ラブライブ!スーパースター!! Create the future 作:園枝こるだ
創視点──────
僕は上海から帰ってきて、まず第一に築さんに連絡した。
「お世話になってます、神谷創です。上海から帰ってきました。」
築「おぉおかえり、創くん。楽しかったかい?」
「はい!とても……みんなの心がひとつになった気がして……」
上海でのライブを思い返す。Liella!とトマカノーテがひとつになったステージ、端的に言うと最高だった。
築「それは良かった。それでだ創くん、少し気になることがあってね。」
「気になる、こと……?」
築「あぁ、八掛成生くんのことなんだが……」
マルガレーテ視点──────
上海から帰ってきて初の登校日を迎えた。
生徒「見た?Liella!の上海の動画!」
生徒「見た見た!私感動して泣いちゃったよ〜!」
件の動画は私のスマートフォンからも流れており、11人でステージに立っている事実がそこにはあった。
「私があの時感じたのは……」
成生「いいライブだったぞ。」
うわぁっ、と後ろから急に声をかけられスマートフォンを落としそうになる。
成生「悪い……驚かせて……」
慌てる私の様子がよっぽど面白かったのか、うぷぷと笑いをこらえきれない様子の成生がそこに立っていた。
「あんた……覚えときなさいよ。」
成生「はいはい……あ、あれ、冬毬ちゃんじゃないか?」
成生が指差す方向には、あの日のライブの振り付けを踊る冬毬が。
「おはよう。」
成生「おはよ、冬毬ちゃん。」
少し驚いたような顔の冬毬だったが、すぐにいつもの表情に戻り、おはようございます、と返す。
「今の上海ライブの振り付けよね。」
冬毬は教室の方へ向かう足を止め、こちらを振り返らずに返答する。
冬毬「いえ、単なるイメトレです。では。」
「……相変わらずね。」
成生「マルガレーテもだろ。」
それを言うならあんたもでしょうが、と言いかけた時にいきなり体の両側に衝撃が。
きな子「マルガレーテちゃん!久しぶりっす!」
メイ「上海ライブ以来だな!」
Liella!の2年生の面子が私のそばに集まっていた。
四季「成生くんも、久しぶり。」
成生「あ、あぁ……」
成生の傍には若菜四季まで。
「……馴れ馴れしくしないで!」
私は掴まれていた両腕を振り払い、教室へ向かう。
成生「…………」
黙ったままの成生も私の後をついてくる。
私は、私は……
「私はLiella!に勝つんだから。」
勝って、ウィーンに行く。
証明する、それしかないんだから。
その時私は、上海のライブで感じた、楽しいという感情を必死に噛み殺していた。
創視点──────
久々の部室にはドンドンドン、と太鼓の音が響いていた。
可可「今年も来マシたよ〜!LoveLive!です!ドンドンドンフ〜!!」
恋「もうそんな季節ですか。」
千砂都「早いねぇ、1年。」
すみれ「本当よねぇ。」
余りにも激しすぎるテンションの差に可可先輩はドンドンと太鼓を鳴らし対抗している。
きな子「四季ちゃん、創くん、グミ食べるっすか?」
四季「いただく。」
「ありがと、きな子ちゃん。」
夏美「いよっし、動画編集完了!」
思い思いの過ごし方をするぼくら2年生を見てますます可可先輩は肩を落とす。
メイ「遂に今年も来るんだな!!」
可可「これデス〜!このリアクションが正しいリアクションデス!」
可可先輩は心底嬉しそうにメイの方を向いている。
千砂都「とは言ってもねぇ……」
恋「開催の知らせはいつも落ち着いた感じでしたから。」
すみれ「毎年新鮮に喜べるあんたが羨ましいわ。」
何を言っているデスか!と高速ですみれ先輩に距離を詰める可可先輩、抗議のようにドンドンドンドンと太鼓を鳴らしている。
恋「しかし、大事な大会には変わりありません。」
千砂都「私たち3年生にとっては最後のLoveLive!だもん。」
すみれ「ギャラクシーな有終の美を飾らないとね。」
