ラブライブ!スーパースター!! Create the future   作:園枝こるだ

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第13話「神谷創」

マルガレーテ『ならあなたはなんなの?Liella!なのか、Liella!じゃないのか。』

マルガレーテ『踊りもしない、歌いもしない、ステージにも立たない。あなたは一体何のためにいるの?』

先程の言葉がずっと頭の中で響いている。僕は一体何のためにいるんだろう。僕は、何ができているんだろう。

そんなことを考えていたら、段々と足取りが重くなっていた。集中しなきゃ、恋先輩に任された仕事がある。

そうだ、昭和コミック同好会。探さなきゃ。

千砂都「あ、創くん!」

ふらふらと校舎の方へ向かうと、キッチンカーの中から千砂都先輩が声をかけてきた。

「千砂都、先輩。」

千砂都「生徒会の仕事お疲れ様!……どうしたの、具合悪い……?」

顔に出ていたのか、と今気づく。それはそうか、こんなに足取りまで重くなっているんだから。

メイ「創!来るなら言えよな!って……どうした?」

四季「もしかして、夏美ちゃんにもう飲まされた?」

僕の周りにどんどんメンバーが集まってくる。

すみれ「あぁ……無理して飲まなくていいわよあんなの。」

夏美「あんなのとはなんですの!失礼な!」

こんな眩しい人達に囲まれていたんだ。僕は。

なにか勘違いしてたのかもしれない。

僕は、ここにいるべきじゃない。

「失礼します……!」

僕はとっさに顔を手で隠して校舎の中へ駆け出す。今は……今はこの人たちの顔を見れない。

千砂都「待って創くん!!……どうしたんだろ……」

メイ「ただごとじゃなさそう、だったな……」

 

