ラブライブ!スーパースター!! Create the future   作:園枝こるだ

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第29話「この世は舞台なり」

成生視点──────

俺たちは話に夢中でいつの間にかかのん先輩の家の前まで来てしまった。

かのん「というかマルガレーテちゃんの家ってこっちだったっけ?」

「確かに。こんな方まで来ちゃってよかったのか?」

マルガレーテはかのん先輩の顔を見つめる。

マルガレーテ「あんた聞いてないの?」

かのん「何が?」

きょとんとするかのん先輩。それを横目にマルガレーテはかのん先輩の家にまるで自分の家かのように入っていく。

かのん母、ありあ「おかえり〜。」

マルガレーテ「ただいま〜。」

件のマルガレーテはすたすたと店内を抜け奥の扉へ向かっていく。

かのん「えっ!?」

「え」

2人「えっ!?」

 

ありあ「お姉ちゃん聞いてなかったの?お父さん出張でいないから部屋を貸すことにしたの。」

かのん「全くもって聞いてないんですけど……」

少し寄っていったら、というかのん先輩のお母様のご好意に甘え、コーヒーを飲ませてもらうことになった。マルガレーテは慣れた感じで接客対応をしている。

かのん母「あなたは新しいマネージャー君?創くんとはまたタイプが違う子ね〜。」

「八掛成生と申します。かのん先輩にはお世話になってます。」

正式にはマネージャーではなく作曲担当なんだが……ややこしくなりそうなので黙っておこう。

かのん母「成生くんとマルガレーテちゃんは付き合っているの?」

2人「はぁ!?」

あまりに突拍子のない質問に大声で聞き返す俺とマルガレーテ。

かのん母「あら違うの?かのんが創くんを連れてきた時に似てたから。」

かのん「ちょ、ちょお母さん!やめてよ!!」

「俺らはそういうんじゃないですよ、誰かさんと違って。」

顔を真っ赤にしたかのん先輩と目が合う。

かのん「この話もう終わり!!」

 

「今日はありがとうございました。」

かのん「いえいえ!……さっきの話、誰にも言わないでね。」

わ、わかってます、とかのん先輩の迫力に負け、後ろに仰け反る。

マルガレーテ「で?曲は成生が作るでいいのよね?」

かのん「うん。私も成生くんが作る曲気になるし!」

「そんな期待されても困りますけど……」

ん〜、と予め何個か作ってあった音源をスマホで確認する。

かのん「わ、すごい!いっぱいあるんだね!」

画面を覗き込んできたかのん先輩が目をキラキラさせている。

「よければ後でデータ送りますよ。」

ほんと!?と嬉しそうにするかのん先輩、まぁ創が惚れるのも納得かと頷く。

「では、また明日。」

軽く会釈をしてかのん先輩とマルガレーテと別れる。

……腹減ったし、なんか食べてこうかな、と少し遠回りして帰路に着く。

少し先にたこ焼きののぼりが見える。

「たこ焼きでいいか……すみません、ひと、つ…………」

千砂都「なるくん……?」

メニューから目を離した時目の前にいたのはバイト中の千砂都だった。

「あ、いやこれは、たまたま……」

千砂都「……もうすぐ休憩だから、待っててくれる?」

俺は黙って頷き、近くのテラス席で待つことにした。

 

