ラブライブ!スーパースター!! Create the future   作:園枝こるだ

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第8話です。夏美加入回がここまで長編になると思っていませんでした。では今回もよろしくお願いします。


第8話「鬼塚夏美」

創視点、ペンション──────

「先輩たちと、同じステップ……!?」

朝、千砂都先輩から連絡があり、スピーカーで通話を繋ぐ。要件はメイたちが行っているレッスンの内容、そして振り付けを先輩たちと同じにするということだった。

千砂都「うん、あとで振り付け送っておくから見て。」

きな子「でも……」

ときな子ちゃんが自信なさげに呟く。メイと四季も同じく自信なさげな表情を浮かべている。

千砂都「本当はプレッシャーになっちゃうからあとで相談しようと思ったんだけど、あの動画を見ておもったんだ、大丈夫かなって!」

メイ「でもっ……」

アタシたちには無理だ、と言おうとしたであろうメイの言葉をかのん先輩が遮る。

かのん「夏休みの間に頑張れば、学園祭にはきっと間に合うよ!私はそう思う!」

優しくも強く芯のある言葉、先輩たちが僕たちを信じていることが伝わってくる。

恋「ファイトです!みんなが同じレベルに達すれば、全員の自信に繋がりますし!」

四季「目標があった方が、計画は立てやすい……」

メイ「まぁな……LoveLive!で優勝目指してるんだもんな……」

メイたち3人の表情は以前硬いまま、自分たちが成長している実感はあるもののやはり2年生には追いつけてないという自覚の現れだろう。

「やれるだけやってみようよ。大事なのはキモチ、でしょ?」

3人は一瞬ぽかん、とした表情を見せるがすぐにきりっとした表情に変わる。

きな子「が、がんばりますっす!」

 

通話が終わり、いざ練習となっても先程の件が引っかかり僕達は練習を始めることが出来なかった。

きな子「動画が好評だったのはすごく嬉しいっすけど……」

メイ「ハードル上がっちまったな……」

「千砂都先輩……いきなりハードだね……」

はぁ……と4人でため息をつく。そこにしゅばっと飛び込んできたのは夏美ちゃんだった。

いつもの挨拶とともに撮影を始めているようだ。僕はカメラに映らないようにすすす、とはける。

夏美「今日もLiella!の練習風景を撮影しちゃいますの〜!」

きな子「練習まだはじまってないっすよ!」

メイ「サボってるみたいだろ。」

メイは少しムッとして夏美ちゃんに怒りを露わにする。

夏美「実際、サボってますの。」

きな子「そ、それはっ……!」

メイ「色々あったんだよ!」

夏美ちゃんの言ってることは間違いじゃないが、メイたちが反論したくなる気持ちも分かる。

その様子を見て夏美ちゃんは真剣な表情に一変する。

夏美「聞いてましたの、外から聞こえてきたので。」

四季「じゃあ……」

なんで、と四季が言う前に夏美ちゃんは話し出した。

夏美「超えるのが、夢なんでしょう?先輩たちのステージを超える、それが皆さんの夢だったはず、だったら……!」

夏美「責任は持つべきですの!!」

メイにお前言っただろ、と言わんばかりに睨みつけられた僕はすっと目を逸らす。

夏美「諦めるぐらいなら、夢なんて語って欲しくない!」

こんなに真剣な表情の夏美ちゃんを見たことがない僕らは黙って夏美ちゃんの言葉を受け止める。

夏美「動画撮影していて、思いましたの。皆さんの夢は決して実現不可能な夢ではない。」

きな子「本当に……?」

夏美ちゃんは少し目を据えて。

夏美「えぇ。それは本当に素晴らしいことですの。頑張れば手が届くかもしれない。そういう夢があるというのは……」

四季「夏美ちゃん……」

夏美ちゃんは暗い表情から明るい表情へと変わった3人を見て、もう大丈夫と悟ったようだ。

夏美「それでは、撮影再開するですの!」

そこからは千砂都先輩から送られてきた練習メニューをこなしていく。メニュー以外にも昨日までと変わった点があった。

夏美ちゃんが練習に参加していたこと。

夏美ちゃんの笑顔が増えたこと。

 