部室前──────

気がついたら僕は部室の前まで走ってきていた。部室は今日は誰も使っていないようで鍵がかかっていた。

「なんで、ここ来ちゃったんだろ。」

はぁ、と部室の前の階段に座り込み、書き途中の紙がバサバサとファイルから落ちる。

落ちた紙を拾う気力すら出ずただ階段の木目を眺めていた。

かのん「わわっ、てあれ、創くんだったの?」

紙を拾いながら階段を上がってきたのはかのん先輩だった。1番こんな所を見られたくない人だった。

「ごめんなさい、少し体調悪くて。」

かのん「えっそうなの!?保健室、一緒に行こうか……?」

ファイルに紙をいれてはい、と僕の前に手が差しのべられる。しかしその手を掴むことは出来なかった。

かのん先輩は僕の横に座ってとん、とん、と優しく背中を叩いてくれている。

かのん「何か、あった?私に言いにくいこと……?」

かのん先輩のいつもは心地良い優しさが今は心に深く突き刺さる。

「……はい。」

かのん先輩は悲しそうにそっか、とだけ。ごめんなさい。

かのん「ひとまず、恋ちゃんに伝えてくるね!待ってて!」

僕の持っていたファイルを抱え、かのん先輩は勢いよく階段を降りていった。軽い足音はどんどん離れていく。

「……何の、ため。」

考えれば考えるほど、自分の無力さに嫌になる。今思えば僕がいる必要性なんて全くなかった。

そう思うと勝手に涙が零れる。

「いらなかった、のかな、僕。」

先程まで見つめていた木目の色が変わる。階段には僕の涙がぼたぼたとこぼれ落ちる。

きな子ちゃんやメイ、四季、夏美。それに先輩たち。みんなが頑張っているところを見るのが好きだった。

それだけ、だった。

それだけなら、Liella!でなくていい。

そっか、Liella!じゃなくていいんだ。

僕がLiella!にいる必要なんて。

かのん「創くん!!」

僕の目の前にかのん先輩が立っていた。呼ばれた僕は自分が泣いているのも忘れ、酷い顔をかのん先輩に見せてしまった。

その直後僕はかのん先輩に抱きしめられた。あまりに突然の出来事で抱きしめられた時には気づけなかった。

「かのん、せんぱい……?」

かのん「ちぃちゃんから創くんが辛そうな顔してたって聞いたの!」

「だから、って、なんで。」

かのん先輩はずっと僕を強く抱き締めている。

かのん「大切な仲間だからだよ!!」

「仲間……?」

かのん「そうだよ!創くんだって……Liella!の一員なんだよ……?」

Liella!の一員……僕はなんにもできてないのに。

「けど僕なんかがいても……」

僕の言葉を聞き、かのん先輩の僕を抱きしめる力がいっそう強くなる。

かのん「そんなことない!創くんがいるから、頑張れるんだよ!」

かのん「だから、いらないなんて言わないで。」

さっき言ったことはどうやら聞かれていたらしい。かのん先輩は僕の肩の上でぐすぐすと鼻を啜っている。僕はおそるおそるかのん先輩を抱き返す。

「ごめんなさい、かのん先輩。」

僕は実は……と先程ウィーン・マルガレーテに会って話したこと、そこでの問いかけに答えられなかったこと、そしてそこで自分に自信が持てなくなってしまったこと、全てかのん先輩に洗いざらい話した。

その間かのん先輩は僕の顔を見つめ、真剣に聞いてくれていた。

かのん「そっか……マルガレーテちゃんが……」

かのん「大丈夫、創くんは私たちにとって大事な存在だよ。」

僕の横に座ってにこりと笑いかける。そっと僕の手にかのん先輩の手が重なる。

「かのん……先輩……」

かのん「創くんも入れて、Liella!。私たち10人でLiella!なんだから。」

かのん先輩の言葉は優しく、僕の心にするりと入ってきた。いつの間にか先程までの不安は軽くなっていた。

「ありがとうございます、かのんさん。」

かのん先輩は僕の目を見つめながらぱちぱちと目を閉じたり開いたりを繰り返している。

「あれ……?どうかしました……?」

かのん「はじめてかのん先輩以外で呼んでくれた……!」

あ、そういえば……なんでかのんさんって呼んだのかはっきりはわからないけど……なんとなくそう呼びたかった、そんな気持ちだった。

「あ……ごめんなさい!かのん先輩!」

かのん「いやいやいいのいいの!むしろ戻さないで〜!」

かのん「かのんさん、って呼んでくれた方が嬉しい。ほんとは呼び捨てがいいけど……まだ無理そうだね……」

ほんとは呼び捨てがいいけど、あたりのところで僕が首をぶんぶん横に振るのを見てかのんさんはあはは……と苦笑いしていた。

……なにやら階段を曲がった先からなにかの物音とともに小さく声がする。

「なんか……声しません……?」

かのん「そう、だね……なんか聞いたことあるような……」

僕たちは物音の先にいる人物に聞こえないように小声でやり取りする。僕ちょっと見てきます、とかのんさんの横を立つ。

可可「ちょ……変なとこ触るなデス……!」

すみれ「触ってないったらないわよ!というか恋顔真っ赤なんだけど大丈夫……?」

恋「こ、これも新しい世界……」

千砂都「れ、恋ちゃん!?」

階段を少し降りてぱっと物音の方を向くと、あ……という表情のLiella!メンバーと目が合った。どうやら様子を見に来てくれていたようだ。

メイ「悪い……止めたんだけど先輩たち見てくるって聞かなくて……」

夏美「バラすわけにもいかないし、止めようがなかったですの……」

なぜかはぁはぁと息切れするメイと夏美にごめん……と頭を下げる。

すみれ「というか創!あんた付き合ってたのよくも黙っててくれたわね!」

「ちょ!?声大きいですってすみれ先輩……!!」

部室の周りには人は少ないながらも今日はオープンキャンパス、いつもより校内を多くの学生が動き回っている。もし僕とかのんさんが付き合ってるなんてバレたら相当な騒ぎになるだろう。

