ラブライブ!スーパースター!! Create the future 作:園枝こるだ
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成生視点──────
マルガレーテ「ねぇ、あんたどういうつもり?」
俺の後ろを歩いていたマルガレーテが俺の背中に言葉を投げかける。
「どうって、何がだよ。」
マルガレーテ「決まってるでしょ、さっきのよ。あんたらしくないわよ、あんな言い方。」
『千砂都、俺は認めないからな。』
先程の自分の言葉を反芻する。確かに、いつもの俺ならもっと冷静に物事を判断して会わずに立ち去ることだってできたはずだ。
「……すまん、巻き込んで。」
マルガレーテの方を見ずに謝った俺の頬をぎゅぅっとつねるマルガレーテ。
「い、痛っ!痛い痛い!!」
マルガレーテ「ったく。いい?負けたのはあんたのせいじゃない。」
マルガレーテ「というか、負けてない。」
頬から手を離し、俺の前をふん、と歩くマルガレーテの背中に声をかける。
「まだ俺の曲歌ってくれるのか?」
立ち止まることなくマルガレーテは答える。
マルガレーテ「あんたがまともな曲作り続けられるならね。」
創視点──────
東京大会から数日後、僕たちはかのんさんの家に集まり祝勝会を開いていた。
10人「かんぱーいっ!!」
貸切の店内にみんなの嬉しそうな声とグラスがぶつかる音だけが響く。
かのんさんはグラスに注がれたオレンジジュースを勢いよくぐひぐびと飲み干す。
かのん「くはぁ〜、染みる〜……」
きな子「こんな美味しいジュース初めてっす!」
ふ〜、ときな子ちゃんは背もたれに思いっきりもたれて天井を見上げている。
メイ「あの二人のせいで一時はどうなることかと思ったけどな。」
千砂都「1年生が頑張ってくれたおかげだよ!」
少し前のめりになって千砂都先輩が僕たち1年生の顔を見回す。
可可「頼もしかったデス〜!」
夏美「ネットでも評判になってますの、今年から入った新メンバーが頑張ったって!」
メイ「ほ、ほんとだ〜……」
夏美のスマホの画面に映るLiella!の特集記事、そこには大きく1年生4人の顔が映し出されていた。
四季「メイは泣き虫。」
可可「遂に次は全国大会……それにしてもムカつくのはあのウィーン・マルガレーテと八掛 成生!」
泣いていたかと思えばすぐ不機嫌な顔になる可可先輩。
メイ「そうだ!神聖なLoveLive!に泥を塗りやがって!」
「成生くんも、まさかあんな風に接触してくるなんて……」
夏美「後者はともかく、あの子の言葉はネットで猛批判を浴びてますの。」
その言葉を受け、かのんさんや四季がスマホでネットの記事を見漁る。
かのん「もうLoveLive!に出てほしくない……」
四季「あんなにいい歌だったのに、残念。」
すみれ「言っちゃ悪いけど、自業自得ね。」
ふふん、と腰に手を当てるすみれ先輩。
かのん「……なんであんなこと言ったんだろ……」
その瞬間視界の外からパンっ!と何かが弾ける音がする。
みんなが一斉にその方向を見ると、ありあちゃんが巨大なクラッカーを持って立っていた。
ありあ「ハッピーニューイヤー!」
「え?」
ありあちゃんの言葉を受け僕はごそごそとスマホを取り出して画面を見る。
そこには0:00、1月1日と表示されていた。
その後、みんなですみれ先輩の神社にお参りに来ていた。1度かのんさんの家の近くにある有名な神社に行ったのだが、混んでいて落ち着かなかったためこちらに移動してきた。
可可「こっちの方が空いてて落ち着くデス。」
すみれ「いちいち言わなくていい!」
ぎろっ、と可可先輩の方を見るすみれ先輩。
千砂都「地元民としては、こっちの方が落ち着いていいけどね。」
かのん「だよね!」
かのん「では改めて、今年1年みんな仲良く、いい歌を歌って、いいライブができる、いい年でありますように。」
9人「ありますように!」
僕たちの言葉は白い息とともに寒空へ舞い上がっていった。
数日後──────
この日僕はとある場所に向かっていた。
「えーっと……あった、ここの……2階。」
僕は綺麗に掃除された階段を上がり、目的の場所のドアを開ける。
成生「マルガレーテ?今日は来ない、ん……じゃ……」
僕が話したかった人物が話しがらこちらを振り向き、言葉とともに首の動きもぎこちなくなる。
「久しぶり、成生くん。」
成生「は、はぁ!?なんでお前が、ここにっ……!」
