ラブライブ!スーパースター!! Create the future 作:園枝こるだ
創視点──────
萌萌「上海でもスクールアイドルは大人気!遂に巨大イベントが開かれるまでになったのデス!」
メイ「けどなんでそれが可可先輩を助けることに繋がるんだ……?」
メイの口からは当然の疑問が、それもそうだ。上海スクールアイドルフェスに参加することが可可先輩を助けることというのは意味がわからない。
萌萌「両親に見てもらいたいからデス!可可ちゃんはこれからも歌の道を突き進むのデス、ステージの上で可可ちゃんが輝く姿を見れば両親もきっと賛成してくれるはず!」
確かに、可可先輩は結果を残せなければ上海に帰ってきなさいと両親から言われていると先輩たちから聞いたことがある。
かのん「歌を進路に……!?」
可可先輩の感情は……読み取れなかった。悲しげなようなやり場のないような……
成生視点──────
「いただきます。」
あの後俺たちはLiella!とトマカノーテはホテルに戻り、グループごとにどう行動するのか話し合った。
かのん「えぇ成生くんそれだけでいいの……?」
俺たちトマカノーテはホテルの朝食を優雅に楽しんでいた。色々なものをバランスよく取ってきたかのん先輩は俺の少量の朝ごはんを見て怪訝そうな顔をしている。
「まぁ……朝はあんま食べれないので……」
そうなんだぁ、なんか私……と、ため息をつきながら椅子に座る。
俺の横にはサラダのみを取ってきた冬毬ちゃんが真っ直ぐに前を向いて座っていた。
マルガレーテ「あんたそんだけ?足りるの?」
まるで大食いチャレンジメニューかのような盛り付けの皿をテーブルにどすん、と置くマルガレーテ。
「おかしいのはどちらかというとマルガレーテだぞ。」
マルガレーテ「美味しいものならいくら食べてもいいのよ。」
そういうもんか……?と思いながらいただきます、とフォークに手を伸ばす。目の前のかのん先輩は浮かない顔をしていた。
「どうしたんですか、かのん先輩。」
かのん「可可ちゃん困ってたなぁ……って……」
マルガレーテ「私たちには関係ないでしょ、ステージに立ってって頼まれたのはLiella!だけ。」
ふん、と澄ましているマルガレーテ。その正面で冬毬ちゃんも黙々とサラダを食している。
かのん「でも可可ちゃんのお姉さんは私達も呼んでくれたんだよ?」
冬毬「お姉様は私達が別グループであることを知らなかったようです。」
マルガレーテはかのん先輩に詰寄る。
マルガレーテ「Liella!は敵よ!こっちがちょっかい出すべきじゃないわ!」
かのん「だから敵じゃないって!」
朝から元気だなぁと思いながら言い争う2人を眺める。
冬毬「実際私たちには上海フェスへのオファーは来ていません。ここは素直に観光を楽しむのがベストかと。」
かのん「冬毬ちゃんまで……」
食べるのをやめ、かのん先輩を真っ直ぐ見つめる。
冬毬「私の目的は変わりません。姉者の発言が本気かどうか、それをこの目で確認したいだけです。」
ごちそうさまでした、と席をすたすたと離れていく冬毬ちゃん。
かのん先輩の視線はいつの間にか俺に向いていた。
「俺もどちらかというとマルガレーテと冬毬ちゃんに賛成ですよ、申し訳ないですが。」
俺の言葉にしゅんとするかのん先輩。
「それにしても冬毬ちゃん、サラダしか食べてないですね。」
かのん「だからあんなに落ち着いてるのかな。」
マルガレーテ「どういう理屈よ。」
こういう理屈でしょ、とかのん先輩とマルガレーテの食べてるものを指さす。この後こっぴどく叱られたのは言うまでもない。
可可視点──────
久しぶりの自室、私がいなかった間も掃除されていたことがわかる。
綺麗に整頓されたテーブルの上には大学のパンフレットとメモ書きが置かれていた。
萌萌「おはよう!」
私はお姉ちゃんの声が聞こえると反射的に大学のパンフレットを1番上の引き出しにつめこんだ。
「おはよう。」
萌萌「これからみんなと練習?」
いつもと変わらない優しい笑顔で私を見つめるお姉ちゃんを見て少し心が痛む。きっと私がいない間も両親を説得してくれていたに違いない。
