あのバカの提案で横浜赤レンガ倉庫のグルメフェスに来たあたし達、しかし偶然にもゼウスもグルメフェスに来ていた。
彼の提案で一緒に食事し、彼から石板や【主神三柱】の事について教えて貰ったのも束の間、なんとグルメフェス会場でティラノサウルスが現れた!
ゼウスのパートナー恐竜ギガンティスとカタフラクト、ティラノサウルスによってガブとムサシはやられてしまったが、戦いの最中にあたしが炎の石板と技カードを見つけ、さらにティラノサウルスに技カードを与えた事でカタフラクトを倒した!
こうしてあたしにもパートナー恐竜“ネロ”が出来たが……食いしん坊な上にあたしに散々噛み付く程反抗的だった。
ネロ、後で覚えてろよ…!
前編
ここは東京お台場のライブ会場。
ここで翼とマリアの音楽ライブが行われようとしていた。
ライブ本番まであと2時間となり翼とマリアがレッスンに励んでいる頃、ライブ会場のVIP席には響と未来、クリス、切歌、調が座っていた。
無論ガブとネロも一緒である。
「楽しみだね、翼さんとマリアさんの音楽ライブ‼︎」
「もう響、はしゃがないの。」
『ガブガブゥ‼︎』
「ガブも待ちきれないようね。」
「余程このライブが楽しみなんデース!」
「ったく、飼い主もペットも感性は同じなんだな。」
「うん、まぁそれはそれとして……」
そう言うと一同はクリスの方を見る。
そこには、ネロに頭を噛みつかれているクリスがいた。
「…大丈夫、クリスちゃん?」
「もう慣れた。」
『グルゥ…』
ティラノサウルスのネロは食いしん坊な上に乱暴かつ反抗的な性格なので、クリスでさえ手を焼いていた。
今もクリスの頭に噛み付いている。
「この子、チビ恐竜になっても沢山食べてたね。」
「それでもって飼い主に対しても噛み付くとは、名前通りの暴君デース…」
「うっせー……」
そんなやり取りをしながら響達はライブが始まるのを楽しみに待つ。
ライブ会場では着々と準備が進められている中、その会場の小道具部屋になんと卵型カプセルがあった………
そして本番まで1時間を切り、翼とマリアはステージ衣装に着替え控室で待機していた。
「本番まであと少しか…」
「このまま、何事も無ければ良いけど…」
そんな事を呟いていた矢先、事件は起きる。
ライブ会場の小道具部屋にあった卵型カプセルが丁度部屋を片付けていたスタッフの腕に当たり、カプセルが落ちる。
落ちた衝撃でカプセルは割れ、中から3枚のカードが出てきた。
そして4枚のカードが風に吹かれ飛ぶと、白い光を放ちながら空中で実体化する。
その恐竜は全長8mの黒い身体に黄色い横線の模様、小さい前脚に頭部の角が特徴的な肉食恐竜………
突如として現れたカルノタウルスに周りのスタッフは皆パニックになった。
同じ頃、控室にいる翼のディノホルダーから発信音が鳴り響く。
「恐竜出現の発信音⁉︎」
「こんな時に…!」
翼はディノホルダーを取り出し、液晶画面を見る。
「場所は……何だと⁉︎」
「何、どうしたの?」
「出現場所は、ここのライブ会場だ!」
「何ですって⁉︎」
二人は恐竜が1時間後にライブを行う会場に現れた事に驚愕する。
無論、ライブ会場のVIP席にいた響とクリスのディノホルダーから発信音が鳴り響き、恐竜出現を察知する。
「あれ?響、ディノホルダーが鳴ってるよ。」
「えっ⁉︎こんな時に恐竜が現れたの⁉︎これからライブなのに!」
「場所は……
「もし恐竜が暴れて会場がメチャクチャになったらライブどころじゃないデース!」
「とにかく私達も行こう!」
こうして響達は現場に急行する。
一方、ここはパンゲア号内のDr.ソーノイダの私室。
