バリアン神は初恋童貞神   作:ややや

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妃くんちゃんのデュエルくらいは一応やるべきかと思ったオマケです。
捕食植物は触れたことが無いのでプレミはご容赦ください。

追記:ラビュリンスの破壊が対象を取らないことを忘れていたので更にポンコツ化させます。


旅路:融合

「ひどない?」

 

 幾つかの世界を旅していたラーヴァは融合世界にいた。ダークネスが力を増している精霊界と繋がりが深い世界とは異なり、この世界はいわゆる軍国家としての側面が強いらしい。

 

 エクシーズ次元の侵攻を行っていると耳にしたドン・サウザンドはラーヴァを放置してあっという間にエクシーズ次元へ向かっていった。手助けと宣っていたが、欲しいのはカード化技術の方だろう。

 

 荷物持ちがそんなに嫌だったのだろうか。

 

「シニョーラ・ラーヴァ。この度は私ドーモの世界が迷惑をかけて申し訳ないノーネ…」

 

 ラーヴァに話しかけたのは、かつてデュエルアカデミアが軍属となる前に教師を担っていたクロノス・デ・メディチという男だった。

 

「うん?不法入国はこっちだから別に迷惑はかかってなくない?」

「…ですーが、私の我儘に付き合わせたのーは、事実なノーネ…」

 

 一張羅であった服は見る影もなくぼろぼろで、食事にも困窮しているのか些かやつれている。孤児院で畑を耕しながら細々とデュエル教室をしていた彼は国からの徴兵を拒否したのだ。彼の信じる『光のデュエル』に殺戮は決して入らない。

 

 裏切り者として追われていた彼をラーヴァは助け、ドン・サウザンドは嬉々としてエクシーズ次元へ旅立った。そういうとこだぞ。

 

「シニョーラ・ラーヴァの(マリート)はエクシーズ次元の戦いに身を投じましたノーネ。私も、彼らを否定するならば、同じことを目指すべきだったノーネ…」

「んにゃぴ、まあ、まあまあまあ。うん」

 

 側から見ればドン・サウザンドは義憤に溢れた熱血漢だ。実情を知るラーヴァには片腹痛い評価だが、クロノスには動いた事実こそが重要だったのだろう。笑っても許されるとラーヴァは思っていた。

 

「まあまあまあまあ。今後のことは身体を治してから考えなよ」

「うう…かたじけないノーネ…!」

 

 野菜を液状になるまで煮込んだスープを飲み込んだクロノスはそのまま気絶するように意識を落とした。疲労と空腹による強制睡眠である。

 

「いやあ、生で見る熱血教師って良いもの見たわー。マジで命削りの宝札をする教師とか、いるもんなんだなぁ」

 

 ラーヴァはクロノスに毛布をかけた後、隠れ家から外に出た。同情からではなく、見物料くらいは払うべきだと思ったのだ。外に待ち構えていたのは紫髪の眉麻呂が特徴的な少年だ。デュエルエナジーから察するに、強力なデッキの使用者であるのは間違いない。

 

「やあ。ウチのドンちゃんが世話になってるね」

「ああ、あのハートランドに現れた自称神様?もしかして、お姉さんエクシーズ次元の人?」

 

 ラーヴァは笑った。回答はドン・サウザンドに任せることに決めている。ユーリは納得して頷いた。勘違いである。

 

「可哀想だけどコレ、戦争だからね。慰めじゃないけど、僕もデュエルで負けた際の末路は受け入れてるよ。騒いでいるオベリスクフォース(部下達)の世迷言は無視して構わないよ」

「軍人らしいわねー」

「それはそれとして、見逃すのは構わないけど、神様なんでしょ?僕らが全次元の統一を目指す理由…心当たりはない?」

 

 ラーヴァは少しばかり考えて、トークンカードを取り出して四つ折りにして切り裂いた。ユーリが見やすいように紙片を色つけする。融合・シンクロ・エクシーズ・ペンデュラム(アドバンス)

 

