ラブライブ!スーパースター!! Create the future   作:園枝こるだ

44 / 51



第42話「私の宝物」

可可視点──────

同級生『毎日勉強しててつらくない?私もう嫌になっちゃう!』

同級生『可可は本当すごいな、尊敬するよ!』

……この日は、私が日本に旅立つほんの数日前。お姉ちゃんも、まだ高校生だった。

萌萌「可可?2人とも日本に行くこと、とても心配してるみたいよ。」

「うん、でもそれは私自身が決めたことだから。」

扉を1枚隔て、私たちは背中を合わせて会話する。

萌萌「くれぐれも気をつけて。」

「ありがとう、お姉ちゃん。」

まだかのんと出会う前、私がスクールアイドルになる前、そんな記憶。

 

目を覚ますと、壁にかけてあった結ヶ丘の制服が目に入る、3年間を共にできた、夢だった日本の学校の制服。

私は1度両頬を叩き、気合を入れる。この制服を着れるのも数える程しかない。

萌萌「おはよう、いよいよ今日だね!」

廊下へ出ると、お姉ちゃんがまっててくれていた。私が緊張してると思って、わざわざ声をかけてくれたのだろう。

「うん。」

萌萌「お父さんもお母さんももう準備できてるわ!楽しみね!」

「……お姉ちゃん!」

私の呼び掛けに振り返る。その顔を見てやっぱり思う、言えない、あんなこと。

「ううん、今日、頑張るね。」

 

お父さんがどうせならステージまで送り届けてあげる、と車を出してくれた。

「行ってきます!」

私の顔を見てお姉ちゃんはこくりと頷く。

「お父さん、お母さん!私、卒業したら北京の大学に行く!」

萌萌「可可!待って!!」

お姉ちゃんの静止を無視し、私は車から降り、ステージに隣接した建物へ向かう。

これでいい、私の青春は、もう終わり、これからはLiella!の唐可可じゃなく、優秀な唐可可でいなきゃ。

決意したはずの心はどくんどくんと脈打っていた。

 

成生視点──────

俺たちはステージの対岸から見よう、と4人でステージのよく見える位置に集まっていた。

かのん「うわぁ……」

マルガレーテ「……!」

ライブ開始前の熱気も相まって初めて見た時よりも大きく見えた。

かのん「可可ちゃーん!みんなー!がんばれー!」

マルガレーテ「全くなんで私がここに……?」

冬毬「帰りますか?」

マルガレーテは俺の肩を叩く。俺は待ってましたと言わんばかりにペンライトを取り出す。

同じようにペンライトを取り出したマルガレーテは唐可可のメンバーカラーに点灯させる。

マルガレーテ「それこそ上海まで来た意味無いじゃない!」

かのん「2人とも持ってきてたの!?」

「昨日買いました。」

冬毬「Liella!は敵では……?」

ふん、と鼻を鳴らすマルガレーテを素直じゃないなと俺は横目で見て笑っていた。

 

すみれ視点──────

可可「お待たせしマシた!」

私たちが舞台袖で待っていると、今日の主役が走ってやってきた。

千砂都「いよいよだね……!」

恋「上海フェスのスペシャルステージ……」

夏海「最高に盛りあがってますの!」

可可「全力で盛り上がってますの!」

やはり可可の表情にはどこか影が落ちており、私は可可の顔をまじまじと見つめていた。

可可「全力で頑張りましょう!」

千砂都「さ、着替えにいこ!」

可可と私以外は皆更衣室へ向かった、可可も私も、どちらも向かおうとはせず、ただ舞台袖で2人ぽつんと立っていた。

「もっと笑って。笑顔、硬すぎるわよ。」

可可は自覚が無かったのか、私の顔を見て一瞬ハッとした様な顔を見せるがすぐ不機嫌そうな顔になる。

可可「集中してるだけデス……!」

「北京の大学、行くの?」

可可「なんで……?」

私に話した覚えがないことを知っていたのだから当然の疑問だろう。

「かのんと学校で話してるの見てたの。」

可可「自分で決めたことデス、ほっといてくだサイ。」

私から顔が見えない方へ可可はぷいっとそっぽを向く。

「ま、可可がいいならいいけど……」

いいんデス!と可可は不機嫌そうに俯く。

今言わなきゃ、言えなくなる、のかな。

「私は見たいわ!可可がステージに立ち続ける姿を!」

可可「……!」

これが私の素直な気持ち、あなたには、私の横でずっとずっと輝いていて欲しいの。

 

