ラブライブ!スーパースター!! Create the future 作:園枝こるだ
放課後──────
生徒A「やってみなよ!スクールアイドル!」
生徒B「いやいや!私なんて〜。」
と話す声の向こうでスクールアイドル部のチラシの前で立ち尽くすきな子ちゃんが目に入った。
「きな子ちゃ……」
と呼ばれたのに気づき、きな子ちゃんが振り向いたその時。
夏美「オ〜ニナッツ〜!あなたの心のオニサプリ!鬼塚夏美ですのーっ!にゃはぁ〜っ!」
と入学式の時にきな子ちゃんと話していた子、鬼塚夏美?さんが動画の撮影を始めた。
スクールアイドル部のチラシの前に立つ僕ときな子ちゃんを交互に見る。
夏美「ん〜……ちょっと!気が散ってしまったですの!」
きな子「す、すまねえっす。」
「ご、ごめん。」
鬼塚さんは僕に「あなた初めましてですの、どうぞ。」と名刺を手渡す。
なになに……株式会社オニナッツ代表取締役社長CEO!?社長!?高校生で!?と驚いた表情で見上げる僕をにやりと見下す鬼塚さん。
きな子「CEO……創くん……」
あ、そっち呼びなんだ、きな子ちゃん。
夏美「夏美でいいですの。」
「どうしたの?」
きな子「興味はあるけど、自分には向いてなさそうな時どうすればっ……!」
鬼塚さんはさっきまでとは打って変わって真剣な顔で。
夏美「いいですの?向いてないことをいくら頑張ったって、ダメなものはダメですの。」
僕ときな子ちゃんは真面目な顔で鬼塚さんの話を聞く。
鬼塚さんはにっと笑い、続きを話す。
夏美「でも、やってもないのに向いているかどうかなんてわからないでしょ?」
「……いいこと言うんだね、鬼塚さん。」
夏美「ふふふ、夏美でいいですの。」
そんなやり取りをしているときな子ちゃんの後ろに不穏な影が。
四季「自分に正直に。」
きな子、創「へっ?」
そう言った瞬間きな子ちゃんと四季の足を二人三脚の容量で固定する機械が音を立てて作動する。
きな子「ひぇぇぇええ〜っ!!!」
四季「足関節神経ブロック、一部シンクロ完了!」
そう言ってキメ顔をする四季。いやどういうことなの。
「ちょっ四季!外しなよそれ!てかいつ作ったの!」
そう話すのを無視して夏美ちゃんは動画のことを気にしている。「時はマニーなりっ!」と自作のことわざを披露している。
僕の視界の横でびゅんっと2人……いやほぼ四季に引きずられているきな子ちゃんが階段を駆け上がっていく。
「四季!危ないから止まって!四季!!」
騒ぎを聞きつけたのかメイが教室から顔を出し、2人を追いかける僕を見て「何してんだ?」と聞いてくる。
「あ……〜っと。とりあえず後で説明する!」
メイ「?……あぁ。」
階段を上がると器具が足元にごろんと転がっている四季が目に入る。
「なにやってんの四季!」
四季「創も、用事あるんでしょ。」
全てを見通すような赤い瞳に狼狽える僕が写る。
「……あとで説教だから!」
四季「説教……創もファイト。」
四季の声を後ろに僕も階段を駆け上がる。
開かれた屋上の扉の先には簡易的なステージの前に立つLiella!の5人、そして立ち尽くすきな子ちゃんがいた。
かのん「きな子ちゃんに……あれ?君は?」
