ラブライブ!スーパースター!! Create the future   作:園枝こるだ

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第45話「Create the future」

成生視点──────

「安城健を殺したのは俺の兄だ。」

かのん「……う、そ、でしょ……?」

かのん先輩は口を抑えたまま涙を流す。

メイ「お前ッ!ふざけんなッ!どんな気持ちで創といたんだよッ!!」

きな子「メイちゃん!落ち着くっす!」

暴れる米女メイを鬼塚夏美と桜小路きな子が押さえつける。許さねぇ!お前だけはッ!と押さえつけられても止まらぬ痛々しい叫び声が俺の耳を劈く。

創「……本当なの?」

「あぁ、本当だよ。」

「俺は殺人犯の弟だ。」

千砂都「なるくん……」

千砂都は胸元をぎゅぅっと握りしめている。

創「なら、僕は成生を助ける。」

「は?」

俺の目の前には開かれた創の手が差し出されていた。

 

創視点──────

成生「いや、状況わかってんのか!?俺の兄が、お前の家族の命を奪ったんだぞッ!?」

「けど、その事実を知ったから成生は今傷ついてるんでしょ。」

それは……と口を噤む成生。昨日より痣は増え、口の周りは複数箇所切れている。

「その傷は、僕たちを守るために負ったものじゃないの?」

成生「……その通りだよ、俺は創たちを人質に取られてた。」

成生「警察の捜査がこれ以上厳しくなったら1人ずつ消してくってな。」

成生は真っ直ぐに僕の目を見てそう言った。嘘ひとつない、澄み切った眼で。

「じゃあ、僕も成生を助けなきゃ。」

「多分、父さんだったらこうしてた。」

四季「創…………」

成生は僕の手を頑なに取ろうとしない。

成生「俺には助ける価値なんかない!今お前が1番危ないんだよ創!人助けしてる場合じゃねえだろッ!」

確かにそうかもしれない。恐らく犯人である成生のお兄さんも僕が安城健の息子だということはわかっているはずだ。

ただ。

「今目の前で傷ついている”友達”を助けない理由にはならない。」

成生「……お前は本当に馬鹿だな…………」

俯きはぁとひとつため息をつく。

成生「……助けてくれ……俺も、兄さんも……」

涙を流している成生の傷だらけの手を僕は優しく握りしめた。

 

すみれ「ただ助けるったってどうすんのよ。」

可可「相手は……殺人犯デス……」

そうだ、安易に助けるって言ったって相手は人間を手にかけることに抵抗がない。危険な目に合うことは必至だろう。

夏美「創が話してた警察の人の協力は仰げませんの?」

成生「兄さんは警察の捜査を相当警戒してる。1人2人の警官ならまだしも、パトカーや機動隊を動員するのは不可能だろう。」

成生は八掛家の地図をみんなに見える位置でスマートフォンに表示している。

「僕と成生でお兄さんと対峙するしかない。無力化して警察に引き渡す。」

メイ「そんな危ないことさせれるか。」

かのん「メイちゃん……」

遠くで腕を組んでいたメイが短く言う。

メイ「こいつが演技でおびき寄せてる線も0じゃねえだろ。」

マルガレーテ「あんた、本気で言ってんの?」

青筋を立てたマルガレーテとメイが向かい合う。

マルガレーテ「こいつがどんな気持ちで耐えてたのか、考えてもみなさいよ!」

メイ「両親がいなくなった創のことを考えないでどうすんだよ!」

殴りかからんとメイがマルガレーテの胸ぐらを掴む。

「やめて2人とも。」

僕の言葉にメイがぴたりと動きを止める。

成生「信用できないだろうが俺は創をおびき寄せるような真似は決してしない。」

成生「マルガレーテも、ありがとうな。」

マルガレーテ「別に……私は……」

バツが悪そうにメイはくるりと踵を返す。

恋「ただ、実際どうするんですか……?お兄さんが外に出るタイミングとかは……」

成生「捜査を警戒してる今ないだろうな、あるリスクは全部排除するような人だ。」

冬毬「しかし忍び込むというのはあまりにも危険では……」

しかし危険を顧みなければ僕の知りたかった真実はいつまでも掴めないままだ。

千砂都「けど、なるくんだって……このままじゃ……」

1歩、四季が前に出て話し始める。

四季「私に考えがある。」

その後四季が語った計画を端的にまとめるとこういう事だ。

まず成生が自宅へ帰宅、その時唯一警備が手薄な裏庭の塀の方へスタンガンを投げ捨てる。恐らく成生が反抗してくるのを読んで、お兄さんに会ったら手荷物は全て捨てられるという読みだ。

