ラブライブ!スーパースター!! Create the future   作:園枝こるだ

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北海道上陸回です。
夏美の描写に少し力を入れて書きます。


第7話「Dreaming」

科学室──────

「新しいグループ名?」

化学式やらなんやらが書かれたホワイトボードの前に夏美ちゃんが立っている。

夏美「そうですの!Liella!の妹分として新しく5人で始動するんですの!」夏美「それには新たなグループ名が必要ですの!例えば……」

きゅきゅきゅ、と赤いマーカーでホワイトボードに書かれたのは全力井という謎の単語。

メイ「全力シャープ?」

あ、これシャープか。井戸の井にしか見えなかった。

夏美「これとか……」

再び夏美ちゃんはホワイトボードにKIRARA!!と書く。KIRARA!!いいじゃん……と思ったけど別にグループ名いらなくない?

きな子「なんか雑誌みたいっす。」

四季「そもそも私たちはLiella!の妹分じゃない。」

四季が冷たく夏美ちゃんに言い捨てる。どうやらまだ四季の中には疑念が残っているみたいだ。

夏美「えぇ、えぇわかってますのぉ……どちらかというと、ユニット!そうユニット名ですの!」

目を泳がせながらいいこと思いついたと言わんばかりの反応だ。なんか無理してるなぁと思いながら夏美ちゃんを見つめる。

きな子「夏美ちゃん!」

珍しくきな子ちゃんがどんと机に手を置いて立ち上がる。

きな子「きな子たちが先輩と離れて練習を始めたのは先輩たちに追いつきたいからっす!優勝を目指すLiella!の力になりたいからっす!」

夏美ちゃんは真剣なきな子ちゃんの顔つきを見てぐぬぬ、とたじろぐ。

ずい、とメイが1歩前に出て夏美ちゃんと体が触れそうなほどの距離で言う。

メイ「Liella!の力になれないならスクールアイドルやるつもりはない。少なくともアタシはな。」

四季「me too.」

夏美ちゃんは3人の圧に気圧され廊下へ出る。

メイ「はぁ……というか創は荷物持ってきたか?」

「うん、ちゃんと持ってきたよ、ほら。」

みんなのキャリーケースが並ぶ中僕の荷物は少し小さめのボストンバッグのみ。

きな子「えっこれで足りるっすか!?」

「うん、男子なんてこんなもんだよきっと。」

正直着替えと部活に使うものぐらいしか入ってない。

ガラ、と科学室のドアが開かれ夏美ちゃんが戻ってくる。

夏美「気を取り直して、今日はみなさんの日常を……」

夏美ちゃんの視線がどんどん下に下がっていき僕らの荷物が目に入る。

「それじゃ行こうか。夏美ちゃん。」

僕ら4人はにたりと笑い夏美ちゃんを校門まで引っ張っていくのだった。

 

北海道、かんのファーム──────

きな子「ようこそ、きな子の故郷へ!っす。」

大きく腕を広げたきな子ちゃんの後方には緑が拡がっている。足元にはラベンダーが綺麗に咲き誇っている。

メイ「しっかしすっごいところだなぁ……」

きな子「のどかで食べ物も美味しいっすよ〜。」

こんなにうきうきしているきな子ちゃんを見たのは初めてだ。恐らく結ヶ丘に入学してから初の帰省だろう。

きな子「ではまず、きな子のうちまでランニングっす〜!」

夏美「ちょっ、待つですの!いったいなぜこんなことに……」

こんな時でもカメラを手放さない夏美ちゃんの根性には目を見張るものがある。

メイ「なんだよ、覚えてないのか?きな子の家で集中合宿するって決めただろ。」

偉そうに言っているが決めたのは昨日である。その旨を夏美ちゃんには伝えていなかった。鬼畜だよ。

僕の横ではずっと首を傾げたままの四季がいる。

「どうしたの?四季。」

四季はそのまま体をぐるりとこちらに捻り。

四季「戻らない……あのバスのせい……」

僕らは夜行バスで北海道までやって来たが乗車中メイの肩に頭をのせ、熟睡する四季を目撃した。メイからどうにかしろとスマホにメッセージが入っていたが無視して寝ることにしたのだった。