 バラバラになった世界。色がついただけの、カード(世界)として成り立たないゴミ。なんとなく理解しはじめたユーリは額から一筋の汗を垂らした。

 

()()()()()()()()()()。ついでに言うと、どの次元にもユーリ君はいるよ」

「…別次元の僕と出会ったら、どうなるの?」

 

 ラーヴァはエクシーズと融合の紙片を混ぜ合わせた。その色はまだら色だ。ユーリは今度こそ戦慄した。だとすれば、被害を度外視で侵略する理屈をつけられるから。

 

「世界が別れた時に『適性』で身体が別れたんでしょうねー。具体的には…自分のエクストラデッキの割合かな。いずれ訪れる世界統合の際の人格は…まあ察するわね」

 

 多重人格者がいるとして。

 

 自らの人格の割合が15分の1か15分の14かは誰も知らない。だが、人格を色として考えれば割合が低い人格がどうなるかは明らかだ。塗りつぶされ、赤の他人に似た存在として殺される。肉体がひとつである以上、当然の帰結だ。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「カードに再構築するのは…」

「死体を合体させたら死にかねないからじゃない?生きたまま自意識を殺しつつ、支配という形で人格を塗り潰す。脱走しない上に保管も確認作業も簡単になる。よく考えたものねー」

 

 ラーヴァはDゲイザーを取り付けてデュエルディスクを起動した。特にデュエルするつもりはなかったユーリは好戦的な笑みを浮かべて挑発するようにデュエルディスクを構えた。

 

「あまり戦いに興味があるように見えなかったけど?」

「君は君が思った以上に危うい状態なの。ユーリ君が合体してフリー対戦お願いしますbotになっても此方は困らないけど、流石に無秩序な世界統合は多次元に影響を及ぼすからねー。()()()()は組み込ませてもらうわ」

 

 ユーリは顔を顰めた。

 

「すごーくイヤな響きだね、それ」

「本質を表してると思うけど?」

「だからこそだよ」

 

 互いに軽口を叩くも、表情に油断はない。真剣勝負だからこそ、手を抜くことは魂が許せない。

 

「「決闘(デュエル)!!」」

 

 血湧き肉躍る感覚に両者が笑みを浮かべ、互いに叫んだ。

 

「アタシのターン!ドロー─は無しだったわ」

 

 危うく反則負けになるところだったとラーヴァは痙攣する右手を緩めた。

 

「おや?お姉さん、引きたいくらい手札が悪かったのかな?」

「そうなんだよねー。まだドロー運が酷くて。まあどうとでもなるっしょ…アタシは『白銀の城の召使(ラビュリンス・サーバンツ) アリアンナ』を召喚」

 

【白銀の城の召使 アリアンナ】

レベル4/闇属性/悪魔族/攻撃力1600/守備力2100

 

 このデッキ、実はドン・サウザンドの新デッキである。微調整がてらデッキを交換した際に次元戦争のゴタゴタを耳にしたドン・サウザンドがそのままエクシーズ次元に突撃したのだ。当然、ラーヴァのデッキはドン・サウザンドに交換されたままである。

 

 今、お茶の間には恥晒しナルシスト陰湿デッキ使いになってしまったアタシが映っているのかなとラーヴァは思った。

 

「アリアンナは罠の城で稼働する召使。アタシは『白銀の城の竜飾灯(ラビュリンス・シャンドラ)』を手札に加える」

 

 アリアンナが傅くようにミニチュアサイズのシャンデリアをラーヴァに渡す。その忠誠心はデッキにいる本物に向けるものではないかとラーヴァは常々思っているが、彼女だけ精霊がいないのでなんとも扱いがわからない。

 

「竜飾灯の効果を発動。手札をコストにデッキから『ウェルカム・ラビュリンス』をセットする。更にカードを2枚伏せて、ターンエンド」

 

【ラーヴァ LP:4000 手札:1】

モンスター:《白銀の城の召使 アリアンナ:攻》

 魔法・罠:《裏側》《裏側》《裏側》

【ユーリ LP:4000 手札:5】

モンスター:なし

 魔法・罠:なし

 

