ラブライブ!スーパースター!! Create the future   作:園枝こるだ

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第15話「10人のステージ」

1年生教室──────

「よっし、できた!」

ふぅ、と僕は大きく息を吐く。その息を受け、僕の持つ紙がゆらりと揺れる。その紙にはLoveLive!予選を勝ち抜くためのステージの設計図が描かれていた。

いちょう並木の中央にはでかでかとした神輿、それに負けず劣らずの提灯がステージという道を照らす。考えるだけでワクワクが止まらない……!

きな子「あ!創くんできたんっすね!」

席に戻ってきたきな子ちゃんが僕の持つ設計図をのぞき込む。

「うん!自信作だよ!」

自慢げな僕の顔を見てきな子ちゃんはにこにこと笑っている。

四季「お疲れ様。」

メイ「これ、アタシの奢りな。」

僕の席にことん、と紙パックのジュースが置かれる。その目線の先には四季とメイが立っていた。

「うん、みんなお待たせ。これから設営に入るよ。」

勢いよくストローを紙パックに突き刺しずずずっと勢いよく飲む。糖分が疲れきった脳に流れ込んでくる快感が僕を襲う。

「夏美!……は今日休みだったっけ。」

後ろを振り返るといつも見ている夏美の姿がなく、少し寂しい気持ちにもなる。

メイ「妹の看病しなきゃって言ってたな。」

きな子「妹さん、大丈夫っすかねぇ……」

 

夏美視点、鬼塚家──────

夏美母『今日どうしても外せないお仕事があって……冬毬のこと、よろしく頼むわね。』

朝起きた私に任せられたのは愛しの妹の看病だった。出席点と練習時間を失うのは痛いが、弱っている妹を家に1人にする訳にもいかず、私は今日看病に尽力することにした。

「冬毬、ご飯持ってきましたの。食べれるだけ食べて。」

がらがら、と古くさい引き戸を開けると殺風景というか無駄のない部屋が広がる。部屋の奥ではふぅ、と少し息を荒らげて天井を見上げる妹の姿があった。

冬毬「すみません、姉者。私のせいで学校をお休みさせてしまい……」

少し咳き込みながらくるりと私の方を向く。熱のせいか頬が赤くなり、少し幼い頃の面影が浮かぶ。

「別に気にすることないんですの。辛そうな冬毬を1人にする訳にもいきませんの。」

持ってきたご飯を広々とした学習机に置き、傍にあったタオルで冬毬の額に浮かぶ汗を拭う。

冬毬「ん、申し訳ありません……」

「いいんですの、練習だって一日休んでもすぐに取り返しますの!」

練習というワードに少し冬毬は顔を歪める。

冬毬「練習……スクールアイドルとやらですか。」

「えぇ、今度大会の予選がありますの。オンラインで見れるから冬毬も……」

冬毬「興味ありません。」

見て、と言いかけた私の言葉を冷たく遮る。その冷気は私の心臓をずき、ずきと痛ませる。

「そう、よね……見なくてもいいですの。」

拭き終えたタオルを洗濯しようとくるり、ときびすを返した時に冬毬が口を開いた。

冬毬「姉者は、まだ夢を追うのですか。」

振り向いて冬毬の顔を見る勇気は私にはなかった。……どんな顔をしていても、今の私では冬毬と向き合える気がしなかった。

冬毬「夢を追うなんて無駄なことだと言ったのは姉者です。」

かつての私の言葉がフラッシュバックする。

『私には才能がないんですの。』

『夢を追う資格も、きっと無い。』

『夢を追うなんて無駄な行為ですの。』

あの時、私が冬毬を変えてしまった。私のせいで冬毬は。

「……ごめんなさい、冬毬。」

「最後にもう一度、夢が見たいんですの。」

引き戸を閉めてもたれ掛かる。いつの間にか私の額は冷や汗で濡れ、心臓の鼓動はどくどくと早くなっていた。手に持っていた少し湿ったタオルで額の汗を拭う。

「冬毬、あなたを変えてしまった落とし前はしっかりつけますの。」

 

