ラブライブ!スーパースター!! Create the future   作:園枝こるだ

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第32話「空白のセンター」

成生視点──────

マルガレーテ「冬毬は今日も練習来ないの!?」

怒号にも似た声が公園に響く。

かのん「ま、まぁまぁ、必要になったら行くって……」

マルガレーテ「はぁぁ!?ふざけてるわね……何度も何度も何度も言ってんのに!!」

かのん先輩に抑え込まれるマルガレーテを俺は笑いながら見つめている。

かのん「成生くんからも言ってくれてるんだよね……?」

「返答は変わらずですよ、必要になったら行くって。」

だよね〜……と呆れ笑いのような表情のかのん先輩、その腕の中ではもがもがとマルガレーテが暴れている。

「…………」

若菜四季、だよな。なんで物陰からこっちをじっと見てるんだ、しかも1人で……

四季『見る勇気がないだけ?』

「…………はぁ……おい、何してんだ。そんなとこで。」

若菜四季はまさか声をかけられるとは思っていなかったのか、びくっと身体を震わせこちらを見る。

四季「お構いなく、見てるだけ。」

「お構いなくってな……練習内容は意外と金になる情報なんだぞ?」

よっ、と俺は若菜四季の横に座り込む。

四季「あなたは、見てるだけ?」

俺の方を見て首を傾げる。

「ん〜まぁな。基本的には。」

「見る勇気はつけてきたつもりだけど。」

若菜四季は俺の発言にはっ、とした様子を見せてごめん、と短く謝罪する。

「なんかの勉強か?」

少し気を利かせて小声で質問する。

四季「……機密事項。」

言わないのかよ、と少しずっこけそうにもなるが、別に言いたくないならいい、と手を前に出す。

「……あんまり気負うなよ、何があったのか知らないけど。」

四季「ありがとう……」

気は済んだのかすっ、と立ち上がり、すたすたと神社から出ていく。

なんだったんだ……一体……

 

四季視点──────

練習前にセンターの体験ということで体育館に集合した私たち。

千砂都「じゃあとりあえず、1度センターがどんな感じかやってみよう!」

すみれ「こっちは準備OKよ!」

2階の方からスポットライトを操作する可可先輩とすみれ先輩が大きく〇を描いてジェスチャーをしている。

千砂都「四季ちゃん、ここに立ってみて!」

……ここ、と示されたのはステージのセンター。私が立たなければいけない場所。

メイ『大丈夫!四季ならできる!』

創『四季のセンターはきっといいライブになるよ。』

そう、みんなが期待してくれてる……応えなきゃ、私なんかに期待してくれているんだから。

意を決して私はステージのセンターに立つ。といっても観客もセットも何も無い体育館のステージの上だが。

その時ばんっ、と音を立ててスポットライトが私に当たる。私の網膜を灼かんばかりの光の筋がステージの真ん中を射抜く。

メイ「うぉぉ……最高だぜっ……」

創「うん、四季!様になってるよ!」

きな子「四季ちゃん、センターぽいっすよ!」

夏美「意外とスター性アリ……?」

私の眼下でみんなが盛り上がっている。段々とみんなの言葉が上手く聞き取れなくなってくる。

こんなに強い光を浴びたのは、人生で初めてのことだった。

「せん、ぱい……まぶ、しぃ……」

私の意識はそこで途切れてしまった。

 

創視点──────

僕たちは倒れた四季を慌てて保健室に運び入れた。

可可「大丈夫でショウか……?」

メイ「いつも虫探しで日陰にばかりいたから……」

四季が寝ているベッドの向こうで、僕たちは話し込んでいた

夏美「でも、センターとしてのポテンシャルは充分にあるみたいでしたの。」

きな子「思わず見とれちゃったっす〜!」

確かに、四季のセンターとしての素質は充分、というかそれ以上にあるように感じた。モデル並みのスタイルの良さに、大人びた顔立ち、あの無表情さから来るミステリアスな雰囲気がとてもいい。

ジジジジ……

「……何この音……?」

異音に気づいた時にはもう遅く、保健室の窓に鋭い光が差し込む。

光に目が慣れてきた頃、窓の外にはかわいらしい怪獣のような生き物が空を飛んでいた。

可可「これは……?」

恋「ゆいがおー!!」

普段あまり感情を顕にしない恋先輩が音を立てて立ち上がる。

恋「この結ヶ丘に古くから伝わる伝説の妖精です!」

すみれ「伝説……?」

マニーの匂いですの!と勢いよく夏美が窓を開けるとそこには薄いスクリーンを持って飛行するドローンの姿が。さっきの異音はこれだったのか。

千砂都「こんなことできるのは……」

おもむろにメイが立ち上がり、ベッドのそばのカーテンを開ける。四季が寝ていたはずのベッドの上にはゆいがおーの姿が。

可可「四季が……!」

「ゆいがおーに……!?」

すみれ「んなわけないでしょ……」

という冷静なツッコミの裏でメイのスマホから通知音が鳴る、そこには四季からのメッセージが。

四季「ごめん、センターはやっぱり無理」

Oh…No…というセリフとともに倒れるゆいがおーのスタンプが添付されていた。

 

