ラブライブ!スーパースター!! Create the future 作:園枝こるだ
創視点──────
「……よかったな、四季のセンター。」
僕は家で何度も何度もこの前のライブの映像を見返していた。
メイの書いた歌詞も曲も、四季の魅力を全面に引き出せていてすごい。
「僕も負けないようにしなくちゃ……!」
「あ……」
僕が見ていたライブ映像、ステージのだいぶ遠く離れた方で何かの建物から煙と少しの炎が上がっているのが見えた。
陽炎のように視界全体が揺らぎ、鼻の奥に肉が燃えている独特な焦げ臭さが蘇る。父さんと母さんが死んだあの日、あの光景が脳裏に再生される。
「ぁ、あ……ぅ……ぅぅ……」
じー、じーっ……と何かが焼き切れているかのような音が頭の中を跳ね回る。余りの気持ち悪さに吐瀉物が込み上げる。
「ぅ、げ、ぇっ……ぁ、かはっ…………ぁ……」
ゴミ箱を抱える余裕すらなく、そのまま床に込み上げたものをぶちまけてしまう。
「……は、ぁっ……はぁっ……」
余りの気持ち悪さにぼたぼたと涙がこぼれ落ちる。
理事長「創?そろそろ行かないと……って、創!?どうしたの、大丈夫!?」
僕が起きてくるのが遅く、心配したおばさんが部屋に入ってくるなり僕の背中を摩る。
「おば、さん、ごめ、ん……我慢、できな、くて……っ……」
理事長「いいのよ、無理して話さなくていい。とりあえず病院、行きましょう。」
健『逃げろ、創……』
創の母『創!はやく行きなさい……!』
「父、さん、母、さん……っ……ぅあ……ぁっ……」
もう思い出したくない記憶、ずっとしまい込んでいた記憶が呼び起こされ、僕はどうすればいいのかわからなくなる。
震えが止まらず、呻き声を上げながら頭を抑えていたらいつの間にか病院に到着していた。
診断の結果、PTSDによる発作だった。この病気には治るという明確な終わりはない。以前母さんと父さんが亡くなった時にも治療を試みたが、その時にもやっと外に出れる程度までの応急処置しかできなかった。
「PTSD……か。」
原因はわかっても、いやわかったからこそだろうか、恐怖で手が震える。僕はまだ、完全に割りきれてはいないんだということを思い知らされた。
「ぅ……ぅあ……ぁ……」
頭の中に砂嵐が流れるような感覚に再び襲われる。父さんと母さん、使用人さんが斧で切り伏せられる瞬間、父さんの建てた家がどんどん血の色に塗り替えられていく。
その時僕は思い出した、犯人の顔を。
「誰だ…………この人……」
どことなく誰かに似ている。
「この……顔……」
誰かに。
「誰……だ……?」
まさか。
「成……生……?」
そんなわけない、そんなわけないのに。
僕の記憶には、はっきりと成生に似た顔の人物が残っていた。
きな子「創くん!!」
病室のドアを勢いよく開き、きな子ちゃんが駆け寄ってくる。
「きな子ちゃん……部活は……?」
千砂都「創くんが入院してるって聞いてみんなでお見舞いに来たの、騒がしくしちゃってごめんね。」
千砂都先輩の言葉の後に、Liella!のメンバーが続けて病室に入ってくる。
メイ「もしかして発作か……?」
僕の発作に中学時代に1度立ち会っているメイと四季が心配そうな目で僕を見つめてくる。
「うん、けど大丈夫だよ。元々完璧に治るようなものじゃないし。」
四季が悔しそうにぐっと唇を噛む。
夏美「これ、途中で買ってきましたの。これなら食べれるでしょう?」
袋に5つほど入った吸うタイプのゼリーを僕に手渡す。
すみれ「とにかく安静に。困ったことがあったらすぐ頼る、あんたもかのんも全部一人でやろうとするんだから。」
やれやれと首を横に振るすみれ先輩。
「すみません……ありがとうございます……」