そこでは彼のパートナー恐竜【ウィリアム】がクッションの上で寝ており、作業台ではDr.ソーノイダが彼専用のダイナラウザーを分解し整備していた。
分解したダイナラウザーの内部には円形にカラフルな虹色で【?】と彫られた石板…【秘属性の石板】があった。
やがて整備が終わり、ダイナラウザーの部品を一つ一つ丁寧に取り付け、最後の部品を取り付け終わるとうっとりとした表情でダイナラウザーを掲げ眺める。
「う〜む、流石は我輩専用の拳銃型恐竜召喚用ガジェット【ダイナラウザー】……いつ見てもかっこいいデザイン。退屈凌ぎで見た特撮物でモチーフ元のガジェットを見た時『これだッ!』と思って設計・製造した甲斐があったわい。やはり天災科学者たる者、先見性もデザインセンスも天災級という訳だな!」
彼がそう自画自賛すると、持っていたダイナラウザーから甲高い音が鳴り響き、撃鉄部分から立体映像が飛び出す。
映像には日本列島の関東圏から赤い点が点滅している。
「おお、恐竜が現れたか!ウィリアム起きろ!」
恐竜の出現を察知したDr.ソーノイダはウィリアムを起こし、パンゲア号の司令室へと急ぐ。
司令室へと入りコンソールを操作すると、東京のお台場に赤い点が点滅しているのを確認する。
「場所は……東京のお台場か!」
「ドクター、おそらくお台場にあるライブ会場、しかも今日は風鳴翼とマリア・カデンツァヴナ・イヴの音楽ライブ!それに伴い響達もここにいる筈!ギガンティスとカタフラクトを伴って行って参ります!」
そう言ってゼウスがギガンティスとカタフラクトを連れて行こうとするが、ゼウスが引き止める。
「待てゼウス!今回は我輩とウィリアムも同行しよう!」
「ドクター自らもですか⁉︎」
「そうだ、ゼウスしか出撃出来ない状況下で贅沢は言ってられん。行くぞ、ウィリアム!」
『グルァァ‼︎』
こうしてゼウスとDr.ソーノイダはそれぞれのチビ恐竜を連れてコープ号へと乗り込む。
操縦席にはゼウスが、中央の車長席にはDr.ソーノイダが座る。
出撃準備は整った。
「では、我らが
「了解‼︎万能戦車コープ号、発進‼︎」
パンゲア号からコープ号は発進し、お台場に向けて進撃していた………
恐竜出現を受けて翼とマリアが駆け付けた時には、会場はカルノタウルスの出現により大パニックに陥っていた。
「奴が今回の標的か!」
「あの牛のような角……あれはカルノタウルスね!」
マリアの声に気付いたカルノタウルスが翼とマリアの方を向き、特にマリアの顔をじっと見ていた。
しばらく見ていると、突如として二人に向かって歩き出した。
「え?………こっちに来てる⁉︎」
「マリア、逃げるぞ!」
追ってきたカルノタウルスから逃げる翼とマリア。
それに対しカルノタウルスは追跡を続ける。
その頃、響達は現場に到着する。
「恐竜は何処に…?」
「いたぞ、あそこだ!」
クリスが指差す方には、カルノタウルスに追われている翼とマリアがいた。
「翼さんとマリアさんが追われてる⁉︎」
「このままだと二人とも食べられるデス!」
「助けないと…!」
響達もカルノタウルスの後を追う。
その間にも翼とマリアはカルノタウルスに追いかけ回されていた。
「いつまで追ってくんのよ!」
「こうなればムサシを出して……どわぁ⁉︎」
「翼ッ⁉︎」
翼がディノホルダーからムサシのカードを取り出して召喚しようとするが、何かに躓いて転んでしまう。
マリアが駆け寄ると、翼の足元にある物を見つける。
それは扇形に風を模した絵が彫られた石板……風の石板があった。
マリアは風の石板を拾う。
「これって、石板⁉︎」
「ッ!マリア、後ろだ!」
「え⁉︎」
マリアが慌てて振り向くと、カルノタウルスが目の前まで迫っていた。
(…しまった!)
