ラブライブ!スーパースター!! Create the future   作:園枝こるだ

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第33話「白耀のセンター」

四季視点──────

私はメイのアパートの傍で帰りを待っていた。以前みんなでメイのことを覗きに来て以来、ここに来ることはなかった。

外も大分暗くなった頃、紙袋を持ったメイがこちらに向かってきた。

メイ「四季……」

「……怒ってる?」

 

私はメイに促されるままメイの部屋へと案内された。ピンク色の家具や、スクールアイドルのグッズが並べられた、女の子らしい部屋。私とは違う、女の子の部屋。

メイ「みんな心配してたぞ。」

さっきの私の怒ってる?という質問の答えにあたる言葉がメイの口から出る。

私の顔を覗き込み、どうしても嫌なのか?とメイが尋ねる。

四季「嫌というか……無理。」

メイ「そっか……みんな四季のセンター似合ってるって言ってたんだけど。」

その会話は聞いていた。あの倒れた時も意識を失ったのはほんの数秒で、みんなに運ばれている時も意識はあった。

その時には何故か、幼少期のことを思い出していた。

休み時間はいつも本を読んで、昼休みになると外に出て虫を眺めていた。虫だけじゃなく、友達と元気に遊ぶ同級生も。

それが当たり前だった。私の普通だった。

変わったのはメイと、そして創と出会ってから。

Liella!のおかげで、メイも創もずっとずっと成長した。

私はあの時から変わらないまま。

「私には、やっぱり無理……」

メイ「どうして、そこまで……?」

私を気遣うメイの視線が痛い。

「かのん先輩たちが練習しているところ、見て思った。センターになる人には人を惹きつける力がある。」

私は少し視線を動かす、その先にはLiella!の9人で映ったタペストリーがあった。

真ん中で微笑むかのん先輩、そして端で無表情で佇む私。

何もかもが違う。かのん先輩だって、千砂都先輩だって、すみれ先輩だって、恋先輩だって、きな子ちゃんだって、夏美ちゃんだって、みんな、みんな、みんな。

メイ「それを言うなら四季も……!」

「私は違う。」

メイの言葉を乱暴に遮り、ぬいぐるみを抱いて寝転がる。

「ステージでスポットを浴びた瞬間に思った。きっと私じゃない方がいい。」

みんな輝いていた。輝ける人だったから。

メイ「そんなことっ!」

四季「センターは、みんなに与える影響が大きい。私がセンターだと、きっとみんなに迷惑がかかる。」

四季「それに、特に今回の歌は、新しいLiella!の最初の歌。すごく大事。」

……メイは私の言葉を聞いて、何も言わなかった。

これでいいんだ。私がセンターじゃない方がいい、って。

メイも気づいてくれたんだ。

なのに、なんで心にぽっかり穴が空いているんだろう。

 