その後、僕とメイは千砂都先輩と話し合うために、千砂都先輩のバイト先へと訪れていた。

千砂都「ちょっと強引すぎたかな……」

メイ「四季、目立つのあんまり好きじゃないから。」

いつかの日を思い出すかのように遠くを見つめながら話すメイ。

「けど、あれでよかったと思います。」

千砂都「どうして?」

「四季の性格じゃ、自分からやるとは絶対言わないと思いますし……」

千砂都先輩の質問に淡々と答える。

メイ「四季もやってみようって気持ちは、正直あったと思うんだ……」

閉店作業中なのかたこ焼き器を布巾で拭きながら千砂都先輩は寂しそうに話す。

千砂都「やっぱり私じゃ、かのんちゃんみたいに上手く行かないか……」

メイ「千砂都先輩は悪くないよ!」

少し驚いた顔をしてありがと、と返す千砂都先輩。

「四季をセンターにってアイデア、すごくいいと思います。」

メイ「なんたって、アタシたちが1番見たいステージだから。」

 

3人「うぃっすー!」

いつも通りの挨拶の後に僕は千砂都先輩に呼び止められる。

千砂都「創くん、かのんちゃん家一緒に行かない?」

「え?」

これ、渡したくて、と手に持った2パックのたこ焼きを僕に見せる。

「そうですね、マルガレーテのことも気になりますし……」

僕は千砂都先輩からたこ焼きを預かり、2人でかのんさんの家へと向かった。

 

マルガレーテ視点──────

「ねぇどうしてっ!?これであの子、3日も練習休んでるわよ!?」

かのん「今日も忙しいって。」

テーブルの上のコップをトレイに載せながらかのんは素っ気ない返事をする。ほんとにLiella!のリーダーだったの?これが?

「本当にLoveLive!に出る気あんの!?」

私がもう一度返り咲くためのステージ、言わば主戦場であるLoveLive!にはこれじゃ程遠い。

かのん「別にって。」

別に……?スクールアイドルを始めた癖にLoveLive!に出ないなんてどんな神経してんのよあの子は。というかなんでただ聞いてるだけなのよこいつは!

「はぁ!?それをただ聞いてたわけじゃないでしょうね!?」

かのん「仕方ないでしょ、何か事情があるかもしれないし。頭ごなしにダメって言うわけにも……」

「言いなさいよ!私たちの目標はLoveLive!優勝!それに賛同できないならとっととやめなさいって!」

私はウィーンに帰るため、かのんはLoveLive!連覇という目標がある。冬毬の才能には目を見張るものがあるけど志が違えた以上は仲間である必要は無い。

かのん「やだよ!賛同できないならやめろなんて、言いたくない!」

かのん「色んな人がいるから、私たちだって輝ける場所があるわけでしょ?」

かのんの言っている言葉の意味がわからず、思わずどういうことよ、と聞き返す。

私の前にことん、ことん、とオレンジ、紫、スモーキーブルーのコップを並べていくかのん。

かのん「色んな人がいるから素敵なの、色んな色があるから綺麗なんだよ?」

色んな色……私には私という色しか無かった。Liella!には色々な色があった。だから……負けたの?

余計な気持ちを押し潰し、私ははぁとひとつため息をつく。

「だからあんたと組むのは嫌だったのよ。」

その時店のドアがガチャンと開く……閉まる音?がする。

かのんといらっしゃいませ、と言いそちらを見ると、ドアは閉じたままだった。

「……なんなのよ。幽霊?」

かのん「や、やめてよ!!」

かのんは顔を真っ青にして私の顔にぐいっと近づく。

「あんた、幽霊苦手なの……?」

かのんははっとした表情の後に別に?と誤魔化す。誤魔化せてないんだけど……

 

成生視点──────

俺は練習後にマルガレーテ、かのん先輩と別れ、ぼーっと原宿の街を歩いていた。特に目的はなく、ただ単に気晴らしというか作曲のイメージを掴むためだった。

「…………?またいるな。」

俺の視線の先には以前練習を盗み見ていた張本人、若菜四季が立っていた。いつも無表情なせいで表情から感情は読み取れないが。

「何してんだ、こんなとこで。」

四季「八掛くん……」

成生でいい、と短く返事をする。

「練習じゃないのか?この時間は。」

少し俯き、悲しげ……とも取れる表情を浮かべる。

「あぁいや……悪い、別に責めてるわけじゃない。」

若菜四季はおもむろにこちらを見つめ、口を開く。

四季「君は私がセンターに相応しいと思う?」

その言葉の後に口を噤んで俺の返答を待つ。

「相応しいか……ってどういうことだよ。」

四季「千砂都先輩から聞いた。君はダンスもやってたって。」

四季「ステージ歴で言ったら、先輩。」

千砂都が俺の事を話しているのは少し意外だったが、そういうことなら、と真面目に考える。

「相応しいとかじゃなくやりたいかどうかで考えてみたらいいんじゃないか?」

「見せたい人がいるか、とかこの人とステージに立ちたいとか。」

「センターなんて考えずに、やるだけやってみたらいい。」

俺の返事に黙って俯いたままの若菜四季。

「俺に聞くより、もっと聞くべき人がいるんじゃないのか?」

はっ、と顔を上げ、どこか覚悟を決めた表情を浮かべる。

四季「……ありがとう。」

俺に背中を見せ、原宿の街へと消えていく若菜四季の姿を俺はぼーっと見つめていた。

「……何やってんだ俺は。Liella!は敵のはずなのに。」

『千砂都、俺たちは敵同士だ。』

はぁ……と自分のさっきの態度とこの前千砂都に放った言葉を思い出しため息をつく。

「……敵じゃなくなる時が来たら、どうすっかな……」

うーん、と伸びをして俺は原宿の街、人混みの海へと漕ぎ出した。

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