可可「かのんの!かのんのどこが好きなんデスか!?」

かのん「可可ちゃん!そんなこと聞かないで!恥ずかしいからっ!」

可可先輩も大分声が大きくかのんさんが耳まで真っ赤にしながら静止している。今どこが好きか言ったらかのんさん相当怒るだろうな……

千砂都「あはは……結局あんまり隠せなかったね……」

千砂都先輩が以前の四季のように顔を真っ赤にした恋先輩を介抱しながら僕に話しかけてくる。

「まぁ……隠すのにも限界がありますから……というか色々すみません、ご迷惑かけて……」

僕は深々と頭を下げる。千砂都先輩は空いてる方の手を突き出していやいや、と言う感じで振っている。

千砂都「話、途中からだけど聞いてたよ。創くんも私たちと同じLiella!。かのんちゃん以外も絶対そう思ってるよ。」

その言葉とともに千砂都先輩は周りを見回す。

可可「創がいて可可たちほんとに助かってマス!」

すみれ「そうね、マネージャーの仕事完璧にこなしてくれてるし。」

恋「そうですね、生徒会にも入ってくれましたし!」

きな子「創くんがいたからLiella!に入れたっす!」

メイ「私も、四季も、変われたのは創のおかげだ。」

四季「me too.」

夏美「ま、まぁ……感謝してますの……」

また一筋の涙が僕の頬を伝っていくのを感じる。

「みんな……ありがとうございます……!」

僕、Liella!に入ってよかった。

いつか、みんなに心の底から感謝を伝える日が来るまで。

僕はみんなと夢を追いかけたい。

 

オープンキャンパス終了後──────

みんなで片付け中、机の上に置かれたかのんさんのスマホがぶぶっ、と震えた。

かのん「あれ……悠奈さん……?」

悠奈さん、聖澤悠奈さんは昨年のLoveLive!を優勝した2人組ユニットSunny Passionの1人であり、Liella!の先輩方は度々交流しているようだ。

 

場所を部室に移し、パソコンでのビデオ通話に切り替わる。

悠奈「あれ?メンバーが増えたのは知ってたけど、男の子もいるんだね?」

濃い金髪をポニーテールに束ねた悠奈さんはずいっとこちらに近づき僕の顔をじーっと見つめてくる。

「マネージャーをしてます神谷創です。よろしくお願いします。」

摩央「そんなにかしこまらなくていいわ、よろしくね。」

ひらひらと手を振っている笑顔の方が柊摩央さん。この2人がSunny Passion、そして今大会の優勝候補。

メイ「お前……サニパ様に手を振られやがって……!」

今にも血の涙を流しそうに歯を食いしばったメイがこちらを見ていた。

「えっご、ごめん……」

かのん「あ、それでご要件は……?」

かのんさんは思い出したかのように画面の奥にいるお2人に話しかける。

悠奈「折角なら1番信頼しているスクールアイドルにまずはお披露目したいなーって!」

摩央「これが、私たちのステージ!」

2人が手を広げる先には海に浮かぶステージが。華やかかつ壮大で、Sunny Passionを象徴する太陽も取り入れられている。

「すごい……!これが前年優勝者のステージ……!」

夏美「これはバズりますの〜!」

他の1年生組「信頼関係(だ)(だよ)(っす)。」

夏美がスマホで画面を撮影しようとしたところを総動員で阻止する。夏美はメイのアイアンクローの餌食になり、少し宙に浮いていた。冗談!冗談ですの〜!と情けなく命乞いをする夏美を他所に話は進んでいた。