そして成生からの合図を受け、スタンガンを回収し非常用の梯子をのぼり、八掛宅へ侵入。部屋の外に成生が仕掛けたGPSを目安に部屋を特定。この時非常用火災報知器を作動させ一時的な混乱を招く。

混乱に乗じてお兄さんを無力化または拘束し、待機してもらっていた築さんへ引き渡すといった流れだ。

成生「ほんとにこんなこと可能なのかよ。」

四季「わからない、ただ1番可能性が高いとしたらこの方法。」

「シミュレーションはできない、一発勝負かつアドリブも含めて動くとしたらこの方法がいいと思う。」

僕の前に手を広げて立ち塞がるかのんさん。

かのん「ダメだよ!危険すぎる!」

「かのんさん……」

きな子「創くんの気持ちもわかるっすけど、危なすぎるっす……創くんにもし何かあったら…………っ」

嗚咽を漏らし泣き出すきな子ちゃんを優しく夏美が抱きしめる。

成生「……お前が行かないって手もあるんだぞ。」

「え?」

成生「俺一人でなんとかする、できないことじゃない。」

「それこそ危険でしょ。」

成生はぐっと唇を噛み締める。

成生「お前にはこんなにも大切に思ってくれてる人がたくさんいるんだ。わざわざ危ない目に合う必要ないだろ。」

「成生だって、それは一緒でしょ。」

「僕にとって成生は大切な友達だ。」

成生「……お前、恥ずかしくないのか?」

「多少は恥ずかしいよ。」

ふっ、と笑う成生はひとつ大きな深呼吸をする。

成生「それは俺にとっても一緒だ。創は大切な友達だよ。」

成生「解き明かそう、真実を。」

「うん。」

この先にあるのがどんなハッピーエンドでも。

どんなバッドエンドでも。

僕は受け入れてこの先も生きていくんだ。

 

メイ「本当に行くのか。」

計画を問題なく遂行するために、ホームセンターに買い出しに来ていた。買い出しには四季とメイが着いてきてくれた。

「うん、ありがとうね、メイ。」

メイ「……その言葉は無事に戻ってきてから言え。」

決して僕の顔は見ず、ただ周りを警戒する。

四季「これ、持っといて。」

四季が渡してきたのは刃を収納出来る小型のナイフだった。

四季「相手を切りつけるためじゃなくて、身を守るためのもの。お守りとして持っておいて。」

「わかった、ありがとう。」

こくりと頷く四季。その他のものも買い込み、店を出た。

四季「使えるかはわからないけど、これも。」

四季「小型のGPS。とりあえず付けておいて。」

四季に言われるがまま、僕は小型のカバンの奥にGPSを忍ばせた。

メイ「絶対生きて帰ってこい、じゃなきゃ許さないからな。」

「うん、わかった。」

僕はメイと四季に別れを告げ、成生との集合場所へ向かった。

 

その日の夕方、日が完璧に落ちる前の方がいいとのことで八掛宅の近くで落ち合った。

成生「本当に、いいのか?」

「今更行かないなんて言わないよ、成生を1人にはしない。」

そうか、と短く笑う成生。

成生「警察の人には、連絡したのか?」

「うん、もう近くに着いているみたい……僕らの計画には反対してたんだけど……」

築『わかった、危なくなったらすぐに連絡するんだ。火災報知器でもなんでも押すんだ、いいね?』

「って、恐らく築さんはサポートに回ってくれるみたい。」

成生「了解……そしたら、行くか。」

物が大量に入っていそうなリュックサックを背負い直し、ふぅと深呼吸をする成生。

「じゃあ、僕は裏に。また後で。」

僕と成生は握りこぶしをコツンとぶつけ、その場を後にした。

 

