ラブライブ!スーパースター!! Create the future 作:園枝こるだ
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創視点、理事長室前──────
僕たちが暗い顔をして理事長室を目指して歩いていると、目の前からかのんさんが歩いてきた。僕たちの暗い顔を見て急いで駆け寄ってくる。
かのん「みんな、どうしたの!?」
「……かのんさん。」
きな子「留学、しちゃうんっすか!?」
いきなり本題に入ろうとするきな子ちゃんに少し驚くも、かのんさんは真剣な顔つきできな子ちゃんを見つめる。
かのん「もしかして、成生くんから?」
「はい、さっき成生から電話がありました。」
そっか……とかのんさんは手に持っていた資料を持ち直す。そこにはウィーン国立音楽学校と書かれていた。
かのん「……行かないよ。私、マルガレーテちゃんの言っていた本当の歌、まだわからないままなんだ。」
恋「本当の歌……」
そう、と恋先輩の疑問符に頷きとともに返事をする。
かのん「私、知りたいんだ。本当の歌がどんなものなのか。」
かのん「それに……まだみんなと離れたくないし……」
あはは……と照れくさそうに頭を搔くかのんさんに可可先輩が飛び込む。
可可「よかったデス……まだかのんとスクールアイドルできるんデスね……」
可可先輩の頭を撫でながらかのんさんは優しく受け止める。
この日は少し練習をして解散となった。
創の自宅──────
「おかえり、おばさん。ご飯もうできてるよ。」
理事長「ありがと、今日は練習終わるの早かったのね。」
おばさんはふぅ、と一息つき、脱いだ上着をハンガーにかける。
「うん。……あのさ!」
「かのんさんの留学の話って……」
なんと問いかければいいのかわからずそこで僕は言い淀んでしまう。留学してほしいのか、してほしくないのか、僕は未だわからないままだった。
理事長「それは、澁谷さんが決めることよ。」
もちろん理事長としては行ってほしいけどね、と笑いながらおばさんは話す。
僕の苦虫を噛み潰したような顔を見て、おばさんも真剣な顔つきになる。
理事長「1度、本気でぶつかってみたらどうかしら。」
「本気で……?」
オウム返しした僕の言葉に頷く。
理事長「どうしたいのか、どうしてほしいのか、言わなきゃ伝わらない気持ちだってあるわよ。」
伝わらない、気持ち……
かのんさんにどうしてほしいのか……
同刻、かのん視点──────
私はいつもの帰路を1人で歩いていた。その時、木陰から見知った少女が姿を現す。
「マルガレーテ、ちゃん。」
名前を呼ばれた少女は私の前に堂々と立ち塞がる。
マルガレーテ「貴方が留学するのか、聞いておこうと思ってね。」
「…………」
さっきはみんなの寂しそうな顔を見て咄嗟に留学しないと言ってしまったが、正直内心では決めあぐねていた。思えば私の夢はスクールアイドルではなく世界中に歌を響かせること。
夢のためには……留学する方が……
マルガレーテ「……ねぇ、聞いてるの?」
「えっあ、うん……ごめん……」
マルガレーテちゃんは私の曖昧な返事にため息をつく。
マルガレーテ「もしかして私のこと気にしてるわけ!?」
ずいっ、と一歩踏み出し、マルガレーテちゃんの顔が私の顔に近づく。
「いや、そうじゃないけど……」
マルガレーテ「そんなにLiella!が大事?」
「……うん、とっても。」
私の言葉にふんっ、と納得していない様子のマルガレーテちゃん。
マルガレーテ「この留学の話は貴方に来たものよ、他でもない貴方にね。」
マルガレーテ「ま、よく考えなさい。」
私はマルガレーテちゃんの言葉を理解出来ているのに飲み込めず、その場に立ち尽くしていた。
結局家に着くのにいつもは10分程度なのに30分もかかってしまった。
「ただいま〜……」
創「おかえりなさい、かのんさん。」
私に返事をしてきたのは意外な人物だった。
「え!?創くん、なんでここに……?」
創「ちょっと話したいことがあって……いきなり押しかけちゃってすみません……」
全然大丈夫、と私は顔の前でぶんぶんと手を振る。
「話したいことって……?」
