デュエルシーンがクソほど辛かったので単発です。
時系列としては戦隊バリアン七皇当たりで、ドン・サウザンドは邪悪なままなので性癖が壊れても悪行三昧です。
絶対にry
「まさか、あの貴様が直に、それも単独でアストラル世界にやってくるとはな。ドン・サウザンド」
白い肌に金の装飾をつけた男、エリファスは眼前にいる男と対峙した。
妖しい美貌に満ちた男だった。
前面に赤いメッシュが入った金色の長髪。赤と青のオッドアイ。額に真紅の目玉が嫌味なく存在する。ガタイのいいエリファスと比較すれば、好かれるのはおそらく彼方に分配が上がるだろう。
─その憎しみに満ちた表情さえなければ。
「カオスの廃棄物の寄せ集めが。アストラルに敗れた貴様が復活するためにどれほどの犠牲を要した。貴様を産み出したアストラル世界の守護神として、私は貴様を赦しはしない」
「……」
ドン・サウザンドは無言で佇む。睨め付けた視線は悍ましいほど泥々と濁ったまま。まさにカオスの名に相応しいと、エリファスは握り拳を作った。
「貴様の目的は理解している。アストラル世界から放逐された際に失った貴様の恋人。その復讐を果たしにきたのだろう?」
かつて、アストラル世界はさらなるランクアップを目指してカオスを切り捨てた。放逐したカオスの力は澱み、放浪し、やがてわだかまってバリアンとして新たな世界となった。
ドン・サウザンドはその切り捨てられたアストラル世界の住民だった。カオスの化身とも称すべき邪悪さを疎まれた彼は、バリアン世界の神としてアストラル世界に侵略した際、常にそばにいた女性を連れ立たせていなかった。
「答えろ。貴様は、その彼女のデッキを用いて何を為すつもりだ!」
エリファスの手が微かに震えた。九十九遊馬に指摘された人の苦しみの結末に、罪の象徴である彼を断罪する権利が─
ドン・サウザンドは冷たい眼差しで辺りを見渡した。遊馬とアストラルにより回復した住民達の眼は恐怖が入り混じっていた。見据えている目線を鼻で笑うように、彼は人差し指を天に掲げた。
「我は─神だ」
傲慢に塗れた宣言に、エリファスの視線が鋭くなった。
「バリアンを統べる我だが、性別は男。繁栄には女が要る。我に相応しい格のある─同格の女がな」
ドン・サウザンドの薬指にある指輪を睨みながら、エリファスは苦しげに口を開いた。彼が創られる前にあったアストラル世界の分離。それに巻き込まれた存在がいたと記録にはあった。
「アストラル世界を生贄にするつもりか…!」
「もとより我と彼奴はアストラル世界を幾度も危機から救った身。素材にする程度で借りを返すなど─安いものではないか」
それは、かつて遊馬にエリファスが語った結論そのものだった。より良きもののために犠牲を良しとする、妥協の精神。切り捨てられる側の立場となったエリファスは、歯噛みしてドン・サウザンドに叫んだ。
「アストラル世界の平穏は崩させはしない─!!」
「我はお前達の流儀に沿って平穏を得るだけだぞ?何を否定する必要がある」
嘲笑い、歯噛みし、互いのデッキがシャッフルされる。殺し合いの代わりとなる神聖なる儀式。『彼女』が最も得意としていた勝負にて、世界を賭けた勝負が始まった。
「「
エリファスが天高く右腕を掲げた。
「先行は私だ!」
エリファスのデッキを掴むための右手が光り輝く。その光を見たドン・サウザンドは忌々しげに舌打ちをした。
「アストラル世界のデュエル!それは全てがシャイニングドローによって成り立つ!」
敵はあのアストラルすらギリギリとなって仕留めることが出来た強者。エリファスに迷いはあれど、本気を出すことに躊躇いはなかった。
「最強デュエリストのデュエルはすべて必然!ドローカードさえもデュエリストが創造する!全ての光よ!力よ!我が右腕に宿り、希望の光を照らせ!」
デュエリストの理想の体現であり、最優の象徴である、最高のドロー。
「シャイニング・ドロー!!」
引いたカードを一瞥して、エリファスは手札のカードを叩きつけた。
「私は『神秘のモノリス』を2枚発動!このカードはランク4のエクシーズモンスターを召喚するとき、エクシーズ素材となる!」