成生視点──────

正直兄さんが殺人犯なんて、今でも信じられない気持ちもある。

……俺を自由にさせていたのも、家を継ごうとしていたのも、全て自分の犯罪を隠すためだった、その事実が俺を襲う。

「……考えても仕方ねえか。」

足に馴染む運動靴の靴底を鳴らし、俺は玄関の方へ進む。

ふんっ、と短く気合いを入れ、裏庭の方へポーチに入ったスタンガンを投げ捨てる。

「これが正念場、ってやつか。」

俺は玄関のドアを開け、真っ直ぐに2階の兄さんの自室へ向かった。

 

「兄さん。」

功「どうした、成生。」

俺の方を真っ直ぐに見つめる瞳はもうかつての優しい目ではない。

「もう、終わりにしよう。」

功「はぁ……お前がそこまで馬鹿だとは思わなかった……」

功「今更何を言ってるんだ。もう終わったんだよ。俺が犯人なのは世間では明かされていない。知っているのはお前だけなんだよ、成生。」

功「お前の周りのやつが嗅ぎつけたのは少々驚いたが……まぁそれも消してしまえばいい話だ。」

ペラペラと連ねる言葉が嘘であって欲しいという俺の願いは虚しく消える。

「それも今日で終わりだよ、兄さんを警察につき出す。」

俺はポケットからスマホを取り出し、創に連絡をする。

──繋がらない、ばっとスマホを見ると圏外……何故、こんな都内の一等地で圏外なんて。

功「ジャマーって知ってるか、正式名称は通信抑止装置って言うんだが……まぁそれを作動させている。」

功「お前の考えていることなんか、俺には全部読めてんだよ。」

はははっ、と笑う兄さん。完璧にしてやられた……

「なんてな、外部との通信なんかいらねえよ。」

「ちょっと、知らせてやるだけでいい。」

俺はロケット花火を点火し、兄さんの方へ打ち放つ。

窓ガラスには赤青緑、様々な色の火花が飛び、この部屋を明るく照らす。

その直後窓ガラスが大きな音を立てて割れ、兄さんは外から入ってきたものに大きく突き飛ばされる。

創「ナイス成生!」

「……随分派手な登場なこった。」

 

創視点──────

成生が事前に伝えてくれていた。

成生『おそらく兄さんは携帯電話での通信手段を止めてくるだろう。だから携帯が使えなかった場合はこれを使う。』

成生が取りだしたのはひとつのロケット花火だった。

成生『これが合図だ。』

「了解」

 

「やっぱ電波ダメなんだ。」

成生「あぁ、だが作戦は成功みたいだ。」

僕は成生の横に立ち、両親の仇と遂に対峙する。

成生に似た顔立ち……事件当時の記憶よりも成長しているが、確かにそっくりである。

功「久しぶりだね、神谷創くん。」

功「安城創、と呼んだ方がいいかな?」

妖狐のように長く細く切れた目、180cmをゆうに越えていそうな恵まれた体躯、そしてこの状況でも余裕そうに振る舞える精神、まさに怪物だ。

成生「おしゃべりなんかしてる余裕あんのかよ、2対1だぞ。」

功「高校生のガキ2人なんざ頭数にもならないよ。」

にたぁ、と口角を上げ、どんっと足を大きくひとつ踏み込む。いつの間にか怪物の爪が僕の眼前に迫る。

顔の横をチッと何かが掠める。僕の眼前に迫った爪は成生の足によって押し戻された。

成生「早速創を狙いにきやがった……」

功「なんでそいつを庇うんだ。お前の居場所は八掛にしかないはずだぞ?」

顔に張り付いたような笑顔は崩さずに、成生と僕をひたすらに挑発する。

「成生の居場所は八掛じゃない!成生の居場所はLiella!だ!」

功「そんなわけないだろ。こいつは八掛家の落ちこぼれなんだから。」

功「八掛の気高き血を穢した忌み子だ、お前は。」

ふざけんな……成生は……成生はッ……!

