ラブライブ!スーパースター!! Create the future   作:園枝こるだ

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今回も読んでいただきありがとうございます。
17話から登場しているキャラ、八掛 成生(やつがけ なるせ)について少しこの場を借りてプロフィールを紹介させていただこうかと思います。
名前 八掛 成生(やつがけ なるせ)
中学3年生(17話当時)
マルガレーテに曲を提供している未だ謎の多い人物。
以前ダンスを習っていたが、膝を負傷したことからダンスの道から作曲の道へ。千砂都に何か並々ならぬ思いを抱えている。
徹底した家族経営によりその地位を築いた「YATSUGAKE」グループの御曹司、優秀な兄、功(こう)を持ちコンプレックスに悩まされている。
性格 誰にも物怖じせず、のらりくらりと生きるマイペースタイプ。しかしその裏で執着心は非常に強く、目標を達成するために少し手荒い手段をとることも。一人称は「俺」。
趣味 ダンスの振り付けを考えること
特技 作曲


第19話「バーン・ダウン・ザ・ハウス」

創視点、ペンション──────

千砂都「ダンス……やっぱできてないよね……」

「え、それってどういう……」

僕の質問を遮るようにどたどたとすみれ先輩と可可先輩が部屋に戻ってくる。

すみれ「いいから早くドライヤーするわよ!ほらしてあげるからじっとしてなさいっての!」

可可「嫌デス〜!すみれ乾かし方雑で痛いんデス〜!!」

なんですって〜!と部屋の中はどたばたと走り回る2人を呆れた顔で見つめる。……千砂都先輩はすっかりいつもの顔に戻ってしまっていた。先程の寂しそうな顔は一体……

メイ「あ〜いい湯だったな。」

四季「うん、気持ちよかった。」

続々とメンバーが入浴を終えて部屋に戻ってくる。一足遅く帰ってきた夏美は顔にパックをした状態で戻ってきて、思わず写真を撮ってしまった。

夏美「なんで撮ったんですの。」

「え、いやなんとなく面白かったから……」

レディの顔を面白いなんて……とぶつぶつ言いながら、ベッドの方へ歩いていく夏美。

かのん「あれ?きな子ちゃんは?」

「え?まだ戻ってきてないですよ?」

部屋の中をきょろきょろと見回しながらかのんさんが戻ってくる。きな子ちゃんがいない……何か嫌な予感がする……

「まさか……!」

メイ「もう1回アレの相手は勘弁してくれ……!」

僕とメイはどたどたと部屋を出て、きな子ちゃんのお母さんがいた厨房の方へ向かう。

そこには透明な飲み物を口へ運ぼうとするきな子ちゃんが。あれは恐らく水ではなく酒の類だろう。

「ストップ!!!きな子ちゃん!!」

メイ「飲むなきな子!!」

 

きな子「ご迷惑おかけしたっす……」

僕とメイに部屋まで引きづられるように戻ってきたきな子ちゃんはベッドの上で正座していた。

「まだ飲む前でよかったよ。」

可可「きなきな何したデスか?」

それは……と以前1年生組で合宿をした際に起こった事件をみんなに話した。

かのん「あの時そんなことになってたんだぁ。」

けらけらと笑っているかのんさんの横ですみれ先輩は呆れ顔できな子ちゃんを見つめていた。

すみれ「確かに悪酔いしそうよね、きな子……」

その言葉を受けきな子ちゃんはうぅ……と情けない声を漏らした。

 