「神秘のモノリス2枚でオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!」
光と共に、金色の装飾具を身に付けた犬型のモンスターがエリファスの身を守るように顕現する。両肩から生える2対の蛇は威嚇するかのようにドン・サウザンドへ舌を揺らめかせた。
「現れよ
【NO4 エーテリック・アヌビス】
ランク4/光属性/獣族/攻撃力1000/守備力1000
レベル4モンスター×2
低ステータスの誘うような攻撃表示に、ドン・サウザンドは無反応だった。
「私はカードを1枚伏せてターンエンドだ」
【エリファス LP:4000 手札:3】
モンスター:《NO4 エーテリック・アヌビス:攻》
魔法・罠:《裏側》
【ドン・サウザンド LP:4000 手札:5】
モンスター:なし
魔法・罠:なし
アヌビスは破壊された魔法・罠カードを復活させる効果を持つ。エリファスは過去のアストラル人である彼女の仔細は把握していないが、かつての彼女はドン・サウザンドの好敵手だったと記録に遺されている。除去効果を見越しての2段構えは警戒の証だった。
「我のターン、ドロー」
ドン・サウザンドの引きは静かだ。エリファスのドローを嘲笑うかのように、彼は引いたカードをそのままデュエルディスクに設置した。恐ろしいほど、丁寧な仕草だった。
「我はクシャトリラ・フェンリルを特殊召喚」
現れたのは、斧を武器とした赤い鎧に身を包んだ仮面の戦士だった。
【クシャトリラ・フェンリル】
レベル7/地属性/サイキック族/攻撃力2400/守備力2400
「レベル7…!?」
「このカードは自分フィールドにモンスターが存在しない場合、特殊召喚出来る」
間が開く。まるでエリファスが罠を開くのを当然だと確信した時間だった。しかし、エリファスがこの場面で使えるカードなど存在しない。ドン・サウザンドは少しだけ目を瞑り、ため息をついた。
「バトル。フェンリルよ、その惨めな畜生を討伐せよ。ゲルギャの投擲!」
「させるか!私は罠カード『神秘の鏡』を発動!」
挨拶代わりとばかりに投擲された足枷をエリファスの罠カードが防ぐ。鏡が映し出すのは、ドン・サウザンドの全身だ。
「バトルによってモンスターは破壊されず、この戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは代わりに相手が受ける!」
直撃すれば1400のダメージを受ける危機に、ドン・サウザンドは動じない。その程度の小細工で動揺するなど、神に相応しくない。
「クシャトリラは異次元を侵略せし武人の集団。当然、その業も次元を超越する。スヴィティの石杭!」
フェンリルの斧が鏡を叩き割り、その破片が岩石へと変貌してアヌビスを地面と一体化させる。エリファスは何も出来ずに、アヌビスが平面へと化していくのを見ていた。
「フェンリルの攻撃時、または貴様がモンスター効果を発動した場合、相手フィールドの表側カードを1枚-裏側で除外する」
「なんだと!?」
「我は永続魔法『クシャトリラ・バース』を発動し、ターンエンド」
赤と黒を基調としたコンテナ群が周りに降り注ぐ。目の前で簡易的な拠点が構築される様はまさに前線基地だ。アストラル世界がまさに侵略を受けている。エリファスのこめかみに一筋の汗が流れた。
【エリファス LP:4000 手札:3】
モンスター:なし
魔法・罠:なし
【ドン・サウザンド LP:4000 手札:4】
モンスター:《クシャトリラ・フェンリル:攻》
魔法・罠:《クシャトリラ・バース》
「私のターン!」
エリファスはつい最近敗北した男のことを思い出す。アストラルという個人を助けるついでにアストラル世界の病を治療した彼、九十九遊馬は直情的でどこまでも人を信じ切ることが出来る筋金入りの少年だった。
彼が齎した希望はエリファスにも伝わっている。誰かを守る為の力、エリファスがカオスだと嫌悪したその心が、ドン・サウザンドに立ち向かう勇気を生み出している。
「私は『
「…アストラルの小僧の片割れが使っていたカードか」
【ZS-昇華賢者】
星4/光属性/戦士族/攻撃力900/守備力300