「僕のターン、ドロー!」

「(城引けてないから手加減してほしい)」

「僕は『捕食活動』を発動!」

 

 あっこれワンキルルートだとラーヴァは一瞬だけ絶望したが、エクストラデッキが融合縛りだったのを思い出してギリギリ持ち堪えた。

 

「『捕食植物(プレデター・プランツ)オフリス・スコーピオ』を特殊召喚して『捕食植物ビブリスプ』を手札に加える!更にスコーピオの効果を発動。ビブリスプを捨てて『捕食植物ダーリング・コブラ』をデッキから特殊召喚!ビブリスプにより『捕食植物セラセニアント』を手札に!」

「『ウェルカム・ラビュリンス』を発動!デッキからラビュリンスを特殊召喚する!来なさい!『白銀の城のラビュリンス』!!」

 

【白銀の城のラビュリンス】

レベル8/闇属性/悪魔族/攻撃力2900/守備力1900

 

 聞き覚えのありすぎる展開に冷や汗を流しながらポーカーフェイスを保ち、ラビュリンスのエースモンスターを召喚する。攻撃表示の召喚にユーリは少しばかり悩んだが、すぐに思考を振り払った。

 

【ラーヴァ LP:4000 手札:1】

モンスター:《白銀の城の召使 アリアンナ:攻》《白銀の城のラビュリンス:攻》

 魔法・罠:《裏側》《裏側》

【ユーリ LP:4000 手札:6】

モンスター:《捕食植物オフリス・スコーピオ:守》《捕食植物ダーリング・コブラ:守》

 魔法・罠:なし

 

「ダーリング・コブラは融合を呼び寄せる。『超越融合』を手札に加え、発動!2000ライフを払い、フィールドモンスターを融合する!」

 

 ユーリは両手を目の前で合わせた。融合次元特有の召喚におけるルーティンだ。

 

「現れ出でよ!『捕食植物キメラフレシア』!」

 

【捕食植物キメラフレシア】

レベル7/闇属性/植物族/攻撃力2500/守備力2000

 

「そして超越融合を除外することで融合素材となった2体を復活させる!」

 

 大型モンスターの召喚と更なる展開を抱える強力カードに、ラーヴァは舌打ちした。メタ的に彼がペンデュラムもリンクも構築外なのを知っているが、着地点を予想出来ない。ラーヴァはマストカウンターよりもアドバンテージを減らすことを選択した。

 

「トラップ発動!『悪魔の技(デーモン・グリッチ)』!フィールドに悪魔族が存在する場合にデッキの悪魔を犠牲にフィールドのカードを1枚破壊する!ダーリング・コブラを破壊し、『白銀の城の火吹炉(ラビュリンス・ストービー)』を墓地へ送る!」

 

【ラーヴァ LP:4000 手札:1】

モンスター:《白銀の城の召使 アリアンナ:攻》《白銀の城のラビュリンス:攻》

 魔法・罠:《裏側》

【ユーリ LP:2000 手札:6】

モンスター:《捕食植物キメラフレシア:攻》《捕食植物オフリス・スコーピオ:守》

 魔法・罠:なし

 

「そしてラビュリンスの効果を発動!通常罠の効果でモンスターがフィールドから離れた時、手札かフィールドのカードを1枚破壊する!キメラフレシアを破壊!」

「速攻魔法発動!『超融合』!」

 

 チェーン不可の最強札にラーヴァは白目を剥いた。

 

「あばば」

「ラビュリンス、アリアンナ、キメラフレシアで融合!現れ出でよ!『捕食植物トリフィオヴェルトゥム』!!」

 

【捕食植物トリフィオヴェルトゥム】

レベル9/闇属性/植物族/攻撃力3000/守備力3000

 

