RE Take of EVANGELION 外伝   作:Air1204

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第肆話 鳴らない、電話 ①

スヤスヤと寝息を立てて隣で眠っているミサトさん。

何かをした訳では無い。ただ二人で抱きしめ合って寝ただけ。

冷房の効いた部屋で二人で毛布に包まり眠る。

体温を感じることが出来て安心する。

…寝てるし良いよね?

その胸に顔を埋めてみる。うおっ…デッケ…こんなに柔らかいのか…。汗ばんだ谷間で深呼吸をしてみる。

…汗の匂いは汗の匂いだ。でもなんかいい匂いに感じてしまう。

吸ったら吐く。だが密着した乳は僕の鼻腔を塞ぐ。無理に鼻から息を出すとぷぷぷぷと塞いでは離れ塞いでは離れを繰り返しおおよそ乳から出る音ではない音がしてなんだかおかしくなってしまう。

 

「ぷっくくく…。」

 

バレないよう声を押え笑う。

なんだか面白くて2、3度繰り返していると…。

 

「…シーンちゃぁん?人が寝てるのをいい事に何してんのかなぁ?」

 

げ、いつから起きてた…?とにかく黙っていよう。

起きている人の乳で遊んでたなんて最低だからね…。

 

「すぅ…。ぷぴぴぴ…。すぅ…ぷぴぴぴ…。ぷっくくく…。」

 

「ほらぁ…やっぱり起きてた!」

 

そりゃずるい。少しは呼吸をしやすいように鼻を離したのに自分で押付けてくるもんだからさっきと同じく奇っ怪な音がひびいて笑っちゃったじゃないか!!

 

「あの…幻滅しました…?」

 

「んな訳。そんなことされたの初めてだから私もおかしくって…。ほら、大きいから触らせろだとか揉ませろだとかは多いんだけどね?大きいからって乳首摘んでプルプル震わせる人は居たけど。」

 

いやそいつの方がだいぶ頭おかしいだろ。

というかまぁやることやってんな!?

コホン…。でもまぁ仕方ない、性欲というのは溜まるものである。

 

「…狡い。」

 

わざとらしく反対側を向いて向かい合った形から同じ方向を見る形に変わる。

 

「えー…あれちょっと痛いのよ…?シンちゃん…やりたいの…?」

 

「…無理です。暴発する。」

 

「ぷっくく…あーおっかし…。全然、手出さないんだもんびっくりしたわよ。」

 

「…僕なりのこだわりです。好きになって貰うまでそういうことはしないって決めてますから。」

 

「…ホンットに変なとこ純情なのね…。でも本当にえっちだわ…。貴方、わざっとそっち側向いたわよね?」

 

「…なぜバレるんですかね?」

 

「声色がムスッとしてないから。」

 

僕のこと理解するのが早すぎません?

でも、なんか分かり合えた気がして良かった。

うん…良かったのか…?まぁいいか…。

 

「朝ごはん作りますよ。二日酔いじゃないから食べれますよね?」

 

「うん〜食べるぅ〜。」

 

全く、どっちが子供だか全然分からない。後でWikipediaで保護者の定義を調べてみよう…。

 

 

時計が指し示すのは7時半。うーん…結構早くに目が覚めたな…。

ミサトさんも深酒してないみたいだし…。

意外と重いものでもいいのかもしれない。

うん、パンケーキでも食べたいな。

ちょーっと凝った物にしよう。

持ってきてよかったケーキ型。

フワッフワなやつを作ろう。高さのあるプルプルなやつ。

 

「バターは多めで、生クリームは控えめに…。なんならバニラアイスでも乗せてしまおうか…。」

 

元より、料理は好きだった。一人で食材を見てあれこれと考えていられる時間が好きだった。

人に食べてもらうようになってからまた、その面白さが増えた。

この人はどんな味が好きなんだろう…逆に嫌いな味は?等々

このパンケーキはアスカが食べたいと言い出したのが1番最初だった。最初はただのパンケーキから始まって今の形に落ち着いた。

早々にタネの準備を終えて焼き始める。溶けだしたバターの香りが部屋に充満する。

コーヒーマシンを動かす。

…あ。と、ようやくここで思い出す。

昨日風呂に入り忘れた事。

臭くなかっただろうか…?…まあいいや…。とりあえず焼いてしまおう。

 