ドン・サウザンドは妙な言い回しでアストラルを口にした。まるでアストラルをよく知っているかのような─エリファスは首を振った。今は全力でカードを操るだけだ。
「さらに、
【ZW-玄武絶対聖盾】
星4/地属性/水族/攻撃力0/守備力2000
玄武絶対聖盾が空間に穴を拡げた。異次元に放逐されたアヌビスを呼び戻すための空間だ。しかし、その距離はあまりにも遠い。アヌビスはその空間に突撃したが間に合わずにフェンリルの斧により破壊された。
「アヌビスが…!?」
「愚かな…クシャトリラが追放せし場所は次元の彼方。生半可な力では呼び戻すことなど敵わん」
「ならば、私は
「現れよ、
ドン・サウザンドの相貌が初めて明確に崩れた。
「ホープ!?…いや、彼奴の遺産か」
「貴様が偽物のナンバーズをこしらえたのと同じだ。レプリカ・ナンバーズ。この一戦しか保たないだろうが、どの道後先がないのは同じこと」
全てがかかった勝負に全力を尽くさない者はいない。シャイニング・ドローもレプリカも何もかもを使い尽くして勝率を上げる。エリファスがアストラル世界の守護者として為さねばならない、本能だ。
「
ホープが創り出したカードを手に取って、エリファスは先程温存していた彼のデッキのキーカードを発動した。
「さらに私は永続魔法『ランクアップ・アドバンテージ』を発動!これにより、私がランクアップするたびにカードを一枚ドローする!」
アストラル界のデュエルはランクアップを本領とする。
「『RUM-アストラル・フォース』を発動!!」
【RUM-アストラル・フォース】
通常魔法
自分フィールド上のランクが一番高いモンスターエクシーズ1体を選択して発動する。
選択したモンスターよりもランクが1つまたは2つ高いモンスターエクシーズ1体を、自分のエクストラデッキから、選択したモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚できる。
自分のドローフェイズ時に通常のドローを行う代わりに、このカードを自分の墓地から手札に加える事ができる。
「このカードにより、私はモンスターのランクを2つ向上させる。現れよ!
【NO6 エーテリック・アポピス】
ランク6/光属性/爬虫類族/攻撃力2500/守備力1000
胴体が一部広がった大蛇が降臨する。ランクアップにより発生したエネルギーの余波がエリファスのデッキへと集まり、新たなカードを創り出す。
「カードを一枚ドロー!」
「貴様が魔法を発動したことにより、『クシャトリラ・バース』の効果を発動する」
幾度目のシャイニング・ドロー。ドン・サウザンドは展開している永続魔法の効果を発動し、フェンリルが吼えた。咄嗟に身構えたエリファスだが、盤面は変わらない。
「……何も変わらない…?」
ドン・サウザンドは待ち構えている。フェンリルが無防備に攻撃表示である以上、エリファスにはそれを除去しない理由はない。罠だと理解しても、勇敢に突撃しなければ勝機は訪れない。
「私はアポピスの効果発動!エクシーズ素材1つを取り除いて選択したモンスターの攻撃力を2000ポイントダウンする!」
「フェンリルの効果を忘れたか。我はフェンリルの効果を発動、アポピスを除外する。スヴィティの石杭!」
オーバーレイを食い散らかしたアポピスの眼から光線が放たれる。脚から石化するフェンリルは上半身に効果が及ぶ前にその武器を振るおうと振りかぶるが、その手は顔面に浴びせられた液体によって中断された。
「百も承知だ!速攻魔法『禁じられた聖杯』を発動!フェンリルの攻撃力を400アップする代わりに、効果を無効にする!」
フェンリル:2400⇒2800⇒800
「先ほどのドローで引いたか。つまらん真似を」
「バトル!私はアポピスでフェンリルを攻撃!」
フェンリルの首筋にアポピスの牙が刺さり、叫び声と共にフェンリルは爆散した。
【エリファス LP:4000】
【ドン・サウザンド LP:4000-1700=2300】
「…ふん」
「私はこれでターンエンドだ」
【エリファス LP:4000 手札:1】
モンスター:《NO6 エーテリック・アポピス:攻》