オレンジ色の髪、整った顔に優しい聖母のような紫の瞳の女の人、澁谷かのんさんと目が合う。
「えっ、と。僕も!入部希望です!!」
Liella!の先輩たちは少し驚いた顔をするもすぐ優しい微笑みに戻る。
かのん「ありがとう。……私たちのライブを見てほしい。今のLiella!の、とっても楽しいライブを!!」
──────
「すごい……これがLiella!……」
きな子「なんじゃこりゃぁ〜〜っ!!」
クルクルとアイススケートのようなポーズでくるくると回るきな子ちゃんを灰色の髪の先輩、唐可可さんが抱きしめる。
可可「捕まえたデスっ!」
僕らの後ろで聞き慣れた声がする。
メイ「ふわわ……見ちゃった……こんな近くで……」
四季「必然。」
ペンライト持ってないじゃん……っていうのはどうでもいいか。
きな子「かのん先輩……」
かのん「これがスクールアイドルの魅力!みんなと結ばれてつくる、新しい未来!ようこそ、Liella!へ!!」
かのん先輩から伸ばされた手にぼくときな子ちゃんはそっと手を重ねた。
スクールアイドル部 部室──────
可可「欢迎!欢迎!いつもこんな感じで集まってマス!」
千砂都「お菓子もい〜っぱいあるよ〜!」
お菓子が入ったバスケットをお団子を2つ携えた髪型が特徴的な先輩、嵐千砂都さんが僕ときな子ちゃんの間に置く。
「チョコ、も〜らいっ。」とバスケットに手を伸ばしたのは平安名すみれ先輩、すごく整った容姿でまるで女優さんみたいだ。可可さんに押さえつけられてわーぎゃー騒いでいる。
かのん「お待たせ!きな子ちゃん!……とえーっと……」
「神谷 創です。名乗るのが遅れて申し訳ありません。」
かのん先輩は両手を体の前で左右に振り「そんなかしこまらないで!」と緊張をほぐしてくれる。
恋「神谷 創さん……?もしかして理事長と同居されています……?」
生徒会長挨拶をしてくださった葉月恋さんがかのん先輩の後ろで僕に問いかける。
「そうです。もしかして理事長から聞きました?」
恋先輩以外の先輩方ときな子ちゃんは「えっ!理事長っ!?」と予想通りの反応を取ってくれている。
恋「はい、本日理事長と話した際に、マネージャー志望の子が1人来るかも、と教えてくださって。」
すみれ「あら、マネージャー志望なの。てっきりかわいい顔してるからこっち志望かと思ってたわ。」
すみれ先輩が顎に指を置きながら……かわいい顔って……そんな女の子っぽいかな、僕……。
「そ、そんな……マネージャー志望です。昨日理事長がやってみないか、って。それで僕も新しいことに挑戦してみたくて、今日は来させていただきました。」
5人の先輩方は「わぁ〜!」と嬉しそうに反応してくれて、おもわずこちらも嬉しくなってしまう。
きな子「創くん、改めてよろしくっす!」
「うん!よろしくね、きな子ちゃん!」
可可「唉呀……美しい友情デス……!!」
可可先輩が目を潤ませてこちらを見ている。
かのん「それじゃ、早速練習してみよっ!」
きな子、創「はいっ!!」
屋上──────
きな子「ふぎゃっ!」
一連の練習が終わったあと、きな子ちゃんは屋上にへたれこんでしまう。僕も一応ダンス以外は同じことやったけどかなりしんどい。これがLiella!……!