石板に気を取られしまい、逃げるタイミングを失ったマリアは死を覚悟する………が、
「………え?」
なんとカルノタウルスは自身の頭部をマリアの顔に近づけ、頬擦りし出した。
「これは…どういう事だ?」
「どうしたのかしら…?」
予想外の行動に二人は困惑していると、響達が駆け付けてきた。
「翼さん、マリアさん……ってあれ?」
「これは…!」
「何がどうなってんだ⁉︎」
「恐竜がマリアに懐いているデス⁉︎」
響達もカルノタウルスの行動に驚く。
「一体、どうして…?」
困惑するマリアをカルノタウルスはじっと見つめる。
そんなカルノタウルスとマリアの顔を響が見ていると、ある事に気付く。
「………ああッ‼︎」
「何だよ、大声出して!」
「何か分かったの?」
「あの恐竜がマリアさんに懐いているのって………」
カルノタウルスがマリアに懐いている理由を響が言おうとしたその時、上空からジェットの音が鳴り響く。
上を見ると万能戦車コープ号がジェット噴射しながら飛んできた。
「あれは、コープ号⁉︎」
「ゼウスさんが来ちゃったデース!」
コープ号はジェット噴射しながら、ライブ会場のステージ上へと着陸する。
しかし、中から人が出てくる様子は無い。
「…あれ?」
「出てこねぇな…?」
「どうしたのかしら?」
響達が訝しんだ次の瞬間、ステージ上のスポットライトが起動しコープ号を照らす。
「えっ⁉︎」
「スポットライトがコープ号を照らしてるデス⁉︎」
「というか勝手に起動した⁉︎」
「皆さん、大変です!」
すると緒川が響達の元へやってくる。
「あっ、緒川さん!」
「どうしたのですか⁉︎」
「先程、ライブ会場のモニターを始めステージの演出用装置が何者かによってハッキングされました!その為、スポットライトが完全に制御不能です!」
「「「えっ⁉︎」」」
響達が予想外の事態に驚愕する中、コープ号のハッチからゼウスが出てくる。
右手にマイクを握って盛大に叫んだ。
「レディース、アーンド、ジェントルメーン‼︎」
「お、おお…?」
「ゼウス、さん?」
「なんか始まったデース…?」
「今宵はお台場のライブ会場にて風鳴翼とマリア・カデンツァヴナ・イヴの音楽ライブ……その前に我らが
「恐竜…?」
「優生思想…?」
「それでは紹介しよう!
するとコープ号の上部にスポットライトが当てられ、迫り上がるように白髪にサングラスを掛け、白衣を着た男……Dr.ソーノイダとそのパートナー恐竜ウィリアムが登場する。
「フフフ… フーハッハッハッハ‼︎ごきげんよう、S.O.N.Gの諸君!我輩こそ恐竜を蘇らせ、恐竜界の頂点に君臨する天災科学者…Dr.ソーノイダだァァ‼︎」
『グウァァ‼︎』
満を辞して登場したDr.ソーノイダに対し、響達の反応は…ゼウス同様微妙であった。
「ドクター…ソーノイダ……」
「すっごい派手な登場だったな…」
「というか、わざわざ演出用装置ハッキングしてやる事?」
「Dr.ソーノイダ…!」
「ほう、マリア嬢か。F.I.S以来だな。ナスターシャにウェルは……もう居ないんだったな。」
「そういえばマムとウェル博士に7時間も恐竜について語ってたね…」
「懐かしいなぁ……本来は
「そりゃ7時間も聞かされりゃうんざりする………って、72時間⁉︎」
「7時間でもキツいのに三日間ぶっ続けで聞かされたら、気絶するよ!」
「というかドクター自身平気なの⁉︎」
「問題ない、恐竜の知識に関してなら1週間だろうと語り続けてやるわ!」
「ええ…」
「もの凄い恐竜愛デース…」
Dr.ソーノイダの恐竜愛に響達は若干引いたが、響が彼に聞きたかった事について聞く。
「ソーノイダさん、貴方は恐竜を好き勝手に改造したり、散らばった恐竜を集めたりして何をしようとしてるの⁉︎」