魔法・罠:《ランクアップ・アドバンテージ》
【ドン・サウザンド LP:2300 手札:4】
モンスター:なし
魔法・罠:《クシャトリラ・バース》
「我のターン」
「貴様は何故、シャイニング・ドローを行わない…?」
エリファスは思わずドン・サウザンドに問いかける。彼の元となった記憶の中にあるドン・サウザンドは立ちはだかる強敵に対してシャイニング・ドローを使いこなす強者だった。ドン・サウザンドはデッキに触れた手をピタリと止めた。
「力に正邪などあるはずもない。最強デュエリストは全て必然。貴様程度が行える戯れが我に出来るのは当然だ」
「ならば、何故に使わない…!」
「儀式にならないからだ」
対等なものが繰り広げるからこそ、儀式にはエネルギーが溜まる。ドン・サウザンドはエリファスを明確に弱者として見ていた。ドン・サウザンドが光らせる右手を見て何もしないのが証明だ。
「バリアンズ・カオス・ドロー!」
ドン・サウザンドのドローに抵抗できない時点で、格の差は決定していた。
「我は引いた─貴様に相応しいカードを発動する」
【謙虚な壺】
通常魔法
自分の手札を2枚選んでデッキに戻す。
「…『謙虚な壺』、だと…!?」
「貴様の器は知れた。もはや戯れに興じても我が勝利は変わらん」
明らかなデメリットカード。潤沢だったドン・サウザンドの手札が1枚に減らされる。傲慢そのもののプレイングに、エリファスは止めることが出来なかった。
「我は『クシャトリラ・バース』の効果を発動。自らの墓地または除外されたクシャトリラを特殊召喚する。蘇るがいい、フェンリル」
あっさりと蘇ったフェンリルにエリファスは歯噛みした。防御の策としてランクアップ・アドバンテージにはランクアップしたモンスターとの戦闘時は効果を発動出来ない。速攻魔法を使ったブラフにドン・サウザンドが気付くかどうかは、エリファスの賭けだ。
その思考を見抜いたかのように、ドン・サウザンドはざっくばらんに新たなモンスターを召喚した。
「そして我は『クシャトリラ・バース』の更なる効果を発動。レベル7のモンスターを召喚する際、リリースなしで召喚を可能とする」
「!!」
「現れよ、スケアクロー・クシャトリラ!」
【スケアクロー・クシャトリラ】
レベル7/地属性/サイキック族/攻撃力0/守備力2600
─レベル7のモンスターが2体、それどころかドン・サウザンドはまともにモンスター効果すら使用していない─!!
「このまま消し飛ばしてもいいのだがな」
戦慄するエリファスに向けてドン・サウザンドは鼻で嗤った。
「戯れだ。手加減をしてやろう。我はレベル7のモンスター2体でオーバーレイネットワークを構築!」
エリファスは全身で吹き飛びそうになる身体を押さえ込んだ。エリファスとは質の違うエネルギーの奔流は生命力に満ち溢れた感情の洪水だ。
「エクシーズ召喚!現れよ!『クシャトリラ・シャングリラ』!!」
現れたのはアストラル世界の全住民が確認出来るほど巨大な衛星兵器。一歩退いたエリファスを嘲笑い、ドン・サウザンドは両手を優雅に広げた。
「シャングリラはかつて地上にて存在した楽園の理想郷そのもの。血にまみれた武人が作り上げるとは、なかなか皮肉だと思わんか?」
「くっ…!」
「我はカードを1枚伏せてターンエンドだ」
【エリファス LP:4000 手札:1】
モンスター:《NO6 エーテリック・アポピス:攻》
魔法・罠:《ランクアップ・アドバンテージ》
【ドン・サウザンド LP:2300 手札:0】
モンスター:《クシャトリラ・シャングリラ》
魔法・罠:《クシャトリラ・バース》《裏側》
「私のターン、私は通常のドローの代わりに墓地の『RUM-アストラル・フォース』を…!?」
エリファスは墓地から舞い戻る筈のカードが来ないことに狼狽えた。
「クシャトリラ・バースの更なる効果。戦場にクシャトリラが存在する場合、相手の魔法カードの発動後に墓地のカードを裏側で除外する。なぁに、ランクアップの為のささいな犠牲というものだ」
「犠牲を強いる者が重さを軽んじるな!!」