夏美「それはわかっているんですの!なぜ私まで!」

四季は自分で頭を持ち思いっきり首をゴキゴキ鳴らしながら定位置へ戻す。とてもじゃないけど無事とは思えない音だった。

その横で詰め寄る夏美ちゃんに対抗してきな子ちゃんもずいと顔を前に出す。

きな子「撮影するって言ったからっすよ!」

ぐぬぬ、と2人は顔を見合わせる。

メイ「プロデュースのためならどんなところへも着いていって密着して記録残すって。」

四季「言った。」

四季はスマホを取り出し、夏美ちゃんの言質が顕になる。

「夏美ちゃん、立て替えてた交通費。」

僕ははい、と手を出す。夏美ちゃんはその手を泳いだ目で必死に捉えている。

夏美「うぐ……うぅ……」

 

夏美「マニーが……この世で命の次に大切なマニーがぁ……」

夏美ちゃんはおよよ、とまるで詐欺にでもあったかのように悲しげな表情を浮かべている。

四季「ここからきな子ちゃんの家までランニング。」

そう言うと、四季は機械を夏美ちゃんに取りつける。いつの日かきな子ちゃんにくくりつけた機械の改良版にも見える。

夏美「なんですの……?」

四季は今までに見たことがないほどの悪い顔になり。

四季「ランニング……マッシーン……」

と言いスマホに触れると、夏美ちゃんに取り付けられた機械が信号を受信し、勝手に夏美ちゃんを動かす。

夏美ちゃんは坂を全速力で駆け抜けていく。

四季「きな子ちゃんの家、どっち?」

きな子「あっちっす。」

ときな子ちゃんは夏美ちゃんが進んで行った方向の真逆の方向を指さす。

「どうすんのさ……あんな方まで行っちゃったよ。」

夏美ちゃんの方を見るともうかなり小さくなっていた。物凄いスピードだなと関心するも、あの機械の恐ろしさに身震いする。

四季「リバース。」

四季がそう言ってスマホをタップすると、夏美ちゃんが急に振り返って僕らの方へ戻ってくる。

その様子を見て僕らは笑い合い、夏美ちゃんを追いかけた。

 

桜小路家のペンション──────

夏美「死んだですの……」

夏美ちゃんはレジャーシートの上でまるで屍のようにぐでんと広がっていた。

「大丈夫?」

夏美「大丈夫なわけないですの……一体どれだけ練習すれば気が済むんですの……」

顔まで情けなくなった夏美ちゃんはごろごろと転がる。

メイ「仕方ないだろ、Liella!の力になるって決めたんだから。」

だからって……と言葉を続けようとした夏美ちゃんの頬をべろり、と先程まできな子ちゃんが撫でていたヤギが舐める。

ひぃぃ〜……と情けない声を出して立ち上がる夏美ちゃん。

きな子「元気だせって言ってるっす。」

「わかるんだ……」

きな子「もちろんっす!着替えたら練習っすよ〜!」

そこからはいつも通りの練習が始まる。いつもと違う風景の中する練習は僕たちにとって良い刺激になった。

 

また戻ってペンション──────

きな子母「おかえりなさ〜い!わざわざ遠くからありがとう、遠慮なく食べてね!」

大人になったきな子ちゃん、と言われても気づかないほどに似ているきな子ちゃんのお母さんがたくさんの料理を作って出迎えてくれた。

「こんなに……ありがとうございます。」

メイ「うわぁ〜うっまそ〜……」

僕とメイは目をキラキラと輝かせながらテーブルの上に広がるご馳走を眺めていた。

四季「……大きな家。」

きな子「ペンション経営してるっすからね。」

思わず見上げてしまうほどに大きな屋根が目立つ木を基調としたペンションが目に入る。

メイ「合宿にぴったりだな!」

きな子ちゃんはきょろきょろと辺りを見て。

きな子「それにしても夏美ちゃん遅いっすね。」

メイ「なんか部屋にはいたみたいだけどな。」

練習が終わってから夏美ちゃんは作業をするから先に行っててほしいですの、と言って部屋にこもりっきりである。

「僕、ちょっと見てくるよ。」

 

夏美「これでマニーが転がり込んできますの〜。」

とパソコンに夢中になっている夏美ちゃんは僕が近づいていることに全く気がついてない。画面にはなになに……

「Liella!解散……?」

夏美「にょわ〜っ!!」

絵に描いたように慌てる夏美ちゃんはなんでもないんですの!とパソコンを抱きしめている。

「もうご飯って。きな子ちゃんのお母さんがいっぱい作ってくれたよ。」

夏美「編集にすっかり夢中になってしまいましたの……」

これ、プロデュースに使えないかと……と夏美ちゃんが僕に見せてくれた画面にはメイに何度も見させられた去年のラブライブ地区予選でのLiella!のライブ映像が映し出されていた。

