ラブライブ!スーパースター!! Create the future 作:園枝こるだ
こんなにも多くの人に見ていただけてとても嬉しく思います。
これからもよろしくお願いします。
創視点──────
メイ「文化祭で、投票?」
千砂都「うん、トマカノーテとLiella!、どちらもがライブを行って、勝った方がLoveLive!に出場する権利を得る。」
きな子「どっちかしか、出れないんすかね。」
きな子ちゃんはあの日の上海のライブを思い出し、腕を胸の前できゅっと結ぶ。
「けど、こうじゃなきゃあの3人は納得しなさそうですし……」
すみれ「こっちが負けてやる道理もないったらないわよ。」
可可「……ナッツ?」
どこかぼーっとした様子の夏美を気にかけ、可可先輩が顔をのぞき込む。
夏美「あ……っと少し考え事をしてましたの。」
四季「…………」
その後理事長から、生徒が投票に対して抵抗があること、2組とも同じ曲を11人で歌うというフェアな条件下で文化祭のステージは行われるとの話があった。
成生視点──────
かのん「ライブの結果は生徒のみんなに決めてもらうの!」
マルガレーテ「なんか……協力し合ってるみたいじゃない?」
冬毬「悪くない提案かと。」
「まぁ公平ではありますかね。」
かのん「ちぃちゃんもパートで2組の歌い分けをつくってみよう、って。」
マルガレーテはムスッとした表情でかのん先輩の方を見る。
マルガレーテ「曲はどうすんのよ。まさかLiella!の曲を歌えって言うんじゃないでしょうね……」
かのん「それなんだけど……折角の学園祭だから新曲作りたくって……」
「学園祭、再来週ですよ!?」
冬毬「時間が足りないのでは……」
かのん「だから、お願いがあるの!」
3人「??」
俺たち3人は顔を見合わせる。
創視点──────
僕達2年生の教室に千砂都先輩とすみれ先輩がやってきた。
千砂都「各グループから3人ずつ参加してもらって、一緒に曲作りをしてもらいたいんだ、2年生に!」
きな子「きな子たちがっすか!?」
千砂都「私たちは今年で卒業、次を担うのはみんななんだから。」
四季「大役……」
3人ずつ、ということはあちら側から選出されるのはかのんさん以外の3人だろう。
「……ん?」
メイやきな子ちゃんの声に紛れて微かに夏美の声が聞こえる。
夏美「私ならやれる…………ナッツぅ〜!!」
すみれ「ギャラクシァ!!」
いきなり飛ぶように立ち上がった夏美に驚き、すみれ先輩が独特な叫び声を上げる。
夏美「やりますの、やってやりますの!」
メイ「……夏美?」
すみれ「い、意外な展開ね……」
作曲経験者のメイ、作詞経験者の僕、そして立候補者の夏美、この3人が代表者となることが決まった。
成生視点──────
マルガレーテ「なんでこうなるの……」
音楽室で待ってて!とかのん先輩に無理やり押し込まれ、俺たち3人は横に並んで座っている。音楽室には夕陽が差し込み、運動部の掛け声が外から聞こえてくる。
冬毬「私が聞きたいです。」
「……というか、来ないね。」
冬毬「待つのは性にあいません。帰ります。」
すっ、と立ち上がり音楽室を後にしようとする冬毬ちゃんを呼び止める。
マルガレーテ「待ちなさいよ、曲作り、かのんに頼まれたんだから。」
冬毬「今ならその話も無効にできるかと、かのん先輩に話してきます。」
ちょ、ちょっと冬毬ちゃんと呼び止める僕の声はまるで聞こえていないかのように廊下へスタスタと向かっていく。
マルガレーテ「もしかして……Liella!側にお姉さんが来るかもって思ってる?」
冬毬「それは……」
その時ガラガラ、と音楽室のドアが開けられ、入ってきたのは米女メイ、創……そして件の鬼塚夏美だった。
「大体予想通り、か。」
メイ「よろしく頼む。」
「そっちの3人がLiella!の代表か。」
創「うん。」
マルガレーテはため息混じりに口を開く。
マルガレーテ「頼りない組み合わせね。」
メイ「なんとでも言えばいいさ。」
冬毬「仕方ありません、時間もないですし、全てを早く決めていきましょう。」