自らの感情こそを是とするカオスの象徴。自分さえ良ければいいという自分勝手な有様。かつての己を見ているようだ。怒りと後悔に苛まれそうな身体に喝を入れて遠方にいる彼女─エナに向けて一瞥する。
「─シャイニング・ドロー!!」
彼女はエリファスが敗れた際の伝令だ。ドン・サウザンドのデッキを、否、アストラル世界の前守護者であった彼女の
アストラル世界が滅びるのは自業自得だが、人間界を巻き込むのは決して正当とは思わない。エリファスは命に換えてもドン・サウザンドの手札を晒す心意気だった。
「スタンバイフェイズにシャングリラの効果が発動する」
「!!」
「デッキから新たなクシャトリラを特殊召喚する。我は『クシャトリラ・オーガ』を攻撃表示で召喚!」
【クシャトリラ・オーガ】
レベル7/水属性/サイキック族/攻撃力2800/守備力1000
新たなモンスター。フェンリルの効果を考えれば、おそらく攻撃時かモンスター効果の発動後に効果を及ぼすカード。シャイニング・ドロー後に発動する、ある種のドロー殺し。
エリファスは本来デュエリスト達が日常的に熟す未知のカードに対しての直感を働かせなければならない。
「……!」
息を吸い、息を吐く。凍えるような震えが魂の奥底から這い寄ってくる。エリファスは目を瞑り、そして決断を下した。
「…私はアポピスの効果を発動し、オーガの攻撃力を2000下げる!」
「オーガの効果を発動。相手のデッキの上からカードを5枚まで確認し、その内1枚を除外する」
賭けに勝ったとエリファスは息を吐いた。
オーガ:2800⇒800
「そしてシャングリラの効果を発動。カードが裏側で除外される度に、フィールドゾーンを使用不可能とする。貴様の魔法・罠ゾーンは封印された」
「…ッ必要経費だ!!」
魔法・罠:《ランクアップ・アドバンテージ》《封印》
「私は『RUM-アストラル・フォース』を発動!アポピスをランクアップさせる!」
「現れよ!NO8 エーテリック・セベク!!」
【NO8 エーテリック・セベク】
ランク8/光属性/爬虫類族/攻撃力3000/守備力2000
レベル8モンスター×2
「バースにより、RUMを除外。これにより、シャングリラの封印を追加だ」
「だが、これで貴様の手は尽きた!セベクの効果!このカードがエクシーズ召喚に成功した時、自分のデッキから魔法・罠カード1枚を手札に加える事ができる!最後のアストラル・フォースを手札に加え、アドバンテージで1枚ドロー!」
【エリファス LP:4000 手札:3】
モンスター:《NO8 エーテリック・セベク:攻》
魔法・罠:《ランクアップ・アドバンテージ》《封印》《封印》
「私は3枚目の『RUM-アストラル・フォース』を発動!アポピスをランクアップさせる!」
「現れよ!NO10 エーテリック・ホルス!!」
【NO10 エーテリック・ホルス】
ランク10/光属性/鳥獣族/攻撃力3500/守備力2500
レベル10モンスター×2
「アドバンテージにより1枚ドロー!更にホルスの効果を発動!このカードのエクシーズ素材1つを取り除き、自分フィールド上に存在するカードの枚数と同じになるように相手フィールド上に存在するカードを破壊する!」
「我はリバースカード『和睦の使者』を発動する。これにより、このターンモンスターは戦闘では破壊されず、ダメージも0となる」
初めから手札に抱えていた防御札を知って、エリファスはドン・サウザンドが初手から手加減をしていたことを理解した。
─遊馬よ、私はもっと早く君に出会いたかった。
「だが後1枚は破壊できる!」
「選択は我か。フム…」
ドン・サウザンドは悪辣に顎を撫でて長考した。
「この場でオーガを破壊し、ありもしない希望を持たせるのも『有り』だが…戯れを選んだのは我か。我は『和睦の使者』と『シャングリラ』を選択する」
「後悔するぞ…!エーテリック・ホルス!シャングリラを破壊せよ!」
和睦の使者の名をエリファスは言えなかった。カオスとして追放した元アストラル人の姿を模した彼らがホルスの一撃によって倒れ伏していく。エリファスは思わず胸元を鷲掴みにした。バリアン人の、カオスの生き汚なさをエリファスは忘れていた。
