恐竜大絶唱シンフォギア   作:あーくこさいん

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後編

《恐竜図鑑》File.05

【双刀騎兵】 ギガントスピノサウルス

 

 名前の由来:巨大な棘トカゲ

 分類:鳥盤目 剣竜類 ステゴサウルス科

 全長:約6m

 時代:ジュラ紀後期

 生息地(発見地):アジア(中国)

 

《Dr.ソーノイダの解説コーナー》

最も原始的なタイプの剣竜であり、スピノサウルスと名前は似ているが全くの別種である!

両肩に付いている巨大な棘が特徴的であり、尻尾の先には剣竜特有の二対の棘を持ち肉食恐竜とも互角に渡り合えるスペックを持つ‼︎

そして興味深い事に骨格の中から四つの装甲板が見つかり、一説では鎧竜との関連性があるのではないかと考えられている!

 


 

ゼウスがギガンティスとカタフラクトを召喚しティラノサウルスと相対している頃、響達も戦いの準備をしていた。

 

「まずいデス!先を越されちゃったデス!」

 

「仮にティラノサウルスが倒されたら、カードを奪われてしまうわ!」

 

「アタシらもいくぞ!」

 

するとそこへ瞬間移動装置にて翼とムサシがワープしてきた。

 

「何と…本当に瞬間移動出来るとは!」

 

「翼さん!」

 

「先輩!」

 

「皆、無事か!」

 

「はい、何とか!」

 

「でも、既にゼウスさんが来てて恐竜を二体召喚しています!」

 

未来の指差す方向には、ティラノサウルスとギガンティスとカタフラクトが咆哮し合い、今にもバトルを始めそうな一触即発の状況だった。

 

「確かにゼウスに取られたらまずい……こちらも加勢するぞ!」

 

「はい!」

 

そう言うと響と翼はガブとムサシをカードに戻し、ディノホルダーにスラッシュする。

 

「「ディノスラッーシュ!」」

 

「轟け!トリケラトプス!」

 

「湧き上がれ!スピノサウルス!」

 

 

ゴオォォォォォォ‼︎

 

グァギュオオオオッ‼︎

 

 

二人の掛け声と共に成体化するガブとムサシ。

二匹が降り立った次の瞬間、バトルフィールド内の空間がさらに歪み、なんと白亜紀の森林を模したフィールドに変わった。

 

「ええっ⁉︎」

 

「これは…!」

 

「バトルフィールドが変わった⁉︎」

 

「今までこんなの無かったのデス⁉︎」

 

「この光景…まさか恐竜時代の⁉︎」

 

「もしかして私達タイムスリップしたんじゃ…⁉︎」

 

「まさか!」

 

突然の事態に響達は驚く中、ゼウスが彼女らを諌める。

 

「落ち着け!タイムスリップなどしていない!これは同じ場所に恐竜が四体以上出現したからバトルフィールドがバージョンアップしたのだ!」

 

「バージョンアップ?」

 

「ああ、恐竜が同じ場所で集まる事でバトルフィールド内の環境が恐竜時代のものへと最適化する。その為、この様な環境になったのだ。」

 

ゼウスの説明により次第に落ち着きを取り戻していく響達。

対する恐竜達は自分達が住んでいた環境を見て、本能が刺激され気分が高揚していく。

 

「恐竜達も本来の環境で気分が昂っているな……ギガンティス!恐竜帝王ティラノサウルスに南米の覇者としての強さを見せてやれ!カタフラクトはギガンティスのサポートに回れ!」

 

ゼウスの指示に応えるようにギガンティスとカタフラクトがティラノサウルス目掛けて走り出す。

 

「しまった、先手を取られた!ムサシ、お前も行け!」

 

「ガブ、カタフラクトをお願い!」

 

翼と響の指示通りムサシはギガンティスとティラノサウルスとの戦いに乱入し、ガブは3匹の戦いに加勢しないようカタフラクトを妨害する。

それと同時に響達はシンフォギアを纏い、ゼウスに相対する。

 