「…フッ、いい質問だな。その前に少し昔話をしよう。この際ハッキリ言うが、我輩は生まれながらにして天才だった。幼い頃から難しい数式も一目見ただけで理解する程のな。」
「えっ…?」
「何か語り出した…?」
「だが、それ故に全てがつまらなくなり、やがて虚しくなった。他人とは考え方が根底から違うから、他人が楽しいと思う物事に関心など抱かない。学校の問題も簡単に解けたばかりか、逆に自分から教える有様だった。そんなんだから教師から腫れ物のように疎まれ、同級生から変人と見られ嫌がらせを受けた。まぁ返り討ちにしたが、次第に周りは無視するようになった。」
「ソーノイダさん…」
「一人は気楽だから良かったが、当時の我輩は夢も希望も抱いていなかった。そんな日々を送っていたある日、親の都合で日本に移住した頃、退屈凌ぎがてらゲームセンターへと入った。そして中を散策していると、あるゲームが目に飛び込んだ。」
するとハッキングしたモニターから映像が映し出される。
それは火山が噴火している場所にて様々な恐竜が戦っていた。
その中でティラノサウルスとトリケラトプスが相対しており、互いに咆哮を上げながら突進していき、あわやぶつかる所で爆発と共に『恐竜王者ダイナキング』というタイトルロゴが映し出された。
「何これ?」
「恐竜王者ダイナキング……?」
「結構古いゲームのようだけど…」
「というか、本当にモニターをハッキングしてる…」
「これは2005年から2010年まで稼動していたトレーディングカード方式のアーケードゲーム…【恐竜王者ダイナキング】だ。恐竜カードとスキルカードを組み合わせて恐竜を強化し、じゃんけんで勝った方が攻撃出来るというシンプルなルール。そしてスキルカードから放たれる技はどれもこれも派手で迫力のあるものばかり。2000年代の古き良きアーケードゲームに当時の我輩はハマった。時間を忘れる程熱中し、親に怒られた。だが、このゲームが我輩が恐竜に興味を抱くきっかけになった上に、ゲームを通じて盟友が出来た。」
「そのダイナキングというゲームは分かったが、何か関係があるのか?」
「そう、ダイナキングを遊び続ける内にこう思うようになった……本物の恐竜でバトルしてみたいとな。」
「「「……は?」」」
彼の言葉に響達は困惑する。
それにもかかわらず彼は語り続ける。
「そんなのは不可能だと言うが、我輩には生まれ持ったこの頭脳がある。それをフルに活用すれば恐竜を蘇らせる事など造作もないと感じた。そしてある概念にも惹かれていった。このゲームの世界観では恐竜同士が戦い、勝ち残った恐竜には恐竜界を統べる偉大な王の称号…【恐竜キング】が与えられると。我輩はその恐竜キングに憧れを抱いた。そしてその時から夢が出来た。今まで夢も希望も無い人生に初めて色が付いたように…!」
彼は当時の事を思い出し、感極まって涙を流す。
「ま、まさか…」
「ソーノイダさんの目的って…」
唖然とする響達を他所に、一声置いて彼は宣言する。
「そう、我輩の夢は恐竜を現代に蘇らせ!その恐竜達と共に誰にも侵されない聖域に君臨し!その上で全ての恐竜を支配するキングオブキング……【恐竜キング】になる事だァァ‼︎」
Dr.ソーノイダは自身の夢を堂々と語る。
モニターにはデカデカと『恐竜キング』と表示されている。
彼の夢が明かされて数秒間、沈黙が会場を支配する。
「…ほう、我輩の壮大な野望に驚いて声も出ないか。」
「いや…」
「その…なんだな……」
(((想像以上に個人的過ぎる理由だーー‼︎)))
そう、あれだけの科学力を持ちながら、目的が個人的過ぎることに響達は脱力した。
「えっと、恐竜キングになる為だけに…」
「これだけの事をしたのか…」