創視点──────

萌萌「創さん!!」

ステージ傍の建物でみんなを見送り、どこから見ようかと考えていると僕の姿を見た萌萌さんが駆け寄ってくる。

「萌萌さん、どうかしたんですか?」

萌萌「可可ちゃんが……!とにかく、かのんさんのところに!」

何かあったのは萌萌さんの様子を見てれば伝わってきた。かのんさんに伝えたいことがあるのだろうと思い、すぐさまかのんさんに現在地を教えてもらった。

 

萌萌「かのんちゃーん!!」

かのん「どうしたんですか?」

萌萌「可可ちゃん、大学に進学するって両親に伝えたの……!」

かのんさん、そして僕は思わずえっ、と感情が溢れ出る。あんなにもスクールアイドルを好きな可可先輩が、スクールアイドルから離れるなんて想像していなかったからだ。

萌萌「折角……好きなことと出会えたのに、どうして……!」

かのんさんは何かを決心したのか、だっと走り出した。

成生「止めなくていいのか?」

マルガレーテ「今更止めないわよ、それに……ライバルがいなくなるのは困るしね。」

マルガレーテは走っていくかのんさんの背中を見て微笑んでいた。

 

可可視点──────

私はすみれの言葉にどう返していいのかわからず、黙り込んでしまった。

すぐ来なさいよ、待ってるからと言い残し、すみれも更衣室へと向かっていった。

かのん「可可ちゃん!!」

私たちの舞台袖にやって来たのは他でもないかのんだった。同じ制服を着ていたのですんなり入れたのだろう。

「かのん……」

かのん「進路、本当にいいの……!?」

「この前話したデショ……?もう決めたんデス……!」

かのん「可可ちゃん、自分に嘘ついてるよ!」

自分に嘘……そんなの、自分が一番わかってる……!

「……うるさいデスッ!かのんならわかってくれると思ってたのに……!!」

かのん「可可ちゃん……」

かのん「好きなことを頑張ることに、おしまいなんてあるの……?」

「それ、って……」

私がまだ日本に来て間もない日、かのんに言った言葉だった。

かのん「可可ちゃんが私に教えてくれた、私の宝物にしている言葉……!可可ちゃんが自分に嘘つく姿なんて、私見たくない……!」

かのん「私は卒業したら、ウィーンに歌を勉強しに行く。だから可可ちゃんも、真っ直ぐ突き進んで欲しいの……!」

思わず泣き出してしまう私をかのんは何も言わずに抱きしめてくれた。かのんはいつも暖かくて、私を受け止めてくれる。

かのん「そんな顔じゃ、ステージ立てないよ……?」

「かのんのせいデス……!」

短く笑ってごめん、と謝る。

かのん「私、やる。可可ちゃんが1番祝福される状況を私が創る!」

かのん「待ってるから!」

 

かのん視点──────

私はすぐそばで待機していたマルガレーテちゃんと冬毬ちゃんの肩を掴む。

「マルガレーテちゃん、冬毬ちゃん、やろう!私たちに今できること……!」

マルガレーテ「面倒はごめんよ。」

「よっし、行こう……!」

舞台袖で可可ちゃんを待つLiella!メンバーを視界に捉える。

「ちぃちゃん!!」

千砂都「かのんちゃん!?」

そのままの勢いで私はみんなのもとへ駆け抜ける。

「ちょっとステージ借りま〜す!!」

 

私たちはもしもの時のために持ってきておいた衣装に着替え、ステージに飛び出す。

「こんにちは〜!日本からやって来ました、トマカノーテです!」

「まだLiella!のステージまで少し時間があります!」

「そこで皆さんにお願いことをひとつ、いいですか〜?」

返事に代わる歓声が観客席から上がる。

「皆さんに、可可ちゃんを大声で呼んでもらいたいんです!上海は可可ちゃんの故郷!皆さんの声でこのステージに呼んで欲しいんです!いいですか?」

先程よりも大きくなった歓声は私たちだけでなく、きっと、可可ちゃんにも届いているはず、私はそう信じている。

 