「あくまでも妨害する気か……ならば真正面から叩き潰すのみ!」

 

ゼウスはメリケンサック型のアームドギアを装備し、構えを取る。

そして恐竜達の方もバトルに突入していた。

 

まずギガンティスが噛み付きをお見舞いしようとするが、ティラノサウルスは回避して体当たりを喰らわせ吹っ飛ばす。

その隙にムサシが飛び掛かるも尻尾の一撃を浴びせ、負けじと前脚を使って薙ぎ払おうとするが、それを避けムサシの腹の下に入り頭で持ち上げて投げ飛ばす。

投げ飛ばされ地面に激突したムサシはダウンしてしまった。

 

「マジかよ!」

 

「大丈夫か、ムサシ!」

 

「二匹相手に互角に渡り合うなんて…」

 

「流石は暴君竜……一歩も引かない構えね。」

 

一方、ガブの突進をいなし、返す刀でカタフラクトが尻尾の棘を喰らわせる。

こちらもほぼ互角の戦いを繰り広げていた。

 

「うむ…流石は恐竜帝王、ギガノトサウルスとスピノサウルス相手でも互角の戦いぶり……消耗を避ける為にもまずは二匹を倒しておくか。」

 

ティラノサウルスと戦う前にガブとムサシを先に倒す事を決めたゼウスはダイナラウザーを取り出し、技カードを二枚スキャンした後トリガーを引く。

するとギガンティスとカタフラクトの身体が光り出した。

 

「あの光…まさか!」

 

「技カードを繰り出すつもりデース!」

 

「大丈夫、技カードには技カードで!ガブ、【来雷蓄電(エレクトリックチャージ)】!」

 

「ムサシ、【暫流剣(ウォーターソード)】だ!」

 

響と翼もディノホルダーを取り出して、それぞれの技カードをスラッシュする。

それによってガブとムサシの身体が光り出すが、先手を取ったのはギガンティスだった。

 

ギガンティスの口から火炎が吐き出され、技を発動しようとしていたムサシを焼き尽くす。

 

 

爆炎壁攻(ボルケーノバースト)

 

 

喰らったムサシは倒れはしなかったものの、技の発動を阻止されてしまった。

 

「ムサシ⁉︎」

 

「バーベキューのようにこんがり焼いたデース⁉︎」

 

「凄まじい威力ね…!」

 

ギガンティスの新たな技に響達が驚愕する中、ガブの上空に雷雲が現れ、落雷がガブに直撃する。

それによって全身に雷を纏ったかの様に電流が迸り、角に蓄電される。

カタフラクトの方も地面から紫色の結晶を自身の周りに浮かせて、そのまま身に纏う。

双方共に攻撃準備が整ったガブとカタフラクトは相手目掛けて同時に走り出した。

 

「いっけぇー!ガブ!」

 

「突き崩せ!カタフラクト!」

 

2匹共勢いはそのままにガブは雷を、カタフラクトは結晶を纏った体当たりをお見舞いする。

 

 

来雷蓄電(エレクトリックチャージ)

 

結晶衝破(クリスタルブレイク)

 

 

双方の技同士がぶつかり合って数秒の拮抗があった後、ガブが大きく吹き飛ばされる。

そのまま転がっていき、力尽きたのかカードに戻ってしまった。

 

「ガブ⁉︎」

 

「嘘…!」

 

「ガブが…負けた⁉︎」

 

ガブが負けた事に響達は驚愕する。

 

「フハハハハッ!どうやら属性の相性が良かったようだな!」

 

「属性の相性…?」

 

「説明しよう!恐竜達には炎・水・雷・土・草・風の六属性があり、例えば炎属性は風属性に強い反面水属性に弱く、土属性は雷属性に強く草属性に弱いという特徴がある。今回の場合、土属性のカタフラクトと雷属性のトリケラトプスのぶつかり合いの結果、属性の相性がいいカタフラクトに軍配が上がり、トリケラトプスに大ダメージを与えたのだ。」

