内臓に響き渡るような重低音と
吹き荒れる暴風が甲板上の第二偵察班に貫く。
そして第二偵察班の上空には
巡洋艦規模の空中戦闘艦がホバリングしていた。
「どうすんだよ…」
バンダナが空中戦闘艦を前に非力な声でそう呟く
依然としてその空中戦闘艦は
凄まじい爆音と共に空中に滞空していた。
すると
「うわっはっはっは!!
お前らがブラックセーフティーの
お使い分隊かぁ?」
突如滞空している空中戦闘艦から声が聞こえる。
第二偵察班は一斉に上を向き
空中戦闘艦を凝視すると
そこから第二偵察班を見下ろす
青いキャップを被ったザコチュラがいた。
「わざわざこんなコンテナ船に遠征とは
ご苦労なこったよなぁ?」
青キャップのザコチュラが嫌味を込めて
そう言い放つと
「とりあえず、君は誰なのさ?」
班長のイチゴウが青キャップのザコチュラに
そう問いかける。
それと同時に第二偵察班が一斉に
手持ちの武器を空中戦闘艦に向ける。
「はっ!
そんな事はお前らに必要ないし
お前らに構っている義理もない。
だがー
こっちも作戦に移るのに時間がいる、
それまで暇潰しにお前らと遊んでやらなくもないぜ!
行くぞ!!空中戦闘艦"メタルクラウド"!!」
ーーーvs.巨大空中戦闘艦「メタルクラウド」
「皆!!走れ!!!!」
イチゴウがそう言うと第二偵察班は一斉に
コンテナの影に向かって走り出す。
「うわっはっはっは!!まるでゴキブリだな!!」
空中戦闘艦から青キャップのザコチュラが
高笑いしつつ逃げ惑う第二偵察班を見下ろす。
「はっはっは!燃え尽きろぉ!!
81mm迫撃砲、全門発射!!」
青キャップのザコチュラがそう言うと
空中戦闘艦の右舷と左舷にびっしりの
中程度の鉄の筒が駆動し始める。
そしてその鉄の筒が角度調整を終えると
ポンという小気味良い音と共に
81mm迫撃砲弾がどんどん撃ち上げられる!
「まずいな…!かるく50は撃ち上げられてる!」
イチゴウが走りながら
撃ち上げられる砲弾を見つつそう呟く。
すると走っている第二偵察班の後ろに
次々と撃ち上げられた砲弾が着弾し凄まじい爆発が
走っている第二偵察班を追うように襲いかかる!!
「走れ!!!」
イチゴウがそう叫ぶ。
第二偵察班は後ろから爆発が迫るなか
死に物狂いで走り続ける!
そして爆発が第二偵察班に追いつこうとしたとき
第二偵察班の隊員は
一斉に横のコンテナの影に飛び込み
その瞬間に後ろから迫っていた爆発が
第二偵察班の横を掠める。
「ちっ…コンテナに隠れやがったか!」
青キャップのザコチュラが空中戦闘艦の
甲板上から舌打ちしつつ呟く。
「皆大丈夫?」
第二偵察班は甲板上のコンテナの中に隠れ
一時的に空中戦闘艦から身を隠していた。
「おい、イチゴウ!
あんなもんにどう対処するんだよ!
こっちには満足な火器もねえってのに!」
バンダナがもう無理だと言わんばかりの表情で
そう訴える。
「確かに…小銃くらいしか…」
イチゴウの方も
流石に困り果てているようだったが
「ん…?待てよ…?」
早速イチゴウが何か閃いたようだった。
「あの船ってヘリみたいに
ローターで飛んでたよね?
じゃあ、あのローターをぶっ壊せば
ワンチャンスあるんじゃないかな?」
イチゴウがそう提案すると
「班長、それは確かにそうだと思いますが
第一、我々には飛行中の船のローターを壊せるような
対空兵器がありません。」
隊員のザコチュラの一人がそう反論するが
すぐにイチゴウが切り返す。
「RPG-7があるじゃないか。」
「無理ですよ!対戦車用のRPGを
飛行中の船のローターに当てるなんて!」
隊員がすぐさまに反論するが
イチゴウにも考えがあった
「普通の隊員じゃ無理だろうね。"普通"だったらね。」
イチゴウはバンダナに視線を送る。
「俺に当てろってか!?」
バンダナが驚いたように反応する。
「今でも語り継がれてるよ?