可可「授業に遅れたら可可先生とレンレン先生が助けてあげマス!」
恋「生徒会の仕事も気にしないでくださいね!まずは休むことですから。」
どこからか取り出したメガネをくいっとあげる可可先輩。その横で恋先輩もにこっと微笑んでいる。
先程のきな子ちゃんが入ってきた時と同じく、かのんさんが病室のドアを開き中に入ってくる。
かのん「創くん!!大丈夫……?」
「はい……すみません、迷惑かけて。」
成生「大丈夫か、一応様子見に来た。」
「成……生…………」
僕は成生を見て目を見開く。
記憶の中の犯人の顔と成生の顔が重なる。
成生「……創?どうした……」
「ぅ、あっ……が……ぅ……は、っ、は……」
体が呼吸の仕方を忘れたのか、過呼吸の症状が出る。
四季「創、ゆっくり息して。」
四季は僕の背中を一定のペースで叩く。そのリズムに合わせ、僕は忘れていた呼吸のリズムを整える。
メイ「……1度出よう、かのん先輩達も。」
「ごめん、四季。」
四季「大丈夫。もう息は出来る?」
僕は四季の言葉にこくり、と頷く。メイに促されて四季以外のみんなは病室の外に出ており、ここは四季と僕の2人きりである。
四季「……成生くんが原因?」
真っ直ぐにこちらを見ながら四季が尋ねてくる。
「わからないんだ、朝の発作は火事の映像を見たせいなんだけど……」
「思い出したんだ、犯人の顔。」
四季は僕の言葉を受け目を見開く。
四季「それが、成生くん?」
「本人ではないって信じたいんだけど……」
「心は上手く着いてこなくて……」
僕は力なくはは、と笑う。
四季「……みんなに話す?」
すっ、と先程夏美ちゃんが渡してくれたゼリーを僕に手渡す。
「……まだ、かな。話すなら僕の口から言いたいんだ。」
四季はわかった、と快く了承してくれた。
「検査入院だし、すぐ学校には戻れると思う。」
「それまでみんなのことよろしくね、四季。」
四季は黙ってこくり、と頷き、病室を後にする。
四季視点──────
私は創の病室を後にして、病院の外に出ていたみんなと合流する。そこにはトマカノーテの姿もあった。もちろん、成生くんも。
成生「あ……その……すまん、俺のせいで。」
「大丈夫、創もむしろごめんって言ってた。」
あとで嘘をついたことは創に詫びるとしてひとまずは穏便にこの場を済ます。
きな子「創くん、体調どうっすか……?」
「今は、落ち着いてる。夏美ちゃんのゼリー飲んでるよ。」
夏美「買っていってよかったですの。」
ほっ、ときな子ちゃんと夏美ちゃんが胸を撫で下ろす。
マルガレーテ「というか創に病気があるって全員知ってたの?」
千砂都「うん、確か夏美ちゃんも後から聞いたよね。」
件の夏美ちゃんもこくり、と頷く。
冬毬「PTSD、心的外傷後ストレス障害ですか。」
メイ「……あぁ、創はずっとその症状に悩まされてる。」
あたりに気まずい空気が流れる。
恋「今日は1度、家に帰りましょう。創さんには理事長も着いてくださってますし。」
恋先輩の言葉を受け、私たちは黙って頷き、病院を後にした。
私は家に帰ってから、情報を整理していた。
かつて創から聞いた事件の情報をまず洗う。
被害者は安城健さん、そしてその奥様の真里亞さん、そして当時の使用人2人。
「……犯人は未だ捕まっていない。」
斧を使って4人を殺害、後にガソリンを撒き放火。現場の惨状さから犯人も亡くなったとも考えられたが、遺体の数が合わないため逃走したと見られる。
斧は現場から柄の部分が燃え尽きた状態で見つかり、犯人のDNAなどが付着した遺留品などは確認されなかったため凶悪未解決事件として処理された。
「成生くんに、似てる人物。」