きな子「やっぱりダメっす……」
しゅんと体育座りでいじけてしまうきな子ちゃん。
かのん「まぁまぁ……まだ初日だよ!」
ぽそりぽそりときな子ちゃんが話し出す。
きな子「昔から運動はダメダメだったっす……いつも1人で……置いてかれてたっす……」
向いてないって言ってたのはこういうことだったのかと理解する。
可可「そんなこと心配ないデス!」
すみれ「そうよ!この子なんて入った時腹筋1回もできなかったんだから。」
「それはもう過去の話デス!」とまたわーぎゃー騒いでいる。いつもこんな感じなのかな、このお二方……
かのん「そ!だから大丈夫!」
そうだ、とかのん先輩が思いついたと言った感じで。
かのん「きな子ちゃん、センター立ってみて。」
きな子「へ……?きな子がっすか……?」
立ち上がったまま悩んでいるきな子ちゃんの背中をそっと押す。
「大丈夫。僕は見てみたいな、きな子ちゃんがセンターに立つとこ。」
きな子「創くん……よしっ……」
すっ、と歩みを進めたきな子ちゃんの手を先輩達が握る。
きな子「うわぁっ……!」
きな子ちゃんの暗かった顔が一転して明るくなる。
かのん「これがステージになったら、応援してくれる人が沢山いる……沢山元気をくれるの。」
青空の下で6人が立つ姿を僕は目に焼き付けた。
きな子「素敵っす……」
千砂都「だから元気だしてっ!」
千砂都先輩の優しい眼差しがきな子ちゃんへと向く。
きな子「頑張りますっ!」
その時、きな子ちゃんの背後に白い羽が落ちてきたのが見えた。
練習後──────
きな子ちゃんは可可先輩とかのん先輩に練習についての相談を受けているらしい。
恋「創さん、入部していただきありがとうございます。」
「いえ。こちらこそ、マネージャーという形での入部を許してくれてありがとうございます。」
僕は深く頭を下げる。
千砂都「すごく礼儀正しい……!さすが理事長の息子……!」
恋先輩がはっとして「千砂都さん!それはっ……!」と言うと、千砂都先輩はへ?となにがなんなのかわからない表情を浮かべる。
「いえいえ、勘違いするのも無理ないですから大丈夫です。」
「実は僕、理事長に預かってもらっている身なんです。」
千砂都先輩はそうだったんだ、ごめん!と両手を胸の前で合わせて必死に謝ってくださっている。僕も大丈夫です!と大袈裟に手を前に出す。
すみれ「預かってもらってるってどういうこと?」
「話すと長くなるし、暗い話なのですがいいですか……?」
僕は先輩たちとまだ残っていたきな子ちゃんに預かってもらうまでの経緯を説明した。
きな子「そ、うだったんすか……」
きな子ちゃんは途中から目に涙を浮かべながら聞いてくれていた。他の先輩もすごく真面目な顔で聞いてくださった。
「ごめんね、暗い話して。」
恋「私も詳しくは知らなかったのです。辛いことを思い出させて申し訳ありません……」
恋先輩が深深と頭を下げる。いえいえ、大丈夫です、と頭を上げるように必死に伝える。
かのん「改めて、ありがとうね。Liella!のマネージャーになってくれて。」
かのん先輩が1歩前に出て、僕の前に手を差し出す。
「こちらこそ、ありがとうございます。精一杯頑張ります!」
かのん先輩の手を握る。あたたかい、まるで陽だまりのように優しいあたたかさだ。
後日、1年生教室にて──────
きな子ちゃん……なんかずっと苦虫を奥歯で噛み潰したような顔してるんだけど、なんかあったんだろうか。
きな子「スクールアイドル部のため……」
「へっ?」
急にどうした?と思っているとガタッと立ち上がり、即座にメイの目の前へ、まさか四季、きな子ちゃんに言ったな……
「あ、あ、あなたもっ!スクールアイドルやってみませんか!?」
教室中から「米女さん!」「意外〜!」「好きだったんだぁ!」と声が上がる。これはまずい……と思ったその時メイがきな子ちゃんから差し出された手をぎゅっと握……掴む。
きな子「米女さんっ!あれっ……?」
メイ「………… ち ょ っ と 来 い っ ! ! 」
そう言ってきな子ちゃんはメイに連れられて教室の外へ。あぁ……
てかそう言えば四季!
