ラブライブ!スーパースター!! Create the future 作:園枝こるだ
教室──────
「おはよ、メイ、四季。」
もう席に座っているメイと四季に声をかける。
四季「おはよう、創。」
メイ「ん、ん、んんん……」
メイは何やらスマホとにらめっこしているようで僕が来たことに気づいていないようだ。
「何見てるの?」
四季「今年のLoveLive!の詳細が発表されたんだって。」
四季ははぁ、と呆れながら朝からずっとこんな感じだと教えてくれた。
「なるほどね……」
そうして2人でやれやれと思ってメイを見つめていると、メイの向こう側にある廊下を灰色のものが通過していくのが見えた。
「今の……可可先輩……?」
四季「わからない、早かった。」
少し経ってから可可先輩の興奮しきっている声が聞こえる。上から。
どうやら屋上にいるらしい。
可可「今年のLoveLive!の詳細が発表されマシた~!!」
校内放送「発表されマシた~!」
「え、校内放送までジャックしてるのこれ。」
ばさばさと大きな音を立てて屋上から横断幕が垂れる。
すみれ「こら~!!可可!!あんた何してんのったら何してんのよ~っ!!」
また廊下を見知った顔の人が走り抜けていった。
その様子を僕と四季は廊下から顔だけ出して覗き込んでいた。
かのん「あ、いた!創くん、四季ちゃん!今日放課後予定ある?」
可可先輩とすみれ先輩を追いかけてきたのかはぁはぁと息を荒らげているかのん先輩が僕と四季の近くで立ち止まる。
「予定は特にないです。」
四季は私も、と小さく手を挙げる。
かのん「よかった、メイちゃんときな子ちゃん、夏美ちゃんにも伝えておいてくれる?」
おねがい!と顔の前で手を合わせるかのん先輩にわかりました、とサムズアップして返す。
かのん「ありがと!じゃあよろしくね。可可ちゃん、すみれちゃん、先生すっごい怒ってるから!一旦ストップ!!」
そそくさと僕たちにお礼をして2人の先輩が走り去って行った方に向かっていく。大変そうだな……と後ろ姿を眺めていた。
四季がひょい、と僕の顔を覗き込みよかったね、と一言。
「べ、別に!ただ頼み事頼まれただけだから!」
夏美「何朝から顔赤くしてるんですの。」
遅れて登校してきた夏美と目が合った。そんなに顔赤いんだと恥ずかしい気持ちになる。
四季「かのん先輩と話せて嬉しいみたい。」
夏美「あぁ、そうなんですの。」
合宿中の不慮の事故により僕の想い人がかのん先輩だとメイ、四季、夏美の3名にはバレてしまっている。そこから執拗なイジりが始まっているのはこのやり取りからわかるだろう。
夏美「何事もほどほどにですの~。」
夏美はひらひらと手を振り自分の席へ荷物を置く。
「これ、いつまで続くんだろ……」
はぁとため息をつきながら僕も自分の席へと戻る。
放課後、かのんの家──────
以前立寄ったかのん先輩の家。どうやらカフェを経営しているようだ。
その時の賑やかな様子とは違い、室内の電気は消されており、店の外の立て看板には本日貸切と張り紙が貼られている。
店の中に入ると可可先輩がぼんやりと立っており、その頭上にあるスマホからライトが照射される。
可可「遂に、遂にLoveLive!の詳細が発表になりマシた~!!」
パンと大きくクラッカーの音が店内に響く。
すみれ先輩は可可先輩を呆れ顔で見つめ、カチッと店内のライトを点ける。
すみれ「朝もう聞いたわ、てかなんなのこれは!」
すみれ先輩はメロンとパンダを合体させたかのような被り物を被らされていた。
四季「お土産。」
夏美「メロン好きって聞いたんですの。」
空港で買ってたあれすみれ先輩用だったのか……
「かのん先輩ありがとうございます、貸切だなんて。」
かのん「いえいえ!平日なんてお客さんあんまり来ないし。」
かのん先輩はカウンターの中に立ってコーヒーを注いでいる。
千砂都「ちなみにこの子がマンマルだよ!」
四季「丸い……!」
窓際の止まり木に優雅に佇んでいるフクロウ、マンマルを興味津々といった様子で四季が眺めている。
可可「そんなことより!!」
可可先輩が視界の外からばっと飛び込んでくる。
可可「LoveLive!ですよ!!」
すみれ「発表でしょ、去年もやったんだから今年もやるわよ。」
可可先輩はターゲットを僕からすみれ先輩に変え、目をつり上げる。
可可「そういう心構えだからすみれはダメなのデス!」
かのん「それで、今年の大会の内容は?まだ、聞いてないよね。」
可可先輩は付けていた蝶ネクタイをぴんぴんと引っ張り、クラッカーをマイクのように持ち替えて咳払いをしている。
その最中に僕らはすみれ先輩のスマホに表示されている大会の内容に釘付けになっていた。
すみれ「なになに、今年の予選はリモートで開催、歌は全て自由……」
