おお、我らがロックス船長よ   作:ヘビとマングース

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1:ゴミの島

 劣悪な環境で生まれ育ち、両親の顔よりも先にゴミを漁る術を覚えた。

 食べて平気な物と食べると体調を崩す物、その違いを自分の経験も込みで学習した。

 親でもない、見知らぬでかいおっさんに殴られ、奴隷みたいにこき使われて、生きるためには力が必要だってことも学んだ。

 

 前世の知識なんてものがあるから、子供の頃からこの環境でしか過ごしていなくても常に不満と怒りがあって、いつも納得できなかった。

 それでも俺は力がないから何もできない。多少の抵抗はもっとひどく殴られるだけ。

 

 殴られただけで死んだやつを何人も見てきた。

 ほとんどは子供だった。

 多少知恵をつけた大人はへーこらして殴られないように生きていた。そんな奴らですら気持ち悪くて許せない。

 ただそれ以上に許せないのは、何もできない自分じゃなく、偉そうにしてる大人たちだった。

 

 ある日突然、転機が来た。砂浜に打ち上げられてる見た目が気持ち悪い果実を見つけたのだ。

 その時ようやく、俺はワンピースの世界に転生していたことに気付いた。

 

 悪魔の実を食べた日から全てが変わった。

 ガリガリでヒョロヒョロのチビのガキが今まで偉そうにしてた大人たちをぶち殺したのだ。

 この環境を変えられるなら悪魔にだってなってやる。いや、むしろなりたくて仕方なかった。

 俺はその日、ようやく念願の悪魔になれたのだ。

 

 

 

 


 

 

 

 

「お前がこの国の王か? なんだ、ガキじゃねぇか」

 

 自分の年齢を正確に知らないんだが、多分か13か14くらいなんだと思う。

 その頃に島の外から誰かがやってきた。

 島全体がゴミに覆われてるような土地だ。アクセスは簡単だが見かけても普通なら誰も寄ってこようとさえしない。この島にゴミを捨てる船以外は。

 

「国なんていいもんじゃない。ここはゴミ島。いらなくなったものを捨てるだけの場所だ。物も人もいらないものだけがここにある」

「だがそのいらなくなった人間を集めてまとめてんのはお前だろうが。見栄えや実情がどうであれお前がやってることは間違いなく王の所業。噂は本当だったってことだな」

 

 なんか見覚えがあるような気はするんだが、誰だか知らない。でもモブにしてはあまりにも迫力があり過ぎる。俺の知らない原作キャラ……もしくは映画とかのゲストキャラか?

 とにかくそいつは、いきなり俺たちの島に現れて、いきなりベラベラ喋ってきた。

 

「チビの割に頭は回りそうだな。無自覚だろうが覇気も相当。悪魔の実も食ったって?」

「そんな噂が流れてるのか? どうでもいい……俺たちはただ生きてるだけだ。ゴミがあるなら捨てていけ。それがそのまま俺たちのメシになる」

 

「ずいぶんつまらねぇことを言うんだな。お前この島を気に入ってんのか?」

「気に入ってなんかねぇよ。でも外に出る船はないし、造れるような技師もいない。イカダなら自分で作ったことはあるがすぐ壊れた。溺れて死にかけたし……閉じ込められてるんだよ」

 

「あぁ~聞いてるだけでつまらねぇ。よーし提案しようクソガキ。お前はただ頷けばいい」

 

 妙な奴だった。少なくともこのゴミ島で生きてて出会えるような人間じゃない。

 ここに来るのはゴミを捨てる人間。それが海賊でも政府でもただの商船でもよかったが、島に上陸して俺が会うのは戦うまでもない雑魚ばっかり。

 

 こいつは違う。戦えば俺が勝てるはずのない相手だってのは向き合うだけでわかる。

 でも怖いとは思わない。

 ちょっとしたきっかけで襲い掛かってくるだろうなってことがわかる、悪人側の人間なのは間違いないんだが、不思議と俺はこいつの話をちゃんと聞こうとしていたからだ。

 

「お前はおれの船に乗って海賊になれ! この島よりでけぇ島の王にしてやるよ!」

「あんた誰?」

「おれの名はロックス! いずれこの世界の頂点を手に入れる男だ‼」

 

 ゴミ島の中にしかない、俺の世界が壊れる音がした。

 でもそれは嫌な音じゃなかった。

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