「…。これ…買ってきてないわよね?」

 

「買ってきてたらとっくに萎んでますね。」

 

「昨日に引き続きこのクオリティとは…。頂きます…。」

 

カチャカチャと響くカトラリーの音。一口切り分け口に運ぶ。

その仕草は普段のミサトさんからは考えられないような丁寧な仕草で…。

もぐもぐと咀嚼する音と流したテレビの音だけがリビングに響く。

ゴクリと咀嚼していたものを飲み下し大きく溜息を着く。

 

「っはぁ…。シンちゃん。」

 

どうやら機嫌は悪くないみたいだ。それは呼び方で分かる。

 

「お店でも出した方が良いんじゃない?エヴァパイロットやめて…。」

 

「え?」

 

「料理向いてるわよ。ホントに…悔しいけどね…?」

 

「すみません…。」

 

「良いのよ。誇りなさい、貴方にしか出来ない強みよ。」

 

何故だか分からないけど真剣な眼差しのミサトさんは僕を見つめたままにもう一度ソレを口に運んだ。

そして、コーヒーを口に含む。

 

「うん。やっぱりこっちも美味しい。インスタントしか飲まない私でも分かるわ。」

 

「そうですか…。でもそういう仕事をしたいかと言われても…別にしたいとは思わないんですよね。」

 

一心不乱にそれを食べるミサトさんに自分の皿も渡してコーヒーを啜る。喜んでくれているなら何よりだ。

 

「でも、本当の話、使徒を全て倒して、貴方がNERVに居る必要が無くなった未来ならそういう夢を持っても良いのかもしれないわね。」

 

痛い所を小突かれてしまう。どう頑張ってもこの世界のヒトに未来は無い。

それはきっと僕がどうにか人類補完計画を阻止したとしても、第2、第3の父さんのような人が生まれてもおかしくないから。

 

「…考えておきます。それより、僕は貴方と一緒に居られる近い未来の方が大切ですからね。シャワー浴びてきます。」

 

「なによ…褒めたのに…。でもうれしい事言ってくれるじゃない。」

 

そう言って少し恥ずかしそうに頬を掻いてコーヒーを啜るミサトさんを尻目に脱衣所に入る。

シャワーを浴びよう、そう思って浴室の扉を開いた僕は朝風呂最中のペンペンとこの世界で初めて出会った。

 

「…。」

 

「…?」

 

「…クェェァ!!」

 

「うわ!?ちょ!?」

 

数刻の沈黙。そして頭を傾げた後に…ミサトさんには付いていないものを確認した温泉ペンギンは烈火の如く怒り暴れだし僕の股間目掛けて啄み攻撃を始めたのだ。

 

「痛ッ!痛たた…!そこはダメだって!ダメだよ!」

 

「あぁ…その子は温泉ペンギンのペンペン…もう1人の同居人よ。仲良くしてあげ…。」

 

啄まれ既に赤くなった僕の息子。

それを避けるためにぴょんぴょんと跳ね回る姿はほんとうに滑稽だったんだと思う…。うん。

それを見て固まってしまったミサトさん。

 

「ちょっ!辞めてって!辞めてよ!!痛いから!!ミサトさん何か言ってよ!!早く止め…。」

 

なんでそんなに顔を真っ赤にしてるんですか?

前なんて早く前隠した方がいいんじゃない…?みたいに素っ気なかったよね!?とまぁ、そんなところでようやく気づく。

アレ…?僕のこれ…こんなに大きかったか…?