【ラーヴァ LP:4000 手札:1】

モンスター:なし

 魔法・罠:《裏側》

【ユーリ LP:2000 手札:4】

モンスター:《捕食植物トリフィオヴェルトゥム:攻》《捕食植物オフリス・スコーピオ:守》

 魔法・罠:なし

 

「…ハッ!なら、貴方の手札を破壊するわ!」

 

 ラビュリンスが手持ち無沙汰にこちらを振り返る。少しして、ラビュリンスが対象を取らない効果だと思い出したラーヴァはユーリの手札を破壊することにした。

 

 思いっきりプレミである。

 

「破壊されたのは『置換融合』」

「 」

「運が無かったね」

「ぼ、墓地の火吹炉と竜飾灯は罠でモンスターがフィールドを離れた時に効果を発動するわ。竜飾灯を手札に戻し、火吹炉を守備表示で特殊召喚」

「『置換融合』を発動。キメラフレシアをデッキに戻して1枚ドロー。…僕は2枚目の超融合を発動する」

「ゲェー!!」

 

 リアクションが面白い神様だとユーリは思わず破顔した。

 

「現れ出でよ!『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』!!」

 

【スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】

レベル8/闇属性/ドラゴン族/攻撃力2800/守備力2000

 

【ラーヴァ LP:4000 手札:2】

モンスター:なし

 魔法・罠:《裏側》

【ユーリ LP:2000 手札:2】

モンスター:《捕食植物トリフィオヴェルトゥム:攻》《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン:攻》

 魔法・罠:なし

 

「バトル!トリフィオヴェルトゥムでダイレクトアタック!」

「アタシは『フェアーウェルカム・ラビュリンス』を」

「LPを半分支払い手札から『レッド・リブート』を発動。お姉さんの罠は封じさせて貰うよ」

「うそでしょ…『ビッグウェルカム・ラビュリンス』をデッキから伏せる」

 

 カウンター罠になす術なくラーヴァは吹き飛んだ。

 

【ラーヴァ LP:4000-3000=1000】

 

「トドメだ!スターヴ・ヴェノムでダイレクトアタック!」

「アタシは迷宮城の白銀姫(レディ・オブ・ザ・ラビュリンス)を手札から特殊召喚!」

 

 スターヴ・ヴェノムの毒の牙を姫騎士の剣がラーヴァを守った。

 

【迷宮城の白銀姫】

レベル8/闇属性/悪魔族/攻撃力3000/守備力2900

 

「このカードはラビュリンスが効果を発動したターンに守備表示で召喚できる」

「一手を誤ったかな?僕はコレでターンエンド」

 

【ラーヴァ LP:1000 手札:1】

モンスター:《迷宮城の白銀姫》

 魔法・罠:《裏側》《裏側》

【ユーリ LP:1000 手札:1】

モンスター:《捕食植物トリフィオヴェルトゥム:攻》《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン:攻》

 魔法・罠:なし

 

「アタシのターン!」

 

 危うくワンターンキルされるクソ雑魚女神になるところだった。ネタ枠には入りたくないとラーヴァは気合いを入れ直した。

 

「竜飾灯の効果を発動!手札からこのカードと『代償の宝札』を墓地へ送り、『白銀の迷宮城(ラビュリンス・ラビリンス)』をセット!『代償の宝札』の効果により、カードを2枚ドロー!」

「そのカード僕にもくれない?」

 

 やらない。

 

「迷宮城を発動し、2枚目のアリアンナを召喚。『白銀の城の狂時計(ラビュリンス・クックロック)』を手札に加え、『ビッグウェルカム・ラビュリンス』を発」

「『増殖するG』を発動。このターン特殊召喚される度に1枚ドローする」

「さっきからガチガチだねぇ!?」

 

 墓地から土まみれで蘇った姫様がトリフィオヴェルトゥムを切り刻む。アリアンナは手札に舞い戻り、特殊召喚されたことでユーリはカードを引く。ラーヴァは突っ走るしかない。

 

「バトル!白銀姫は相手の効果では破壊されない!アンタのドラゴンの道連れにはされないわよ!」

「…もうひとりのラビュリンスは?」

「死ぬ。だから─突貫しろ!そして『フェアーウェルカム・ラビュリンス』を発動!」

 