千砂都視点──────

観客席から上がる可可ちゃんを呼ぶ声は舞台袖を抜け、上海の街へ響いていった。

きな子「かのん先輩たちが盛り上げてくれてるっす!」

夏美「私たちも続きますの!」

先程まで不安な表情を浮かべていたメンバーも、かのんちゃんのおかげで明るい表情に変わっている。幼なじみである私まで誇らしくなってしまう。

「ねぇ、みんな。」

「今日だけ特別!あのね……」

 

「かのんちゃん!」

私はステージに飛び出すや否や、親愛なる幼なじみに抱きつく。

かのん「ちぃちゃん!?」

「一緒に歌お!」

さっき舞台袖でみんなに提案したのは、トマカノーテも含めて、11人みんなで歌おうということだった。最初はみんな相手はライバルだと、狼狽えていた、その考えさえも変えてくれたのがステージ上に立っていた幼なじみ、澁谷かのんだろう。

かのん「でも私たち……」

「最高の瞬間を!」

すみれ「結ヶ丘のスクールアイドル全員で!」

すみれ「可可!!」

すみれちゃんの呼ぶ声に応え、可可ちゃんが堂々とした顔でステージに上がる。

可可「上海出身のスクールアイドル、唐可可です!」

中国語で話す可可ちゃんに会場から更に歓声が上がる。

可可「私は日本でたくさんの友達と出会い、ここまで頑張ってきました。」

可可「今日はたくさんの人とスクールアイドルの素晴らしさを楽しい気持ちを分かち合いたい!」

可可「ここにいるみんなは私の……宝物です!」

可可「聴いてください!」

 

創視点──────

遠くからステージを眺めていた僕と成生は11人がステージ上に揃った時に目を見開いた。

成生「おい、大丈夫なのか……?」

大丈夫なのか、とは主にマルガレーテちゃんと冬毬ちゃんのことを指しているのだろう。僕もLiella!を敵だと捉える姿勢は今も変わらずにいる、と思っていた。

「わからない……けど、今結ヶ丘のスクールアイドルは間違いなくひとつになってる。」

それだけは間違いなかった。8人と3人、同じスクールアイドルでありながら仲を違えてきた者が、志を同じくして今ステージに立っている。

「僕たちも、このときを楽しもう。」

成生「……そうだな、頑張れ、Liella!……!」

 

可可視点──────

湧き上がる歓声、涙する観客……そして、昔サニパ様を見ていた時の私のような表情の観客まで、全てが私の特等席から見えていた。

『お父さん、お母さん!私、卒業したら北京の大学に行く!』

『……うるさいデスッ!かのんならわかってくれると思ってたのに……!!』

かのん『好きなことを頑張ることに、おしまいなんてあるの……?』

やっぱり可可は……可可は……!

「パパ、ママ!可可……可可、やっぱりずっとステージの上に立っていたいです!」

「スクールアイドルと出会って、可可は変われました。」

「可可はかわいいものが大好き、キラキラしているものも大好き、こんな素敵な瞬間を、終わりにしたくはありません!」

最初は1曲踊りきるどころか、腹筋1回すらできなかった私を、辛い時、苦しい時にめげそうな私を、みんなが励ましてくれた、みんなが応援してくれた。

「私はこれからもステージに立ち続けます!私の挑戦する姿を、ずっと見ていてくれませんか?」

遠く遠く、はるか遠くにある観客席、そこに私の目を引く観客がいた。まだくたびれていない、結ヶ丘の1年生らしき生徒、灰色の髪に、空の色のように澄んだ瞳───唐可可がそこにいた。

『あなたは、今幸せデスか?』

そう口を動かしたように思えた。瞬きをした瞬間、さっきまで観客席にいたのに影も形もなくなっていた。

「可可は……」

結ヶ丘のみんなに出会えて。

「可可は1番幸せデスよ……」

その時、横にいたかのんが私の手を取る。

かのん「上海で歌えて、よかったね。」

「……はい!」

「ありがとう!皆さん!」

11人が立つステージに拍手と歓声が降り注いだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。