「四季!きな子ちゃんになんか変なこと吹き込んだだろ!」
四季「変なことじゃない、スクールアイドル部にメイを誘ってって頼んだだけ。」
吹き込んでんじゃん……と思っていると。
四季「創も、メイにいつまで黙ってるつもり?」
「……じきに、言うよ。タイミングってものがあるの。」
メイがどんな反応するのか怖くて、まだ僕はメイにLiella!のマネージャーになったことは言えずにいた。
四季は無表情でこちらを見ていた。こういう時、表情がわかりにくいのが困る……四季はどうしたいのさ。
放課後の部室──────
先に来ていたきな子ちゃんはどうやら先輩たちに相談ごとをしているようだった。どうやら自分のせいで応募者がいなくなっているんじゃないかということらしい。
かのん「なら1年生が入部してくれるように、変えなきゃ……!」
その後チラシの目標欄をラブライブ優勝からラブライブ出場に変更、練習メニューを大幅に簡易化するに至った。
今日はそこで解散することになった。
次の日の練習中──────
簡易化されたメニューを軽々とこなす先輩方、しかしそれでも思うように体が動かず、ついていけないきな子ちゃん。
見ているだけでも少し辛いものがあった。
千砂都「今日はこれで終わり!」
すみれ「これで終わり?流石に歯ごたえないわね〜」
恋「す、すみれさんっ!」
きな子ちゃん以外があっ、と顔を見合わせる。すみれ先輩は必死に喋って誤魔化しているが逆に誤魔化せてないんじゃ……
かのん「気にしちゃダメだよ」
「うん、この前より動けてる。成長してるよ。」
きな子ちゃんが疲れきった顔でこちらを見る。
きな子「かのん先輩……創くん……っ!?」
きな子ちゃんが何かを見つけたような反応をする。
きな子「きな子、ちょっとお手洗に〜……あは、あはは……」
かのん、創「いって、らっしゃい……?」
数分経ってもきな子ちゃんは戻ってこない。
かのん「うーん……創くん、きな子ちゃん探してきてくれる?なんかトイレ行く前もちょっと様子変だったし……」
「変でしたよね……わかりました、ちょっと見てきます。」
お願いね、とかのん先輩は自主練習に戻っていった。
窓の外を見るとベンチに座るきな子ちゃんとその横にはメイが、あとは特殊なブーツを履いた四季がいた。いつ作ってるのさほんとに。
急いで外に向かうとなにやら話をしているようだった。
メイ「周りの声なんて、気にするな……!」
どうやらメイがきな子ちゃんを励ましていたらしい、こういう時のメイは本当に頼りになる。メイの励ましはすごく心に響くというか、なんとなくすっと入ってくるんだ。
四季「創、遅い。」
「遅いって……僕は呼ばれてないんだけど……?」
メイがきな子ちゃんから視線を外し、僕の方へ振り返る。
メイ「創、なにやってたんだこんな時間まで。」
「あ、いや、その……」
四季「創が伝えたいことがあるって、メイに。」
えっ、と言う間もなく逃げれないように足関節神経をブロックされてしまった。
メイ「なんだよ、改まって。」
「メイ、その……僕!Liella!のマネージャーになったんだ!」
メイは一瞬驚いた顔をするがすぐいつもの顔に戻った。
メイ「そっか。いいじゃんか、頑張れよ。」
「えっ、そんだけ……?」
正直、怒られるかもしれないとまで思っていた。黙っていたこと、メイが大好きなグループに僕なんかが関わること。やましく考えていたのは僕だけだったみたいだ。
メイ「そんだけってなんだよ……別に怒ったりしねえよ、創が頑張れるもの、見つけられたんだから。」
少し照れくさそうにメイが言う。
きな子「美しい友情っす……!!」
と涙を浮かべたきな子ちゃんがいた。
メイ「何泣いてんだよ、ったく……」
メイはハンカチを取り出しきな子ちゃんの目元を拭う。
メイ「とにかく、頑張れよ2人とも。応援してるぜ。」
「……あぁ、ありがとう!頑張るよ!」
四季「……」
四季がどこか寂しげな表情を浮かべていたのを、僕は横目で見てしまった。
第2話です。読んでいただくとわかるようにアニメ本編と連動するような形で進んでいます。文字に起こすとまた新しい発見があって楽しいですね。
四季メイは書くのがとても難しいです。メイちゃんの裏にある優しさを表現すること、四季ちゃんの独特な喋り方、大変です。とても楽しいですけどね。