可可「のわ~!先に言ってはダメデス!!」
可可先輩はあぁ~と言って床にへたれこんでしまう。
千砂都「へぇ~、去年みたいに独唱とかラップみたいな課題はないんだね。」
メイ「予選をリモートで開いて、東京大会に進出するチームを一気に絞り込むみたいだな。」
四季「それだけ、予選突破のハードルは上がった。」
新体制のLiella!がチャンネル登録者を伸ばす一方どんどん新しいスクールアイドルグループが発足されているのは確かである。予選突破も楽ではない。
かのん「けど、やりたい曲で勝負はできる。」
真面目な空気の一方可可先輩は奥でしゃがみこんでいた。
可可「もう可可が話そうと思ってたこと、全部話されてしまったデス。」
「ま、まぁまぁ……みんなそれだけ熱意があるってことですから……」
いじける可可先輩を必死に宥める役目は僕になってしまった。
後日、練習中──────
すみれ「で、曲はどうするの?」
千砂都「ん~、部長としてはやっぱりかのんちゃんが作詞、恋ちゃんが作曲がいいと思う。」
かのん「せっかく1年生が入ったのに?」
ストレッチしながら作曲談義に花が咲く。
きな子「でも、きな子たちは初めてっす。LoveLive!出るの……」
夏美「むしろ私たちはいるだけで新鮮とも言えますの。」
物は言いようでもあるが確かにその通りではある。実際先日の学園祭ライブもセンターを務めた夏美に対して、もしくは1年生に対してのコメントが多かった。
かのん「それはそうだけど……ん?」
かのん先輩がなにかを見つけたようで視線を移す。それに促されるようにみんなも視線を同じ方向へ移す。
視線の先には心ここにあらずといった感じの恋先輩が。何かをブツブツと呟いている。
恋「実績……あとひとつ……」
千砂都「恋ちゃーん、おーい。」
千砂都先輩がぶんぶんと目の前で手を振るとはっとしてこちらに顔を上げる。こんなにも覇気のない恋先輩の顔は初めて見た。
恋「ここで後ろに周り込んで一撃……ここでパリィ……」
メイ「なーに言ってんだ?」
「パリィ……ってゲーム用語、だよね。」
かのん「恋ちゃんがゲーム?そういえばこの前やってたね……」
この前というのは夏美が加入する前、みんなで可可先輩の家で遊んだ時である。確かにその時に恋先輩はゲームに興味津々の様子だった。
可可「生徒会の仕事もかなり忙しいらしいデスよ。」
次の日、理事長室──────
理事長「オーバーワーク?」
かのん先輩と僕は理事長室に赴いていた。そう恋先輩のことである。
「はい。生徒会の仕事の内容、一般生徒にはわからないので何か教えて頂けたらと。」
理事長はうーんと顎に手を当てている。
理事長「そうねぇ……色々あるんだけど、あの子全部一人でやってるみたいなの。」
創、かのん「全部一人で!?」
理事長「そうなの、だからそろそろ書記や会計も入れて生徒会をちゃんと作った方がいいと忠告したのに……」
理事長室に重い空気が流れる。全部一人で仕事を……
創、かのん「失礼しました。」
理事長室から出ると、廊下の奥から恋先輩がこちらに向かって走ってくるのが見えた。
恋「かのんさん、創さん!すみません……気づいたらこんな時間で……」
かのん「ううん、それより恋ちゃん忙しそうだね。」
かのん先輩がそれとなく恋先輩の生徒会のことについて触れる。かのん先輩と少し話した時に言っていた。
かのん『恋ちゃんの助けになりたいんだ。私にもできることがあるなら。』
「恋先輩、生徒会のメンバー募集したりしないんですか?」
恋「そ、そうですね……今のうちは……」
うーんと少し考えている様子だが、おそらく募集する気はさらさらないのだろう。
恋「それより、LoveLive!発表になったんですよね。」
かのん「う、うん。だから作曲始めたいなって……」
翌日、放課後──────
メイ「恋先輩、作曲引き受けたのか?」
メイが少し後ろを歩く僕を見る。
夏美「大丈夫なんですの?」
「うん、かのん先輩が何度も聞いたんだけど……」
恋『心配ご無用です!』
「って……」
メイ「責任感強いんだなぁ……あ、教室にノート忘れた。先行っててくれ。」
それを聞いて僕もノートを忘れた旨を伝える。
まぁ嘘だけど、恋先輩の様子が気になるから音楽室に見に行ってみようと思ったのだ。
音楽室──────
メイに少し音楽室寄っていかない?と聞くと快く快諾してくれた。メイもどこか思うところがあったらしい。
メイ「ピアノを弾く時はその時の心が大きく影響すんだ。」
「心?」
メイは僕の言葉に頷く。
メイ「あぁ、心が真っ直ぐなら綺麗に弾けるし、その逆も然りだ。乱れてたらどうやっても弾けねえんだ。」
メイは自分の手を開き静かに見つめる。
以前メイが人間関係のストレスによってピアノが全く弾けなかった時のことを思い出した。