ペンション──────

きな子「創くん、お風呂大丈夫っすよ!」

僕と四季とメイで夏休みの宿題を片付けているとパジャマに着替えたきな子ちゃんが部屋まで呼びに来てくれた。

「ありがと、けど夏美ちゃんは?」

きな子「なんか、少し散歩してくるってどこか行っちゃったっす。」

こんな時間に散歩かと少し心配になりながらも僕は外にある五右衛門風呂へと向かう。

 

「きな子ちゃんわざわざありがとね、温度調節。」

きな子「いえいえ、初めての人には難しいっすから。熱くないっすか?」

きな子ちゃんは近くにあるかまどにふーふー息を吹き入れて温度調節をしてくれている。

「五右衛門風呂なんて初めて入ったよ。外でこうやって入るのもいいね。」

北海道の澄んだ空気が頬を刺すが、風呂が少し熱いぐらいでちょうど良い。何より空がとても綺麗だ。東京じゃこんなに幾つもの星が瞬いているのは見られない。

きな子「それは良かったっす!……」

きな子ちゃんは僕の方を少し見て、また目をそらす。これは男の人の体を見る罪悪感もあるのだろうが、それよりも大きな要因がある。

僕の左肩から右の胸下までにかけて大きな痣がある。父さん、母さんが殺された時一緒に自宅に放火された。その時の怪我がそのまま残ったものである。

「ごめんね、こんなもの見せちゃって。」

と僕は右手ですっと左肩を押さえる。

きな子「こちらこそごめんっす……創くん、怖かったっすよね……」

きな子ちゃんは今にも泣きそうな目で僕の方を見る。

「そう、だね……」

「けど今はみんながいるから平気だよ。」

メイ、四季と出会って、Liella!のみんなに出会って、結ヶ丘のみんなに出会って。僕の人生は明るくなった。

きな子「みんなが、いるから……」

「そ、きな子ちゃんのおかげでもあるよ、ありがとね。」

そう言うときな子ちゃんはこちらを見上げたままだばぁと涙を溢れさせる。

「わぁごめんごめん!泣かせるつもりなかったの!」

風呂からざばぁと手を出し顔の前でぶんぶんと振る。

きな子「きな子も創くんと会えてよかったっす……」

ぐすぐす、と袖で目を擦るきな子ちゃんを見て僕は少し笑みを零した。

みんなに会えてよかった。父さんの遺した結ヶ丘で僕は大切なものを見つけられた。

空に浮かぶ星がひとつ瞬いた。

 

夏美視点、ペンション外──────

「そんなにメンバーのことが気になるんですの?」

そう言って振り返るとそこにはLiella!のリーダー?なのかわからないけど、澁谷かのんが立っていた。

きな子には散歩に出てくると行って嘘をついたが、実際はこの人に少し呼び出されたからである。

かのん「そりゃそうだよ!同じくらい夏美ちゃんのことも。」

メンバーの心配はともかく部外者、どころかあなたたちを利用しようとした人物まで心配?呆れるほどのお人好し……

かのん「きな子ちゃんと話してるのちょっと聞いちゃった、ごめんね。」

きな子との話、昼間きな子たちを思わずも励ましたこと、そして私の目標の話。

「別に、大したことは話してないですの。」

この人も夢を見る資格を持った人、そんな人と私が話していいわけない。そう思い、話を切らなきゃと考えた。

「そうですの!かのん先輩にも、動画に出演してもらいますのっ!そうすれば……」

再生回数が、と思った矢先かのん先輩は話し始めた。

かのん「それよりスクールアイドルやってみない?」

予想だにしていない言葉だった。私がスクールアイドル?いつもビリで、15点の私が?