 姫様は泣きながら自分の城にある罠を踏みつけて爆散した。残骸はデッキへと集まり、新たな罠としてラーヴァの伏せカードを生成する。マッチポンプだあ、とユーリは苦笑いした。

 

「白銀姫の効果により新たな罠『イタチの大暴発』をデッキから伏せ、家具2種も復活する。そして、白銀姫で攻撃!」

 

【ユーリ LP:1000 -100=900】

 

 仕留めきれない。ラーヴァの顔が歪み、ユーリは闘志の笑みを溢れさせる。凌ぎ切った確信が彼の反撃を産み出すのは間違いない。

 

「…アタシはコレでターンエンド」

 

【ラーヴァ LP:1000 手札:3】

モンスター:《迷宮城の白銀姫:攻》《白銀の城の火吹炉:守》

フィールド:《白銀の迷宮城》

 魔法・罠:《裏側》《裏側》

【ユーリ LP:900 手札:2】

モンスター:なし

 魔法・罠:なし

 

「僕のターン、ドロー!!」

「白銀姫をコストに『闇のデッキ破壊ウイルス』を発動。魔法を宣言!」

 

 融合使いの鉄板、魔法封じ。ユーリは歯を剥き出しにしてカードをデュエルディスクに叩きつけた。

 

「速攻魔法発動!『サイキック・サイクロン』!セットされたカードを指定し、破壊したカードが宣言通りならばカードを1枚ドローする!僕は罠カード(イタチの大暴発)を宣言する!」

「アタシは白銀の迷宮城(ラビュリンス・ラビリンス)の効果でラビュリンスを復活する!」

 

 ユーリが公開した手札の1枚が破壊される。手札の2枚のモンスターはウイルスの感染源にはならない。ラーヴァとユーリは静かに睨み合って思考した。出し抜くための手段を、勝ち切るための騙し合いを捌き切る為に。

 

【ラーヴァ LP:1000 手札:3】

モンスター:《白銀の城のラビュリンス:攻》《白銀の城の火吹炉:守》

フィールド:《白銀の迷宮城》

 魔法・罠:なし

【ユーリ LP:900 手札:2】

モンスター:なし

 魔法・罠:なし

 

「『捕食植物サンデウ・キンジー』を召喚!」

 

 融合を行えるモンスター。スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンを自爆特攻すればラーヴァのライフは尽きる。だが、アニメのカードに2枚目があるのか?

 

 ラーヴァは少しだけ考えて、アークファイブの最終回を思い出して『ある』と判断した。

 

「アタシは墓地の『ビッグウェルカム・ラビュリンス』の効果を発動!フィールドにレベル8以上の悪魔族がいる場合、相手フィールドのカードを手札に戻せる!アタシはキンジーを手札に戻し─ラビュリンスの効果により手札を破壊する!」

 

 ラビュリンスがユーリの手札を破壊する。墓地に送られたのはキンジーではないもう一つのモンスター。それを見てラーヴァは目を見開き、ユーリは脂汗を流しながら読み勝った快感に震えた。

 

「『捕食植物ヘリアンフォリンクス』…!相手によって破壊された際に墓地の植物族かドラゴン族を蘇生するカード…融合は─ブラフ!?」

「僕の融合にはこの窮地を脱出するカードは無かった。2択の賭け…皮一枚だった」

 

 ヘリアンフォリンクスにより蘇ったスターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンが高らかな咆哮を挙げた。ユーリから余裕の表情は完全に消えさった。手札は全て把握され、フィールドにいるのは『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』のみ。

 

 スターヴ・ヴェノムには破壊された場合に特殊召喚された相手モンスターを破壊して攻撃力の合計分のダメージを与える効果を持つ。ラビュリンスの攻撃力は2900。ユーリが受ける戦闘ダメージは僅か100。起死回生の一手にラーヴァは目を見開いた。