創視点、部室──────

千砂都「聞いたよ創くん!設計図できたんだって?」

部室に入るなり千砂都先輩をはじめとした先輩方が僕のもとに集まってくる。

すみれ「早く見せなさいよ、ちゃんと私が目立てるステージなんでしょうね?」

可可「別にすみれが目立つ必要はないのデス。」

すみれ「なんでよったらなんでよ!」

恋「お二人共、落ち着いて……」

すぐ揉め始める2人を恋先輩がどうどう、と宥めている。この風景にも少し慣れてきた。

かのん「お疲れ様、頑張ったね。」

かのんさんが僕の頭を撫でる。恥ずかしいが手の温もりが心地よく頭を動かせない。

「この後、ステージ設営に協力してくれる方たちと打ち合わせをしてきます。」

千砂都「了解。今日の練習は少し軽くしてあるから、マネージャーの仕事は気にしなくて平気だよ。」

ぐっ、とサムズアップする千砂都先輩にありがとうございます、と頭を下げる。

「それじゃ、いってきます。」

僕は見送ってくれるメンバーのみんなに手を振り、待ち合わせしている多目的室へと向かう。

今でも僕の考案したステージでLiella!のみんなが歌うなんて、夢みたいで少し信じられない。不安もあるけど、それよりもやってみたいって気持ちが強くなっている。

これが輝きってやつなのかな、父さん。

 

LoveLive!予選当日──────

協力してくれた結ヶ丘の生徒のみんなのおかげで設計図通り、いや設計図以上のステージを設営することが出来た。

僕はLiella!の控え室の近くにある音源や電源を管理する場所でスタンバイしていた。

かのん「いいステージになったね。」

ひと足早く着替えを終えたかのんさんが僕の傍にやってきた。

「はい、みんなのおかげで。感謝してもしきれません。」

かのん「そうだね。けど創くんだから、じゃないかな。」

僕の横に立ち、テントの隙間からいちょう並木の中にそびえる神輿を見てかのんさんが口を開く。

かのん「創くんが一生懸命だから、みんなが着いてきてくれたんだよ。」

かのんさんの言葉に目頭が熱くなる。

「ありがとうございます。」

「かのんさん、頑張ってください。僕が1番、応援してますから。」

Liella!のメンバーとしても、かけがえのない彼女としても、僕はかのんさんのことが好きだ。だからこそ僕のつくるステージで1番に輝いて欲しい。

かのん「ありがと。……1個さ、お願いあるんだけど、いいかな?」

もじもじとしてかのんさんは少し頬を赤らめている。

「僕にできることならなんでも!どうしました?」

かのん「手、握ってほし、くて……」

すっ、と僕の目の前にかのんさんの手が差し出される。真っ赤な顔をしたかのんさんを見て、僕の顔もみるみるうちに赤くなっていくのを感じる。

「は、はいっ!こ、こんな感じ……ですか……」

かのん「う、うんっ!あ、ありがと……!」

結ばれた手の先に見えるかのんさんの顔に見蕩れ、数秒間手を握っていたと思う。

すみれ「お2人さん、そろそろ開演でーす。」

すみれ先輩の声に僕とかのんさんは咄嗟に手を離す。

メイ「かのん先輩も意外と積極的なとこあるんだな……」

四季「大胆……」

かのん「わ、忘れて忘れて!!」

メモを取っているメイにわーっとかのんさんが駆け寄っていく。

千砂都「よーっしみんな、そろそろ行くよー!」

千砂都先輩のかけ声にぐっ、と空気が引き締まる。

8人「おーっ!」

千砂都「いつもの行くよ!ほら創くんも!」

「は、はいっ!」

10人での円陣を組む。何度やってもこの高揚感はなににも変え難い。

かのん「1!」

可可「2!」

すみれ「3!」

千砂都「4!」

恋「5!」

きな子「6!」

「7!」

メイ「8!」

四季「9!」

夏美「10!」

かのん「Song for me!」

9人「Song for you!」

10人「Song for all!」

円陣がするり、と解け自然と9人と1人に分かれる。

けれど気持ちはずっとひとつで。

僕はステージに向かっていく9人の背中をずっとずっと見つめていた。

 