そう、か……先輩たちはもうすぐ卒業、当然LoveLive!にも出られなくなる。
夏美「出場したあとのことを考えているから落ち着いていられるんですの。」
きな子「当然目指すは優勝っす!連覇っす!」
「みんな気持ちは一緒です。」
可可先輩はほろりほろりと静かに涙を流す。
可可「みんな……!」
僕の横できな子ちゃんが勢いよく立ち上がる。
きな子「じゃあ練習前に改めてみんなで気合い入れるっす!」
円陣に乗ってこないみんなをあれ、あれ、と眺めるきな子ちゃん。
すみれ「その前に大問題があるでしょ。この部屋には今何人いる?創は抜きで数えてみなさい。」
きな子ちゃんは言われた通りに数え、8……まで言い切る。
きな子「あとかのん先輩とマルガレーテちゃんと冬毬ちゃんが来れば!」
四季「来れば……?」
あぁぁあ〜……!と大声を上げて落胆するきな子ちゃん、そうまだ僕たちは同じグループにはなれていないのである。
きな子「Liella!はまだ完全体じゃなかったっす……」
きな子「けどあれがザ・Liella!っす!11人で結ヶ丘女子スクールアイドルLiella!」
あれとは先日の上海のライブのことだろう。確かに8人、そして3人では絶対なし得ないライブだったと思う。
メイ「それで3人からあのあと連絡はなかったのか?」
千砂都「かのんちゃんとは時々……さっき、理事長に呼ばれたんだ。」
千砂都先輩はその時のことを話してくれた。今結ヶ丘には2組のスクールアイドルがいること、LoveLive!に出るためには1校1組に絞り込まなければいけないこと、いくら頑張っても出られないグループが出てしまうこと。
そして、来月の文化祭にて、LoveLive!にエントリーするのはどちらかを決める投票ライブを行うこと。
夏美「それにしてもかのん先輩の動向が気になりますの。」
メイ「そうだな、ちょっと覗きに行ってみるか。」
僕の横で四季がにやりと笑う。
四季「偵察。」
「はいはい、早く行こうね。」
3年生の先輩たちは部室に残り、僕たち2年生でトマカノーテを偵察しに行くことになった。
四季がトマカノーテの練習場所を知っていたらしく、あっさりとたどり着けた。しかしそこにマルガレーテ、冬毬ちゃん、そして成生の姿はあれどかのんさんの姿はなかった。
僕は築さんとの会話を思い出していた。
築『八掛成生くんのことなんだが……』
『成生が……何か……?』
築『やはり創くんの描いてくれた似顔絵に似すぎているんだ。ここまで似ていると怪しまざるを得ない。』
『そう、ですよね……』
築『もし、創くんが成生くんを信じたいのなら、成生くんの親族の情報を調べるしかない。』
築『その先に残酷な結末が待っていたとしても、選ぶのは創くん、君だ。』
四季「……創?」
「え、あぁ……ごめん、なんか言ってた?」
別に、と短く返答する四季から意識をそらし、成生たちを見つめる。
夏美「かのん先輩の姿がありませんの。」
その時僕のスマートフォンがぶぶっ、と震える。
「千砂都先輩だ。」
千砂都「かのんちゃん、今日は練習いないかも!」
千砂都「家の水道が壊れちゃったみたい!」
とたこ焼きがマンホールから吹き出る水に押し上げられている謎のスタンプと共にメッセージが送られてきた。
その時誰かからまた新しくメッセージが届く。
「すみれ先輩からも。」
すみれ「どうせ偵察に行ったのなら2人を勧誘してきて」
すみれ「うまくやって解決ギャラクシーよ!」
「だって。」
夏美「ぬぁにが解決ギャラクシーですの無茶な……!」
夏美「あの3人ですのよ、そんな簡単なわけ……!」
きな子「行っちゃうっす!」
夏美がわなわなと震えている後ろの方ではもうウォーミングアップを終えた3人がランニングに行こうとしている。
メイ「ここは夏美だろ。」
夏美「はぁ〜!?」
「冬毬ちゃんと姉妹でしょ。」
痛いところを突かれ、うぐっ……と後ずさる夏美。
きな子「四季ちゃん!」
四季「OK。」
前々回の北海道合宿以来の登場、強制ランニングマシーン(改良版)を夏美の手足腰に装着する。