「というか、恐竜キングって恐竜の中の恐竜の事だろ……」
「さて、話を戻そう。恐竜キングになるという夢を持った我輩はその夢の実現の為に生まれ持った天才的頭脳を駆使して恐竜の復活方法を研究していた。趣味の化石発掘に勤しみながら研究し続けていたある日、化石発掘現場から聖遺物…【石板】を発見した。その時からF.I.Sにスカウトの打診があり、国の研究機関ならもっとレベルの高い研究が出来ることからスカウトに応じた。F.I.Sに入り発掘した石板について研究した結果、ある事が分かった。この石板は約138億年前…つまりビックバンと同時に誕生し地球誕生時に隕石として衝突するまでの長い間宇宙を彷徨っていた事。極めて複雑なシリコン構造体で出来ており、地球上で誕生した多種多様な生物の情報…もとい【念】を吸収している事。そしてその念の中でも恐竜の念が遥かに強い事が分かった。」
「エルフナインちゃんの解説と同じ…!」
「ほう、欠片だけでそこまで解析したとは、お前達お抱えの錬金術師は余程優秀なのだな。その事が分かった時、我輩は思い付いた。その念を辿れば恐竜達の時代に行ける…つまりタイムワープ出来るのではと。ただこのまま国の機関で研究し続ける事に限界を感じた我輩達はF.I.Sを脱走し、我輩の発明をフル活用して資金を稼いで実験設備を完成させた。そして試行錯誤した結果、つ!い!に!恐竜時代に繋がる時空の扉…【タイムゲート】を完成させたのだァァ‼︎」
そう言いソーノイダは映像を切り替える。
そこには門のような形状の装置が鎮座しており、門の中は虹色に光っていた。
「これがタイムゲート…」
「左様。だが、ここで一つ問題があった。恐竜時代は勿論のこと、過去の地球にはアヌンナキという存在がいた。彼らが進化の可能性を探る為に地球を実験場にしていたのだ。そんな状況下でタイムワープしてみろ、未来にどんな影響を及ぼすか分からん。そこでこちらからアクセスするのではなく、逆に恐竜をこのサークル内へ転送する技術を編み出した!」
再び映像が切り替わり、サークル状の装置が映し出される。
すると装置の中央が光り始め、光が収まると地味な色合いのティラノサウルスが現れた。
そしてティラノサウルスをアームで掴み何処かへと運ぶ。
「あれって……ティラノサウルス⁉︎」
「でも体色が違うよ⁉︎」
「なんかネロと比べて地味な色合いだな…」
「こうして廃棄される筈だった恐竜達を無事保護してめでたしめでたし……とはならなかった。」
「え?」
「もう保護したから良いのでは?」
「おいおい、忘れたのか。我輩は本物の恐竜でバトルしたいと。そこで最後の難関が立ち塞がった。ダイナキングのスキルカードの技はどれもこれも派手で迫力のあるものばかり。故にそれらを保護した恐竜達にやらせたら最悪死んでしまう可能性があった。折角恐竜を保護したというのに死なせたとなっては本末転倒だ。そこで我輩は考え、そして閃いた。なら、バトルしても問題ないように恐竜達を改造すれば良いと。」
「「「………は?」」」
彼の突拍子もない発想に彼女達は唖然とする。
「実は石板を調べた結果、描かれている六つの絵は地球を構成する六大属性……火はマグマ、水は海、雷は生体電気、土は大地、草は森林、風は天候を表しており、それぞれ属性の力を宿している。そこで我輩は保護した恐竜達に石板の力を掛け合わせる事で強くてかっちょいい
さらに映像が切り替わり、先程のティラノサウルスが暴れないように固定されていた。
すると金型のような装置が迫り出して、左右から恐竜を挟み込んだ。
装置から蒸気が噴き出してしばらくすると、装置が開き中から赤い体躯に背中の二本の黄色い線のティラノサウルス……ネロが出てきた。