 

得意げに説明するゼウスはギガンティスとムサシの方を向く。

 

「…だが炎属性のギガンティスと水属性のスピノサウルスではこちらが相性が悪い。現にギガンティスの【爆炎壁攻(ボルケーノバースト)】のダメージ量がいつもより少ない……が、あそこまでダメージを与えたら後はカタフラクトだけで十分だ。カタフラクト、今度はスピノサウルスの相手をしろ!」

 

ゼウスの命令通りカタフラクトは標的をムサシに変え、攻撃を仕掛ける。

ムサシも応戦した為、ギガンティスはティラノサウルスとの戦いに集中出来るようになった。

そしてゼウスがジャンプし、ギガンティスの上に着地する。

 

「暴君竜ティラノサウルス!俺とギガンティスが貴様を打ちのめす!いくぞ!」

 

ゼウスの掛け声と共にギガンティスが咆哮を上げる。

ティラノサウルスの方も咆哮し返し、噛みつこうと襲い掛かる。

 

「ギガンティス、右に回避し反撃しろ!」

 

だが、ゼウスの指示通りギガンティスはティラノサウルスの噛みつきを右に回避して逆に首筋に噛みついて投げ飛ばす。

投げ飛ばされながらも体勢を立て直したティラノサウルスは今度は尻尾を勢いよく振るう。

 

「左から来るぞ、迎え撃て!」

 

しかしそれもギガンティスは尻尾に噛みつき、そのまま勢いよく投げ飛ばした。

このようにティラノサウルスの動きをゼウスは予測し、回避と同時に反撃する手をギガンティスに指示している。

そのおかげで完全にゼウスとギガンティスのペースに持ち込んでいた。

 

「どうなってんだ、オイ⁉︎」

 

「ティラノサウルスの攻撃が悉く回避されてるデース⁉︎」

 

「しかもしっかりと反撃している…!」

 

ゼウスの指示の的確さに驚愕する響達だが、そのトリックに翼は心当たりがある。

 

「まさか…!」

 

「何か分かったの?」

 

「立花、お前も見ただろう。奴には生体電気を読み取る事で対象のコンマ5秒先の動き予測する特殊能力があることを…!」

 

「はい!確か……電池眼です!」

 

「電視眼だッ‼︎」

 

響の言い間違いにゼウスが大声で修正する。

だが指示の途中で言い間違えを訂正した為、ティラノサウルスの体当たりを回避出来ず喰らってしまった。

幸いにもギガンティスは踏ん張り、体勢を立て直す。

 

「…話を戻すぞ。奴は電視眼を使いティラノサウルスのコンマ5秒先の動き予測し的確に反撃出来るよう指示している!」

 

「けど、さっきのやり取りで隙が出来たわね。」

 

「現にゼウスはギガンティスの指示に集中している、つまり…」

 

「ゼウスを妨害すれば動きを予測した指示が出来ず、結果的にギガンティスにダメージを与えられるデス!」

 

「ま、まさか…!それを証明する為にわざと電視眼の言い間違えをしたのか!」

 

「えっ⁉︎いや、その……さ、作戦通り!」

 

「嘘つけ。」

 

響の誤魔化しにクリスがツッコむ。

何はともあれ突破口が見つかった。

 

「そうと決まりゃこっちのもんだぜ!喰らいな!」

 

そう言うとクリスはリボルバー型のアームドギアを取り出し、ゼウスに向けて発砲する。

放たれた弾丸は徹甲弾のような形状へと変化し、薔薇のようなエフェクトを発生させながら軌道を自由自在に曲げて攻撃する。

 

 

HORNET PISTOLS

 

 

ゼウスは向かってくる弾丸を目にも止まらぬジャブで弾丸をすべて掴んだ。

 

「そんな!」

 

「弾丸をすべて掴んだ⁉︎」

 