「成生は、お前みたいに汚れた人間じゃない!悩んで、耐えて、戦って……周りの人のために頑張れる人間だッ!」

「お前が成生を語るなッ!!」

成生「創……」

やれやれ、といったように首を横に振り、光のない目でこちらを見据える。

功「部外者に何がわかる……あの外道の息子であるお前に……」

目の横にビキビキと青筋を立てている。

「外道……?」

恐らく父さんを指しているだろうその言葉に僕は疑問符を浮かべる。

功「あいつは……あいつは俺の最愛の人を奪ったッ!真里亞さんは……俺の最愛の人だった……」

成生「真里亞さんって……」

「うん、僕の母さん。」

どういうことだ……と離れた場所から2人で様子を伺う。

成生「年の差ありすぎないか……?」

功「真里亞さんは……俺を救ってくれたのに……!あいつは真里亞さんを奪ったんだ……」

「もしかして、教え子……?」

母さんは僕を産む頃には退職していたが、それ以前は小学校の教員をしていた。

功「真里亞さん、いや……真里亞先生はいつだって俺の味方でいてくれた……それなのに……ッ」

功「俺は愛していたのにッ!」

涙を流しながら絶叫する姿はまるで子供そのもの。先程までの雰囲気との違いに背筋が冷え固まるのを感じる。

成生「それで……殺したのか……?」

功「……そうだよ、殺すには、十分すぎる理由だろ。」

何が十分な理由だ、ふざけるな。

ゆら、ゆら、と僕の心の中で炎が揺らぐ。あらゆるものを飲み込む、黒い炎。

功「俺はこんなにも愛していたのに……」

妖狐のような目から一変し、大きく見開かれた目にはどす黒い眼球の中で闇がうぞうぞと蠢いていた。

「成生、もう終わらせよう。」

成生「……創?」

「僕はこいつを、生かしてはおけない。」

こいつだけは。

絶対に。

殺す。

いつしか黒い炎は僕の理性すら飲み込んでいた。

 

成生視点──────

創「僕はこいつを、生かしてはおけない。」

創の中で闇がぐねりぐねりと揺らいでいるのを感じる。

「落ち着け、創。」

まるで俺の声は聞こえていないかのように兄さんだけを真っ直ぐに見つめている。

創の手に小さなナイフが握られていることに今気がついた。

「ッ……創ッ!しっかりしろ!」

ナイフを持っていた方の創の手首をありったけの力で握りしめる。

「お前まであんなふうになりたいのか……!」

「創ッ!!」

 

創視点──────

……ここは……?