そのまま床のベルトコンベアで運ばれ、ティラノサウルスはカードになりアームで回収され何処かへと運ばれる。
「嘘…⁉︎」
「色が変わりやがった⁉︎」
「ティラノサウルスの姿がネロみたいになったデス⁉︎」
「っ!見て、他にも!」
そして映像をよく見るとティラノサウルス以外にも様々な恐竜が固定され装置に挟み込まれ、姿形が変わりそのままカードにされて運ばれていく光景だった。
その中にはスピノサウルスがムサシと同じ姿になり、トリケラトプスがガブと同じ色合いになっていく光景も目の当たりにした。
「だからムサシの姿が図鑑と違ったのか…!」
「ゼウスさんの言う通り、ガブ達はソーノイダさんによって好き勝手に改造されたんだ!」
「なんて酷い事を‼︎」
Dr.ソーノイダの所業に響達は憤慨するが、彼は説明を続ける。
「恐竜達を
映像が切り替わると、そこには宇宙空間に君臨する赤い巨大円盤…【パンゲア号】が映し出されていた。
「これって…」
「杭打ったり、カラフルなビーム撃ったり、自爆したりした、あの訳分かんないUFOデース‼︎」
「フフフ… フーハッハッハッハ‼︎どうだ驚いたか!これぞ我輩の崇高な設計思想に基づいて設計・建造した超巨大アダムスキー型円形全翼宇宙船…【パンゲア号】だァァ‼︎直径6kmの広大な空間には例え地球が滅びようとも恐竜達が何不自由なく暮らせるように多種多様な恐竜時代の環境を再現した空間を多数完備!さ!ら!に!アヌンナキの一柱であるシェム・ハとの戦いに備えて地球全土を焦土に変える戦略兵器も搭載している!」
「おい、今聞き捨てならねぇ事言ったぞ‼︎」
「地球全土を焦土に変える兵器……そんな危険な物を搭載してるの⁉︎」
「その通り!最もお前らの健闘のお陰でそれを使う事は無かったがな。それにしても本当に偉大な船だ……全財産の7割と4年の月日を掛けた甲斐があったわい。無論このパンゲア号にはネオ・ユグドラシルシステムを搭載しており、それを動かすエネルギーは石板で賄い、全ての準備が整ったこの瞬間を持って【フェルマータ島改造計画】を始動!その結果隆起中だったフェルマータ島は豊かな自然が入り乱れる南国の楽園となったのだァァ‼︎」
モニターの映像には、隆起中のフェルマータ島目掛けて虹色のビームが放たれ、島全体が変色した後にフェルマータ島の環境が様変わりし自然豊かな南国の楽園へと変わっていく光景が映し出されていた。
「その後はフェルマータ島に降り立ち、恐竜達を楽園に解き放って入植を開始するだけ……だがここで大きなトラブルが発生した。石板から抽出したエネルギーの量が膨大でそれを制御するスタビライザーがオーバーヒートし、エネルギーが無秩序に増幅した後爆発。これによってパンゲア号は損傷し墜落してしまった。まぁなんとか応急修理が出来たから大事には至らなかった……し!か!し!爆発の影響でオリジナルの石板を全て失ったばかりか我輩がカプセルに保管してある恐竜カードの0.01%が宇宙空間に放り出され、地球に降り注ぎ世界中に散らばったのだァァ‼︎なんたる醜態!恐竜キングにあるまじき失態だァァ‼︎」
彼が怒り心頭の状態で語るのに対し、響達は少々呆れていた。
「たったの0.01%…?」
「もういいだろ、0.01%くらい…」
「いいわけあるかァァ!恐竜キングになろうとしているのに恐竜が0.01%も欠けていてはキングの面子丸潰れだァァ‼︎」
「どんな面子だよ…」
クリスが呆れるのも意に介さず、Dr.ソーノイダは響達の方を向く。
「…さて、話は終わりだ。我輩が恐竜キングになる為にも全ての恐竜カードは我輩の手の元に置かなければならないのだ。貴様らが持っている恐竜カードと技カード、きっちり耳揃えて返して貰おうか!」
「…駄目!ガブ達は渡さない!」