創視点──────

僕たちは部室に集まってメイの話を聞いていた。そこに四季の姿はなく、いつもより暗い部室にメイの声が響いていた。

メイ「四季もみんなが期待してくれているのに申し訳ないって、でも……」

夏美「意思は固そうですの……」

夏美の言葉にみんなが俯く。

恋「それで……四季さんはどこに……?」

「こういう時に四季がいる場所はひとつです。」

メイ、創「科学室。」

きな子ちゃんはメイと僕の言葉に反応する。

きな子「それって……前の四季ちゃんに戻っちゃったみたいっす……」

がたん、と机の上のものがグラグラと動くほどに叩き、可可先輩が声を上げる。

可可「可可が行って説得してきマス!センターを託したいと思っているんデスから、こんなことでは困りマス!」

「可可先輩、落ち着いてください。」

駆け出して行こうとする可可先輩の前に立ち塞がる。でも〜、と不満そうにする可可先輩。

すみれ「けど、仕方ないんじゃないの。無理強いするもんじゃないんじゃないの、センターって。」

すみれ先輩の間違いのない言葉に、誰もが口を噤む。

「けど……僕は四季にセンターをやってほしいんだ。」

「千砂都先輩だって、同じ気持ちですよね?」

可可先輩の向こうにいる千砂都先輩の方を真っ直ぐに見つめる。

かのん『色んな人がいるから素敵なの、色んな色があるから綺麗なんだよ?』

かのんさんの言葉が脳裏をよぎる。

千砂都「そう、だね。」

千砂都「私もやっぱり、四季ちゃんがセンターがいい!」

大きな桃色の瞳がきらりと輝きを帯びる。

「千砂都先輩……!」

すみれ「それはみんなもそう思ってるわよ、けど……」

とその後に続く言葉を呑み込むすみれ先輩。

千砂都「目立たなきゃとか、誰かを惹き付ける力がなきゃとか、そんなのなくてもいいと思う。」

千砂都「色んな人がいるから、スクールアイドルなんだよ!色んなセンターがあってもいい、目立たなくても!」

目立たないセンター、一見意味のわからない言葉だが、四季が目指すセンターはまさに目立たないセンターだと僕も思う。例えるなら……

「白色の、センター。」

きな子「白色のセンター?」

僕の言葉に首を傾げるきな子ちゃん。

「それ自体はまるで透明だけど、色々な色の中にあると、1番輝ける色。」

メイ「それが四季の色、四季の歌。」

夏美「作れますの?曲は。」

少し悪戯な表情を浮かべ夏美がメイに尋ねる。メイは自信を持ってうん!と答える。

メイ「できそうな気がする!」

にっ、と歯を見せて笑うメイの手を握る。

「四季のこと、頼んだよ。」

「いつだって四季の横には、メイがいてほしいんだ。」

メイはぐっ、と僕の手を握り返した。

 

メイ視点──────

アタシは暗くなった科学室で机に突っ伏している四季を見つけた。

その後ろをづかづかと通り過ぎ、暗さの原因となっているカーテンをばさりと開く。

四季「!?……メイっ……?」

「眩しかったらアタシが影になってやる。引っ張っていけないなら、アタシが一緒に引っ張っていってやる。」

四季はアタシの言葉を呆然とした表情で受け止めている。

「目立たなくたっていい、いつものままの四季でいい。そんな四季だからできるセンターがあるんだよ。」

「そんな四季じゃなきゃできないセンターが、あるんだよ。」

アタシは四季の横に座り、スマホを手渡す。

四季「これは……?」

「四季が歌う歌。まだ未完成だけど、アタシと一緒につくって欲しい。」

「世界には無数の色があるんだって歌を。」

私の言葉を受け、四季は頬を赤らめる。数秒モジモジした後に、すっと左手を差し出す。

アタシは四季の柔らかい手をすっと受け止め、立ち上がるように促す。ぽすっ、と頭同士をくっつけ合う。

「創ろう。Liella!の新しいステージを、みんなと一緒に!」

四季「はっ……みんな……」

科学室の入口にはLiella!のみんなが……って創はまたボロボロ泣いてんのか。

千砂都「練習、始めるよ!」

千砂都先輩の言葉を受け、アタシの手を再び力強く握る。

四季「……はいっ!」

 

数日後、迎えた代々木スクールアイドルフェスティバル。その舞台袖。

四季「倒れそう……」

「緊張してる?」

すごく……と不安げな表情を浮かべる四季の手をすっ、と自分の心臓の位置に持っていく。

「アタシも……」

「でも大丈夫、四季がそばにいるから。センターで歌う四季を応援できるから。」

もう片方の手をぎゅっと繋ぎ、そのまま言葉を続ける。

「目立たなくてもいい、注目されるのが嫌なら、アタシが注目を集めてやるよ。」

ふふっ、と少し緊張が解けたようすの四季が笑う。

四季「メイも、目立つの苦手なくせに。」

「それでも、いつもの四季の魅力をみんなに知ってもらいたいんだ!」

 

創視点──────

「かのんさん!!」

僕は観客席に見慣れた人影を見つけ、声をかける。

かのん「創くん!そっか……ここ舞台袖入れないんだっけ。」

「はい、けど僕ができることは全部やりましたから。」

と言い、ステージの方を見つめる。四季にはメイがいる、メイには四季がいる、だから、大丈夫。

成生「センター、立てたんだな。」

「成生、四季がセンターになるの知ってたの?」

あぁ、と短い返事の後にやれやれと言った感じで首を横に振る。

成生「大変だったぞ?センターに相応しいか、とか色々聞かれて……」

「えっそうだったの……ごめん……」

マルガレーテ「なんであんたが謝ってんのよ……」

……冬毬ちゃんは僕たちのやり取りを黙って見つめている。夏美の妹とはとても思えないほど、落ち着いている。

「見に来てくれてありがとう、夏美のこと、ちゃんと見ててあげてほしいな。」

冬毬「お構いなく、私は姉者を見定めるために来たので。」

話には聞いていたけど、すごい子だな……マルガレーテと相性良くなさそう……

「そろそろ、始まりますね。四季のステージが。」

 

四季視点──────

メイの創ってくれた歌、あっという間に終わってしまった。

観客席の顔はいつもよりもはっきりと見え、私に降り注ぐスポットライトはステージを焼き焦がさんとばかりに照りつけている。

「これが、センター……これがっ……」

「これが、私だけの色……!」

やはり、体への負担が大きかったのか、私は立っていられず、横にいた少女に肩を預ける。

暖かくて、柔らかくて、私のことをいつだって見ていてくれる、私の愛する人。

「大好き、メイ。」

メイ「あぁ、アタシも。」

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