当然の疑問だろう。ここはYATSUGAKEが経営する貸し出し型音楽スタジオ、都内には何十……いや何百とあるかもしれない中からピンポイントで成生くんがいるスタジオに僕が現れたのだ。
「成生くんのお母さんが教えてくれたよ。友達って言ったらね。」
千砂都先輩から家の場所を聞き、つい先程尋ねてきた。この時間ならここにいると快く教えてくれた。
成生「はぁ……まともなやつだと思ってた俺が馬鹿だったよ……」
頭に手を当てやれやれと言った感じで首を振る。
成生「で、何の用だ。」
「マルガレーテのこと、そして成生くんのこと、教えて欲しいんだ。」
成生「……お茶菓子は切らしてる、それで我慢しろ。」
「ありがと。」
なんだかんだ言ってちゃんとお茶は出してくれるんだなぁ、と成生くんの育ちの良さを感じる。
成生「で……マルガレーテのことはともかく、俺のことを知りたい理由はなんだ。」
「うーん……千砂都先輩から聞いてた君の印象と今の印象、だいぶ違ったから、少し気になって。」
成生くんはがたっと机に手を当て僕にぐっと顔を近づける。
成生「千砂都が、俺のことを?」
「う、うん……僕もあんまり詳しくは聞いてないけど……」
僕の言葉を聞き、そうか……と先程の姿勢へと座り直す。
成生「尋ねてきた理由はわかった。だがただで教えるのも癪に障る。」
成生「ここのスタジオの掃除をやってもらう。」
ふん、と偉そうにふんぞりかえる成生くん。
「掃除……でいいの?」
成生「え、いやもっと嫌がれよ。」
正直もっと二度と関わるなとか怒鳴られるとかされるかなぁと思っていたため予想外の言葉に驚いた。
「わかった、掃除したら僕の質問に答えてね。」
成生「……考えとく。」
掃除用具はあそこに入ってる、好きに使えとロッカーを指さしてスタジオの方に消えていく。
「ん〜……よし、やるか。」
かのん視点──────
先日何気なくマルガレーテちゃんのSNSを発見した私は悪いと思っていながらも度々チェックする日々が続いていた。
たった今、数秒前の投稿がなされた。
「これ……神宮競技場……!」
私は場所がわかるなり走り出していた。何を喋ろうとか、何も考えずに。
かのん「はっ、はっ、はっ、はっ……ここだ……あ。」
神宮競技場の看板の前で立ち止まり、少し周囲を見渡す。すると近くのベンチに座り込んでいるマルガレーテちゃんが目に入った。
マルガレーテ「っ……?」
かのん「マルガレーテちゃん、だよね?」
私に名前を呼ばれた少女はふんっ、と体ごと背ける。
マルガレーテ「人違いじゃない?」
なんとか誤魔化そうとする様子が少しかわいい。ちょっといたずらしてやろうとSNSの通話機能を利用する。
その時マルガレーテちゃんのポケットの中のスマホから着信音が流れる。……この前の東京大会、八掛成生くんが作った曲。
マルガレーテ「うわ、うわっ……と、と。」
いきなり鳴り出した着信音に驚き、画面を見ずに電源を切る。どうやら私の仕業とは気づいていないみたい。
マルガレーテ「……ふん!」
座るなら勝手に座れと言わんばかりにすすす、っと1人分のスペースを空ける。そこに私は座り込む。
「ウィーンの音楽学校、入学できなかったんだよね、お姉さんと同じ学校入りたかったのに、入れなかったんでしょ?」
まさか知られているとも思わなかったのか、私の顔を覗き込む。
マルガレーテ「どこで聞いたの?まさかあいつ……」
「書いてあった。」
私のスマホの画面にはマルガレーテちゃんのSNS、内容はウィーン国立音楽学校に落ちたこと。
「私もね、受験失敗したんだ。音楽科目指してたんだけど、落ちちゃって。」
マルガレーテちゃんは私の言葉にばん!とベンチを叩く。
マルガレーテ「一緒にしないで!あんたなんかとはレベルが違うんだから!」
「でも、夢を奪われたように思えたのは、きっと同じ。」
「私ね、小さい頃から夢があったの、世界に歌を響かせたい、自分の歌で世界中を元気にしたい、って。」
「歌うのは楽しかった、でも急に歌えなくなった。その時の私には夢のまた夢。」
私の言葉を黙って聞いていたマルガレーテちゃんが遂に口を開く。
マルガレーテ「同情してるって言うの?」
「違うよ、同情なんかじゃなくて……!」
マルガレーテ「ふざけないで!私に勝ってあなたは人の夢を奪ったのよ!」
「夢を奪った……?」
思わず口を滑らせたのか、はっとした様子のマルガレーテちゃん。
マルガレーテ「……帰る。」
「私がマルガレーテちゃんの夢を奪ったってどういうこと!?」
私はマルガレーテちゃんの肩を掴む。私の顔をただ見つめるマルガレーテちゃん。
「教えて。」