「これ以上恐竜達をお前の欲望のまま弄ばれてたまるか!」
「生憎ネロは反抗的で手に負えないが、あたしの相棒だ!お前に渡すかよ!」
響達は当然拒否するが、Dr.ソーノイダは大きくため息を吐く。
「…そうか。なら我輩も考えが……ん?」
「ちょ、ちょっと…!くすぐったいってば…!」
一触即発の状況にも関わらず、カルノタウルスはマリアに頬擦りをしていた。
その光景を目の当たりにしたDr.ソーノイダはカルノタウルスがマリアに懐いている事に気付き、同時に嫉妬した。
「オイ、マリアァァ……!」
Dr.ソーノイダはマリアに対して無表情で語りかける。
その声には怒気が孕んでいた。
「そ、ソーノイダ、さん?」
「…なんか怒ってない?」
「我輩、お前をナスターシャのお気に入りにして世界相手に喧嘩売った女傑と思っていたが……どうやら見当違いだったようだな…!」
「何かしたのか、マリア?」
「何もしてないけど…」
すると彼は一声置いて、こう言い放つ。
「恐竜キングを目指す我輩の目の前で、カルノタウルスを誑かすとはどういう了見だ貴様ァァ‼︎」
Dr.ソーノイダが恐ろしい剣幕でマリアを非難する。
対するマリアはギョッとするが、即座に否定する。
「ちょ、ちょっと!誤解よ!この子が勝手に懐いただけで誑かしては……」
「許さん…許さんぞ……!ただでさえパートナー恐竜のウィリアム以外我輩に懐く恐竜が居ないというのに……‼︎当てつけか!当てつけのつもりかァァ‼︎」
Dr.ソーノイダは余程悔しかったのか、サングラス越しでも分かるほどの血涙を流す。
「ド、ドクター!大丈夫ですか⁉︎目から血の涙が!」
「絶唱以外で血涙流す人初めて見た…」
「大丈夫だ、問題ないッ!今日は我輩の恐竜王国完成を邪魔をしてくる小娘に灸を据える為に出撃したが、今回の狼藉は見過ごせん‼︎恐竜キングを目指す者として、あの
Dr.ソーノイダはマリアを指差し罵倒する。
「クソビッチ⁉︎」
「ちょっと、なんて事言うんですか!」
「ファンが聞いたら袋叩きにされるぞ⁉︎」
「マリアはビッチじゃないデース‼︎」
「いくぞ、ウィリアム!我輩の恐竜を誑かした
『グルルゥ…!グルウァァ‼︎』
するとウィリアムはカードに戻り、Dr.ソーノイダが左手でキャッチする。
そしてカードをダイナラウザーにスラッシュし、召喚口上を述べた。
「ダイナラウズ!煌めけ、メガロサウルス!」
召喚口上と共にトリガーを引くと、銃口から虹色の光弾が発射される。
虹色の光に包まれたウィリアムは手足から変化していき、成体化を果たす。
その姿は全長10mに及ぶ灰色の身体に黒と白の模様、前脚3本後ろ脚4本の指と鋸歯が特徴的な大型肉食恐竜………
成体化しステージ上に降り立ったメガロサウルスことウィリアム。
ネロやムサシと比べて一回り小さいが、響達はウィリアムに圧倒される。
それもその筈、ウィリアムの全身に虹色のオーラを纏っており、その光は眩いほど強かった………
《恐竜図鑑》File.06
【肉食の猛牛】 カルノタウルス
名前の由来:肉食の雄牛
分類:竜盤目 獣脚類 アベリサウルス科
全長:約8m
時代:白亜紀後期
生息地(発見地):南米(アルゼンチン)
《Dr.ソーノイダの解説コーナー》
南米に生息していた肉食恐竜であり、一番の特徴は頭部の2本の角!
雄牛のような角は武器として使うには強度が不足している為、メスへのアピールやオス同士の威嚇など種内のディスプレイとして機能していたと考えられる!
さ!ら!に!縦に長く横につぶれたようなブルドッグを思わせる顔つきにティラノサウルスよりも小さい前脚など見た目的に結構可愛い所もあるが、地球上最大級の尾大腿筋により大型獣脚類の中でもトップクラスのスピードを誇る恐竜なのだァァ‼︎