かれていた。
V.Ⅷスウィンバーンが仮にここに居るならば「ええい!任務なのだから働け!指導だ!指導!」と盛大にキレていただろう。スタンバトン振り回しながら。…スタンバトンは戦闘しか振らないか。
「──どうか、お願いします……! あの品を、競り落とすのを手伝って頂けませんか!?」
同じ部屋から、女性の声が聞こえた。
声がした方を向くと、何らかの種族のシリオンの親子が、室内にもかかわらず日傘を差しながらソファに座っている謎の少女に向かって何かを必死に懇願している。
「もう他に方法が無いんです……夫の遺品を……どうか……!」
「虚言……欺瞞……背反……」
白黒のツートンで纏められたゴシック調のカジュアルドレスを着こなした少女はそう言いながらこっちに向かってきた。
621は心配になったのでブーストキックかルビコン神拳の態勢に入る。
「迷霧が立ち込め、真相は底知れぬ幻の中──」
その目はアキラとリンを真っ直ぐ見つめていた。
「―――見つけたのです。運命の人。」
あっ――こいつはオーネスト・ブルートゥぐらい信用できない奴だ。出会った傍から「運命の人」とかアイツの「ご友人!!」と同じレベルだ――と621は思った。
「運命の人って...なに?久しぶりに聞いたよ、そんな懐かしい口説き文句....」
「言葉で表現できることには限界があるのです。今のあなたたちに理解できないとしても、それは普通のこと―――すぐにわかるのです。わたしが何を言わんとしているか....」
「――おっ、お嬢さん――私を詐欺師だと疑っているのはわかっています。でも....あれは本当のことなんです!あのコレクションは私の夫が遺したものです。生活が苦しくて、質に入れざるを得ませんでしたが……誰とも分からない人の手に渡ってしまうところをただ見ているのは、耐えられないんです……!だからどうか、あれを競り落とすのを手伝っていただけませんか……!」
白い髪の母親と見向けられるシリオンの女性がそう説得を続ける。
「あのコレクションには、実は傷がついています。競り落としたあと、裏で手続きをする際に運営へ指摘してください。そうすれば出品そのものが無効となり、質屋へと戻って行くでしょう....あなたがお金を払う必要もありません!もちろん手間賃として、いくらかお支払いいたします...!多くはありませんが、私の用意できるすべてを....だからどうか...!」
「ママ、泣かないで...」
少女は冷静な目で見つめる。
「あなたのお話が事実だとして、そのために来たわけではないのです。第一わたしとなんの関係が?あなたの不幸になろうと、わたしの知ったことではないのです」
「お嬢さん、そんな...お金に困っているように見えないのに、どうしてそこまで冷徹になれるんです...!お隣にいらっしゃるお上品そうなご友人方も、きっとそう思ってらっしゃいますよね!」
急に流れ弾が飛んできた。
こういう時どうするか621は知っている。
思いっきりしらばっくれてスルーするのだ。
アーキバス、ベイラム、シュナイダー、ファーロンといった大企業たちに借金しては返済せずに踏み倒している”独立傭兵ノーザーク”を何度も撃破し続ける中、621は酷く痛感した。
人に金を借りようとする奴にろくな人間はいない。
「ど、どうか……私の話を聞いていただけませんか? 出来る限り、お礼はいたしますので……!」
「間もなくオークションが始まるのです。どうやってここへ紛れ込んだのか知らないですけれど……それ以上粘るなら警備員へと突き出しますよ? あなたの子どもも一緒に」
「…………っ」
「ママ……」
女性は、歪んだ表情でこちらを見つめながら子供を連れ、その場を去った。
――少々重たい雰囲気の中、こうしてオークション第一部が始まった。