「うん。行ってきます。」
その言葉と同時に私は家を飛び出した。
勉強は好きだった。今思えば、好きではなかったのかもしれないが、苦ではなかった。
決して成績は悪いほうじゃないし、優秀者として名をあげられることも多かった。
ただ私にはやりたいこともなかった。勉強をしていい大学に行って、お金を稼いで……そうするのが当たり前だった。
学校の通学路、私の目を引くものがあった。ショーウィンドウの中に飾られる美しい衣装、フリフリでキラキラしてて、まるでお姫様みたいな。
しかしショーウィンドウとは残酷なもので、中のものを綺麗に見せ、外のものを醜く写す。汚れた体操服に身を包んだ私がそこにいた。
そんな時、私はサニパ様に出会った。日本のスクールアイドル?見た時にはわからなかったが、ただ漠然とかわいいと思った。
私はその日家に帰ってスクールアイドルを呪文のように何度も唱えながら、自室のタブレットと向かい合った。
私もこんな風にかわいくなりたい、こんな風に、日本のスクールアイドルになりたい、そう思った。
懐かしい景色、私の生まれ育った故郷をただひたすらに走った。
とある大型モニターの前で立ち止まる、画面には上海スクールアイドルフェスの文字が。
あの日と同じ、私がスクールアイドルを志すようになったきっかけの日。
私はその日、サニパ様に出会ったのだ。
この夢を、諦めないために。
「今、頑張らないと。」
創視点──────
メイ「ん〜……気持ちいいぜ……」
晴れた空の下メイは大きく伸びをしている。昨日萌萌さんがここなら落ち着いて練習できるはず、とおすすめの広場を教えてもらっていたのだ。
恋「いい練習が出来そうですね!」
四季「綺麗な街……」
千砂都先輩は神妙な面持ちでスマートフォンの画面を見ている。
「かのんさんですか?」
千砂都「うん!なるくんたちとライブ応援しに行くねって。」
きな子「折角一緒に上海に来たのに別行動だなんて……」
千砂都「仕方ないよ。」
千砂都先輩は悲しさを含んで笑う。
可可「お待たせしマシた〜!」
集合時間を少しすぎて可可先輩がやってきた。
すみれ「遅いわよ、何してたの?」
可可「久しぶりに帰ってきて、道に迷っちゃって……」
すみれ「……ふぅん。」
恋先輩が少し前に出て口を開く。
恋「全員集まったのでここでひとつ決めておきたいことがあります、ライブのセンターをどうするか。」
千砂都「今回も8人でステージに立つことになる。私たちは可可ちゃんにセンターで歌ってもらいたい!」
可可先輩はあっけに取られた表情で。
可可「可可がセンター?」
千砂都「うん!上海は可可ちゃんの故郷でしょ?」
きな子「凱旋ライブっす!」
夏海「私たちも大賛成ですの。」
すみれ「上海のご家族も喜んでくれるわよね!」
可可「……そう、デスね!」
少し煮え切らない可可先輩の返事にすみれ先輩が訝しむ。
すみれ「何かあったの……?」
可可「いえ、なんでも!センターはスクールアイドルにとって最も輝ける場所、是非やらせてくだサイ!」
メイ「可可先輩の魅力、上海の人にも沢山知ってもらえるな!」
可可「頑張りマス!」
無事にセンターが決まり、ライブへの士気が高まる。
恋「ライブに向けて全力で頑張りましょう!」
全員「おー!」
その時、すみれ先輩がなんとも言えない顔で可可先輩を見つめていたのを、僕だけが見ていた。
成生視点──────
俺たちは昼頃から練習を開始し、ホテルの外周をランニングしていた。
かのん「あ〜、日陰は涼しいねぇ……」
冬毬「日中は室内で練習できる場所を探した方がいいかもしれませんね。」
冬毬ちゃんは涼しい顔で汗を拭いている。
かのん「外国だし、今日は早いけどこのくらいで終わりにしておこ!」
「そうですね。」
マルガレーテもだいぶ疲れている様子だ、本人は何も言わないが。
ぶぶっ、とかのん先輩のスマホが震える。
かのん「あ、ごめん!ちょっと抜けていい……?」
かのんさんはベンチからひょいっと立ちあがる。
マルガレーテ「どうしたの?」