「は?」

かのん「夏美ちゃんに10人目のLiella!になってほしいんだ!」

「話の脈絡が見えませんの……」

かのん「そうかなぁ、夢がないならみんなと同じ夢、追いかけてみない?」

かのん先輩は私の横を通り過ぎ私の方をくるりと振り返る。私を見る目は澄み切っていた。夢が映る、綺麗な目。

「夢……?」

かのん「うん!もし夏美ちゃんに夢がないなら!」

夢。私から1番遠い存在。今更目指せるわけない。

「無理ですのっ!」

思わず丸め込まれそうになった。そうはいかない。この人は夢を見る資格がある人。自分と同じではないのだ。

かのん「そうかなぁ?」

「私はこれまで、たくさんの夢を見てきて、何も叶わないってわかったんですの。かのん先輩みたいな、みんなみたいな夢を見ていい人じゃないんですの。」

かのん先輩は優しい顔をして私を見ているんだろう。そちらを見ていないが雰囲気でなんとなくわかる。

かのん「私も色々挫折してきたよ。結ヶ丘の音楽科に入るっていう夢を持ってたけどそれは失敗しちゃって……」

この人も。夢に敗れたことがあるの?ならなんでまた夢を追いかけるの?疑問が頭の中を駆け回る。

かのん「でも可可ちゃんやみんなが教えてくれた。」

かのん先輩は私の前に立つ。

かのん「みんなとなら、頑張れるよって!」

1人で追いかけて、1人で諦めた。そうだと思ってた。

けど、あの子だけは私を見ていてくれた。私の大切な大切な妹。

私が変えてしまった。夢を見る資格を、持っていた者。

かのん「お互い欠けてるところや、届かないところを補い合って、一緒に夢を追いかけることができるよって!」

私は妹のことを考えていた。今、私が夢を追いかけたら、あの子はどんな顔をするだろう。どんなことを言うだろう。笑顔になる?怒る?泣く?応援してくれる?それとも批判される?

そうして考えているとかのん先輩は私の手を掴んで引っ張っていく。

かのん「来て!」

 

連れてこられたのはとある公園。小さな街灯のスポットライトが私とかのん先輩に当たる。

かのん「私を真似して。」

「なんで?」

かのん先輩は不満そうな私の顔を見て微笑んで。

かのん「いいから!」

くるりと回って腕を開く。簡単なステップだ。

呆然として見つめていると、かのん先輩もじっとこちらを見る。やらないの?と言わんばかりに。

私は無言でかのん先輩のステップを真似する。このぐらいできて当然。あの子たちのもっと難しいステップを間近で見てたんだから。

かのん「じゃあ次!」

少し難易度は上がって前へジャンプ、くるりと一回転。まるで私が手を出すのを待っているかのように手を差し伸べる。

同じようにジャンプ、一回転回る。手は伸ばさないけど。

また難易度が上がる。ターンを高速で3回。ぴしっと腕を伸ばしてポーズを決める。

いつの間にか私は悔しくなって、ひとつ息を吸って後ろに3回転……はできず土手に小さくおしりを着く。

笑って誤魔化すとかのん先輩も小さく微笑む。

かのん「どう?気持ちいいでしょ?これをみんなで息を揃えて決める。応援してくれる人の前で!」

私たちの視界の下には10色の花が植えられ、それぞれの花が咲き誇っていた。

わぁ……と思わず感嘆の声を漏らす。

かのん「そうすると、客席の人たちも心の中で一緒に踊ってくれるの。ステージ全てがひとつになる。それが……最高の瞬間……!」

すっと私の方に手が伸びる。

かのん「そんなライブをするのが、私たちの夢!」

「夢……!」

冬毱に何を言われても私は受け止める。

私が夢を叶える姿を見せる。

それが例え苦しい道のりであっても、何度挫折を繰り返しても。

冬毱。私は姉として、貴方に夢を見させますの。

 

創視点、ステージ裏──────

夏美「オ〜ニナッツ〜!あなたの心のオニサプリ!鬼塚夏美ですのーっ!今日はな〜んとっ結ヶ丘の学園祭なのですのぉ〜っ!!」

夏美ちゃんはいつもの挨拶とともにLiella!の8人をカメラに写す。

かのん「い、いやだから私はいいって……!ほら、恋ちゃん。」

恋「はい、今日は皆さん楽しんでいってくださいね。」

恋先輩は優しく語りかける。

可可「今年のライブは一段と気合い入ってマス!」

すみれ「で、オニナッツとの契約はどうなったの?」

すみれ先輩はやれやれと言った様子で腰に手を当てて夏美ちゃんに質問を投げかける。

夏美「そ、それは……」

千砂都「それは心配ないよ。だって……夏美ちゃんもLiella!なんだから。」

夏美ちゃんも8人と同じ衣装に身を包んでいた。

夏美「……ほんとに、いいの?」

きな子「まだそんなこと言ってるんすか?」

きな子ちゃんをはじめに僕たち1年生は夏美ちゃんに駆け寄る。

メイ「合宿中、あんな練習してたのに?」

四季「むしろ1番張り切っていた。」

「改めてありがとう夏美ちゃん。Liella!に入ってくれて。」

僕たち1年生はお互いに笑い合う。

可可「それでは行きマスよ〜!」

可可先輩の号令とともに僕達は円になり、いつも通りピースを前に出す。

かのん「これが、新しいLiella!。1!」

可可「2!」

すみれ「3!」

千砂都「4!」

恋「5!」

きな子「6!」

「7!」

メイ「8!」

四季「9!」

夏美「10!」

かのん「今日は思いっきり楽しもう!」

 