「フッ、バカめ!そんな豆鉄砲でこの俺が倒せると思ったか!」

 

「問題無ぇよ。ギガンティスに隙が出来たからな!」

 

「何ッ……うわッ⁉︎」

 

そう、確かにクリスの攻撃を防いだが、それに集中して先読みやギガンティスへの指示が疎かになってしまう。

その結果ティラノサウルスがギガンティスの首筋に噛み付いた。

慌ててゼウスは飛び降りるが、首筋を噛みつかれたギガンティスに逃れる術は無い。

首筋に噛み付いたティラノサウルスは身体を回転させ、ギガンティスを振り回す。

そのままギガンティスを投げ飛ばすが、その方角にはムサシとカタフラクトが戦っていた。

先に気付いたカタフラクトは素早く回避するが、反応が遅れたムサシは飛んできたギガンティスに巻き込まれる形で激突し、二匹共カードに戻ってしまった。

恐竜が一定数以下になってしまった為、バトルフィールドも白亜紀の森林から赤レンガ倉庫に変化した。

 

「ムサシ⁉︎」

 

「ギガンティスは倒した、けど…」

 

「ムサシもやられちゃった…」

 

「ギガンティス……おのれッ‼︎」

 

自身の作戦を台無しにされたゼウスは、その原因であるクリスを標的に定め攻撃を仕掛ける。

電撃を纏いながら高く飛び上がり、ローレンツ力による電磁加速で威力と速度を増したドロップキックをお見舞いする。

 

 

電磁砲丸脚

 

 

もの凄いスピードで迫るドロップキックに避ける間は無く、クリスはモロに喰らいぶっ飛ばされる。

その勢いのまま赤レンガ倉庫に激突した。

 

「クリスちゃん⁉︎」

 

「なんて威力だ…!」

 

クリスを倒したゼウスはティラノサウルスの方に向き直る。

 

「…さて、ギガンティスが倒れた今ティラノサウルスを倒せるのはカタフラクトしかいない。頼んだぞ!」

 

ゼウスに応えるようにカタフラクトはティラノサウルスの方へと走り出す。

ティラノサウルスが噛みつこうとするが、カタフラクトの軽快なステップで回避し懐に入る。

そしてティラノサウルスの脚目掛けて尻尾を振る。

尻尾の棘がティラノサウルスの脛に当たり、苦悶の呻き声を上げ怯んだ。

その隙を彼は見逃さない。

 

「今だ、【テイルスマッシュ】!」

 

ゼウスが技カードをダイナラウザーにスラッシュしてトリガーを引く。

するとカタフラクトは咆哮を上げた後、ティラノサウルスの顔に尻尾による往復ビンタを喰らわせ、間髪入れずに身体を回転させての強力な回転打を浴びせた。

 

 

テイルスマッシュ

 

 

テイルスマッシュをもろに喰らったティラノサウルスは大きく吹っ飛ばされて近くの赤レンガ倉庫に激突する。

 

「嘘⁉︎」

 

「あの恐竜、ティラノサウルスを圧倒している⁉︎」

 

「小柄ながらなんて強い恐竜だ…!」

 

「カタフラクトは確かにギガンティスに比べて小柄だが、決して弱くは無い。恐竜本来のポテンシャルと技カードの組み合わせで、かの暴君竜とも渡り合えるのだッ‼︎」

 

ゼウスが力強く力説する。

ティラノサウルスとカタフラクトの戦いは後者の方が有利であり、ティラノサウルスが負けてしまうのも時間の問題だ。

ティラノサウルスを援護しようにもガブとムサシはやられてしまい、援護など出来ない。

万事休す……そう思われたその時。

 

赤レンガ倉庫の内部から赤い光が出た。

 

「何ッ⁉︎」

 

「倉庫が光った⁉︎」

 

「あの光……もしや⁉︎」

 

「クリスちゃんも⁉︎」

 