その後はこれからのスケジュールについてや学校についてのことなど様々なことを話していた。その時ふと友達の話になった。

かのん「メイちゃんと四季ちゃんと創くんは中学生の時から仲良しなんだよね。」

「そうですね、大体この3人でいつもいましたから。」

四季「他に話す人はいなかった。」

メイ「アタシも……ま、色々あったしな。」

僕達は中学生の時の頃を思い返しながら口々に話す。

千砂都「色々?」

メイの色々という言い方に少し引っかかったのか顎に手を当てた千砂都先輩が口を開く。

メイ「あーっと……いやそれまでは仲良しグループってやつには入ってたんだけどさ。」

メイ「誰々と仲良くしろ、とか誰々と仲良くするな、とか……ふとした時に嫌になっちまって……それからは3人でいたな。」

メイは僕と四季の顔を交互に見た後にコップに映る自分の顔と目を合わせたあとふっ、と目を閉じる。

メイ「四季と創がいなかったら結ヶ丘にも来てないし、こうやってLiella!にだって入ってないと思う。だからさ、感謝してる。」

創、四季「メイ……!」

僕と四季はメイの顔を涙目で見つめる。それを見てうぉっ、という声とともに少し仰け反る。

千砂都「…………」

かのん「ちぃちゃん?」

暗い顔をしている千砂都先輩にいち早く気づき、かのんさんが顔をのぞき込む。

千砂都「みんなに、聞いてほしいことがあるの。」

 

成生視点、八掛家──────

「ただいま。」

成生母「おかえり、成生。ご飯自分であっためて食べれる?」

「うん、ありがと母さん。」

母に迎えられ玄関で靴を脱ぐ。この時間だといつも兄さんと父さんはご飯を済ませているため、後から俺だけが食べることになる。

広いようで、窮屈なようなリビングにはそう感じさせる原因である兄さんと父さんがくつろいでいた。

功「おぉ成生、おかえり。」

成生父「…………」

「ただいま、父さん、兄さん。」

必死に表情を取り繕い、微笑みながら返事をする。

成生父「……まだ音楽なんぞに躍起になっているのか。」

「…………」

またいつもの小言が始まったと聞こえないふりをしてやり過ごそうとする。

成生父「お前には八掛家としての自覚が足りん。これは一体どういうことだ。」

父さんの手には結ヶ丘高校のパンフレットが握られていた。

「別に、たまたま貰ってきただけだよ。」

成生父「それを信じるかどうかは私が決めることだ。」

リビングに物々しい雰囲気が充満する。その時兄さんがあっけらかんとした様子で口を開く。

功「まぁまぁ父さん、成生には好きなことやらせてやれよ。」

功「家は俺が継ぐしさ、成生が何にも成せなかったとして俺がいるから平気だって。」

その場に立ち上がりくるくると一回転しポーズを決める兄さん。

功「成生も好きなことやれよ!俺がいるからな!」

「……うん、ありがと。」

ぐっ、とサムズアップする兄さんに形だけの感謝を伝える。

成生父「……ふん。成生、功に感謝しろ。」

「はいはい、感謝してまーす。」

俺を睨みつける視線を感じる。その方向からまぁまぁ父さんと宥める兄さんの声がする。

こんな家、すぐに抜け出してやる。

俺の才能を証明して。

認めさせてやる。

用意された席に座ることしかできない能無し共に。

 

