オーバーロード 朽ちた大墳墓の超越者 作:金叉の猫
モモンガたちは王国の動乱を法国に丸投げし、そのままエイヴァーシャー大森林に向かった。法国へ余計なタスクを与えてしまったために肝心要の最前線へ向かった。本命の戦争の手が止まっていたら困る上に、王国のことにかかずらってナザリックが貸し出したアイテムがエルフの国に奪われるのも御免被る。
そういうわけで双方にバレないように魔法をかけながら前線の様子を見に行った。戦争そのものに介入するつもりはなく、もしナザリックのアイテムがあったら回収しようくらいの心持ちだ。あとはエルフ国の国王がとんでもないクズだとは知っていてもエルフそのものの生態や事情は知らないと思って勉強しに来たのだ。
戦線の維持をしているのは火滅聖典と一般兵団。一般エルフの相手は一般兵団が、エルフ王の子供と思わしき幼いながらもレベルの高い戦士の相手を火滅聖典が行っているようだった。
戦線はクレマンティーヌに聞いていた想定からそこまで変わっておらず、少しだけ法国が前進しているようだった。特に火滅聖典の踏ん張りは凄く、エルフ王の子が複数人居てもむしろやり返している場面が多い。レベルがほぼ同レベルということもあるが、彼らは国によって教育された特殊聖典の一員である。戦争のノウハウを熟知し、どういった時に攻めてどういった時には撤退するかの判断がずば抜けている。
そのおかげで被害も少なく、少しずつながらも前進しているようだ。まだ幼いながらも戦況をひっくり返すためのユニットとして配備されるエルフ王の子と、何年も戦い続けている熟練の戦士では戦争における働きに差が出るものだ。タレントという予測不可能な奥の手があるかもしれないが、それを加味しても経験の差で対処されてしまう。
エルフ王の子は言うならば、レベリングだけ手伝ってもらって親に武器をプレゼントされた姫プレイをしている初心者だ。同じレベル帯とはいえ、自分の能力をしっかりと把握し、適切な装備を整えて指示を受けながら戦う集団にたった一人で敵うはずもない。
これならいつかはエルフ王の子が全滅し、主戦力がいなくなって最前線は瓦解するだろう。エルフ王がいかに種子をばら撒こうと戦場に出るまでには育成に時間がかかる。エルフは長生きだからこそ幼年期が長く、そうなると戦士として育つまで何十年かかることか。
この調子で火滅聖典がエルフ王の子を狩り続ければ、戦況は一気に変わる。戦力も武器も無限ではなく、むしろ法国の方がナザリックから借り受けているために潤沢だ。火滅聖典の装備はどれもこれもモモンガの見覚えのある装備で、聖典全てがその装備をしているために装備の質は圧倒的に法国の方が上。
エルフ王は八欲王の子らしいが、ナザリックから得た物は何もない。八欲王が持っていった武具は全部シュレッダーにぶち込まれてユグドラシル金貨へと変わり、価値のない武器は持ち出さなかったために子供へも継承されることもなかった。そういう訳で装備の質が明らかに違う。
ユグドラシル産の装備はこの世界では何でも一級品だ。どうやらものぐさなギルメンがいたようで、もしくはダンジョン攻略の褒美のつもりで宝箱にでも配置していたのか八階層までにそれなりにユグドラシル産のアイテムを配置していたらしい。それらが法国に流出し、国宝としてほとんどの武具を使い回しているわけだ。
あんな物が国宝ねえ、という感想を持ちながらモモンガはクレマンティーヌに聞く。
「なあ、ティーヌ。火滅聖典が装備している防具とかって、やっぱり扱いはかなり良いの?アレ、大事にされてる?装備したまま死んで敵の手に渡ったらヤバい?」
「えっと、結構ヤバいと思うよ?大体の装備が能力上昇の効果持ちだから、数はたくさんあるけど火滅聖典だからこそ貸し与えられている物だし……。一般兵団には絶対与えられないし、他の聖典で借り受けられるのは陽光聖典か、土塵聖典の一部くらいじゃない?」
