眩しい日が照っている元で第二偵察班は本社の敷地で
ランニングを行っていた。
「イチゴウ!ちんたら走ってんじゃねぇ!」
「もう無理…デスダ教官…」
デスダと呼ばれるいかにもゴツく
まさに教官といった風情の男が
スタミナ切れでヘトヘトになっているイチゴウに
怒号を浴びせる。
「よし!10分間休憩!」
デスダのその言葉で隊員達が一斉に
休憩し出す。
隊員達は水分を片手に談笑を始める。
「あぁ、地獄の30分往復ランニングが始まるよぉ…」
イチゴウが文字通り泣きそうに
なりながら呟いていた。
「お前はSVD担いでるだけだからいいが、俺なんかATロケット担ぎながらでの往復ランニングだぜ?」
バンダナがヘトってるイチゴウに呆れながら呟く。
「さて、次は往復ランニングか。」
デスダはファイルを持ち休憩している隊員達に
近づいていく。
すると
「デスダ教官ですか?幹部がお呼びであります!」
背後から一人のザコチュラが話しかける。
「この何の取り柄もねぇ偵察班に幹部さんが何の用だ?」
デスダが腕をくみながらダルそうに答える。
「ちっ。おい!イチゴウ!幹部が呼んでるぞ!行ってこい!」
「えぇ!?ボク何かやらかした?」
「知らん!とにかく行ってこい!」
「はーい…」
イチゴウはデスダに言われ重そうに身体を起こし
立ち上がってデスダに話しかけたザコチュラに
ついていき本社のビルへ入っていく。
「イチゴウでーす、入りまーす。」
イチゴウがそう言い
いかにも高級そうな扉を開け中に入る
「君が第二偵察班の班長だな?」
そうイチゴウに口を開いたのは
目の前の高級ソファーに座っている
ブラック・バードと呼ばれるこの会社の幹部で
平たく言えば全身が黒いザコチュラだが
何か言葉には言い表せない気迫と威厳を放っている。
「そーだけど何か用ですか?」
イチゴウが表には出してないがだるそうに答える。
「君を呼んだのは他でもない、偵察任務を頼みたくてな。」
「偵察任務?」
イチゴウがあっけにとられたように答える。
「まぁ、偵察任務といっても大した事は無いんだがな。隣の町の酒場を知っているか?」
「えぇ、まあ一応。」
「あそこはいわゆる賞金が掛かっている強力な妖魔の退治をハンター等に依頼しているギルド的な側面もある。
そこでだ、君達には賞金が掛かっている妖魔がどんな物なのかを聞き込み調査してほしい。」
「はぁ、わかりました。」
イチゴウはそう答え幹部の部屋を後にする。
それから第二偵察班は軽装甲機動車に乗り
山道を突っ走っていた。
「隣町の酒場で聞き込み調査だっけか?」
バンダナが座席にもたれながら呟く。
「ビールも楽しみですね。」
後部座席のザコチュラ達の
テンションが上がっていた。
「ちょっと。飲みに行くんじゃないんだから
そこはわきまえてよ?」
イチゴウが呆れながら運転していた。
軽装甲機動車は隣町の門を高速でくぐった。
その隣町はレンガ造りの建物が多く
それこそファンタジー物に出てきそうな町だった。
そして軽装甲機動車は酒場の前に勢い良く停車する。
「ついたよ。」
イチゴウがそう言うと隊員達は車のドアを開け
一斉に降車し酒場へと入る。
酒場はとても騒がしく賑わっていた。
妖魔の依頼を受け付けているからか
大きな剣を背負った男や
巨大なランスを背負っている者といった
いかにもハンターといった人物が多数いた。
「ここが酒場か。」
バンダナがそう呟く。
酒場は凄まじい英気に包まれ本当に賑わっていた。
「プフフ、笑っちゃうよね。」
イチゴウがクスクス笑いながら呟いた。
その笑いは何かを馬鹿にしているようにも取れる。
「どうした?イチゴウ。」
バンダナが尋ねると
「いやー、皆あんな大きな剣とか槍とか持っちゃってさー。攻撃効率も悪いし戦法も限られるし非常に戦略的じゃないなーって思って。」
イチゴウが尚も馬鹿にしたように笑いながら喋る。
「そういう事はあんまこういう場所で言うなよ?」
バンダナがイチゴウにそう注意する。
そして第二偵察班はテーブルについて
それぞれ思い思いの飲み物を飲みながら
話し合いを始める。
「皆、いい?