倉庫から出た光はやがて収まる。

翼と響が光の正体に気付いたその時、倉庫から二発の大型ミサイルがカタフラクト目掛けて飛んできた。

 

 

MEGA DETH FUGA

 

 

飛んできたミサイルにカタフラクトは何とか回避するが、爆風によって大きく飛ばされてしまう。

そして倉庫の中からクリスが出てきた。

 

「ゼウス、テメェの好きにはさせないぜ!」

 

そう言ったクリスの右手にはなんと石板が握られている。

 

「そ、それは炎の石板⁉︎何故それを⁉︎」

 

「ある意味テメェのお陰だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し遡り、ゼウスにぶっ飛ばされたクリスは赤レンガ倉庫内で痛さに悶えながらも起き上がった。

 

「クソッ……痛ッ!」

 

すると上から何か落ちてきてクリスの頭に当たる。

痛さにうずくまり、何が落ちたか確認するとそこには扇形に炎を模した絵が彫られた石板……炎の石板であった。

 

「これって…石板か?」

 

クリスが石板を拾うと近くにカプセルに入っていたもう一枚のカードがあった。

拾ってみるとティラノサウルスが炎を吐きながら恐竜に噛み付き、振り回しているカードである。

 

「石板だけでなく、技カードまで…うわッ!」

 

すると石板が光を放ち、クリスの身体が赤色の光に包まれる。

 

「なるほど…アタシも石板が使えるようになったって事か!」

 

クリスが納得すると光は収まった。

そして彼女は二本の大型ミサイルを生成し、カタフラクト目掛けて発射した………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…という訳で、アタシも石板の力を使えるって訳だ!」

 

「クソッ…なんという事だ…!」

 

「まさに【災い転じて福となす】ね。」

 

クリスを倒す筈が状況を悪化させた事に頭を抱えるゼウス。

そしてクリスは起き上がったティラノサウルスの方へと目を向ける。

 

「オイ、ティラノサウルス!お前の技カードだ!これでカタフラクトに一泡吹かせてやれ!」

 

そう言ってクリスは技カードを石板にスラッシュする………が、反応は無かった。

 

「あれっ⁉︎」

 

「反応しない…⁉︎」

 

「オイ、どうなってんだ⁉︎」

 

「ね、ねぇ!ティラノサウルスの様子が変だよ!」

 

想定外の事態に困惑している中、響が指差す。

その方向には先程起き上がって立ってはいるものの、足取りがフラフラしている。

 

「…なんかフラフラしてない?」

 

「戦う前からグロッキーな状態デス⁉︎」

 

「まさか…頭を強打して脳震盪を起こしたんじゃ⁉︎」

 

未来の言う通りテイルスマッシュを喰らい、赤レンガ倉庫に激突した際に頭を強打し脳震盪を起こしたのだ。

だが、それが技カードを使えない理由かというとそうではない。

 

「それで技カードが使えないんか⁉︎」

 

「いや違うな。石板と契約しても恐竜カードを読み込まなければ技カードは発動しない。恐竜カードと技カードが対応する属性の物質に一緒に触れた時、その恐竜は技を覚えた状態で実体化するが今回のティラノサウルスは恐竜カードのみで実体化した……つまり、石板に技カードをスラッシュしても技は出せん!」

 

「そんな…!」

 

「打つ手無しかよ…!」

 

ゼウスの説明に落胆する響達。

今度こそ打つ手は無い……

 

「まぁどうしても技を出したいのなら技カードを恐竜の口の中目掛けて投げるといい。そうすれば恐竜は技を出せるぞ。」

 

ゼウスが余計な説明を挟まなければの話だが。

そう、敵であっても律儀に説明する悪癖によってまた敵に塩を送る結果になった。

 

「…なるほど。ありがとな、ゼウス(バカ2号)!」

 

「バカ2号とはなんだ!バカ2号とは!俺の名はゼウス……あっ、しまったァァ!おのれ……まさか誘導尋問を仕掛けてくるとは…!」

 

「いや、貴方が自滅しただけだから…」

 