「そうなのか……。あれ、ほとんど初心者応援セットなのに」
「え?初心者?」
「ティーヌには話してなかったっけ?プレイヤーにとってはレベル30なんて初期の初期なんだよ。レベル100が当たり前。この世界の英雄級は、マジで初心者と思われる。火滅聖典がありがたがるくらいのバフが付いた装備なんてその程度ってこと」
プレイヤーが隔絶していることは教育で知っている。強さは桁違い。強さだけなら同等の従属神を複数従えている。多種多様の、それこそ神器としか思えない至宝を数え切れないほど所持している。この世界にはない知識を持ち、文化を一気に加速させた。
教会で習っていた頃は嘘くさと思っていたクレマンティーヌだが、ナザリック産の武具を見て至宝をたくさん持っていることは信じた。そしてモモンガに会えたことでその常識ハズレっぷりを直に思い知った。現地民からすれば神として崇めたくなるような存在だ。
だが詳細は法国でもあまり知られていない。レベルの話はあったが、どのレベル帯がプレイヤーにとって基準になったかという話は伝承にも残っていない。
レベル100からすれば30程度の争いは陳腐な物だろうと思ってはいたものの、初心者とまで断言されたのはクレマンティーヌとして衝撃だった。人類圏で数えるほどの戦士しか到達していない英雄級は、プレイヤーにとって児戯でしかないということだ。
「まあ、初心者セットというだけあって序盤ではかなり使える武具ではあるんだよ。ただ俺たちには入手手段が多すぎて在庫が有り余ってるなんてよくあることだ。アイテムボックスの整理が苦手な人なんて売却もせず死蔵させてるなんてことはたくさんあるからな。俺もその一人だし。レイドイベントのランダムドロップで毎回のように出るし、課金ガチャのハズレにもあるから見たくないって思われるアイテムセットなんだよな。これが価値観の違いなんだろう。ぶっちゃけティーヌほどになるとあのアイテムだと色々不足してるだろ?」
「まあね。漆黒聖典として活動するならあれだと弱いのはわかる。与えられた物も基本良い物だったし」
「その良い物だって、俺たちや八欲王からすれば絶対に手放したくない物って代物じゃない。だから俺だって我慢して貸し出してる訳だし。俺が初対面の時に装備してた奴があるだろ?あれが最高装備だとしたら漆黒聖典で使っている物もそれなりに落ち着かないか?聞いた話だと何でかワールドアイテムを二つとか運用してるっぽいけど……」
「確かに究極の至宝二つ以外と比べたら雲泥の差があるかも。あと並ぶとしたら番外席次のメイン武器かな?アレはスルシャーナ様が実際使ってた武器っぽいし」
「プレイヤーのメイン武器なら最上級クラスだよ。ああいうのとワールドアイテムに比べたら他のアイテムなんてなぁ……」
高みにいる人物は最高峰の武具で固めているので、他のアイテムは微妙に思えてしまうという現象だ。クレマンティーヌだって自分が使っている武器と比べたら冒険者の下位が使っている剣などはナマクラだろう。それと同じ現象がプレイヤーと現地民で起きているだけ。
法国の人間で、かつ最上級の実力者とワールドアイテムを知らなかったらモモンガの言葉に憤慨していたかもしれないが、クレマンティーヌはその最上位を知っていたために落胆はしなかった。それだけプレイヤーとの差が激しいのだ。
「ああいうのはたとえ紛失しても俺は気にしない。ただギルメンが作った試作品の微妙な武器とかがナザリックから貸し出されてるのが問題なんだよなあ。ティーヌが返してくれたような武器が他にもあるかもしれない。それは返してほしいんだ。思い出を思い出せなくても、それはモモンガとして大事にしていた物だから」