マルガレーテ「…………」
薄緑の瞳に写る私の顔はいつになく真剣だった。
創視点──────
僕が掃除を終えたタイミングでちょうど成生くんがスタジオから出てくる。
成生「ほんとにやったのかよ……」
「やれって言ったのはそっちでしょ。」
そりゃそうだけど……と頭を搔く。
成生「はぁ……わかった。約束だ、俺がわかる範囲で教えてやる。」
ソファにどすっ、と腰掛け、僕が目の前に座るのを待っている。僕は迷うことなく目の前の椅子に座った。
「まずマルガレーテのことなんだけど、なんでマルガレーテはLoveLive!に出場したの?下らない大会だって自分で言ってたのに。」
成生「あぁ、それか。えっと、まずマルガレーテがウィーン国立音楽学校を落ちたことは知ってるのか?」
真っ先に知らない情報が飛び込んでくるのと同時に、収穫があることがわかり嬉しくなる。
成生「その様子じゃ知らないな……マルガレーテは姉と同じ音楽学校に通うために努力してきた。」
成生「だが結果は不合格、そこでマルガレーテの父さんが出した課題はLoveLive!で優勝すること。そうしたら推薦枠を用意してやるって話だ。」
「それでLoveLive!に……」
僕の言葉にこく、と頷き話を続ける。
成生「俺が作曲していると聞くや否や優勝したらマルガレーテだけでなく俺の推薦もするとか言い始めた。マルガレーテの父さんは結構な権力者みたいだ。」
成生くんまで入学させられるほどの権力……そこまでの音楽一家ならマルガレーテがあそこまで勝利にこだわるのも納得が行く。
成生「……ここからは俺の推測に過ぎないが……」
成生「恐らく、次は澁谷かのんと一緒なら推薦を考えてやるとか言い出すだろうな?」
「なんでそこでかのんさんが……!」
突然思いもよらぬ名前が飛び出して慌てて聞き返す。
成生「マルガレーテの言う限りでは家族の中でそこに合格していないのはマルガレーテただ1人らしい。このまま合格できなければ言い方は悪いがマルガレーテは一家の面汚しに過ぎない。」
成生「そこで無理やり入学させようとしてくるだろうがただで入学させる訳にはいかない。」
確かに成生くんの言っていることは筋が通っている。
「そこで歌唱力の高いかのんさんを……?」
成生「ってなるだろうな。あくまで推測だが、可能性は高い。」
かのんさんがウィーンに……才能を評価され、歌を学びに行く……嬉しいことのはずなのに素直に喜べない。
僕の考え込む顔を見て成生くんは口を開く
成生「……対抗策は早く打っておくに限る。本人の意思を尊重するか、一緒にいてほしいと伝えるか、決めておくんだな。」
「……成生くんは、マルガレーテにどうして欲しいの?」
思った時には口から言葉が出ていた。僕の言葉に驚いたようで僕の顔をぼーっと見つめている。
成生「……あくまで俺とマルガレーテは勝つために組んだだけだ。あいつがどこに行こうが関係ない。」
「けど……!」
成生「けどな。」
僕と成生くんの言葉が重なる。
成生「あいつを勝たせてやれないままなのは、素直に悔しい。」
成生くんにもこんな気持ちがあったんだ、と嬉しくなり笑いがこぼれる。
成生「失礼なやつだな。俺がこんなこと考えるのが意外か?」
「うん、もっとばっさり切り捨てるかと思ってた。」
成生「……正直すぎるのもどうかと思うぞ。」
少し視線を僕の斜め上に移した成生くんは荷物をまとめ始めた。
成生「社長の息子でもちゃんと延滞料金は取られる、金を払いたくないならさっさと支度しろ。」
「えっえぇ!?はやく言ってよ!」
「今日はありがとう。また今度、成生くんの話聞きに来るね。」
成生「はぁ……わかった。嬉しくはないが掃除してもらった分文句は言わない。」
僕達は退室した後、路地で話していた。
成生「それと、成生でいい。さん付けはなんかムズムズするから嫌いなんだ。」
「わかった、成生。またね。」
ひらひらとこちらを見ずに手を振る成生を見送りその場に少し立ち尽くす。
「……思ってたより悪い子じゃないな、なんであんなこと言ったんだろ。」
成生『千砂都、俺は認めないからな。』
あの時の言葉を思い出し、顎に手を当てて考える。
「やば、夕飯の買い物まだしてない……」
慌てて家路を急ぐ僕、家に着く頃にはそんな疑問は頭から抜け落ちてしまっていた。
今回も読んでいただきありがとうございました。
創と成生の関わりによってLiella!、マルガレーテ、そしてお互いにどんな影響があるのか、次回以降も注目していただけると嬉しいです。
次回もよろしくお願いします。