あなたの能力は時間停止です   作:ハスキー大根

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閑話 1.5

 

表題: 特異性質を持つ精霊使いに関する経過観察

 

概要:

対象は外見上、10代半ばから後半に見える黒髪黒目の人間(純ヒューマン)である。

リスティン公国ラクサ村にて、大規模な魔術痕跡と共に発見された。この村はガリア帝国による侵攻予定地域であった。

 

発見時、ラクサ村には対象を除いて生きている人間は発見できなかった。村への侵攻の痕跡があったため、交戦があったと推測されるが、敵兵および村人の死体は発見されていない。

現場にて大規模な水属性および闇属性の魔術、あるいはそれに類する魔法が使用されたと推測される。

また、後日の調査によって、ラクサ村の湖付近に村人の埋葬地が発見されている。

※侵攻されたの日時を逆算すると、一人では墓の建設労働時間を確保できないことが判明。仲間および協力者の存在を探索する必要あり。

 

対象の風貌(黒髪黒目)は、近年大陸各地で確認されている「異世界人」の特徴と一致する。しかし、発見場所が古くから精霊信仰の対象となっている「月黒の湖」である点、またその能力の特異性を考慮する必要あり。対象の外見は、高位の精霊、あるいはそれに類する未知の存在による干渉結果である可能性が高い。

 

連行時、対象は一切の抵抗を見せなかった。その態度が諦観か自信から来るものなのかは、判別できていない。

 

さらに、既存の精霊使いには不可能とされていた直接的な殺人などの倫理的不法行為を可能とする能力を持つ。この特異性の由来は現在不明であるため、他の精霊使いにも応用可能かどうかは不明である。

 

対象に能力を使うように指示したところ、精霊力の発現を魔道具により確認できたため、対象が精霊使いであることに間違いはない。

 

 

 

観察記録:

 

保護 24時間経過

対象は独房の隅に座ったまま、ほとんど動かない。話しかけると返答があることから、生命活動は停止していないことを確認。目を閉じているが、睡眠状態ではないようだ。

また、長時間の移動後にかかわらず、特段文句を口にする様子はない。

※排泄の兆候が確認できない。ストレスによる影響を考慮する必要がある。

 

保護 72時間経過

対象の気配が極端に希薄であることに複数の職員が言及。監視魔術ですら、時折その存在をロストしかける。認識が困難になる時間帯があることを確認。対象が高度な隠密能力を保有すると仮定して以後の警備を行う。

※ロスト時に食事の配給に不手際があったことが発覚。50時間近く水分および栄養の補給をしていないはずだが、対象の体調に問題は見られない。

 

保護 120時間経過

尋問時の腕部の裂傷が、数時間後に完全に消失していることを確認。自己再生能力を有していると推測される。これは希少な魔術サンプルとしての価値を示唆するものであるが、同時に、物理的な拘束や無力化が困難であることを意味する。また、これ以上の観察は不要であると判断された。

 

 

所見:

対象は自身の出自や能力についての詳しい内容について、一貫して黙秘を貫いている。尋問による情報抽出は困難と判断。ただし、敵意や反抗の意思は希薄であり、コミュニケーション自体は可能である。

 

 

結論:

対象の能力は、暗部の工作部隊および戦闘部隊としても高い利用価値がある。

 

魔術研究部門への移管も検討されたが、対象の持つ戦闘能力および戦闘継続能力、気配遮断能力は、現在の戦況において、戦力として利用する方が価値が高いと判断された。

 

現在の戦局を鑑み、対象を当組織の実行部隊として編入することを提言する。

対象の目的や忠誠心の原動力は不明だが、「隷属の首輪」による最低限のコントロールと、任務を通じた行動監視により、その能力を我が国の利益のために活用すべきである。

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