「今回はそういうアイテムの回収ってわけね?」
「そう。戦争のどさくさに紛れて回収する。俺が回収すれば法国も紛失したと思って深く言及しないだろう」
「何がどさくさに紛れて、だって?モモンガ」
「……お前、マジで俺のストーカーか?ツアー」
二人で隠れていたはずなのに突然聞こえた男性の声。低レベルの存在には絶対にバレない魔法を使ったはずだが、この世界の規格外には察知されたようだ。
伽藍堂の白銀の鎧。操っているこの世界最強の竜王は呆れたような口調で話し始める。
「ここだけ不自然に何もなかったからね。何も感じないというのは、強者が隠れている証拠なんだよ」
「そんな感知ができるのはドラゴンくらいだ。俺の目的がアイテムの回収だってお前も知ってるだろ?人類の歴史に俺は介入していない」
「僕は君が外に出ていることさえ初耳なんだけど?」
「報告の義務はないはずだ。人類への過度な干渉をしなければ自由って契約にしたのはお前だぞ」
「ぷれいやーの力は強大すぎるんだよ。君が外に出ただけで影響が出る可能性が高い」
「だからずっと地下に籠ってろってか?ふざけんなよ、クソトカゲ。お前との義務は果たした。次の揺り返しで極悪な存在が来たのなら協力もしてやる。だが外に出てアイテムの回収も許さないのは契約と違う」
「こんな戦場に出て来てたら怪しむのも当然だろう。君が加わった方が勝ってしまう。そうならないように釘を刺しに来た」
「ふん。既にナザリックの物が流出してる時点で状況は変わってるだろうが。二十年お前のわがままに付き合って、八十年くらい大人しくしてたのに信用してないとか、人間嫌いもいい加減にしろ。俺はどっちも嫌いなんだよ。潰すなら最初の旅でどっちも消している。それくらい苛立っていたのに我慢したんだ。お前がかけた制約だ。それを守ってるんだから散歩くらい大目に見ろ」
太々しく接してきたツアーに、モモンガもそれ相応の態度で返答をする。
モモンガが転移してきた当初、いきなりやってきたツアーは世界の状態とナザリックの状況を一方的に話し、ナザリックの物品の貸し出しとモモンガがナザリックに閉じ籠ることを唐突に告げてきたのだ。
勝手にそんなことを決められて、最初は温厚だったモモンガもキレた。ナザリックの物を簒奪されて、その泥棒に復讐もできず、カルマ値がマイナスでおそらく異形種としての精神に呑まれるから外出するなと言われて納得する人間がいるものか。
法国へのレンタルのことも、スルシャーナが渡そうとしたワールドアイテムのことも告げず、一方的にそう告げたのだ。モモンガのカルマ値が極悪だったこと、レベル100とはいえその装備などからスルシャーナよりも強いとツアーの本能が告げていたこと、そして大事にしてきたはずのナザリックの惨状を見て豹変したこと。
これらからツアーはモモンガを、今回のプレイヤーは外れだと判断したのだった。
その結果、モモンガとツアーは戦った。第八階層で戦い、結果だけで言えばモモンガが負けを認めた。だがツアーからすれば死を覚悟した死闘だった。そこで本当の強さも知ったからこそ、今も警戒を解いていない。
だが、このままでは手綱も握れないと思ったのでツアーはモモンガへ外の世界を案内した。当初はその大自然の優雅さに感動していたのだが、途中からは感情を失ったようにツアーの後に着いてきただけ。
その感情の変化をツアーは掴みかねていたから今もこんな頓珍漢な疑いを隠せない。竜の視点で巡る世界、苦しんでいる人がいるのに手を出せない苦悩、人間ではなくなっていく感覚。徐々に失われるユグドラシルやリアルでの記憶。それらを一気に浴びて、人間のモモンガが耐えられるはずもない。