ドン・サウザンドが操る理想郷は、未だに健在だった。
「なん…だと…!?」
「シャングリラが戦闘・効果で破壊される場合、エクシーズ素材を盾にすることで破壊を無効にする」
エリファスはとうとう片膝をついた。胸元に浮かぶ薄紫色の光はエリファスを構成する重要な一部。
─ドン・サウザンドの怒りの根源。
「さて、これで仕舞か?」
「…まだだ!私は『魔法石の採掘』を発動!手札を2枚捨て、墓地のアストラル・フォースを手札に加える!」
ドン・サウザンドの眼がさらに鋭くなった。
「そして『RUM-アストラル・フォース』を発動!現れよ!『NO12 エーテリック・マヘス』!!」
【NO12 エーテリック・マヘス】
ランク12/光属性/獣族/攻撃力4000/守備力3000
レベル12モンスター×2
ついに、ドン・サウザンドの眼が完全に閉じられた。あからさまに手を抜いた結果の末路に、彼女が守っていた世界の有様に、エリファスの足掻きを憐れに思うほどに。
「攻撃力だけが高い木偶の坊。アストラル世界も、堕ちたものだな」
「アドバンテージでカードを1枚、ドロー!リ・コントラクト・ユニバース!!」
最早ドン・サウザンドはエリファスを止めなかった。引いたカードを再構築する荒業を披露した彼をただ見据えるだけだ。
「私は『リターン・ランク・アップ』を発動!自分の墓地の「RUM」魔法カードを手札に加える!」
あるいは、ドン・サウザンドも彼の必死さに共感したのかも知れない。正しいと突き進む先が崖下だと理解しない愚か者を、止める権利は誰も持っていないかも知れないと。
「私は『RUM-アストラル・フォース』を発動!私はランク12のエーテリック・マヘスでオーバーレイネットワークを再構築!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!」
これが限界を超えた化身。奇跡を叶えたランク13のエクシーズモンスター。ドン・サウザンドに見せるべき、見せなければならない、アストラル界の答えの一つ。
「現れろ、NO13!秩序を制する清浄なる志よ、更なる高みを目指し、世界を有るべき姿へ。刮目せよ!これぞ我らが意志!」
「『NO13 エーテリック・アメン』!!」
【NO13 エーテリック・アメン】
ランク13/光属性/天使族/ATK 5000/DEF 4000
このカードは「RUM」と名のつく魔法カードの効果でのみ特殊召喚する事ができる。
このカードは戦闘及びカードの効果では破壊されない。
このカードの攻撃力は、このカードのエクシーズ素材の数×100ポイントアップする。
このカードが特殊召喚に成功した時、相手フィールド上に存在するモンスターエクシーズ1体のランクとこのカードのランクの差分だけ、相手のデッキのカードをこのカードの下に重ねてエクシーズ素材とする。
相手フィールド上にモンスターエクシーズ1体が特殊召喚した時、そのモンスターのランクとこのカードのランクの差分だけ、相手のデッキのカードをこのカードの下に重ねてエクシーズ素材とする。
「私の、アストラル世界の切り札だ。そうそう突破できると思うな。私はドローした『ランク・ドミネーション』を発動し、ターンエンドだ」
【ランク・ドミネーション】
永続魔法
このカードがフィールド上に存在する限り、ランクを持つモンスター以外は攻撃宣言できない。
また、ランクの低い順に攻撃しなければならない。
ランクを持つモンスターと戦闘を行う場合のダメージステップの間、ランクが低い方のモンスターの攻撃力は、戦闘を行うモンスターのランクの差分×1000ポイントダウンする。
【エリファス LP:4000 手札:0】
モンスター:《NO13 エーテリック・アメン:攻》
魔法・罠:《ランクアップ・アドバンテージ》《ランク・ドミネーション》《封印》《封印》
【ドン・サウザンド LP:2300 手札:0】
モンスター:《クシャトリラ・シャングリラ:守》《クシャトリラ・オーガ:攻》
魔法・罠:《クシャトリラ・バース》
「…それだけか」
「…何?」
「