かのん「可可ちゃんたちも早めに練習切りあげたって、また後で連絡するから。」
たったっ、とスマホ片手に駆け出したかのん先輩はどんどん見えなくなっていく。
冬毬「……今日は怒らないんですか?」
マルガレーテ「かのん、何度言っても聞かないんだもの。可可先輩のことが気になって仕方がないんでしょ?」
はぁ、とため息をつくマルガレーテ。
「さすが同居人だな。」
マルガレーテ「嫌でもわかるようになるわよ。」
かのん視点──────
「可可ちゃーん!!」
私は少し遠くに見える可可ちゃんに呼びかける。やはりいつもの溌剌とした様子ではなく、ぼーっと川を眺めていた。
可可「……かのん。」
「1人?」
可可「先程みんなと解散シテ……」
「可可ちゃんセンターやるんだってね!楽しみにしてる!」
私の元気な声色とは対照的に憂い気なままの可可ちゃん。
「……私で良かったら、話して?」
可可「かのん……うぅうぅぅ〜……」
締めていた栓が緩んだかのように両目からだらだらと涙を流す可可ちゃんに私は思わずぎょっとした。
可可「結局……両親とはまだ何も話せていなくて……」
私たちはカフェに入り、テラス席で向かい合っている。私たちの席は街灯や店から漏れる光で明るく照らされている。
「そっか……でも、可可ちゃんのお姉さんとても優しそうだった!お父さんもお母さんもきっと素敵な人なんだろうな。」
私の言葉に可可ちゃんはふふっと笑う。
可可「かのんはいつも優しいデスね。大好きデス。」
「私もだよ。」
可可ちゃんの素直な気持ちに、私も素直な気持ちで返す。私たちがクーカーになった、あの時のように。
可可「可可、かのんと上海で過ごせてとても嬉しいデス。」
可可「両親は日本に行く可可を優しく見送ってくれマシた……」
目を細め、また泣き出してしまいそうな顔で可可ちゃんは語る。
可可「最初こそみんな心配していマシたが、可可の努力を認めてくれて、3年間好きなことをやらせてもらいマシた。」
可可「大学に行けば、お父さんもお母さんも安心する。両親への恩返しにもなる。だから可可は進学しようと思っていマス!」
「北京の、大学に……?」
可可ちゃんほど頭が良ければ、こちらの大学でも十分に合格する可能性はある、それに両親への恩返しともなればこちらに帰ってくるつもりだろう。
可可「ハイ。」
「いいの?」
このいいの、には色々な意味を含ませていた。卒業後、スクールアイドルは出来なくても、可可ちゃんなら衣装も作れる、スクールアイドルに関わることなら頼られる存在になるだろう。それに……私やすみれちゃん、他のメンバーと離れ離れになってしまう。
可可「スクールアイドルと出会っていなければ、元々進んでいた道デスよ……?」
こちらの表情を見て、可可ちゃんは悲しませまいと必死に気丈に振舞っているように見えた。
「お姉ちゃんは……悲しまない……?」
萌萌『可可ちゃんを、助けて……!』
あれはお姉さんの心からの願いだったんだろう、可可ちゃんにやりたいことをやってほしい、たったそれだけの、けれどすごく重い願い。
可可「……反対すると思います、歌を続ければいいのに、って。」
可可「でも……可可は両親を安心させたい。」
「だから、進学……」
可可「日本に送り出してくれた親に進路はもうちょっと待ってなんて、言えません……」
今にも消えてしまいそうな声とともに可可ちゃんは俯いてしまう。
「けど、ライブには来てもらうんでしょ?可可ちゃんの頑張っている姿を見たらご両親の考えも……」
そんなの……と私の言葉を遮る可可ちゃんの表情は今までに無いほどに暗かった。
可可「そんなの甘い考えデス……親にはほんとに自由にやらせてもらいマシた……可可の青春はここまで、もうすぐ終わるんデス。」
可可「家族のみんなには最高に輝く可可を見てもらいマスよ!」
可可「今年が最後デスから!」
今年が最後……可可ちゃんの言葉は私にも重くのしかかる、今年で最後なのは私も一緒、ちいちゃんも、すみれちゃんも、恋ちゃんも。
みんなで一緒にステージに立てるのか、まだわからないのに。