二十年の旅を終えて、ツアーはようやくモモンガの安全性を信用して人間へ変身できるワールドアイテムを渡した。お詫びの品なのに渡さなかったことも含めてモモンガはまたキレたが、ツアーからすれば信用もできないプレイヤーにワールドアイテムを渡すことなどできないのだ。効果はそんなことはなくても、内包している力はまさしく世界に匹敵する。そんなアイテムをプレイヤーがどう悪用するのかわかったものではない。
そうして人間性も若干無くしたモモンガは、改めてツアーを嫌いになった。ツアーもモモンガを信頼はしていないのでこうして姿を見かけたらやってくるのだ。
「……本当に戦争に介入しないね?」
「くどい。お前は俺をカルマ値で判断しすぎだ。スルシャーナもオーバーロードだったんだからカルマは確実にマイナスだ。そいつは友と呼んで同種の俺は危険人物か?ああ、俺は国も人間も救ってないよ。だがな、人間も殺してないだろ。お前の感覚だけが世界の真理だと思い上がるなよ、世界の支配者。俺たちはプレイヤーの前に人間だ。八欲王なんてほとんどカルマ値は中立から善なのにあのザマだろうが。お前は俺を人間として見てないんだよ。お前がこの世界の守護者として、自分でルールを決めてるせいで、そのルールでアウト判定になったら何もかもダメだとするのは、終末機構としては間違ってないんだろうさ。そうやって自分の首を絞め続けろ。お前に負けたから俺は一応お前との約束は守ってやるが、お前が死んだらナザリックの物は何がなんでも返してもらうからな」
「そういうところが信頼できないんだ……。今更僕の価値観は変えられない。けどこの戦争に介入しないで、ただの冒険者として過ごすなら見逃すよ。じゃあね」
ツアーは無理矢理納得したのか、遠隔操作の鎧を飛翔させて帰っていく。ツアーが帰ったことでクレマンティーヌは大きな息を吐いた。近くにいるだけで感じる威圧感を、彼は隠していなかった。そのせいでレベル85の威圧をまともに受けて彼女は生きている心地がしなかったのだ。
近くの木に背中を預けて、脱力する。
「あれが真なる竜王の端末?本体はあれより強いって頭おかしいじゃん」
「そう、頭がおかしいんだよ。竜としての摂理を守ることしか考えてない。アイツがああいう態度を変えずにプレイヤーに会い続けたら、本当のハズレを引いた時にこの世界は終わるってわかってないのが致命的だ。多分だけど、俺たちのギルメンがそれこそ10人くらい来てたらツアーを殺してたと思うぞ?」
「え、マジ?ナザリックのプレイヤーってそんなに野蛮なの?」
「野蛮というか、NPCのために作った装備が盗まれて、ナザリックもかなり荒らされて、武具は勝手にレンタルされてナザリックから出てくるなって言われたら確実に反発しただろうな。俺たちプレイヤー、ゲーマーってそういうものだから。人数が違ったらアイツの対応も変わるのかもしれないけど、俺と同じ方法を取って次のプレイヤーが大人しく言うことを聞く保証はほぼない。人間の価値観もわかってないし、ゲーマーの価値観もわかってないんだ。まあ、ゲーマーの価値観を分かれって言うのがこっちの世界の存在には無理なんだろうが……。とにかく、アイツのやり方は本当にまずい。スルシャーナたちがハズレ値だっただけで、八欲王の方が俺たちの標準まであるからな」
モモンガはツアーの旅に同席したために、ツアー目線の話ではなるが実情は聞いている。その中で思ったことは六大神は自分たち以外に手を出した余裕のある人という認識で、八欲王はゲーマーとしてこの世界で生きたんだなと思うだけだ。
モモンガも全盛期のナザリックで来ていたらどうだったか。慎重なことは変わらないために世界のことを調べて、その上でどうするか決めるだろう。いきなり多種族滅亡なんてことはしないが、世界統一くらいしようぜ、とギルメンと一緒にバカな話をしていたかもしれない。