またしても敵に塩を送る状況を作ってしまったゼウスは絶叫し、周囲は呆れる。

クリスが彼をバカ2号と呼んだ理由も納得がいく。

 

「…いや、まだ手はある!現にティラノサウルスは脳震盪からまだ立ち直っていない。今のうちにケリをつけるぞ、カタフラクト!」

 

そう言ってダイナラウザーに技カード【結晶衝破(クリスタルブレイク)】をスラッシュしトリガーを引く。

すると地面から紫色の結晶を自身の周りに浮かせて、そのまま身に纏う。

そしてまだ回復し切っていないティラノサウルス目掛けて走り出した。

 

「まずいデス!あの技を喰らったらティラノサウルスは今度こそバタンキューデス!」

 

「でもティラノサウルスはまだ回復し切っていないし…」

 

「……そうだ!あれを使えば!」

 

「アレ?」

 

どうすれば良いのか分からず困惑する響達だが、ある物を見つけた未来が対応策を思い付き、飛んでいく。

その間にもカタフラクトは結晶を纏いながらティラノサウルスに迫っていた。

 

「フハハハハッ!これで勝負ありだ!」

 

勝利を確信したゼウス。

そこへ両腕部の鞭を使って何かを運んでいる未来がやって来た。

 

「カタフラクト、貴方の大好物よ!それ!」

 

そう言うと運んでいた物を投げ、中身を思いっきりぶち撒ける。

それは大量のブルーベリーだった。

そう、ブルーベリー専門店の露店から拝借した大量のブルーベリーをカタフラクトの前方にぶち撒けて気を逸らす作戦に打って出たのだ。

 

「アレって、ブルーベリー⁉︎」

 

「確かカタフラクトの大好物…!」

 

「なるほど、餌で釣る作戦か……だがッ!食い意地が張っているギガンティスならいざ知らず、理知的なカタフラクトにそんな小細工は通じんッ‼︎」

 

そう豪語するゼウス。

そんな中カタフラクトはティラノサウルス目掛けて突進し……たと思いきやぶち撒けられたブルーベリーの目の前で急ブレーキをかけて立ち止まり、ブルーベリーを貪り始めた。

目の前にティラノサウルスがいるにも関わらずである。

食い意地が張っているのはカタフラクトも同じであった。

 

「カタフラクト、お前もかァァ‼︎」

 

「敵を目前にしてブルーベリーを貪ってる……」

 

「ゼウスさんに強請っていたし、余程大好物なんだね。」

 

「ああ…だが、そのおかげで窮地を脱せた。」

 

「…なんだか彼が可哀想ね。」

 

カタフラクトの醜態にゼウスは膝から崩れ落ち絶叫する。

そんなゼウスに響達は少し同情した。

その間にもティラノサウルスは脳震盪から回復したようだ。

 

「…どうやら立ち直ったようだな。ティラノサウルス、お前の技カードだ!受け取れぇーーっ‼︎」

 

そう言ってクリスはティラノサウルスの口目掛けて技カードを投げる。

クルクルと回転しながらティラノサウルスの方へと向かっていき、口の中に飛び込んだ。

途端にティラノサウルスの身体から赤い光が出て、口元から炎が吹き出す。

カタフラクトが気付いた時には既に遅く、口から放たれた火炎を浴びて怯んだ矢先、ティラノサウルスは炎を吐きながらカタフラクトの首筋へと噛み付く。

そのまま身体を回転して振り回し、さらに回転によって吐き出した炎の勢いが増した事でカタフラクトは燃え上がった。

 

 

灼熱大車輪(フライトブレイズスピン)

 

 

その回転と炎の勢いのまま、ティラノサウルスはカタフラクトをぶん投げる。

燃え上がったままぶっ飛ばされたカタフラクトは、地面を焦がしながら激突し力尽きてカードに戻った。

バトルフィールドが解除された赤レンガ倉庫にてティラノサウルスは勝利の咆哮を上げる。

 

