ラブライブ!スーパースター!! Create the future 作:園枝こるだ
四季視点──────
私はメイのアパートの傍で帰りを待っていた。以前みんなでメイのことを覗きに来て以来、ここに来ることはなかった。
外も大分暗くなった頃、紙袋を持ったメイがこちらに向かってきた。
メイ「四季……」
「……怒ってる?」
私はメイに促されるままメイの部屋へと案内された。ピンク色の家具や、スクールアイドルのグッズが並べられた、女の子らしい部屋。私とは違う、女の子の部屋。
メイ「みんな心配してたぞ。」
さっきの私の怒ってる?という質問の答えにあたる言葉がメイの口から出る。
私の顔を覗き込み、どうしても嫌なのか?とメイが尋ねる。
四季「嫌というか……無理。」
メイ「そっか……みんな四季のセンター似合ってるって言ってたんだけど。」
その会話は聞いていた。あの倒れた時も意識を失ったのはほんの数秒で、みんなに運ばれている時も意識はあった。
その時には何故か、幼少期のことを思い出していた。
休み時間はいつも本を読んで、昼休みになると外に出て虫を眺めていた。虫だけじゃなく、友達と元気に遊ぶ同級生も。
それが当たり前だった。私の普通だった。
変わったのはメイと、そして創と出会ってから。
Liella!のおかげで、メイも創もずっとずっと成長した。
私はあの時から変わらないまま。
「私には、やっぱり無理……」
メイ「どうして、そこまで……?」
私を気遣うメイの視線が痛い。
「かのん先輩たちが練習しているところ、見て思った。センターになる人には人を惹きつける力がある。」
私は少し視線を動かす、その先にはLiella!の9人で映ったタペストリーがあった。
真ん中で微笑むかのん先輩、そして端で無表情で佇む私。
何もかもが違う。かのん先輩だって、千砂都先輩だって、すみれ先輩だって、恋先輩だって、きな子ちゃんだって、夏美ちゃんだって、みんな、みんな、みんな。
メイ「それを言うなら四季も……!」
「私は違う。」
メイの言葉を乱暴に遮り、ぬいぐるみを抱いて寝転がる。
「ステージでスポットを浴びた瞬間に思った。きっと私じゃない方がいい。」
みんな輝いていた。輝ける人だったから。
メイ「そんなことっ!」
四季「センターは、みんなに与える影響が大きい。私がセンターだと、きっとみんなに迷惑がかかる。」
四季「それに、特に今回の歌は、新しいLiella!の最初の歌。すごく大事。」
……メイは私の言葉を聞いて、何も言わなかった。
これでいいんだ。私がセンターじゃない方がいい、って。
メイも気づいてくれたんだ。
なのに、なんで心にぽっかり穴が空いているんだろう。
創視点──────
僕たちは部室に集まってメイの話を聞いていた。そこに四季の姿はなく、いつもより暗い部室にメイの声が響いていた。
メイ「四季もみんなが期待してくれているのに申し訳ないって、でも……」
夏美「意思は固そうですの……」
夏美の言葉にみんなが俯く。
恋「それで……四季さんはどこに……?」
「こういう時に四季がいる場所はひとつです。」
メイ、創「科学室。」
きな子ちゃんはメイと僕の言葉に反応する。
きな子「それって……前の四季ちゃんに戻っちゃったみたいっす……」
がたん、と机の上のものがグラグラと動くほどに叩き、可可先輩が声を上げる。
可可「可可が行って説得してきマス!センターを託したいと思っているんデスから、こんなことでは困りマス!」
「可可先輩、落ち着いてください。」
駆け出して行こうとする可可先輩の前に立ち塞がる。でも〜、と不満そうにする可可先輩。
すみれ「けど、仕方ないんじゃないの。無理強いするもんじゃないんじゃないの、センターって。」
すみれ先輩の間違いのない言葉に、誰もが口を噤む。
「けど……僕は四季にセンターをやってほしいんだ。」
「千砂都先輩だって、同じ気持ちですよね?」
可可先輩の向こうにいる千砂都先輩の方を真っ直ぐに見つめる。
かのん『色んな人がいるから素敵なの、色んな色があるから綺麗なんだよ?』
かのんさんの言葉が脳裏をよぎる。
千砂都「そう、だね。」
千砂都「私もやっぱり、四季ちゃんがセンターがいい!」
大きな桃色の瞳がきらりと輝きを帯びる。
「千砂都先輩……!」
すみれ「それはみんなもそう思ってるわよ、けど……」
とその後に続く言葉を呑み込むすみれ先輩。
千砂都「目立たなきゃとか、誰かを惹き付ける力がなきゃとか、そんなのなくてもいいと思う。」