目の前の鬼塚夏美には目もくれず冬毬ちゃんは淡々と話し続ける。
創「その前に、1つ確認しておきたいことがあるんだ。こっちのメンバーで話し合ってきたんだけど。」
「なんだよ。」
メイ「ルールを作りたい。」
ルール?とマルガレーテは眉をひそめている。
メイ「今回の対決に負けたチームは勝ったチームのお願いをひとつ必ず聞く。」
冬毬「ひとつ……」
「中々面白いこと考えるな。」
創の顔を見ると真剣な眼差しでこちらを見つめている、まるで負ける気なんてさらさらないように。
マルガレーテ「何それ、ペナルティ?」
「そんなんじゃない、前向きな気持ちで出したアイデアだよ。」
メイ「勝った方の願いがひとつだけ叶う、ただそれだけだよ。不公平じゃないだろ?」
押し黙る鬼塚夏美が気になるがこちらの返答を待っている様子の米女メイを見てから、左右にいるマルガレーテと冬毬ちゃんを見る。2人とも了承の意味であろう頷きをする。
「その勝負、乗った。」
メイ「決まりだな!じゃあ曲作りを始めよう!勝って4人にお願い聞いてもらうぞ!」
マルガレーテ「それはこっちの台詞よ!あと曲だったら……私とこいつで考えてきたわよ!」
マルガレーテはおもむろにスマートフォンを取りだし、再生ボタンを押す。そこから流れ出したのは荒々しいロックだった。
呆気に取られているLiella!側3人の顔に俺は思わず吹き出す。
マルガレーテ「どう?かっこいいでしょ?」
「かっこいいけど、多分違うぞ?」
メイ「成生の言う通りだ、なんか……スクールアイドルっぽくないっていうか……」
マルガレーテはバンと机を叩きなんですって!と立ち上がる。
創「LoveLive!はスクールアイドルの祭典、曲にもしっかりスクールアイドルらしさが必要だと思うけどね。」
「1度負けた俺たちになら、よく分かるだろってことか?」
マルガレーテはなんですって……?と創のことを睨みつける。
「そういう意味じゃないって!」
メイ「ちゃんとスクールアイドルへの愛が溢れてなきゃ……!」
マルガレーテ「嫌よ!そんなの!折角新たに曲を作るんだから今までにないようなものにしたい!」
メイ「だからってなんでもいいってことにはならないだろ!」
やっぱりこの2人相性最悪だな、と思っていると横の冬毬ちゃんがでは、と口を開く。
冬毬「持ち寄ればいいだけのことでは?それぞれが歌詞と曲を持ち寄り、各グループの部長、ないしはリーダー的存在の人に1番いいと思ったものを選んでもらう。公平かつクオリティも担保されるかと。」
「ま、それならうちはかのん先輩だな、異論がなきゃ俺はこれでいい。」
待って……!と今まで黙り込んでいた鬼塚夏美が口を開く。
夏美「ここにこの6人が集められたのは、どちらのグループでも納得出来る曲にするため……それを決めるためにはやはりもっとお互いに話し合った方いいのでは……?」
まぁそれも一理あるか、とちらりと冬毬ちゃんの方を向く。
冬毬「必要ないと思います。」
その言葉に鬼塚夏美はわなわなと震え、あっそ!と言い捨てた。
第1回会議は全くまとまらずに終了となった。再来週なのに大丈夫かよ……
創視点──────
僕たちは行きつけのカフェでお茶していた。夏美はいい!と言って帰ってしまったため僕、メイ、四季、きな子ちゃんの4人で席に座ることになった。
きな子「じゃあ結局、何も決まらないまま……?」
メイ「参ったよ、成生はともかくマルガレーテと冬毬は相変わらず頑固だし、夏美は不機嫌になるし……」
きな子「このままだとバラバラに曲作りするんすか?」
「かもねぇ……明日また3人と話してみるよ。」
きな子ちゃんは俯きながらうんうん唸っている。
きな子「かのん先輩助けて欲しいっす〜……」
メイ「すみれ先輩に聞かれたら甘えるな!って怒られるぞ。」
だって〜……としょんぼりするきな子ちゃんとは裏腹に覚悟を決めた表情の四季が口を開く。
四季「行こう、夏美ちゃんと冬毬ちゃんが仲良しに戻らないと、いい曲はきっと完成しない。」