「よっしゃーーーッ‼︎」

 

「カタフラクトをやっつけたデス!」

 

「未来のお陰だよ!」

 

「あはは…こんなに上手くいくとは思わなかったけどね。」

 

ティラノサウルスの勝利に歓喜する響達。

ゼウスは自身の恐竜であるギガンティスとカタフラクトが負けた事にショックを受けたものの、呼び出したコープ号に乗り込み彼女達に向けてこう言い放つ。

 

「まさか三度も敗れるとは……特に神獣鏡(シェンショウジン)使いのそこの君!」

 

「…もしかして、私ですか?」

 

「そうだ!小日向未来といったか……計略でもって俺達を出し抜くとは、流石は戦乙女(ワルキューレ)の右腕たる智将!益々侮れん!」

 

「智将って…」

 

「コイツの評価、なんか可笑しくねぇか…?」

 

「だが、次はそうはいかん!覚えておれ‼︎」

 

そう言いコープ号のシリンダーからジェットを噴かし、直様退散した。

 

「いっちゃった…」

 

「ギガンティスとカタフラクトの新しい技、かなり強力だったね。」

 

「ガブもムサシもバタンキューデス。」

 

「でも、ティラノサウルスの奮戦で何とかなったね!」

 

「小日向の機転もな。」

 

「ま、何にせよお前のお陰だぜ、ティラノ……あれ?」

 

「ティラノサウルスが、いない…?」

 

「もしかしてカードに戻った?」

 

「っ!皆、見て!」

 

近くにいた筈のティラノサウルスが見当たらず、響達が探していると露店に放置されていた肉料理を片っ端から食い漁っていた。

ギガンティスとタメを張れる程の食欲である。

 

「バトルが終わったら、我が物顔で食べてマース!」

 

「相当お腹が空いていたのね。」

 

「やれやれ、お前も食い意地張ってんな…」

 

ティラノサウルスの食欲に呆れる響達。

するとマリアが何かに気がつく。

 

「でも、ティラノサウルスが食べた肉料理…代金どうするのかしら?」

 

マリアの指摘に気付いた響達は真っ青になっていく。

その間にもティラノサウルスは肉料理を貪っていた。

 

「ティラノサウルス!もう食うのを止めろ!その分の代金アタシ達が払う羽目になる!」

 

クリスがティラノサウルスの暴挙を止めようとするが、それをお構いなしに食べ続ける。

結局ティラノサウルスはしばらくの間食い続け、満腹になったのかカードに戻った。

無論、食い尽くされた露店の料理代含めた損害はS.O.N.G側が全て補填したという………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤レンガ倉庫でのバトルの後始末が終わり、響達はS.O.N.G本部にて情報の整理を行っていた。

 

「【撃槍のオーディン】に【妖光のヌアザ】か…」

 

「その二人が【主神三柱】の残りのメンバーという事ですね。」

 

「はい。あとゼウスが持っている【火山の石板】…差し詰め人工聖遺物である【融合型の石板】で二つの属性を掛け合わせている為、一枚の石板で二匹の恐竜を使役する事が出来ます。」

 

「加えて【融合型の石板】には【嵐の石板】と【自然の石板】がある事から、その二枚はオーディンとヌアザが持っていると考えられます。」

 

「それを加味すれば【主神三柱】が保有している恐竜は六匹と考えるのが自然でしょう。」

 

「うむ…装者三人に恐竜六匹か、相当な戦力だな。」

 

S.O.N.Gの司令官である弦十郎はDr.ソーノイダ一味が有する戦力に驚嘆する。

装者の数では優っていても、現状三匹の恐竜しか持っていない為恐竜の数では不利なのだ。

 

「だが幸いな事に【火山の石板】以外の石板が破損している都合上、ゼウスしか出撃出来ていません。」

 

「今はまだ…な。」

 

そんなやり取りをしていると、エルフナインがクリス専用のディノホルダーを携えてやってきた。

 