ドン・サウザンドは失望の色を誤魔化せなかった。切り捨てられた要らないものからでっち上げたバリアン世界とアストラル世界は強度からして異なる。バリアン世界は純粋にアストラル世界の劣化版なのだ。
だからこそ、かつてのドン・サウザンドは単身でアストラルに挑んだし、敗北してもバリアンは何も為さなかった。弱体化しての早期復活と時間をかけての完全復活を天秤にかけて後者を選んだのも、アストラル世界の強化を見越してだ。
「我が何故執拗にRUMを除去したのか分からないのか?貴様がレプリカを出した時点で最悪を想定したからだ。邪法を選んで何故戦法が変わらん」
手札も無く、戦闘ダメージのみを0にしたドン・サウザンドは、はっきり言って無防備同然だった。エリファスが遮二無二にバーンダメージを狙っていけば勝機が見えたほどに。それが出来なかったのは、エリファスのデッキにその戦法を選ぶ拡張性が無かったためだ。
「クシャトリラは武人故に効果を妨げはしない。奴なら間違いなく木偶の坊の脳筋家族のナンバーズを乱用して我を仕留めにかかった。貴様は泥を被ったつもりだろうが…本物は毒すら呑み干す」
アストラル世界は、多種多様な対戦相手が不足していた。
「美しさばかりに感けて、あまりにも薄く、脆い」
ドン・サウザンドが評した言葉が、彼とエリファスとの力の差の理由だった。
「我はシャングリラの効果を発動。デッキより、クシャトリラ・ユニコーンを召喚」
カードを引いたドン・サウザンドが一本角を付けた武人を新たに呼び出す。
【クシャトリラ・ユニコーン】
レベル7/風属性/サイキック族/攻撃力2500/守備力2100
「新たなクシャトリラか…!」
「『クシャトリラ・バース』の効果でフェンリルを復活。さて、貴様のモンスターに追放の耐性はあったかな?」
「─ッ!墓地から『スキル・プリズナー』の効果を発動!フェンリルの効果をこのターン無効にする!!」
『魔法石の採掘』のコストで捨てたカードを発動する。エリファスは知るよしもないことだったが、これによりドン・サウザンドは切り札をひとつ披露する結果となった。
「ふむ、流石にそこまで愚かではなかったか。我はフィールド魔法『六世壊=パライゾス』を発動する」
クシャトリラの構築された前線基地が本格的な居住地となってエネルギーをシャングリラへ放出する。世界をカオスの
「このカードは発動時に新たなクシャトリラを手札に加える。我は『クシャトリラ・ライズハート』を手札に加え、召喚!」
【クシャトリラ・ライズハート】
レベル4/炎属性/サイキック族/攻撃力1500/守備力2100
「レベル4…?」
「ライズハートの効果を発動。召喚、特殊召喚に成功した時、デッキのクシャトリラを除外することで貴様のデッキ上から3枚のカードをこのカードのレベルに加える」
「当然、シャングリラの効果も発動する」
シャングリラがエリファスの魔法・罠ゾーンを封印する。エネルギーによりパワーアップした力は横にあった永続魔法を巻き添えにし、エリファスを吹き飛ばした。
「パライゾスはシャングリラが創り変えた新たな理想郷。その力によりシャングリラの効果は─フィールドのカードを1枚破壊する効果が加わる」
「『ランク・ドミネーション』が…!」
【エリファス LP:4000 手札:0】
モンスター:《NO13 エーテリック・アメン:攻》
魔法・罠:《ランクアップ・アドバンテージ》《封印》《封印》《封印》
【ドン・サウザンド LP:2300 手札:0】
モンスター:《クシャトリラ・シャングリラ:守》《クシャトリラ・オーガ:攻》《クシャトリラ・ユニコーン:攻》《クシャトリラ・ライズハート:攻》
フィールド:《六世壊=パライゾス》
魔法・罠:《クシャトリラ・バース》
「貴様らの『理想』なぞ、我が欲望の前ではすべてが無力にすぎない」
エリファスは一歩だけ退いた。ドン・サウザンドの力の差に怯え慄いたからだった。
「我はユニコーン、フェンリル、ライズハートでオーバーレイネットワークを構築!」
「世壊を支配せし怒りの化身よ、真紅の血鎧を纏いて世界の統合の先兵を果たせ!現れろ、憤怒の化身!クシャトリラ・アライズハート!!」
【クシャトリラ・アライズハート】