そう盛り上がっているところにレイドボスっぽいドラゴンがお前らは危険だから引き篭もってろと告げてきたら喧嘩を売る。これはギルメンではなくプレイヤーなら誰しもがやりそうなことだった。
八欲王が暴れたのも、異種族排斥を主題と掲げつつ、当時の竜王たちが煽ったことも原因だと聞いた。つまりはどっちもどっちなことをしているのに、歴史は勝者が作っているわけで。この世界の先住民なのだから竜王が正しい、とは言い切れないのがこの数百年の歴史だ。
そもそもこんな風にプレイヤーやギルドがこの世界に現れるようになったのはツアーの父親の始原の魔法のせいだという。そんな力を使わなければプレイヤーがこの世界にやってこなかったのだから、竜王が蒔いた種を自分たちでどうにかしようとして滅ぼされかけて、他の生物にも被害が及んだだけのこと。
そんな歴史も知ったためにモモンガは旅の途中で絶望したのだ。
「さて、エルフの国の宝物殿にでも侵入するか。ナザリックの物があるかもしれないし」
「それは戦争への介入じゃないんだ?武具の簒奪は法国への援助行為じゃない?」
「法国が負けて奪われた物を第三者が、本当の持ち主が取り戻すだけだ。ナザリック以外の物は奪わないし、別に良いだろ。法国としては紛失。エルフの国は戦利品の盗難。俺としては手元に帰ってくる。エルフの国が損をするかもしれないが国王は八欲王の子供なんだろ?親が盗んだ分、子供に被害が行くだけだ」
そんな理論武装をしてモモンガたちはエルフの国の首都に向かう。その途中で十三英雄の話をクレマンティーヌにした。モモンガもツアーから聞かされただけなのでそんなに詳しくないが、世間的に知られている物語とはだいぶ違うようだ。
魔神と呼ばれる、制御を失ったNPCの暴走。それを止めるために各国の英雄が集結したとのことだが、そこにプレイヤーが二人とツアーも参加していた。だがその内のリクという名前のプレイヤーは初心者だったのかすぐに脱落。暗黒騎士とツアーが主に倒したようだ。
それもそのはずで、NPCは趣味や生産職、後方支援役での作成をしていない限りは戦闘用のレベル100。そんな存在を現地民が倒せるはずもない。できたのはサポートか、それこそあまりレベルを振っていなかったNPCを倒すくらいでメインとなったのはツアーと暗黒騎士、それと法国が出した当時の最高戦力だけのようだ。
実際にはレベル100のNPCは2体くらいしかいなかったようだが、それでも苦戦したようだ。リーダーになると思われていたリクはレベル50くらいから経験値になるような相手がいないためにそこまで強くなれずに死亡。現地民の英雄もその程度のレベルだったようでリクが死んだことで大半が戦線離脱。
結局は暗黒騎士とツアーでほとんど倒し、その暗黒騎士も最後は死亡したという。
これらの出来事からツアーは法国には少し温情を与え、法国もイビルアイという吸血鬼が暴れない限りは見逃している状況だ。
「まあ、十中八九、魔神を産み出したのは竜王だけどな」
「え、なんで?」
「魔神、NPCはギルドと一緒にこっちの世界にやってくる。それで高レベルのNPCを複数作れるってことはそこそこのギルドだったんだろう。で、ツアー曰くNPCとギルドとプレイヤーがセットじゃなかったことはナザリックが初めてだったらしい。ギルメンかギルド武器か知らないが、どっちかを破壊してNPCが暴走したんだろう。それの尻拭いに単独転移の暗黒騎士が駆り出されたわけだ」
「戦場はカッツェ平野だったって聞くけど……」
「ネコさま大王国ってギルドがあったんだけど、多分そこがやられたんだ。猫に限らず、さまざまなモンスター系の外装を作り上げるのが有名なギルドで、他のギルドからも外装データの依頼を受けていたようだ。蟲の魔神とかはそういう他ギルドとの契約で作ってたNPCの一種だろうな」