創の言う成生くんに似ているというのは当時の犯人が今の成生くんに似ているのか、今の成生くんを若くした、もしくは老けさせた状態なのか定かではない。そしてこの記憶が定かであるかも……創には悪いけど本当かどうか確認する必要がある。
著名な人物が被害者となった未解決事件として今でも考察系の動画がよく上がっている。ちなみに創は姓を変えたことで安城健さんの息子だという事実は公にはされていない。
「事件に関する……噂。」
安城健さんは木をメインに扱う建築をすることで有名で、一般住宅などに留まらず美術館や公的機関の施設の設計、建築も手懸けた。しかしその一方で耐久性、耐火性、耐震性の面で疑念を受けることも多かったという。
「N市短期間連続地震。」
静岡県N市にて地震が発生、そこで木を使ったプレハブなら材料費も安く短時間で何軒も建てられるということで、被災地に安城健さんが赴き、仮設住宅郡を建設したことで世間から多くの注目を浴びた。
しかしその後大きな連続地震が発生し、仮設住宅郡は倒壊、再びN市に暗い影を落としたという事故だ。
「国光家倒壊事故。」
国光製作所の工場長、国光和也さんが安城健さんに頼み込み、立派な一軒家を建ててもらった。しかし、経営悪化、そして台風により家は倒壊、多額のローンを背負った国光和也さんは自責の念から自殺、後を追って国光婦人も自殺、息子は施設へと預けられたという噂だ。安城健さんは大変申し訳ない、という言葉と共に息子へ多額の慰謝料を支払ったというがそれを受け取ったかは定かではない。
「日本競技場設立に関する噂……?」
東京オリンピックに向けて新設する日本競技場建設において、何人かの建築家が原案を出し合って、大規模なアンケートが行われた。しかしその内の1人の建築家が過去の安城健さんの建築物の案を転用し問題となった。結果その建築家は大勢から誹謗中傷を浴び身を投げた。そこから日本競技場建設中に事故が多発するようになり、別の場所に国立競技場を建てるということに落ち着いた。
「意外と噂が多い。」
創の話を聞くにとても良い人なのはわかるが、著名であるからか黒い噂が悪目立ちしている。
「次に、成生くん。」
YATSUGAKEの御曹司と言ってもまだただの高校生。本人についての情報は少なく、実父である社長について調べるしかないのだが。
YATSUGAKEは元々八掛鐵工所という名の小さい工場だったそうだ。そこの初代工場長が今の社長、成生くんの父にあたる人物。作っていた部品がロケット制造会社の目に留まりそこから急成長、本社を東京に移し、下町の企業をどんどん買収していったそうだ。買収の際にYATSUGAKEの反抗した会社を無理には買収しなかったが、その1、2年後にどの企業も倒産している。
「国光製作所……!?」
倒産していった企業の中に先程ニュースで見た名前が入っており愕然とする。数にして数十、いや百社以上にも上る企業の名前がこのサイトの中でだけでも書かれている。確かな記録か定かではないが、実際に倒産した企業も少なくなかったということであろう。
「闇が深い……今日はここまで。」
私は集めた情報をノートに整理し、パタンとパソコンを閉じる。今も事件に苦しむ創のために、少しでもいいから安心させてあげたい。
「成生くんはそんなことするような人じゃない……はず。」
まだ少ししか話してないが、根が悪い子ではなさそうな気がする。自分を強く見せるのに必死というか、どこか取り繕っているような、そんな雰囲気がある。
「今度、創に確認しなきゃ。」
確認事項をすいすいっとメモにまとめ、私は眠りについた。
今までとは一風変わったストーリーを書いてみました。
ミステリー要素も少し楽しんでいただけたらと思います。
次回もよろしくお願いします。