わからない……けど、なんだか落ち着く。

さっきまで……あぁ……成生のお兄さんを殺そうとしてたんだっけ。

自分の生きてきた世界にあんな怪物がいるなんて、知らなかった。

真里亞「創。」

健「創。」

「……母さん、父さん。」

夢……じゃない。実態のある母さんと父さんがそこにいた。

「ごめん、僕もあいつと同じ怪物みたいだ。」

真里亞「大丈夫よ、創にはもう、私たち以外に大切な人がいるでしょう?」

健「もう俺たちが必要ないぐらいにな。」

がっはっは、と大きく笑う父さんの横で穏やかに微笑む母さん。

「け、けど……僕は……あいつを……」

殺そうとした。

それだけは揺るがない事実だ。

健「昔した道の話、覚えてるか?」

「……うん、道は誰かと誰かが繋がるためにある、でしょ?」

よく覚えてるな、と顎髭を撫でながら目を見開く父さん。

健「あれにはまだ続きがあるんだ。」

「続き……?」

こくりと頷く父さんを黙って見つめる。

健「人は間違った道に進んじまうこともある、進んじまったらなんか引き返せなくて。間違ってるってわかっても、戻ったら全てが変わっちまうのが怖くて。」

健「けどな。」

父さんが僕を指差す。母さんは口パクでうしろうしろ、と微笑みながら僕を促す。

「……成生、みんな。」

そこにはLiella!のメンバーをはじめ、成生、マルガレーテ、冬毬ちゃんが。

健「創にはその道を正してくれる仲間がいる。創を助けてくれる仲間がいる。」

健「間違えたと思ったら立ち止まっていい。諦めていい。戻っていい。」

健「創ならきっと、明るい未来を創りだせる。」

真里亞「創ならきっと成せる。」

健「だから胸を張って行ってこい。」

健「創の好きなように生きろ!!!」

にっ、と笑った父さんに僕は背中を押され、みんなのもとへ躓きながらも進んでいく。

健「頑張れよ、創。」

父さん、母さん。

ありがとう。

僕は───

 

創視点──────

成生「……創?」

「ありがとう、成生。もう、大丈夫。」

今までずっと下ろしてきた前髪を僕はかきあげる。

「止めよう。成生のお兄さんを。」

成生「……あぁ、言われなくてもそのつもりだ。」

功「高校生のガキ2人に何が出来るってんだッ!!」

四季「2人じゃない。」

猛スピードで成生のお兄さんに突撃するドローンの影が。

そのドローンからは四季の声が発せられていた。

「四季っ!」

四季「ごめん、遅くなって。」

成生「なんだよこりゃ……」

特製ドローン、とドローンから自慢げな自己紹介が。

四季「さっきまでの会話は全部録音済み、あとで築さんに提出できる。」

「ありがとう、助かるよ。」

成生「それじゃ、あとは止めるだけってことか。」

成生はふぅ、と短く息をつき、真っ直ぐに目の前の人物を見据える。

功「何もかも……何もかも、邪魔しやがって……ッ」

功「俺の恋路の邪魔をするなぁああッッ!!」

成生「んな道元々ねえだろ。」

考え無しに突っ込んできた体を冷静に受け、的確に顎にカウンターを打ち込む。ぎしっ、と骨が軋む音がこちらまで響く。

成生「創!!」

成生の呼び掛けに僕はこくりと頷き、フラつく成生のお兄さんの元へ駆け出す。

今日成生から教わったスタンガンの使い方をもとに首元にバチチっ、と電流を流す。

朦朧としていた意識は完璧に落ち、やっと成生のお兄さんは地に伏せた。

 

その後2人がかりでロープで厳重に縛り、築さんの到着を待つ。

成生「はぁ……意識飛びそうだ……」

倒れ込むように寝っ転がる成生。自分の手を広げたり、閉じたりしてぼーっと天井を見つめている。

成生「……これでよかったんだよな。」

実の兄が犯罪者、そして取り押さえるのが自分……成生の気持ちをわかってあげることはできないが、葛藤があることは僕にもわかる。

「よかったのかは正直……わからない。」

「けど、僕は成生がいてくれて間違いなく助かった。感謝してる。」

寝っ転がる成生の横に座り、お疲れと言って拳を突き出す。

成生はふん、と笑い恥ずかしそうに拳をぶつける。

築「2人とも!大丈夫かい!?」

築さんはドタドタという足音とともに部屋に駆け込んでくるなり僕と成生の肩を掴む。

築「良かった……本当に……怪我は、特にないかい……?」

「はい、奇跡的に。」

成生「俺も何とか、これは前についたやつなんで。」

成生は口元の傷を親指でぴっ、と拭う。

築「それじゃ……八掛功、ひとまず殺人未遂罪で逮捕する。」

築「お前には聞きたいことが山ほどあるんだ。」

功「…………」

失われた意識は戻っているものの、築さんの言葉に返答はなく、ただ僕と成生を虚ろな目で見つめていた。

 