 

【ラーヴァ LP:1000 手札:3】

モンスター:《白銀の城のラビュリンス:攻》《白銀の城の火吹炉:守》

フィールド:《白銀の迷宮城》

 魔法・罠:なし

【ユーリ LP:900 手札:1】

モンスター:《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》

 魔法・罠:なし

 

「スターヴ・ヴェノム!!ラビュリンスに攻撃だ!!」

「ラストトラップだ!!」

「残るラビュリンスカードは破壊だけだ!自爆するスターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンを躱す術はない!!」

「隠し玉さあ!『トランザクション・ロールバック』の効果を発動!墓地の罠カードを発動する!アタシが選ぶのは─『イタチの大暴発』!!」

 

 攻撃を受ける寸前に、ラビュリンスが胸元か爆弾を取り出し着火する。地面に叩きつけた爆風はイタチとともに龍の全てを吹き飛ばした。

 

「何だって!?」

「相手フィールドのモンスターの攻撃力がアタシ以下となるようにモンスターをデッキに戻す!アタシのライフは1000!よってスターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンはデッキに戻る!!」

「いつ…いや!最初の手札コストのカードか…!!」

 

 盤面をコントロールしながら最後の最後までとどめを刺すためのキーカードを隠し持っていた事実に、ユーリは目を見開いた。

 

【ラーヴァ LP:500 手札:3】

モンスター:《白銀の城のラビュリンス:攻》《白銀の城の火吹炉:守》

フィールド:《白銀の迷宮城》

 魔法・罠:なし

【ユーリ LP:900 手札:1】

モンスター:なし

 魔法・罠:なし

 

 デュエルの勝敗は決着した。ユーリに出来ることはもはや存在せず、ターンエンドを宣言するだけだ。敗北が決定したユーリは目を輝かせてラーヴァに拍手した。

 

「凄いよお姉さん!!次があったら負けないからね!」

「こっちはもうやりたくないわよ…プレゼントをあげるから、大人しく突っ立ってなさい」

 

 弱肉強食。己のプライドに従ってユーリは目の前の強者を褒めた。だらだらと汗を流すままなラーヴァは息切れしながらフィールドにいるラビュリンスから武器を奪い取り、こづく形でユーリにダイレクトアタックをかました。

 

「ぐぇっ」

 

【ユーリ LP:0 】

 

 仰向けで倒れたユーリの胸に、ラーヴァは一枚のカードを構築した。カードがユーリに触れた瞬間、体内が沸騰したように熱くなる。苦痛はない。むしろ、今までの日常だった魂が離れていく感覚が無くなっていく。ズァークとして本能的に引き合っていた肉体と魂が完全に独立したことを、ユーリは本能的に理解した。

 

「貴方なら、いずれバリアン世界に招待できるかもねー」

 

 ユーリが目を覚ましたのは日がとっぷりと暮れた夕方だった。半日以上はゆうに寝ていた計算となる。素晴らしく軽くなった肉体を起こし、胸元にあるカードを手に取る。ユーリの新たなフェイバリット・カード。エクシーズの神から受け取った新たな力。

 

「『厄災の星(ロギアステラ)ティ・フォン』…」

 

 ユーリは宝物を大切にデッキケースに入れた。ユーリは強者こそを尊ぶ。わかりやすいほど力に溢れたカオスの象徴は、ユーリの脳内に深く刻み込まれた。

 

「バリアン人かぁ…もっともっと強くなれば、僕も神になれるかな…!!」

 

 ドン・サウザンドの部下が1人増えた瞬間だった。




ユーリ…その後本来のアニメより3倍は働いて10倍は暴れた。カード化せずに切り札を強奪する姿はまさに強盗犯。この世界線は『覇王龍の奇跡』が多分使われる。
ラーヴァ…クロノス先生を引き連れてエクシーズ次元へ逃亡。正直やってしまったかもしれんと思っている。ドンに愚痴ったら盛大に笑われた。エクシーズの子には融合解除を渡した。
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