「クリスさん、貴方のディノホルダーが完成しました。」

 

「よっしゃ、アタシのディノホルダーだぜ!早速アタシの相棒を呼ぶぞ!」

 

「間違って大きくしないようにね。」

 

「分かってるよ。それじゃ出てこい、ネロ!」

 

クリスはそう言うとディノホルダーから恐竜カードを取り出し、読み取り部分にカードを手前から奥にスラッシュする。

すると3回ほどカードが点滅し、小さな光が足元に舞い降ると赤い身体に背中の黄色い二本の線、目つきは若干キリッとしたチビ恐竜姿のティラノサウルス……ネロが現れた。

 

『ギャウ。』

 

「結構可愛いデス!」

 

「クリス先輩、その“ネロ”ってこの子の名前?」

 

「ああ、ティラノサウルスって【暴君トカゲ】って意味だから暴君の代表格であるネロ皇帝から名付けたんだ。」

 

クリスがそう紹介するとネロは唸り始める。

 

『ギャルルゥゥ…』

 

「ん?どうした?」

 

『…ギャウ!(ガブリ)』

 

「…痛ってーーーッ‼︎

 

なんとネロはクリスの足に噛み付いた。

その痛みでクリスは絶叫する。

 

「大丈夫ですか⁉︎」

 

「ヤロウ、何対面して早々噛み付いてんだ…(ガブッ)ギャーーーッ‼︎だから噛み付くなーーーッ‼︎」

 

「飼い主に噛み付くとはね…」

 

「名前に負けず劣らずの暴君っぷりだな。」

 

「感心してる場合か!」

 

クリスとネロがパートナーとして仲良くなるには相当時間が掛かりそうであった。

 

「それにしても師匠、ソーノイダさんは恐竜を集めて何をしようとしてるんでしょう?」

 

「分からん……だが、あれだけ強力な戦力を持っている事は、我々には想像もしない何かを企んでいる筈だ。」

 

Dr.ソーノイダ一味の目的が何なのか……クリスがネロに悪戦苦闘しているのを他所に響と弦十郎は不安を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、パンゲア号の司令室ではDr.ソーノイダが椅子に座りチビ恐竜を膝元で撫でながら先程の戦いをモニターで見ていた。

 

「あのゼウスが三度も敗れたか。流石は幾度も世界を救った英雄……侮れんな。」

 

そう呟くと彼はモニターの映像を切り替える。

そこには二つの円形の石板がタンクにそれぞれ浸かっており、二つとも破損していた。

 

「破損した【嵐の石板】と【自然の石板】の修復率は依然芳しく無い……まぁ石板の修復には莫大なエネルギーが必要だ。今のエネルギー事情では修復に時間が掛かるのは明白……だがこれによってオーディンとヌアザの戦線投入はかなり先になる。」

 

Dr.ソーノイダは考え、そして決断する。

 

「本来であればキングたる者座して君臨するのが鉄則だが、この状況下ではそうも言ってはおれん。この我輩自らも出陣するしかあるまい。そうなればお前にも頑張ってもらうぞ……なぁ、ウィリアム。」

 

『グルァ?』

 

Dr.ソーノイダは膝元で撫でている灰色のチビ恐竜…【ウィリアム】に声をかけた。




お台場のライブ会場にてカルノタウルスが出現!
…が、どういう訳かマリアに一目惚れし懐いているだとォォ⁉︎
おのれ〜まさかカルノタウルスを誑かすとは、マリアめ許せん‼︎
我が息子であるパートナー恐竜【ウィリアム】よ!
カルノタウルスを誑かした売女(マリア)ともののついででいいから小娘共の恐竜をケチョンケチョンのギッタンギッタンにしてやれェ‼︎

次回、恐竜大絶唱シンフォギア
『ライブ会場でお披露目!
 Dr.ソーノイダの秘蔵っ子⁉︎』

我が息子、はじめてのバトルだァァ‼︎
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