何でも昔RPG-7で
敵性教団のMi-17を"飛行中"に
全機叩き落としたらしいじゃないか。」
イチゴウがそう言うと隊員達が
「マジっすか!」
「すごいぜバンダナ!」
一斉にバンダナを称賛し出す。
「待て待て、わかった。
それは昔の話だが
やってみるだけはやろう。」
バンダナがそう答える。
「クソ!どこいった!?」
そのころ青キャップのザコチュラが
空中戦闘艦の甲板上で
血眼になって第二偵察班を探していた。
すると
「オープンファイア!!撃て!!」
コンテナの影から飛び出してきた3人のザコチュラがAK-47突撃銃を空中戦闘艦に向け発砲する。
「見ぃぃつけたぞぉぉぉ!!」
青キャップのザコチュラがそう叫ぶと
空中戦闘艦の鉄の筒がまたしても駆動し
3人のザコチュラに向け迫撃砲弾を放つ!
「うわぁぁぁぁーーー!!」
3人のザコチュラは降り注ぐ迫撃砲弾の中を
必死に走り回っていた。
「クソ!!コンテナの列を走り回りやがって!
迫撃砲が当たらねーだろうが!!」
青キャップのザコチュラが
逃げ回る第二偵察班の隊員に対して
甲板上で地団駄を踏みながら叫ぶ。
その時!
「うお!!」
青キャップのザコチュラの周りで3発程の銃弾が
勢いよく着弾する!
「あ、やべ。外した。」
隅っこのコンテナの上で
ドラグノフ狙撃銃を構えていたイチゴウがそう呟く。
ドラグノフの銃口からは
火薬の煙が立ち上がっていた。
「こざかしいマネしやがって!!
こうなったら
てめえらもろとも吹き飛ばしてくれる!!
砲撃準備!!!」
青キャップのザコチュラがカンカンになって
そう叫ぶと鉄の筒が駆動し角度の調整を始める。
「今だ、バンダナ。」
イチゴウが無線機でそう伝える
「サンキュー、お前らのおかげで気付かれずに
ローターの真下に来れたぜ。」
バンダナがそう答えると
RPG-7を構えて専用スコープを覗き
空中戦闘艦のローターに照準を合わせる。
「これで終わりだ!」
凄まじい爆音と爆煙と共にRPG-7が発射される。
発射された弾頭はローターに向かって飛んでいき
ローター直前で炸裂し爆発を起こす!
「よし!!」
イチゴウが声をあげる。
しかし
着弾時の爆煙がだんだん晴れていくと
なに食わぬ顔で回転しているローターがあった。
「そんな!!」
隊員達が思わずそう言い放つ。
「何かしたかぁ?」
空中戦闘艦の甲板上にいる
青キャップのザコチュラが半ば笑いながら
第二偵察班にそう呟きかける。
すると青キャップのザコチュラの元に
一人のザコチュラが近寄ってきて
「キート艦長。
ドリルミサイルの装填が完了しました。」
そのザコチュラがそう告げる
「よし、わかった。」
青キャップのザコチュラが返事をすると
空中戦闘艦から貨物船を見下ろして
「おい!!お使い分隊!!
悪いが遊ぶのはここまでだ!