ヤエ「あ、創くん!お疲れ様!場所取っておいたよ。」

ヤエ先輩が隣の椅子をぽんぽんと叩く。

「ありがとうございますヤエ先輩。助かります。」

僕はヤエ先輩の隣にすっと座る。

ナナミ「今センターにいる子が最近入った子?なんかすみれちゃんから聞く限りなんか……」

ナナミ先輩は言いにくそうにうーんと言葉を濁す。

「最初は色々ありましたよ……けど、それもかのん先輩が。」

ココノ「かのんちゃんかぁ……なんかかのんちゃんに言われるとできる!大丈夫!って思えちゃうんだよね……」

ココノ先輩の言葉に他の先輩もうんうんと頷く。

「ですね、かのん先輩には不思議な力があります。人を惹きつける何かが。」

ヤエ先輩がにやりとして僕の顔を覗き込む。

ヤエ「あれ〜?もしかして……創くんかのんちゃんのこと好きなの〜?」

それを聞いて僕は瞬時に顔を赤くする。

「そ、そういうんじゃないですって!ただ……尊敬はしてます、すごく……」

ナナミ、ヤエ、ココノ「ふ〜ん?」

にやにやと先輩たちはこちらの顔を見てくる。

「ほ、ほら!ライブ!始まりますよ!」

予め録音されていたライブ開始を知らせるアナウンスが流れる。

僕の設営したステージが次々とライトアップされていく。

 

ライブ後──────

夏美「はぁ〜……」

夏美ちゃんは上を見上げて先程のステージに思いを馳せているみたいだ。

かのん「どうだった?」

夏美「ですの……」

9人「え?」

夏美ちゃんの声から漏れるように出た声を聞き取ることは出来ず、9人で聞き返した。

夏美「最高だった……ですの……」

僕たち1年生は顔を見合わせてふふと笑い合う。

夏美「見つけたかも、私の……夢!!」

 

ライブ打ち上げ会場に向かうまで──────

かのん「私忘れ物しちゃったから、先行ってて!」

「あ、自分も……工具置いてきちゃって。」

そう言って残りの8人は打ち上げ会場であるレストランに先に向かっていった。

かのん「ありがとね、ライブ会場のこと色々やってくれて。」

かのん先輩はにこっと僕に笑いかけてくれる。

『あれ〜?もしかして……創くんかのんちゃんのこと好きなの〜?』ヤエ先輩の言葉が僕の頭をはね回る。

「うぅ〜……はい。全然僕でよければ。」

かのん「えっうぅ〜って何!?大丈夫!?」

かのん先輩は心配して僕の顔をのぞき込む。ヤエ先輩のせいで、今までより余計に意識してしまう。

「な、なんでもないです、大丈夫です。」

そう……?とかのん先輩は不思議そうにこちらを見ている。

「こちらこそ北海道までわざわざありがとうございます。差し入れ助かりました。」

かのん先輩は僕ら1年生の様子が気になってわざわざ北海道まで見に来てくれたのだ。

かのん「そ、そんな……邪魔じゃなかった……?」

かのん先輩は頭をかきながらあはは……と笑う。

「ぜ、全然!邪魔なんかじゃないです!むしろ……かのん先輩と会えて嬉しかったです……」

かのん先輩は必死に喋る僕を見てふふと笑う。

かのん「ありがとうね。私創くんと会えてよかった。」

「……僕もです。かのん先輩と会えてよかったです。」

2人の間が微妙な空気に包まれる。

この時耳を赤くしているのは僕だけだと思っていた。




読んでいただきありがとうございます。今回はかなり加筆が多くなり想像の倍ほどのボリュームになってしまいました。
夏美の夢に対する姿勢や気持ちはこんな感じだったのだはないかなと考えながら書かせていただきました。
10人になったLiella!の活動、ぜひ今後も見ていただけると嬉しいです。
次回もよろしくどうぞ。
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