千砂都「お待たせ、はいこれ。」

「ありがと、ごめん、さっき払いそびれた。」

いいよいいよ、サービスだから、と俺がお金を渡そうとすると首を横に振る。

千砂都「こんな時間まで練習?お疲れ様。」

「あぁ、千砂都たちも練習頑張ってるみたいだな。声聞こえてくるよ。」

そんなふうに他愛のない話を続けていたが、少し経つと限界が来て2人の間に沈黙が流れる。

言うなら今……なのかな。

「千砂都、少し話があるんだ。」

千砂都「え……どうしたの……?」

きょとんとして俺の顔を見る。

「俺、ずっと千砂都に謝りたかったんだ。東京予選のあの日のこと。」

千砂都「……あぁ、大丈夫大丈夫!もう気にしてないから……」

大丈夫と言ってはいるものの顔は少し暗くなる。

「本当はさ、あそこで勝って、千砂都にはスクールアイドルを諦めてもらうつもりだったんだ。」

千砂都「……どうして?」

予想外の言葉だったのか、千砂都は一瞬驚いた顔をして聞き返す。

「……また、千砂都が踊れなくなるのが嫌だったんだ。俺が怪我したあと踊れない時あっただろ?」

少し迷った後にこくりと頷く。

「その時俺は思ったんだ、俺が千砂都のために曲を作ればもう千砂都が踊れなくなることは無いってな。」

千砂都「なるくん……」

「今じゃ間違いだったって分かってるけどさ、あの時は本気だったんだ。」

俺は少し俯き、膝の近くで軽く結んでいた手をぎゅっと握る。

「俺はずっと子供だった。千砂都に依存してばっかりだった。」

「けど千砂都は前に進んだ。Liella!に出会ってな。」

自分が今できる最大限の笑顔で千砂都を安心させようとする。しかし俺を見る千砂都の表情は安心からは程遠いものだった。

千砂都「…………私だって、完璧に乗り越えられたわけじゃないよ……」

千砂都「今だって怪我したら、怪我させたら、って考えちゃうこともある、けどね。」

俺が握りしめていた手に千砂都はそっと手のひらを被せる。

千砂都「それでも見たい夢があるんだ。Liella!のみんなと。」

「……すごいな、千砂都は。俺には、そんなこと……」

千砂都「なるくんだってできるよ、今マルガレーテちゃんと見てるでしょ?新しい夢。」

千砂都は眩しいほどの笑顔で俺のことを見つめる。マルガレーテと……か。

千砂都「ウィーンに連れてってあげるんでしょ、マルガレーテちゃんのこと。」

「……あぁ、絶対に俺が連れてく。約束したからな。」

ふふっ、と俺の方を見て千砂都は笑う。

千砂都「なぁんだ、なるくんなんにも変わってなかった。」

「なんだそれ、変わってはいるだろ……多少は。」

千砂都「変わってない、なるくんはずっと優しいなるくんのままだよ。」

照れることなく言い切る千砂都にこちらの顔が熱くなる。

「千砂都は変わったな……俺は今の千砂都のことも好きだよ。」

千砂都「えっ!?す、好き……って……あり、がと……」

照れさせられるばかりじゃあれだし、ちょっと仕返ししてやった。直接言われ慣れてないのか耳まで真っ赤にする千砂都。

「なんか……すっきりした。ありがとな、千砂都。」

俺はすっと立ち上がり伸びをする。千砂都の方に振り返り見せたいものがあるんだ、と言うと千砂都は首を傾げる。

千砂都「見せたいもの?」

「あぁ、ほっ……と。」

俺はその場で少しだけ踊って見せた。千砂都はあの日の創のようにぎょっと目を見開く。

千砂都「なるくん、平気なの……?」

「……悪い、ずっと嘘ついてて。」

千砂都は目を潤ませながら首を横に振る。

千砂都「ううん、なるくんがまた踊れて本当によかった。」

こんな風に心配してくれていたのなら、もっと早くに打ち明けるべきだったなと心が痛む。

千砂都「じゃあ、結ヶ丘でダンスの勉強もするの?」

「え?あぁ……そうか、ダンスも学べるんだっけ。」

マルガレーテを勝たせることばかり考えていたせいで、ダンスも学べることをすっかり忘れていた。

「千砂都はダンス学ばなかったのか?」

千砂都「元々音楽科だったんだけど、スクールアイドル始める時に普通科に転科したの。」

「そ、そうか……すごい覚悟だな……」

正直そこまでの覚悟をもってスクールアイドルに望んでいたことは知らなかった。千砂都にそこまでさせるかのん先輩を少し羨ましく思う。

「……学んでみようかな、またステージ立ってみたいし。」

俺の言葉を聞いた途端嬉しそうな顔に変わった千砂都が立ち上がりぐいっ、と顔を寄せる。

千砂都「ほんとっ!?」

「え、あ、ぉ、おう……」

千砂都は俺の手を取り、ぎゅっと握る。

千砂都「今度は、一緒にステージ立とうね……!」

「……あぁ、今度こそ、2人のステージにしよう。」

かつて諦めた俺と千砂都のステージ、実現できるかはわからないが……当分はこれが夢ってことにしよう。

 

夏美視点──────

私は固く閉ざされた扉の前に立っていた。そう、妹である冬毬の部屋の扉の前。ひとつ大きく深呼吸をしてからノックをする。

冬毬「現在収支計算を行っています、姉者にさける時間はありません。」

扉の向こうから冷たく突き放すような言葉が飛んでくる。

「冬毬聞いて、確かにスクールアイドルはマニーになることでは無いですの。」

冬毬からの返事はない。正直、ここまでは予想通りだ。

「でも、やるからにはちゃんとやって欲しい。かのん先輩たちに冬毬がいてよかったって思って貰えるような、生半可じゃないスクールアイドル活動が見たいですの。」

部屋の中から聞こえていた素早いタイピングの音がぴたりと止む。

「……困ったことがあったら、なんでも言って。冬毬の力になりたいの。」

返ってくることのない返事を少し待ってから私は横にある自室に入った。

「……冬毬。こんなにも近いのに、なんでこんなにも遠いんですの。」

 

冬毬視点──────

夏美「生半可じゃないスクールアイドル活動が見たいですの。」

……私は姉者の言葉にタイピングの手を止めた。すすっと慣れた手つきで開くのは、何度も見返したLiella!のサイト。

冬毬「スクールアイドル活動は、きっと姉者を傷つける。」

スクールアイドルについて調べると、大会での敗北や、怪我、資格取得等のメリットがないなどの影響で精神を病む方も少なくないということが分かった。

私はがら、と机の1番上の引出しを開ける、そこにあったのはあの日姉者が捨てた夢ノート。表紙もページもボロボロ、けどそこには姉者が目指してきたキラキラした夢が何個も書かれていた。

夏美『夢なんて、持つものじゃない。』

あの日から、姉者は変わってしまった。けれどそれが悪いことだとは思わない。夢を叶えられる者、叶えられない者は生まれつき決まっているんだから。

冬毬「もう、姉者を傷つけさせはしません。」

私の視界の端で水槽の中のミズクラゲ、姉者がふわりと漂っていた。




今回も読んでいただきありがとうございました。
成生と千砂都の不和が解消されたことでどのような変化が出てくるのか、楽しみにしていただければと思います。
次回もよろしくお願いします。
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