ラブライブ!スーパースター!! Create the future 作:園枝こるだ
成生視点──────
マルガレーテ「……ねぇ、どうしたの?あんたらしくないわよ。」
後ろからマルガレーテが声をかけてくる。
冬毬「なにか、あったのですか?」
「……なんもないよ、何かあったとして2人には関係ない。」
マルガレーテがスピードを上げ、俺の前に立ち塞がる。
マルガレーテ「何よそれ、どういうこと?」
冬毬「その痣は一体……」
真剣な眼差しで俺の目を真っ直ぐに見てくる。
「そのままの意味だよ。お前らには関係ない。」
俺の顔を見て、マルガレーテ、そして冬毬ちゃんも怯えている。
心が痛むが俺にはこうするしかない。
こうしなきゃ、いけないんだ。
俺は上海から帰ったら、兄さんに呼び出された。
功「お、成生。来たか。」
「うん、どうしたの?兄さん。」
そう返事した瞬間、俺の左頬にごんっ、と脳が揺れるほどの衝撃が。
身構えていなかった衝撃に俺は体ごと吹き飛ばされる。
「う、ぁ……」
功「警察がなんか嗅ぎ回ってるっぽいんだけど、成生知らないか?」
倒れる俺の前で、何事も無かったかのような顔で尋ねてくる兄さん。
「お、俺……は……」
煮え切らない返事に苛立ったのか、兄さんに髪を掴まれ、壁に何度も打ち付けられる。
功「成生、俺はお前になんの期待もしてないんだよ。家を継ぐのは俺なんだよ。」
功「お前は家の名を汚さずに過ごしてればよかっただけなのに……」
はぁ、とため息をつき立ち上がる。その後は何度も何度も何度も何度も俺を踏みつけ、俺は床に吐瀉物をぶちまけ、意識が途切れそうになる。
「に、い、さ……ごめ……」
功「成生、これ以上警察をこっちに近づけるな。」
功「それができなかったら……」
まるで怪物のようににたぁ、と笑う兄さんの口から衝撃の一言が飛び出した。
功「お前の数少ない友達も……安城健のようになるかもな。」
兄さんの口から飛び出した名前。
安城健、それは間違いなく創の父さんの名前だった。
マルガレーテ視点──────
その後練習を終えた私と冬毬、そして成生はそれぞれ別れ帰路についた。
「…………なんなのよ、今日のあいつ……」
成生『そのままの意味だよ。お前らには関係ない。』
まるで私と出会った時、いやそれ以上に曇った目で。
傷のある顔で。
「なんなのよ……」
がちゃ、と私の家……といってもかのんの家のドアを開け、ただいまと短く慣れた挨拶をする。
かのん「おかえり!ごめんね……練習行けなくて。」
水道管の修理はもう終わったのか、キッチンで食器を洗っていたかのんと目が合う。
「……別にいいわよ、今日はあんたがいなくて助かったわ。」
かのん「ひどい!」
ひーん、と泣く真似をするかのんを横目にづかづかと2階に向かう。あそこにかのんがいたらもっとめんどくさくなってた気がするわ。
「ていうか……なんでこんな心配してるのよ、私。」
ぼすっ、と畳んである布団に勢いよく寝っ転がり、目の前で開いた手をまじまじと見つめる。
その時ドアをコンコンとノックする音が聞こえる。
かのん「マルガレーテちゃん……何かあった……?」
勢いよく寝っ転がりすぎたのか、かのんが心配した様子でドアの向こうに立っている。
かのん「……成生くんと何かあった?」
「……だったら何よ。」
かのん「……ううん。私でよければいつでも相談乗るから。」
これ以上ないお人好しね、とはぁとため息をひとつつく。
LoveLive!前に面倒なことにならないといいけど……
創視点──────
偵察、そして勧誘を終えた僕たちは無言で神社に立ち尽くしていた。
きな子「…………成生くん、あんな感じじゃなかったっすよね……」
沈黙を破ったのはきな子ちゃんだった。きな子ちゃんの言う通り、成生の対応は普段から冷たいが、あんな風に突き放すようなことは決してしなかった。
「けど、上海じゃいつもの成生だった。それが急に……」
四季「上海から帰ってきて、何かがあった。」
顎に手をあてた四季が僕の目を真っ直ぐに見ている。
夏美「あの様子じゃ話もできるかすら怪しいですの。」
夏美は眉をひそめ、やれやれといった感じだ。
メイ「ひとまず、勧誘したことを千砂都先輩たちに伝えに行こう。」
メイの言葉に僕たちは頷き、学校へ1度戻ることにした。
すみれ「……その様子じゃ門前払いにされたわね。」
僕たち5人の暗い表情を見て、仕方ないったらないわよ、とすみれ先輩は励ましてくれている。
四季「成生くんの様子が少し変だった。」