妖魔ってのは強力な奴が上になって成り立っている。
つまり、効率良く駆除を進めるためにはそれらの強力な奴らを倒すのが手っ取り早い。
まず、これからあそこの掲示板に貼ってある
強力な妖魔の詳細な情報をこの酒場中の人間から
集めるんだ。」
イチゴウが珍しくリーダーらしく隊員達に命令する。
「「了解」」
第二偵察班のメンバーは
飲み物を飲み干すと同時に席を立ち行動を始める。
「さて、まず情報を集めるにはカウンターに行くのが一番だね。討伐依頼も受け付けているし。」
イチゴウは酒場のカウンターに向け足を運ぶ。
しかし
カウンターには先客がいた。
イチゴウと同じ年齢くらいだろうか
黄金のように綺麗な金髪のセミロングと
サファイアのように青く透き通る瞳の持ち主で
なにより表情の豊かさが
彼女の明るい性格を物語っている。
その女の子は受付と喋っていた。
「ん?妖魔の討伐依頼を受けているのか?少し盗み聞きしてみっか。」
イチゴウが近くの柱に隠れ二人の会話に耳を傾ける。
「この討伐依頼を受けさせてくれない?」
女の子が受付にそう言う。
「この妖魔ですね?賞金は10万Gとなります。」
「おっ。いいね、
じゃあそれを受けさせてもらうわ。」
女の子は笑顔で受付に答えると
依頼書を受け取り出口へと歩く。
すると
「やあやあ、君がその妖魔をぶっ殺すの?」
柱の影からイチゴウが現れその女の子に喋りかける。
「そうよ。」
女の子は突然現れた少年にそう答える。
「依頼書にはどう見てもゴツい妖魔の写真が添付されてるけど、君が持ってるそんなチープなサブマシンガンで相手出来るのかな?それに君の体格もゴツい訳じゃないし。」
イチゴウが馬鹿にしてる口調でそう喋る。
「へぇー、私を馬鹿にしてるんだ。
じゃあ、いいわ。
先にあんたに私の実力を見せてあげよっか?」
女の子はイチゴウの煽りとは裏腹に
自信満々に答える。
「やれるもんならやってみたいけど
残念ながらボクは
そろそろ本社に戻らないといけないから。
また会ったら叩き潰してあげるよ。」
イチゴウも負けじと答える。
「そう、残念。」
女の子は残念そうに答える
「まぁ、そういう所だから君もその不可能な依頼を頑張りたまえよ。じゃ。」
「あんたもいい気になりすぎて
妖魔に食べられないようにね。」
二人は別れの挨拶を告げるとそれぞれの行動をとる。
イチゴウは第二偵察班のテーブルに戻ると
隊員達がすでに集まっていた。
「班長!それなりにいい情報が集まりました。」
ザコチュラがドヤ顔でそう言うと
懐から5冊のメモ帳を取り出す。
「えっ、それ全部に妖魔の情報書いてんの?」
イチゴウがそう答えると
「はい、1ページの隙間もなく。」
ザコチュラが自信たっぷりにそう答える。
「良くやるなぁ。」
イチゴウは感心して呟いた。
「よし、そろそろ本社に戻るよ。単純に疲れた。」
イチゴウがそう言うと隊員達は酒場を出て
軽装甲機動車へと乗り込む。
「はぁ、またボクが運転かぁ…
正直なとこ寝たいんだけどな。」
イチゴウが愚痴を吐きつつ
車のエンジンを始動させ発車させる。
イチゴウは町の門を出ると
近道の為にちょっとした砂漠地帯を
走り抜けていた。
「やっぱ4WDはいいねー。
砂地でもスピードが出せるから。」
イチゴウはそう呟くと
アクセルを踏み込みスピードを上げて
本社へと向かう。
そして近くの少し高い崖の上に1つの人影…
「あれが、私を馬鹿にしたアホ毛さんが
乗ってる車ね。」
女の子は崖の上から
砂漠を疾走する軽装甲機動車を見下ろしていた。
To be continue…