「よいしょ、っと……」

僕は控え室から出て、ステージの様子をチェックしに行くところだった。

そこでまたあの日のように声をかけられた。

マルガレーテ「意外と元気そうね。」

「……マルガレーテ。」

僕がいきなり呼び捨てしたことに驚いたのか腕を組んだままのマルガレーテは少し目を見開く。

マルガレーテ「このステージ、あんたが作ったの?」

ふい、と僕から目線を外し、Liella!の歌で盛り上がっている会場の方を流し見る。

「考えたのは僕だけど、作ったのは僕だけじゃないよ。」

マルガレーテ「はぁ?」

「みんながLiella!に協力したいって手伝ってくれたんだよ、決して僕だけの力じゃない。」

マルガレーテは何かが気に食わないのかふん、と鼻を鳴らし踵を返す。

マルガレーテ「ま、このままなら私が勝つわね。予選だけじゃなく、東京大会でも、本選でもね。」

ここまでの大口を叩けるだけの実力と自信を兼ね備えるマルガレーテを少し羨ましく思う。

「あのさ、この前言ってた上に行くってどういうこと?」

僕はつい頭の中に浮かんでいた疑問が口から出てしまっていた。マルガレーテは少しだけ振り向き僕のことを睨みつける。

マルガレーテ「なんで私があんたの質問に答えなきゃいけないのよ。」

「だってさっき僕質問答えたし、これでおあいこでしょ。」

あんた、意外とめんどくさいのね、と返していた踵をもう一度返し僕の前に立つ。

マルガレーテ「言葉通りの意味よ。上に行って、自分の才能を証明してみせるの。……私を見ていない人にね。」

ぎりっ、と歯を食いしばる音が聞こえそうな程にマルガレーテの口が歪む。

「見ていない人……?」

マルガレーテ「何よ、これでおあいこなんだからこれ以上は答えないわよ。」

「わかったわかった。もう何も聞かないよ。」

ぱっと降伏の証として両手をあげる僕を見てマルガレーテははぁ、とひとつため息をつく。

マルガレーテ「あんた、なんかいまいち掴みどころ無くて腹立つわ。」

「そ、そんなの初めて言われたよ……」

マルガレーテ「と、に、か、く!勝つのは私。それだけわかってればいいわ。」

僕の目の前に突き出された指に額を射抜かれそうになりごくりと唾を飲む。ふんっ、と指をすっと引きその場を去ろうとするマルガレーテ。

「マルガレーテの歌、楽しみにしてる。」

僕の言葉を聞きマルガレーテは一瞬だけ歩みを止め、すぐに歩き出す。

楽しみに、なんて言ってる立場じゃないかもしれないけど、マルガレーテの実力は本物だ。

見てみたい、マルガレーテの本気を。そして、それと競い合うLiella!を。僕の握られた拳にはじわりと汗が滲んでいた。

 

終演後、控え室──────

「みんなお疲れ様です!こっちに飲み物たくさん用意しておいたので自由に飲んでください!」

控え室に戻ってきたメンバーにそれぞれタオルを手渡し一言ずつ声をかける。

「かのんさん、お疲れ様です。最高のステージでした。」

かのん「ほんと!?ありがと〜!創くんの考えてくれたステージも最高だったよ!」

かのんさんは汗を拭いながらにこっと僕に笑いかけてくれる。

「ありがとうございます。そういえばマルガレーテ、見に来てましたよ。」

僕の言葉にかのんさん以外のメンバーもこちらを振り返る。

メイ「またなんか言われたのか!?」

きな子「創くん話したんっすか!?」

可可「没关系!?」

眼前に3人の顔が迫り、あまりの迫力にすすす、と後ずさりする。

「話はしましたけど特に何か言われたわけでは……」

「ただ悪い子じゃないんじゃないかな、って。」

夏美はそれを聞いてなんとも言えない表情を浮かべている。

夏美「自分がなに言われたのか覚えてませんの……?」

「いや覚えてないわけじゃないけど……マルガレーテ、なにかワケありな気がするんだよね……」

千砂都「ワケあり……かぁ。」

みんなでうーん……と顎に手を当てて考え込む。

可可「そんなことより今日のライブ、大成功でシタよね!?」

可可先輩は心底嬉しそうな笑顔を浮かべながらその場でくるくると回っている。

「そうですね、みんなほんとにいいパフォーマンスでした。」

可可「創もそう思いマスか〜!」

その場でくるくると回る可可先輩に取り込まれ僕もその場でくるくると回り続けることになってしまった。

「あわ、あわわ……」

ぱん、と手を叩く音にみんなが同じ方向を振り向く。

恋「今日はステージの成功をお祝いしましょう。みなさんお疲れ様でした。」

恋先輩の言葉に場が和やかな雰囲気になる。

その時何気なく周りを見渡していた僕は確かに見てしまった。

みんなが笑顔の中、千砂都先輩の表情がどこか曇っていたのを。




読んでいただきありがとうございます。
次回の更新も早めにできるように頑張ります。
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