「詳しいね?」
「あまり交流がなかったはずなのに、ナザリックに救援要請があった。ウチの女性ギルメンが何度か訪れていたようで連絡先が残ってたらしいんだ。そのログはおよそ280年前。時期的にも一致する。カッツェ平野ならナザリックもあったから距離的にも近い。ウチに防衛力を求めるのも、ウチの強さを知っていればおかしい話じゃない。ネコさま大王国は趣味ギルドで強くなかったらしいからな……」
ツアーからの話を聞いてナザリックに戻ってきた後に何か残っていないかと摩耗していった記憶を取り戻すためにナザリックの全てを引っ張り出して見付けた救援要請だった。ツアーは英雄譚のように話していたが、その救援要請を見て竜王と名乗るドラゴンに襲われそうだという文面を見て、モモンガは更に絶望した。
弱いプレイヤーや、竜王の意思にそぐわないプレイヤーやギルドは問答無用で消されるのだと。それがこの世界のルールだと受け入れられずに、モモンガはツアーに対抗できるようにとさまざまな技術を学び始めた。それが引き篭もっていた期間のこと。
ツアーの言うことを守っていると見せかけるのと同時に、どうにか対抗できるだけの力を身に付けないといつかは殺されると思った。それと同時に一向に良くならない世界にキレて、武器の返還をツアーに要求したが通らず。
何十年も生きた結果、人よりは生きたのだからいつ殺されても良いかという諦観も湧き上がり、クレマンティーヌがやってきたことを契機にアイテム回収の旅に出た。そんな彼女と恋仲になるとは、最初は考えもしなかったことだ。
黒騎士の最期だって怪しいものだ。英雄の最期がぼかされている英雄譚なんて話として三流どころの話ではない。その話し手のツアーがぼかした時点でモモンガはドラゴンを一切信用しなかった。
二人は戦場を避けて歩き、エルフの集落を訪れて彼らのエルフツリーの上に暮らすという生活様式を確認して首都へ向かった。適齢期の女性の内優秀なタレントを持っていたり、それこそ強い人はほとんど首都へ連れて行かれて、エルフ王に嫁がされるらしい。
そうして自分の子だけ優秀に産まれてくるように仕向けて、一般兵の練度が低いとキレて、また女性を攫って。そんなことを繰り返しているのがエルフ国だった。統治機構は何も上手くいっておらず、エルフ王は君臨するだけで政治など何もしない。優秀な後継を作ることしか頭にないようだ。
そんな色々と終わっている現状を知って辟易とした後、二人はあっさりと宝物殿に侵入。そこで物色をしてナザリック産の物だけ回収して撤退した。撤退する前にクレマンティーヌが金貨をかなり物欲しそうに見ていたが、それは泥棒になるので控えさせた。
エルフ国での用事は済んだのでそのままもう一度戦場を確認して、法国有利な状況を見てもうすぐ戦争が終わりそうだと予想した。首都までの橋頭堡はもうすぐでできそうだ。
だがそんな折、王国で革命が起きると風の噂で聞いた。かの国の行く末が気になった二人は王国を脱出しようとして帝国に来ようとする一般人の護衛依頼を引き受けつつ、王国での革命を見に行った。
上から下までの大虐殺にモモンガはドン引きしつつ、法国の徹底っぷりに関心もした。これで国が良くならなければおしまいだというほどの大革命で、王国・帝国・法国全ての国が結果として利益を得るような終わりだっただろう。
ついでに王国から脱出しようとする八本指が帝国に向かっているという情報を得た帝国が冒険者・ワーカー・騎士団という戦力全てを投入してこれを殲滅。モモンガたちも参戦して、聖王国に一部が逃げたと聞いたので帝国が貸しを作るために聖王国へ情報を連携。
その結果当代の聖王が死亡したものの、八本指の本当の意味での駆逐を達成。聖王国には新たな聖王女が擁立され、人類国家は安定期に入ることとなった。