千砂都「色んな人がいるから、スクールアイドルなんだよ!色んなセンターがあってもいい、目立たなくても!」
目立たないセンター、一見意味のわからない言葉だが、四季が目指すセンターはまさに目立たないセンターだと僕も思う。例えるなら……
「白色の、センター。」
きな子「白色のセンター?」
僕の言葉に首を傾げるきな子ちゃん。
「それ自体はまるで透明だけど、色々な色の中にあると、1番輝ける色。」
メイ「それが四季の色、四季の歌。」
夏美「作れますの?曲は。」
少し悪戯な表情を浮かべ夏美がメイに尋ねる。メイは自信を持ってうん!と答える。
メイ「できそうな気がする!」
にっ、と歯を見せて笑うメイの手を握る。
「四季のこと、頼んだよ。」
「いつだって四季の横には、メイがいてほしいんだ。」
メイはぐっ、と僕の手を握り返した。
メイ視点──────
アタシは暗くなった科学室で机に突っ伏している四季を見つけた。
その後ろをづかづかと通り過ぎ、暗さの原因となっているカーテンをばさりと開く。
四季「!?……メイっ……?」
「眩しかったらアタシが影になってやる。引っ張っていけないなら、アタシが一緒に引っ張っていってやる。」
四季はアタシの言葉を呆然とした表情で受け止めている。
「目立たなくたっていい、いつものままの四季でいい。そんな四季だからできるセンターがあるんだよ。」
「そんな四季じゃなきゃできないセンターが、あるんだよ。」
アタシは四季の横に座り、スマホを手渡す。
四季「これは……?」
「四季が歌う歌。まだ未完成だけど、アタシと一緒につくって欲しい。」
「世界には無数の色があるんだって歌を。」
私の言葉を受け、四季は頬を赤らめる。数秒モジモジした後に、すっと左手を差し出す。
アタシは四季の柔らかい手をすっと受け止め、立ち上がるように促す。ぽすっ、と頭同士をくっつけ合う。
「創ろう。Liella!の新しいステージを、みんなと一緒に!」
四季「はっ……みんな……」
科学室の入口にはLiella!のみんなが……って創はまたボロボロ泣いてんのか。
千砂都「練習、始めるよ!」
千砂都先輩の言葉を受け、アタシの手を再び力強く握る。
四季「……はいっ!」
数日後、迎えた代々木スクールアイドルフェスティバル。その舞台袖。
四季「倒れそう……」
「緊張してる?」
すごく……と不安げな表情を浮かべる四季の手をすっ、と自分の心臓の位置に持っていく。
「アタシも……」
「でも大丈夫、四季がそばにいるから。センターで歌う四季を応援できるから。」
もう片方の手をぎゅっと繋ぎ、そのまま言葉を続ける。
「目立たなくてもいい、注目されるのが嫌なら、アタシが注目を集めてやるよ。」
ふふっ、と少し緊張が解けたようすの四季が笑う。
四季「メイも、目立つの苦手なくせに。」
「それでも、いつもの四季の魅力をみんなに知ってもらいたいんだ!」
創視点──────
「かのんさん!!」
僕は観客席に見慣れた人影を見つけ、声をかける。
かのん「創くん!そっか……ここ舞台袖入れないんだっけ。」
「はい、けど僕ができることは全部やりましたから。」
と言い、ステージの方を見つめる。四季にはメイがいる、メイには四季がいる、だから、大丈夫。
成生「センター、立てたんだな。」
「成生、四季がセンターになるの知ってたの?」
あぁ、と短い返事の後にやれやれと言った感じで首を横に振る。
成生「大変だったぞ?センターに相応しいか、とか色々聞かれて……」
「えっそうだったの……ごめん……」
マルガレーテ「なんであんたが謝ってんのよ……」
……冬毬ちゃんは僕たちのやり取りを黙って見つめている。夏美の妹とはとても思えないほど、落ち着いている。
「見に来てくれてありがとう、夏美のこと、ちゃんと見ててあげてほしいな。」
冬毬「お構いなく、私は姉者を見定めるために来たので。」
話には聞いていたけど、すごい子だな……マルガレーテと相性良くなさそう……
「そろそろ、始まりますね。四季のステージが。」
四季視点──────
メイの創ってくれた歌、あっという間に終わってしまった。
観客席の顔はいつもよりもはっきりと見え、私に降り注ぐスポットライトはステージを焼き焦がさんとばかりに照りつけている。
「これが、センター……これがっ……」
「これが、私だけの色……!」
やはり、体への負担が大きかったのか、私は立っていられず、横にいた少女に肩を預ける。
暖かくて、柔らかくて、私のことをいつだって見ていてくれる、私の愛する人。
「大好き、メイ。」
メイ「あぁ、アタシも。」