「……四季。」
夏美視点──────
あの時はついカッとなって意見を聞こうともしなかったが、1度話してみるべきだと感じた私は妹の扉をノックする。
「冬毬……?」
冬毬「今は曲作りにあたってのリサーチ中です、お引き取り下さい。」
冷たく抑揚のない声が返答として返ってくる。
「……部屋で待ってるから。」
冬毬「用件は後日お願いします。」
パソコンを打つ手は止まらず、部屋の中からはタイピング音だけが響き続けている。
「まだまだ、近くて遠いって感じですの……」
部屋に戻りため息をつく私を呼ぶかのようにインターホンが鳴る。
戸を開けると2年生のみんながそこに立っていた。
「み、みんなっ!どうしてここに……?」
四季「話がある。」
家の外に出させられ、2年生の4人に取り囲まれる。
「なんですの、いきなり。帰りの電車逃しても知らないですのよ?」
四季「私たちも協力する、今のふたりの関係、上手くいってない。」
ふたり、というのは私と冬毬のことだろう。なんでそんなこと言われなきゃいけないんだ、と私は眉をひそめ、ムッとする。
「いらぬお節介ですの!これくらい私ひとりでなんとかしてみせますの!」
四季は真っ直ぐに私の顔を見つめる。
四季「私たちは友達。」
「四季……!」
四季「冬毬ちゃんは夏美ちゃんが傷つくところをもう見たくないだけ、本当はとても優しい子、それは夏美ちゃんが1番知ってるはず。」
「…………」
そん、なの……言われなくてもわかってますの、けど、今のあの子は私に何も望んで───
四季「笑って。」
穏やかな微笑みを浮かべた四季は、そう言った。
四季「夏美ちゃんが笑顔でいたら、きっと冬毬ちゃんも安心して心を開く。」
「笑顔…………」
四季「冬毬ちゃんは夏美ちゃんの笑顔が大好き。」
「それ、は……」
そうは言っていたけど、今の私の笑顔なんて、きっとあの子は見たくない。
四季「暗い顔をしないで、夏美ちゃんはいつも明るく楽しそうでいて。」
きな子「スマーイル、っす!」
人差し指で口を横に広げ、にこっと笑うきな子。
四季「大好きだから、見たくない。傷つくところも、悲しむところも。」
四季「姉者!!」
冬毬『あねじゃ!』
冬毬『姉者。』
息が詰まる、心臓の鼓動が早まるのを感じる。けど。
四季「ファイト。」
私はもう逃げない。
あの時のように、全てを投げ出して逃げる私は。
もうおしまい。
再び冬毬の部屋のドアをノックする。先程よりも語気が強い返事が返ってくる。
冬毬「しつこいですよ、今は忙しいと伝えたでしょう。お引き取り下さい。」
「冬毬!」
冬毬は戸を開けられたのが意外だったのか、それとも私の後ろに2年生が立っているのが意外だったのか、一瞬目を見開き、またパソコンへ姿勢を直す。
冬毬「ロスした時間分、後でマニーを請求しますよ。」
「……聞いて。私は冬毬と話がしたい。」
「曲を作るなら、最高の形で冬毬と、みんなとひとつになって創りあげたいんですの。」
メイ「こいつらもそうしたいって。」
そう言うメイの影から現れたのはマルガレーテと成生だった。
マルガレーテ「わざわざ来てあげたんだから、感謝してよね。」
成生「心配だったなら素直にそう言えよ。」
けらけらと笑う成生の横でマルガレーテはむっと睨みつけている。
冬毬「話したではないですか。曲はそれぞれ持ち寄って、と。」
「それだと意味が無いんだよ!」
メイ「ふたつのグループ、どちらも心躍る曲を私たちが創る。」
成生「それぞれ別の考え、違いがあっても。」
マルガレーテ「お互いに意見を出し合えばいい曲ができるはず。」
冬毬ははぁ、とひとつため息をつく。
冬毬「マルガレーテも成生くんも、Liella!側に寄り添う、と。」
成生「全部賛成ってわけじゃないさ。」
マルガレーテ「冬毬の言う通りの方法で私の曲が選ばれなかったら納得いかないもの。」
マルガレーテはふん、と澄ました顔で髪を指でクルクルと巻いている。
冬毬「……アグリーできません……!」
メイ「でもさ……!」
冬毬「そういうことでしたら、曲作りはお任せします。」
