ZZZ×ARMORED CORE 6 作:ジョシュア・オブライエン
Chapter EX:BREAK TIME!
C4-621こと”独立傭兵レイヴン”。今日は依頼ではなく個人的な私用で外出していた。
――事の発端は”レイヴン。お出掛けに行きましょう。”、とアンビーからメッセージが届いた。
彼女曰く、邪兎屋は今日の仕事はないとか。
一度ウォルターに、今日の仕事はないか、と聞いたところ何もなかったようだ。
早速、集合場所である、ルミナスクエアのグラビティシアター前へと向かった。
なお、エアからえげつない程の怨嗟の目を向けられた。口八丁でやり過ごしたが、零号ホロウのどこかから”技研の遺産”を持ってくるつもりだったらしい。
◇◇◇
621は今回また生身で外に出ている。やっぱりACで外出すれば悪目立ちするし、”独立傭兵レイヴン”に逆恨みする人間もいるにはいる。
正体を隠した方が賢明だろう。
しかし、それはそうとして……
『レイヴン……今回は許します。正妻の余裕ってやつです。』
さっきからエアが怖い。
「あ、予定ちょうどね。事前に席は予約しているから入りましょう。」
そう言うアンビー。
――今回の彼女の格好は少し前のサクリファイスの一件の時のシルバー小隊の制服とは異なり、ショート丈の白インナーにオフショルダーの黒パーカーを羽織って、胸部と両腕は黄緑色のプロテクターを装着した普段のスタイルであった。
「――今日見るホラー映画は演出、ストーリー共に高評価なの。確か星は8.1。今日は貴方と映画を見るのを楽しみにしていたの。上映時間に間に合わなくなるわ。早く行きましょう。」
アンビーが621を引っ張って早歩きで歩いて行った。
エアが声にならない声を発して盛大に嫉妬していたが、そっとしておこう。
◇◇◇
上映が終わり、映画館から出た二人と、波形一人。
「……あの映画、どうだった?」
「……。」
C4-621は”映画”どころか娯楽に触ったことがなかった。
彼の日常は基本的にACを駆って任務を遂行するか、ACの機体構成を組みなおすか、アリーナでランキング戦するかヴェスパーやレッドガン、RaDの連中に顔を出すことしかしてなかった。
――まあそれはそれで楽しかったが。
「…………悪くなかった。ありがとう。」
「……なら、今度もう一度観に行きましょう。」
――アンビーがおもむろにスマホを取り出す。
「――もう昼ね。美味しいハンバーガーが売っている所を知ってるの。ついてきて。」
◇◇◇
――六分街、雑貨店「141」
アンビーと621は、まさかの雑貨店に向かった。
しかし、本当にハンバーガーが売られていた。事実は小説よりも奇なり。
「……他にもあるけど、どれにする?」
アンビーが621にそう聞くが、分からないのでおすすめを選んでもらうことにした。
――強化人間施術のせいで味覚が消失していることを伏せて。*1
アンビーはサクラ味とかいう聞き慣れない期間限定のハンバーガーを買いに来たようだが、621は彼女のおすすめである、一番スタンダードなハンバーガーを買ってもらった。
――彼らは一旦、食べる場所を求めて、雑貨店「141」を後にした。
◇◇◇
ようやく、食事出来る場所に着いた一行は公園のベンチに座り、ハンバーガーを食べながら話していた。
「……サクラ味のハンバーガー大丈夫なのか?」
「うん……確かに桜味は聞き慣れないけど……”この世界においしくないハンバーガーなんて存在しない。”これは私の信条。」
621が彼女にそう聞くが……621はまずサクラ味がなにか全く分かっていない。桜の木の幹の味でもするのだろうか。
「――ところで、レイヴン。貴方は
別に621は辛くも何ともないので全て正直に話すことにした。ルビが違う気がしたが気にしない。
恐らく、自分は数十年前にスラムで強制的に強化人間施術を受け、挙句の果てに失敗作の欠陥品扱いされ冷凍保存されウォルターと出会う前までずっと”眠って”いたこと。
自我は最近発現したもので、強化人間施術を受ける前の記憶もない。
そして自身の本名の”C4-621”は初めて人間として呼んでくれた名前。もう一つの名の”レイヴン”は自分自身の証明であるもの。
それを一言一句濁さずに話した。
「…………そう、だったのね。――レイヴン、何かあったら邪兎屋に声をかけて。みんなもあなたを助けてくれると思う。」
「割と助けてるの俺のほうが多い気がするが……。」
「ふふっ。――今日はありがとう。機会があったらまた一緒に行きましょう。」
――そうして一行は解散となった。
◇◇◇
『…………レイヴン。私は終始空気でしたよね?しかもほとんどデート……もう私は貴方しか頼れないのです。どうか……お願いします。私を置いて行かないで――』
またエアがヘラった。捨てたりなんかしないのに。大切な存在*2なんだから。