こっちにも仕事があるんでな!」
青キャップのザコチュラがそう叫んだと同時に
空中戦闘艦のVLSから2発のミサイルが
凄まじい音と共に発射される。
そして垂直発射されたミサイルは空中で姿勢を変え
貨物船の甲板に向かって飛んできて
甲板に突き刺さり
その2発のミサイルは突き刺さったと同時に
貨物船の甲板を削り出す。
第二偵察班はその様子を黙って見るしかなかった。
2発のミサイルによって削られた甲板は脱落し
空中戦闘艦下部から数本のアンカーが下ろされた。
甲板が脱落した穴のなかにアンカーが入り
何かに引っ掻けている。
その数十秒後にアンカーが重々しく
空中戦闘艦に引き上げられる。
ある物体と共に。
「おい!嘘だろ!!」
バンダナがそう叫ぶと
「そんな!!」
イチゴウもその引き上げられた物体を見て
声をあげる。
その引き上げられた物体は
兵器用プルトニウムであるプルトニウム239が入った
コンテナだったのだ。
「おい!なにするつもりだ!?」
バンダナが上を向いて青キャップのザコチュラに
荒々しくそう問いかけると
「アレを完成させるために必要らしいからな。
ま、お前らには関係のない話よ。」
青キャップのザコチュラがバンダナの問いに
そう答える。
すると空中戦闘艦は高度を上げ
プルトニウムのコンテナを
アンカーで吊り下げたまま貨物船から離れていく。
舌打ちしているバンダナの横で
イチゴウにはあるものが見えていた
それはその空中戦闘艦に書かれているロゴだ。
今までは角度の関係上見えなかったが
空中戦闘艦が離脱態勢を取り角度を変えたことで
見えるようになったのだ
そのロゴはBlack Safetyの物と似ているようで
Black Safetyの物とは反するデザインだった。
そのロゴには"Black justice"という名前が
表されていた。
空中戦闘艦が飛び去った甲板上は
海上の静けさを取り戻し
海鳥の鳴き声と船にぶつかる波の音だけが聞こえる。
その中で第二偵察班はただただ座りつくしていた。
「ブラック……ジャスティス…………?」
イチゴウだけは空中戦闘艦のロゴに
書いてあった組織名を
そっと呟いた。
ーーーーーーーーーーーーBlack Safety本社
一応任務を終えた第二偵察班は
本社に戻り結果報告をおこなっていた。
「なにィ?
核物質を奪われただぁ!?
てめえら一体何をしてるんだ!!」
デスダが第二偵察班に怒鳴り付ける
「落ち着け、デスダ。」
横からブラックバード幹部が
デスダ教官にそう声をかける。
「しかしー幹部。奪われたのは核物質だぞ?」
デスダがそう言うと
「安心しろ。
今回運搬していたプルトニウムの量では
それほど威力のある核弾頭は作れない。」
ブラックバードがそう言い返す。
しかしイチゴウはその二人のやり取りを聞いて
別の考えを持っていた。
本当に核弾頭用途なのか?
空中戦闘艦を建造出来る技術があるのに
そんなつまらない事に使うのだろうか?
イチゴウがそんな事を考えているうちに
ブラックバードが話を進める。
「実のところ、
兵器用プルトニウムを奪われて都合がよかった。」
ブラックバードがそう言うと
「どういうことですか?」
勿論イチゴウがそう問いかける。
「ああ。あの貨物船の進路上で
今日連合軍が海上封鎖を行っているみたいでな。」
「連合軍?」
ブラックバードの話の途中で
イチゴウがそう呟く。
「そこからだったな。
連合軍というのは
人類が金星に移住した時に発足した組織で
アメリカ、中国、ロシアという
三大軍事大国の正規軍が平和維持を目的に
合併したものだ。」
「じゃあ何でその連合軍がウチの貨物船の航路上に
ピンポイントで海上封鎖しているんですか?」
イチゴウがそう問うと
「元々兵器用プルトニウムの保有、製造は
国際法で厳しく禁じられている。
つまり正規ルートでこれらの入手はまず不可能だ
だから我が社はロシアの原子力研究所から
秘密裏に手に入れて食料貨物船に偽装したもので
運んでいたんだが
その事をIAEA(国際原子力機関)が
嗅ぎ付けて連合軍に告発したという流れだろう。
それに連合軍は"人魔共存"という
人類と妖魔の共存思想を掲げていて
我が社は前々からマークされていたからな。
幸い、兵器用プルトニウムは奪われていたから
大問題にならずに済んだが。」
ブラックバードがそう話を進める
第二偵察班はブラックバードの話を
黙って聞いていた。
「それはそれとして、君達についてだが」
ブラックバードが急に話題を変える
「君達は核物質の確保に失敗した訳だが
私が君達に与えた任務が貨物船の調査だった事と
報告にあったBlack justiceという組織の空中戦闘艦の件を考えれば一概に君達だけの責任だとは言えない。
それに君達は貨物船の妖魔を一掃したという
一定の成果もある。
後の事はこちらで対応する、
君達は訓練に戻りたまえ。」
ブラックバードがそう言うと
第二偵察班は一礼し幹部室を後にする。
「ブラックジャスティス……
やはりな。」
ブラックバードは幹部室で一人そう呟いた。
To be continue…