私を真っ直ぐに冷たい視線が捉える。
冬毬「この部屋から出ていってください。」
「……!」
「冬毬のバカッ!」
思わず涙を流す私の顔を見て、冬毬は目を見開く。
冬毬「姉者……!?」
「バカバカバカバカバカバカバカッ!」
冬毬は私に黙って寄り添い、優しく私を抱きしめた。
冬毬「すみません、言いすぎました……んなっ……!?」
はうっ、と私に押し倒される形に倒れた冬毬はごんっと頭を床にぶつける。
冬毬「なにっ!?」
冬毬の顔からはいつもの冷静な表情はいつの間にか失われている。
「冬毬のこと、全部受け止めるから、全部受け止めるから、心を開いてほしい……!」
冬毬「あねじゃ……」
昔の、私のことをいつも、いつも追いかけていたあの日の声色に戻った気がした。
「私になんでも話して、冬毬と話ができるなら、何時間でも何日でも……スクールアイドルと全然関係ない話でも構わない!」
「ずっとずっと、ずっと、ずっと冬毬と話がしたい……」
冬毬「…………!」
「冬毬のことが大好きなんだから……ッ!」
これが今の私の、ううん、ずっと秘めていた、私の素直なホントの気持ち。
冬毬「あねじゃはいつも、ずるいですッ……!」
その時私の肩が濡れるのに気づいた。冬毬も私も、涙で濡れた顔を、お互いの服で拭っていた。
冬毬「私が、どれだけ姉者を心配していたと思ってるんですか……!」
「私だって、ずっと苦しかったんだからぁ……」
私と冬毬の声はずっと部屋の中を木霊していた。
創視点──────
メイ「なんて美しい姉妹愛なんだ〜……」
マルガレーテ「何もらい泣きしてんのよ……!」
滝のように涙を流しているメイとマルガレーテにぎょっとする。
「来てよかったね。」
うん、と四季は頷く。
成生「ひとまず、作曲と作詞のこと、かのん先輩に伝えとく。」
「あ、僕も、千砂都先輩に伝えとくよ。」
メイ「名前、ついてるのか?」
一同、冬毬ちゃんの部屋の水槽の前に集まっている。水槽の中にはふよふよ、ふよふよ、とミズクラゲが泳いでいる。
冬毬「はい。」
夏美「初耳ですの……この子の名前は……」
冬毬「……姉者。」
……姉者は一際大きく、水槽の中を自由気ままに泳いでいる。
メイ「じゃあこっちのひとりはぐれているのが!」
冬毬「マルガレーテ。」
マルガレーテ「ちょっと、なんでそうなんのよ。」
水槽の中のマルガレーテと同じように、部屋の隅から返事をするマルガレーテ。
メイ「冬毬も面白いとこあんだな。」
冬毬「面白い、なんて……」
と不安げな表情を浮かべる冬毬ちゃん。
成生「今の俺たちなら、きっといい曲を創れる。」
「四季ときな子ちゃんも手伝って欲しいんだ、いいよね?」
部屋の隅にいるマルガレーテの方を向く。僕の視線に気づくとふん、と鼻を鳴らす。
マルガレーテ「ご自由にどうぞ!」
メイ「じゃあ創っていこう!」
その時ぶぶっ、と僕のスマートフォンが震える。
かのん「もう、大丈夫そうだね。」
「えっ。」
成生「どした?」
「あぁいや、なんでもない、なんでも……!」
まさか……かのんさんここまで様子見に来てくれたの……?
学園祭まであと3日、僕らも最終調整に入っていた。
ふと廊下を見ると慌ただしく走っているナナミ先輩たちが見えた。
「ナナミ先輩?」
成生「ん?なんかあったか?」
僕と成生、2人で曲と詞のイメージ合わせ、そしてステージ構想を担当している。
ヤエ「あ!ねぇ!創くん!そこLiella!のメンバーいる?」
たたたっ、と戻ってきてヤエ先輩が問いかけてくる。
「今はいませんよ、僕と成生だけです。」
成生「お久しぶりです。」
それはよかった、と言うヤエ先輩たちの手には大量の書類が。
「なんですか?その資料。」
ココノ「これはね……」
創、成生「??」
その書類に書かれている文言を見て僕と成生は顔を見合わせて笑い合う。
「僕達も手伝います!」
成生「これが成功すりゃ、文句でねえよな。」
ヤエ先輩たちから書類を少しずつ受け取り、僕達はLiella!のメンバーがいないであろう教室を駆け回った。