事情聴取は君たちにも早くしたいところだが八掛功の事情聴取に時間がかかりそうなため後日に回させてもらう、とのことで築さんは覆面パトカーで署まで戻って行った。

「ひとまず、お疲れ。」

成生「創もな、髪型意外と似合ってるぞ。」

そういえばさっきかきあげたままだったな、と自分の前髪を触る。

「そうかな……」

かのん「創くん!!!」

声が聞こえるや否や僕の胸にかのんさんが飛び込んでくる。

「かのんさん……心配かけてすみません……」

かのん「ほんとに……無事でよかった……無事で……」

かのんさんは泣いているのか、胸元が濡れる感覚を覚える。僕は優しくかのんさんの頭を受け止める。

千砂都「なるくん!!」

成生「千砂都……わざわざ来なくたってよかったのに……」

少し離れた方では成生が千砂都先輩の涙を指で拭っている。

四季「よかった、無事で。」

「四季、ありがとうね。助かったよ。」

駆動音を立てながら、僕たちを助けてくれたドローンが四季の手のひらの上に着陸する。

四季「この子が役に立ってくれて良かった。」

よしよしとドローンの羽を撫でている。

メイ「……大丈夫か?」

大丈夫か、って言うのは僕の体調ではなく、精神的なものを聞いているのだろう。

「うん。父さんと母さんがね、言ってくれたんだ。」

「僕には仲間がいるって。」

健『創の好きなように生きろ!!!』

「好きなように生きろって。」

メイと四季は僕の顔を見て、安心したかのような表情を浮かべる。

メイ「気づくの遅いんだよっ!」

四季「私たちは最初から、創の仲間。」

無理やりメイに肩を組まれ、僕たちは昔、結ヶ丘に合格した時のように3人で抱き合う。

「ありがとう、2人とも。」

その時、僕たちの上を一筋の流星が通り過ぎた。

 

数日後、僕は築さんからの事情聴取を受けていた。僕の前に成生はもう事情聴取を終えたらしいが、その後はまだ会えていない。

このことを知った理事長……おばさんからはとてつもなく怒られた、今僕たちは自宅謹慎期間中である。

「すみません……わざわざ来ていただいて……」

築「いやいや、こちらこそ謹慎中に悪いね。」

缶コーヒーを1口飲み、築さんは真剣な表情に変わる。

築「成生くんからある程度の情報は聞いている。犯人は成生くんの兄、八掛功で間違いないかな?」

「はい。似顔絵に描いた顔にも似てましたし、本人の口から犯人であるという証拠に近しい発言が何個かありました。」

築さんはこくりと頷き、カバンから何枚かの書類を取り出す。それは10年前ほどの卒業アルバムのコピーだった。

築「ここに写っているのが八掛功、そしてここに写っているのは……」

「母さん、ですね。」

とある小学校の集合写真、そこには僕が産まれる前の母さんと八掛功の姿があった。

築「間違いないみたいだね、未だ犯人は黙秘を続けている。」

築「何かあればまた連絡するよ。すまないね、まだお世話になるかもしれない。」

申し訳ない、と築さんは頭を下げる。

「いえいえそんな……大丈夫です。よろしくお願いします。」

その後僕は築さんを見送り、成生に電話をかけた。

「今何してるの?」

成生「お前暇だからってすぐかけてくるなよ、謹慎期間中何度目だ。」

つい暇になると誰かと話したくなる、といってもこの時間は授業中のためメンバーの誰かにかけることは出来ず、同じ状況の成生にかけるしかなくなる。

「だって暇じゃん。」

成生「それはまぁ……そうだけどな……」

「そうは言いつつも謹慎期間も明日までだけどね。」

成生「最終日ぐらい1人で大人しくしてろ。」

つー、つー、と通話が切れた合図を知らせる音が僕の耳元に響く。

「……世知辛いなぁ。」

ふと鏡を見る。

「慣れないなぁ……短髪。」

この前いい機会だと成生に半ば無理やり短髪にさせられた。ちなみにこの髪型になってからみんなには会ってない。

「明日……なんて言われるかなぁ……」

短いため息は目の前の鏡を少し曇らせるだけだった。




これからも「ラブライブ!スーパースター!! Create the future」はまだ続いていきますが、神谷創の物語はひとまずひと段落となります。
次回からもまた読んでいただけると幸いです。
よろしくお願いします。
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