創視点、ペンション──────

夏美「あの子の作曲担当が!?」

恋「千砂都さんの昔の友人?」

衝撃の事実を打ち明けた千砂都先輩に注目が集まる。

千砂都「うん、この……八掛 成生って子。」

千砂都「顔が見えないから確証はないんだけどね、珍しい苗字と名前だから多分……」

スマホの画面には先日のマルガレーテのステージ、その概要欄に記された八掛 成生という名前。

すみれ「八掛ってあのYATSUGAKE……?」

可可「上海にいた時でも聞いたことある名前デス。」

YATSUGAKEは多方面に事業展開しており、日本を代表する大企業だ。

千砂都「うん、そのYATSUGAKE。」

おー……と関心するLiella!。その時かのんさんが黙っていることが不思議だった。

「かのんさんは知り合いじゃないんですか?」

かのん「うん、ちぃちゃんのダンススクールの人とは会ったことないかな。だからちぃちゃんしか知らないと思う。」

千砂都先輩に視線を動かすとうん、と頷く。

きな子「けど、作曲なんすね。ダンスやってたなら振り付けだと思ったんすけど……」

千砂都「……怪我してるの、私のせいで。」

えっ、と短い声がみんなの口から漏れる。

千砂都「リハーサル中に触れちゃって……その勢いでステージから……」

話しながらどんどんと俯いていく千砂都先輩、そばにいたかのんさんが千砂都先輩の背中に手を添える。

メイ「それで作曲の道に、ってことか……」

夏美「けどいざ作曲ってなったとしてできるものなんですの?」

確かに当然の疑問だ。ダンスで音楽の知識がついていたとしてもそれだけで作曲ができるとは思えない。

恋「それだけの才能の持ち主、ということなのでしょうか……」

恋先輩の言う通り考えるのが自然だろう。

四季「強敵……」

ぼそりと呟いた四季の言葉にみんながうーん……と頭を悩ませる。

すみれ「なんか弱点とかないの……?」

千砂都先輩に尋ねるすみれ先輩。

可可「そんなのあったらもう言ってるデス。おバカグソクムシ。」

なんですって〜!!と小一時間前にやったやり取りをまた繰り返す可可先輩とすみれ先輩。

そのやり取りを見て千砂都先輩の顔に笑顔が戻る。

「……確証はないけど、大丈夫だと思います。」

「千砂都先輩には僕たちがいますから。」

千砂都「創くん……」

ぼーっ、と僕の顔を見つめる千砂都先輩。

夏美「そうですの!いざとなれば四季と開発したアレを使って……」

メイ「ダメに決まってんだろ。」

ですの……と鳴き声のように声を漏らししょんぼりとする夏美。

かのん「それじゃ、明日から頑張ろ!」

9人「おー!」

ペンションの屋根に僕らの元気な声が跳ね返る。

 

冬毬視点、鬼塚家──────

私は姉者が行っている活動をリサーチするため、今日も自室のパソコンに向かっていた。その私を眺めるかのように横の水槽にはミズクラゲのあねじゃがふわふわと浮かんでいた。

「スクールアイドル、り……えら……。」

結ヶ丘高校スクールアイドル、Liella!。全国のスクールアイドルを纏めたサイトのトップページに表示されていた。

「東京大会進出……」

Liella!が特集されていたページの名前は東京大会進出者一覧、と書かれていた。今まで全てを途中で投げ出してきた姉者が東京大会進出?と不思議に思う。

「一応コンペティターも調べましょう。」

ページをスクロールしていくと1人の少女が目に付いた。他の出場者はみんな笑顔で、複数人で、楽しそうな表情なのに、その人だけはただ前を見つめ、たった1人で、まるで何かと戦っているかのような表情だった。

「ウィーン・マルガレーテ。」

その子の名前はウィーン・マルガレーテ。今大会唯一の中学生の出場者。本来高校生が参加するLoveLive!で中学生が出場するのは前代未聞のことらしい。

「…………本当の歌を教えてあげる……?」

その言葉はウィーン・マルガレーテのプロフィールに書かれていた。周りは皆年上ばかり、それに自分はグループではなく1人なのに、そんな強気な言葉を吐けるなんて……と少しこの子に興味が出た。

こんな風に言える胆力があの人にもあれば……と額に手をあてやれやれと首を横に振る。

「……姉者には似合いませんね。」

ふふっ、と誰にも見られないように引き戸の奥に隠してある写真を引っ張り出して眺める。そこには私の100点のテストをまるで自分のもののように喜び掲げている姉者と少し恥ずかしそうな私が写っていた。

この時はまだ姉者には夢という支えがあった。姉者が日頃思いついた夢を書き留めた夢ノートがあった。

「…………」

その夢ノートは今私が保管している。合理的ではないことだとわかっているが、何故か見捨てられなかった。

いつしかそれは斜線で埋め尽くされ、表紙も頁もボロボロになり、姉者の部屋のゴミ箱に捨てられていた。

私は再び画面に視線を戻し、Liella!のページを眺める。

「……姉者、見定めさせていただきます。」

集合写真の中に写る姉者は最大級の笑顔だった。




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