千砂都「なるくんの……?」
千砂都先輩が心配そうな表情を浮かべる。
「頬に痣もあったように……見えました……」
恋「痣……ですか……」
あったよね、と夏美の方を見るとえぇ、とこくりと頷く。
きな子「千砂都先輩、なんか知らないっすか……!?」
メイ「俺にあるのはYATSUGAKEの意志だけだ、とも言ってたんだが……」
うーん……と件の千砂都先輩必死に思い出そうとしている。
千砂都「あ!なるくん実はね……」
千砂都「お兄さんがいるの。」
「成生に、お兄さん……?」
初めて聞いた。成生と話すことは数多くあったが、家族の話は聞いたことがなかった、聞いたことがあるとすればYATSUGAKEの息子であることの苦労などだ。
千砂都「もう20歳……ぐらいかな、ダンスやってた時たまに見に来てたの。」
四季「お兄さんから、虐待……?」
メイ「けどなんでそんなことになるんだよ。痣になるって相当だぞ……」
それもそうだ、痣になるまで殴られるなんて……
千砂都「ひとまず、今日は帰ろう。私もマルガレーテちゃんから何か聞いてないか、かのんちゃんに連絡してみる」
すみれ「創、あなたは絶対メイたちと帰りなさい。いいわね。」
「はい。先輩たちも気をつけて。」
僕たちは胸に曇りを抱えたまま結ヶ丘を後にした。
成生視点──────
功「おかえり、成生。ちゃんと言えたか?」
「兄さん……こんなこと、もうやめよう……」
柄にもなく俺は兄さんに反抗した。また同じように顔を殴られ壁に打ち付けられる。
「ぁ、が……」
功「元はと言えばお前が結ヶ丘に行ったからだろうが。」
首を絞めあげられ、足が宙に浮く。
功「お前が真実を知らないように自由にさせていたのに……こんなことになるなんてな……」
腹を蹴り飛ばされ、俺はその場に蹲る。
功「お前を消すのは最後にしてやるよ、成生。」
功「なんたって俺たちは”兄弟”なんだから。」
俺の頭上で悪魔の笑い声が響く。
創、マルガレーテ……千砂都……みんな……
絶対俺が、まも、る……んだ……
次の日、俺は遅刻した。
意識が覚めた頃には6限にすら間に合わず、担任に無断欠席してしまったことの謝罪の電話を入れ、練習場所の神社に向かった。
マルガレーテ「……あんたっ……ねぇ、大丈夫なの……?」
俺を叱ろうと近寄ってきたマルガレーテは俺の傷だらけの顔を見て、みるみるうちに青ざめていく。
かのん「……っ……成生くん、先生のとこ、行こう?」
「そんなことしても、意味ないですから。」
「俺は大丈夫です、練習しましょう。」
カバンを置き、ストレッチを始める俺の肩をマルガレーテが掴む。
マルガレーテ「できるわけないでしょ!あんたが、あんたがこんなんなってんのよ!?」
目に涙を浮かべたマルガレーテは俺の傷を優しく押さえる。
「……柄にもないぞ、俺のことで泣くなんて。」
冬毬「とにかく、練習している場合ではありません。ひとまず絆創膏などで応急処置をしましょう。」
かのん先輩に手を引かれ、俺は薬局に突っ込まれた。
「いっ……つ……」
冬毬「我慢してください、早期の適切な処置が最善とされているんですから。」
冬毬ちゃんは痛がる俺の腕を押さえ、消毒液を湿らせたガーゼで口元を拭う。
かのん「こんなになるまでなんて……ひどい……」
マルガレーテ「誰にやられたのよ。」
そう言うマルガレーテの目は俺が出会った時の目によく似ていた。憎しみを、怒りを孕んだ翠緑の目。
「聞かれて教えると思うか?」
冬毬「意地でも聞き出す気ですが?」
俺の頬をぐっと掴み、赤色の大きな瞳が眼前に迫る。
「……わかったよ、ただ危険なことだけは絶対にしないって約束してくれ。」
「かのん先輩は、もしかしたら聞かない方がいいかもしれない。それでも聞きますか?」
かのん先輩はぐっ、と拳を握り、生唾を飲み込む。
かのん「……聞くよ、どんなことだって。」
俺はかのん先輩の顔を見こくりと頷く。
「Liella!のメンバーもここに呼んでくれ。」
「創にとっては、辛い事実になる。覚悟してくれ、って伝えてくれ。」
数十分後、創を始めとするLiella!のメンバーが俺らの元に集った。
千砂都「なるくん、その傷……」
俺の傷を初めて見る千砂都たちは恐慄く。
すみれ「酷いったら酷すぎるわよ……」
創「成生、話って……何?」
先程かのん先輩が上手く伝えてくれたようで、創の目には覚悟が決まっているように見えた。
「あぁ、落ち着いてられないかもしれないが聞いてくれ。」
俺はひとつ、大きく息を吸い込んだ。
「安城健を殺したのは俺の兄だ。」