ランク7/闇属性/機械族/攻撃力3000/守備力3000
レベル7モンスター×3
アメンの効果によりドン・サウザンドのデッキがエクシーズ素材となったが、何の意味もないとエリファスは理解していた。
「アライズハートの効果発動。このカードのエクシーズ素材を3つ取り除き、フィールドのカード1枚を裏側で除外する。消えろ、エーテリック・アメン!!」
アライズハートのエネルギー波がアメンを包み込み、その全身を怒りの業火で焼き尽くす。アライズハートは死を許さない。墓地へ送られるはずのカードは全て除外され、アメンの首だけがアライズハートの新たなエネルギーとなった。
「そして、アライズハートはカードが除外された際に1枚をエクシーズ素材として吸収する」
「エーテリック・アメンが…取り込まれた…!?」
「シャングリラの効果により、最後の魔法罠ゾーンを封鎖だ」
【エリファス LP:4000 手札:0】
モンスター:なし
魔法・罠:《ランクアップ・アドバンテージ》《封印》《封印》《封印》《封印》
【ドン・サウザンド LP:2300 手札:0】
モンスター:《クシャトリラ・シャングリラ》《クシャトリラ・オーガ》《クシャトリラ・アライズハート》
フィールド:《六世壊=パライゾス》
魔法・罠:《クシャトリラ・バース》
圧倒。
手加減を多分に含んだプレイングで、エリファスが与えたのはただ一太刀のみ。
「…ッ!!」
「貴様には過ぎた宝─帰してもらうぞ」
【エリファス LP:4000-2800-3000=0 LOSE】
【ドン・サウザンド WIN】
「ガハッ…!」
「これで、バリアン世界を含めた3界全ての価値が平等になった」
ようやく帰還した片割れの魂をひと撫して、ドン・サウザンドはその宝玉を躊躇なく砕く。その光は人間界へと繋がり、莫大な光が空間として新たな異空間を作り出した。
「全ての世界を生み出し、その過去と未来が全て記されている1枚のカードである『ヌメロン・コード』。奴は生まれながらにしてその位置を知っていた。だからこそ守護者であり、我の宿敵だった」
倒れ伏すエリファスを、ドン・サウザンドは足蹴にした。
「貴様らが水入りをしなければ、我と奴で納得が出来たのだ」
アストラル界が分離を行うその時、ドン・サウザンドと彼女の闘いはまさに佳境だった。ライフは100、手札は無く、フィールドは焼け野原。彼女はカードを引き、そして世界は分断した─彼女の生命と共に。
「本来なら我が勝手に使うものだが、
3界全てのカードから光が溢れ、異空間にカードが複製される。伝説の、秘匿の、裏世界の、バリアンの、アストラルの、ありとあらゆる強力無比なカードが山のように異空間に溢れ出る。
「奴は語った。本当の最強とは、全てのカードを全員が自由に選んだうえで─勝ち残った存在であると。この空間では文字通り全てのカードをデッキに組み込める。参加も自由、報酬は神の力。だが、脱出するのは勝ち上がったただ1人だけ…それが誰だろうと、神は決定する」
「神も邪悪も一緒くたに…無秩序に世界を荒らさせるつもりか…!!」
「それがカオスだ」
骸と化したエリファスを踏み壊し、ドン・サウザンドは世界中に通知した画面を異空間へのゲートに切り替えた後、ヌメロン・コードの力を切断した。
「千を、万を、億を、兆を。死闘を繰り返し磨き切った死の淵のその果てこそ、カオスの神に相応しい。我は神の玉座に到達した後、奴を蘇らせる」
「その果てに─我と彼奴の決着があるのだ」
妃()くんちゃん…一般的かっとびングTS転生者。水も合わないしドンと別世界へ旅立つかーと計画していたところ、アストラル世界からバリアンが分離するのに巻き込まれた。運悪く致命的な比率でバリアン世界とアストラル世界の両方に魂が分割されてエクシーズ素材となったため、現在も復活していない。修羅の世界を引き摺っていたのが悪かったと思われる。そのデュエルスフィンクスとデカパイを前にドン・サウザンドの性癖をメタメタに破壊した。
ドン・サウザンド…最終的にシャーク&遊馬&アストラルの3対1で敗北する。最終勝者の遊馬は慈悲の神のため、そう遠くない内に誰かと一緒に復活すると思われる。