摩央「島のみんなが私たちをイメージして用意してくれたの、最後だからって。」

かのん「最後……?」

少し寂しげな表情になるSunny Passionのお2人。

悠奈「うん、仮に地区予選を突破できたとしても次は東京大会。」

摩央「更には決勝、会場は東京の大きなステージになる可能性が高いの。」

悠奈「そしたら私たちはこの島でスクールアイドルとしてステージに立てるのは……」

悠奈さんははっきりとは言わなかったが、恐らくSunny Passionが神津島で歌えるのはこのリモート予選が最後。

摩央「この島と共に生きて、仲間がいたからここまで来られた。」

悠奈「この学校と、この島をもっと盛り上げたい!みんなに来て欲しいって!」

学校のこと、そして島のことをとても愛しているのが2人の様子から伝わってくる。

悠奈「お互い素敵なライブをしようね!」

摩央「新しいLiella!、楽しみにしてる。」

画面の奥で手を振るSunny Passionのお2人にみんなでお辞儀をする。画面には通話が終了しました、というシステムメッセージが浮かび上がる。

可可「はぁ〜……最高デシた……」

すみれ「あんたは相変わらずで安心するわ……」

ぎゃいぎゃいと揉めているうちの先輩たちは放っておこう……

かのん「私たちも……見つけなきゃ……」

既にスリープ状態になり画面が真っ暗になったパソコンにはかのんさんの真剣な面持ちが反射していた。

 

打ち上げ会場までの道──────

僕たちはオープンキャンパスの片付けを終え、予約してあった近所の焼肉屋へ向かう。今日の振り返りの会話に花が咲いていた。

恋「まさかあの子が来るなんて、意外でしたね……」

恋先輩の言うあの子、とはウィーン・マルガレーテのことだろう。

メイ「創にあんなこと言いやがって……」

握ったメイの拳にはいっそう力が入り、指先の色が赤くなる。

きな子「けどなんで創くんがマネージャーって知ってたんすかね?」

そう、ウィーン・マルガレーテについては色々な謎がある。僕がLiella!のマネージャーであると言い当てたこと(これは公には公開されていない事実だ)、かのんさんへの異常な執着心、そして……才能を証明する、羽ばたかなきゃいけないという発言。

恋「才能の証明とは……どういうことなんでしょうか。」

すみれ「……結果を出せってこと、なのかしらね。」

可可「……」

すみれ先輩はちらり、と可可先輩の方を見る。なぜ可可先輩の方を見たのか分からなかったが、可可先輩はすみれ先輩の方を見ることなく黙り込んでいる。

かのん「結果……LoveLive!優勝、ってことかな。」

四季「中学生だけど、実力は確か。」

代々木スクールアイドルフェスティバルを優勝したあの子はまだ中学生。しかし実力、そしてファンがついているのであればLoveLive!にもおそらく出場する。

千砂都「ライバル、増えちゃったね。」

夏美「けど、負けませんの。」

強気な発言をしたのはまさかの夏美だった。こう見えてステージ前には緊張したり、人の評価を気にしがちな夏美はLiella!メンバー以外に対して強気な発言をすることは少ない。

夏美「LoveLive!優勝が私の夢、そしてみんなの夢ですの。だからこんなとこで怯んでなんかいられませんの。」

その時僕は確かに見た。夏美の目に揺らぐ決意、目が燃えているとはおそらくこのことを言うのだろう。

千砂都「そうだね!いつだって全力、それがLiella!!」

「怯むのなんて、しょうに合いませんもんね。」

夏美の発言に感化され、僕たちの闘志もめらめらと燃え上がっていた。

かのん「よーっし!頑張ろう、みんなっ!」

9人「おーっ!!」

僕たちの声は満点の星空に放たれた。

 

マルガレーテ視点

どんだけへこんだかと様子を見に来たらすっかり元気じゃない。ま、そうじゃなきゃ面白くないわね。

「……ふん。」

「勝つのは私。絶対、負けられないんだから。」

ぐしゃ、と右手に持っていたパンフレットが音を立てて歪んでいく。

ウィーン国立音楽学校。

私が届かなかった、ひとつの星。




13話でした。
マルガレーテの接触により、創の中にあったもやもやが言語化された回になります。創はこれからLiella!のために、そして自分のために、どう動いていくのか注目していただけると嬉しいです。
次回もよろしくお願いします。
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