「すごいよね、このステージ。メイたちはこれを超えるのが夢なんだって。」

夏美「夢……」

夢という言葉にどこか引っかかる様子を見せる夏美ちゃん。

「1年生が増えたから、このステージを超えることができた、ってLiella!はパワーアップした、って。」

夏美「それが……夢?」

「うん。そして僕の夢は今のみんなの夢が叶う瞬間を見ること、この学校に入ってよかったって心から思えるようになること。」

「夏美ちゃんの夢は?」

夏美「私……?」

夏美ちゃんはきょとんとした顔で僕の顔を見つめる。

「うん、CEOって言うぐらいだし、何を目標にしてるのかなって。」

夏美ちゃんは開いていたパソコンをそっと閉じて。

夏美「別に、特にないんですの。」

悲しげな表情を見せる。今までに見たことの無い、悲しそうな顔。

夏美「強いて言えば、お金をたくさん稼ぐことですの。」

やっぱりいつも言ってるマニーってお金のことなんだ。

「なんで?」

夏美「なんでって……お金は、裏切ったりしないからですの。」

「裏切っ」

夏美「さ、今行きますの!先戻っててください。」

僕の言葉を遮り、はいはい早く早くとぐいぐい僕の背中を押す夏美ちゃん。ずっとあった違和感に少し近づいた気がした。

夏美ちゃんのタイピングの音がしなくなったのを確認して急いで外へ戻った。

 

夏美視点──────

『私の夢は、将来オリンピックで金メダルを取ること!』

生徒『夏美ちゃんまたビリだね……』

??『姉者……』

ひとつ、消して。

『私の夢は、ノーベル賞を取れるような科学者になること!』

15点。私のテストの答案に刻まれた、私の価値。

??『姉者……』

またひとつ、消して。

『私の夢はモデルさんになって、世界を駆け回ること!』

『全然伸びてない……』

??『姉者……』

またまたひとつ、消して。

あれ?もう夢がないんですの。

??『姉者、今度はどんな夢をおいかけるんですか!?』

もう、いい、叶わない。ひとつ、ふたつ、みっつ、数え切れないほどの夢が書かれた私の夢ノート。全て斜線が引かれた夢ノート。ただ泡沫の夢だった。

『いっそ、お金でも貯めてみよう。お金なら裏切らない!この世はマニーですの!』

冬?『お金なら、裏切らない。』

?毱『夢は、裏切る。』

『冬毱……?』

愛しの妹がそこには立っていた。

冬毱『夢なんて、持つものじゃない。』

『夢なんて』

夢を見るには資格がいる。相応の頑張りを見せるもの。はたまた才能を持つもの。そして、神に見かけられたもの。

15点の私には、見る資格も才能も神もいないんですの。

だけど冬毱、あなたは……あなたは……!

冬毱『夢を追うなんて、合理的じゃありません。』

私が、冬毱の夢を、潰したの?

『そうですの。』

『貴方ですの。』

『お前ですの。』

『お前が、潰したんですの。』

『夢を見る資格がないものが、あるものを潰したんですの。』

ごめんなさい、冬毱。

 

「夢……?」

目を開くとそこにはいつもと違う天井が広がっていた。そうだ、きな子のペンションに撮影しに来てたんだっけ。

私の日課は鏡を見ることから。Ltuberたるもの見た目には気を使っているんですの。

「……酷い顔。」

私の顔は涙でぐちゃぐちゃ、目は赤く腫れて、かつてないほどに浮腫んでいた。あんな夢を見たら、そんなことにもなるかと無理やり自分を納得させる。

「これ……メイクでどうにかなるんですの……?」

うーん、と言いながら私はポーチをカバンの中から探す。がさかざと漁っているとポーチが出てきた。ミズクラゲが描かれたポーチ。昔、最愛の妹がくれたポーチ。

「……冬毱。」

そのポーチをすっと抱きしめ、私はもう一度泣いた。




今回も読んでいただきありがとうございます。
思い切って夏美の過去シーンに冬毱を登場させてみましたがいかがでしょうか。夏美は仲間思い、家族思いを匂わせるシーンが多々あるためこんな風に罪悪感に押しつぶされてしまいそうな時もあるのではないかなと個人的に考えます。
夏美が正式に加入したら番外編なども書いていこうと思います。
次回も読んでいただけたら嬉しいです。
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