夏美「あ、ああ、ぁぁぁぁぁ…………」
四季「Go!」
四季がスマートフォンに表示されたボタンを思いっきり押すと夏美はあっという間に走り出した3人を追い越した。
「人体に悪影響あるでしょ……」
四季「行き過ぎ。」
無常に四季はポチポチと操作し、夏美を高速で後退させる。
あっという間に僕らの方へ戻ってきた夏美を、修正とただ一言呟き再度前方に走らせる。
冬毬ちゃん、マルガレーテ、成生の前に立った夏美はぎこちない笑顔のままだ。
夏美「い、いや〜ですの……」
メイ「なんだそりゃ……」
木陰にいた僕らは心配そうに夏美を見つめる。
マルガレーテ「何よ。」
夏美は3人から冷たい視線を浴びせられている。
夏美「さ、さ、さよなら〜!」
機械の力に抗い自力で後退する夏美。
四季「Again。」
機械の力に勝てる訳もなく、またまた前に走らされ、先程までいた位置に引き戻される。
冬毬「想像するに一緒になれないかという相談ではないかと。」
流石に鋭い冬毬ちゃん。その言葉を聞き、マルガレーテは夏美をぎろりと睨みつける。
夏美「そのぉ……まぁ……」
マルガレーテ「なんなのよ、はっきりしないわね。私たちランニングに行きたいんだけど!」
完璧拒絶モードだ。夏美!上手くやってくれ!
夏美「……君たち!これまでも青春の光を追いかけてきて、きっとたくさんの涙と汗を流してきたことだろう。」
成生「おい、なんか始まったぞ……」
成生はドン引きといった様子で夏美を見つめている。
夏美「今こそ我々と一緒にLoveLive!という最高の光を……共に追いかけてみないかー!?」
きな子「失敗っすね。」
メイ「失敗だな。」
「失敗だね。」
四季「解除。」
夏美の一世一代の絶叫が神社に響き渡った数秒後、強制ランニングマシーン(改良版)ががしゃんがしゃん、と地に落ちた。
夏美「こんなん無理に決まってますの!」
夏美はこちらを見て恥ずかしそうに顔を赤くして怒っている。
マルガレーテ「なんだ、あなたたちもいたのね。なんの用?」
成生「今日の朝といい、随分と距離が近いな。」
腕を組んだマルガレーテと成生がこちらを訝しんでいる。
メイ「どう思ってるのか確認したい。」
きな子「上海で一緒に歌って、気持ち変わったりしてないっすか?なんて……」
四季「私たちは、一緒に歌ってとても楽しかった。」
「僕は今まで、9人で立つステージが全てだと思っていたけど、あのライブにはもっと大きな広がりがあった。」
メイは拳を握りマルガレーテたちの方へ握手の要領で手を差し出す。
メイ「11人の力があれば、もっともっと凄いことができるんじゃないか、って。」
思うところがあるのかそれは……と呟きマルガレーテは俯く。
冬毬「アグリーしかねます。」
沈黙を破ったのは冬毬ちゃんだった。真っ直ぐに夏美と対峙する。
夏美「冬毬……」
冬毬「私の目的は、姉者の言葉が本当かどうか確かめること、その1点のみ。」
冬毬「姉者が生半可な気持ちではないことを確かめたい、今馴れ合ってひとつになることを私はベストだとは思えません、マルガレーテと成生くんがどうかはわかりませんが。」
急に振られたマルガレーテは慌ててふん、と鼻を鳴らす。
マルガレーテ「私たちだって、Liella!に勝ってお姉さまたちに認めて貰わなきゃいけないんだから!」
成生「俺には、関係ない。」
「えっ?」
メイ「関係ないってどういうことだよ、お前だってトマカノーテの一員、そして結ヶ丘の生徒だろ!」
今までに無いほどに、出会った時の頃の成生よりも冷たい眼差しでこちらを見つめる。
成生「俺には関係ない。」
成生「俺にあるのはYATSUGAKEの意志だけだ。」
家を継ぐことを考えてない、むしろYATSUGAKEを嫌いな成生がこんなこと言い出すなんて……
「どうしたの、成生……」
成生「行こう、マルガレーテ、冬毬ちゃん。」
小さくなっていく背中を僕は見つめることしかできなかった。