「そっか……恋先輩大丈夫かな……」
話しながら歩いていると音楽室の前にたどり着く。読み通り恋先輩はピアノ椅子に座っているが、ピアノの音色は聞こえない。
その代わりに電子音?らしき音が小さく聞こえる。
恋「いける、いける、くっ……そこぉ……」
メイ「何やってんだ……?」
メイはガラガラと音楽室のドアを開け恋先輩の方へずんずん進んでいく。
「ちょ、ちょっとメイ!」
僕は慌ててメイの背中を追いかける。
そうして僕たち2人は恋先輩の背中の方に回り込む。まだ恋先輩は僕たちに気づかない。
先程の電子音の正体は……スマホゲーム……?恋先輩のスマホにはGAME OVERの文字がでかでかと表示されていた。
メイ「なんだそりゃ……」
恋「はい……深淵の王フニロードです……ここが全く進めなくて……」
「深淵の王、フニロード……?」
やっと恋先輩は横に僕たちがいるのに気がついたらしく、壊れたロボットのように首をぎぎぎ、と横にねじる。
そうするといきなりばっと立ち上がりすごい勢いで頭を下げる。恋先輩のポニーテールが斧のように僕とメイの間に振り下ろされた。
恋「メイさん!創さん!お願いしますこのことは誰にも言わないでください!!」
メイ「い、いや……その……」
「言いませんよ……?」
恋先輩は気が気じゃないようで目ががたがたと泳いでいる……というよりは痙攣してるのに近い感じだ。
恋「そうだ……メイさんはスクールアイドルお好きでしたよね、今すぐサニパさんに……」
メイ、創「一旦落ち着いて!!」
僕とメイは恋先輩の肩を片側ずつがっしりと掴む。
メイ「一体何があったんだよ……」
恋先輩は神妙な面持ちでこちらに振り向く。僕はその様子にごくりと生唾を飲み込んだ。
恋の家、とある部屋──────
恋先輩に案内された部屋の中にはゲーム博物館と名称するのが相応しいほどに多種多様なゲーム機が置かれていた。
メイ「嘘だろ……」
恋「まさかこんなことになるとは……」
恋先輩は怒られた犬のように大人しくなってしまっている。
「それにしてもすごい数……こんな大きいスクリーンまで……」
恋先輩がお嬢様なのは知っていたがまさかここまでとは思わなかった。ゲームセンターでしか見ないような大きい筐体のゲーム機まで取り揃えられている。
恋先輩が言うには可可先輩の家でゲームを遊んだのが始まりで、いつの日か朝から晩までゲームをしてしまったらしく、そこからのめり込んではお父さんから新しいものが送られてきて……の無限ループに入ってしまったとのこと。
恋「試しにメイさんや創さんもどうぞ、遊びたいものがあれば。」
メイ「えっいいのか?」
「確かに……ここまであるとやってみたくなりますね……」
それから少しやらせてもらうつもりのはずが僕たちはゲームにのめり込んでしまった。まさにミイラ取りがミイラになってしまった。
「こ、こんなことになるはずじゃ……」
恋「こうして毎日充実したゲームライフを送っているうちに……」
メイ「寝不足ってわけか……」
はい……と恋先輩はしゅんとしている。
おもむろにじゃらり、とキーホルダーがついた鍵を取り出す。
恋「あの、これを預かっていただけませんか……?」
創、メイ「はい?」
恋「この部屋の鍵です。作曲が終わるまで……メイさん、創さんどちらでもいいので!!」
「なにも僕らじゃなくても……」
メイ「そうそう、かのん先輩にでも持っといてもらえば……」
恋先輩は手で顔を押さえる。
恋「そういうわけにはいかないのです……仮にも私は生徒会長、この学校をまとめる存在、こんなことがバレた日には……」
妄想かのん『生徒会長がゲームに夢中の学校がぁ?』
妄想可可『LoveLive!で勝てるわけないデス……!』
妄想すみれ『がっかりだわ。』
妄想千砂都『まる……じゃない!』
妄想かのん『恋ちゃん……嫌い……』
恋先輩の妄想が直接頭に流れ込んでくる。こんなこと言うかなぁ……
恋「はぁぁぁ……スクールアイドル部は終わりです……!」
メイ「千砂都先輩だけキャラ違くないか……?」
恋「お願いします!ゲームさえなければ……今までの私に戻れるのです!」
僕とメイの前にずいと鍵が差し出される。
メイははぁ、と溜息をつきながら鍵を受け取ろうと指を伸ばす。
そうするとすいっ、と鍵が上に引き上げられる。
恋「あと30分、あと1時間……いやあと半日、明日……とかでも。」
大分後味が悪そうに恋先輩が振り向く。
メイ「あのなぁ……」
「残念ながら没収ですね……」
しょんぼりとする恋先輩からメイは鍵を受け取った。
今回も読んでいただきありがとうございます。
2期で一番好きな話を書けて嬉しいです。やっぱりUR葉月恋は神回だと見返してて思います。
次回も読んでいただければ幸いです。