創「……僕、かのんさんに留学してほしいんです。」
「えっ……?」
創くんは私の目を真っ直ぐ見つめながら話し続ける。
創「もちろんLiella!のことが大事で、結ヶ丘に残ってくれたらすごく嬉しいです。かのんさんのこと大好きですから。」
大好きという言葉に顔が熱くなる。けど、と創くんは続ける。
創「かのんさんの夢のこと考えたら……留学した方がいいんじゃないかって……」
創「Liella!が、かのんさんの夢の壁になっているんじゃないのかなって……」
「……正直ね、自分でもわからないんだ。」
「Liella!でいたいし、3年間スクールアイドルやりきりたいの。」
みんなの顔が頭に浮かぶ。可可ちゃん、すみれちゃん、ちぃちゃん、恋ちゃん、きな子ちゃん、創くん、メイちゃん、四季ちゃん、夏美ちゃん。
「けど、夢のためには留学した方がいいって、頭ではわかってる。」
「どうすれ、ば、いいんだろ……」
創「かのんさん……」
その時、そばにあった電話が鳴る。店用に使っている電話だ。
創「こんな時間に?」
「電話?」
私は首を傾げながら受話器を手に取った。
私は言い慣れた店名を電話口の相手に伝える。
??「君が澁谷かのんさんだね?」
「え……?どなたですか……?」
聞いたことの無い声の主が私の名前を呼ぶ。肯定することはせず話を続けようとする。
マルガレーテ父「申し遅れた。ウィーンマルガレーテの父だ。娘が世話になったね。」
「え、マルガレーテちゃんのお父さん!?」
私の言葉に創くんもえっ、と声を漏らす。
マルガレーテ父「LoveLive!予選突破おめでとう、素晴らしいステージだった。拝見させてもらったよ。」
「あ、と、ありがとうございます……」
気迫のある声に少し気圧される。
マルガレーテ父「先日そちらに送った書類、読んでもらえたかな?」
「……はい、留学の話、ですよね……」
マルガレーテ父「そう、そのことなんだが……」
電話の向こうでうーん、と少し唸っている。
マルガレーテ父「……取り下げてもらうことは可能だろうか?」
「え?」
創「え?」
どうやら電話の声が聞こえたのか私と同じリアクションをする創くん。というか留学取り消しって……?
マルガレーテ父「先程マルガレーテの友人から連絡があったんだ、来年絶対マルガレーテを連れていくから待ってろとね。」
ふふ、と楽しそうに話すマルガレーテちゃんのお父さん。
マルガレーテ父「君の歌の才能を見込んで頼みがある、マルガレーテのそばにいてやってくれないだろうか。」
「マルガレーテちゃんの、そばに……?」
意外の連続すぎてついてきていない頭を必死に回転させる。
マルガレーテ父「……あの子は歌を楽しむということを忘れてしまった。それも私がかけた重圧のせいだろうな。」
先程の気迫のある声とは一転して寂しげな声が聞こえる。
マルガレーテ父「あの子にもう一度、歌が楽しいものだと教えてあげてほしいんだ。教えなくとも、指し示してさえくれればいいんだ。」
マルガレーテちゃんの歌は素晴らしい。……本人が楽しそうでないことを除けば。まるで歌を武器のように使っているような、そんな感じがする。
マルガレーテ父「本当は私の役目だということもわかっている、しかし私にはあの子に歌の楽しさを教えてやれない。また重圧になってしまうだろう。」
マルガレーテ父「だから、頼む……1人の父親として責任を取りたいんだ。」
「……わかりました、私にできるかわかりませんがやってみます。」
私の返事に驚いたのか、がたがたと電話先から物音が響く。
マルガレーテ父「本当か……!ありがとう……!!」
マルガレーテ父「来年度また留学の話は送らせてもらう、学校の方には私が連絡しておくよ。」
本当にありがとう、とお礼の言葉とともに受話器が置かれる。
私も受話器を置き、創くんと顔を見合わす。
「留学……なしだって……」
創「みたい……ですね……」
2人きりの店内に微妙な空気が流れた。
今回も読んでいただきありがとうございます。
テレビアニメ2期とは異なる進み方をしてきました。これから先もどんな展開になるのか楽しみにしていただけると嬉しいです。
次回もよろしくお願いします。