普段、意識して見ることのないコレをようやく視認した僕はようやくその重さ。あ、物理的なね?に気付かされることになったのだった。

そうして、ようやく攻撃された意味を理解できた。

餌だと思われたのだ。魚肉ソーセージが大好きなのを思い出してそう理解できた。そりゃあ餌だと思うね!?こんだけ大きいんだもん!!

よって、餌ではないと認識したペンペンは自室にさっさと帰る。

野郎…クソペンギンめ…。流石にごめんくらいしても良いだろ…。

 

「え、あ、ああ、ごめんなさい…。そんなにマジマジと見るつもりはなかったの!!ほんとにごめんないっ。」

 

顔を背けたミサトさんは耳まで真っ赤でしたとさ!

まぁちょっとは恥ずかしい僕もそそくさと脱衣所のアコーディオンカーテンを閉めた。

 

「…最近の子ってあんなに大きいものぶら下げてるの…?あんなのでされたら…こっちの身が…!」

 

なんて、僕に聞こえるか聞こえないかの声量で言っていた為、空耳だと思って無視することにした。

 

 

所変わってNERV本部、赤木リツコは嬉々としてその資料に目を通していた。

開かれた資料は碇シンジのもの、先の戦闘は明らかに戦い慣れた者の戦闘の仕方、だからこそその少年の経歴に興味を持ったのだ。

E計画最高責任者として左官クラスと同じ対応の彼女にはある種越権と言われても差し支えないほどの権力を有している。

それは、碇ゲンドウの お 気 に い り と言えば伝わるだろうか。

計器や検査結果が示すのはその辺の少年と変わらない身体能力程度しか無いこと。筋的損傷のあとも見られず、格闘技経験者特有の骨の変形も見られない。一般的な少年。と言うのがMAGIの導き出した答えであった。

であれ、

映像をMAGIを介せば戦闘経験ありとコロコロとその答えが変わる。

極めつけに、彼女が開発した自白剤。コレへの完全耐性。

にわかに信じ難いがソレを常人に投与する13倍の量を用いても少し酩酊した様な状態になるだけでその態度は依然として変わらない…と。

自慢して語れることでは無いが、この薬剤の開発にどれだけの諜報部の人間が犠牲になったかと。

問題の碇シンジの父親、碇ゲンドウでさえ彼女に1杯食わされて小一時間強は物言わぬ肉人形になったとこの身を持って経験している彼女は、何が少年のその肉体的強度に起因しているのかとても学者として興味があったのだ。

考えられるとすれば、母親である碇ユイが原因か。

なにせ、物事もろくに理解出来ないたかだか4.5歳の頃の記憶を有しているのだ。故に自身にあった時の挨拶はお久しぶりですときたもんだ。

しかも、少年は来る途中に見たであろうアレと自分が戦わねばならない事を説明もなく理解して居たのだから。

学者としての見解は肉体的経験ではなく、精神的な経験と見ていた。何より一挙手一投が冷静すぎたのだ。取り乱したのは使徒ではなく父を見た時だったからだ。

初号機を見て驚かない、これは理由付けが出来るから納得できる。

だが使徒は?NERVに来るまでの道では?あのミサトが迷わずゲージたどり着けるか?どれもこれも見た事があるでは説明がつかない。

故に学者としてシンジへ興味があったのだ。

 

だがそれだけが彼女をこうまでさせるのに駆り立てた訳ではなかった、これまでの話はE計画責任者としての興味、一学者としての興味の話。そしてここからは女としての興味の話である。

先の話から、赤木リツコは碇ゲンドウの愛人であるが特段上手いとか優しいとかそういう感情ではなかった。むしろゲンドウの ソ レ はぶっちゃけ粗末な部類なのだが…。

だが、赤木リツコ、この女は愛人の息子にさえも興味を示したのだ。

自身の権力を悪用して、プラグスーツ内部の温度変化を見た。

その結果、ゲンドウなぞ目ではない程の大きさであることが確認されたのだ。

ミサトにああ言ってしまった手前自分が手を出すのは少々躊躇われたが、凶悪なそれを1度目に見て見たいと邪な欲求が彼女の中に生まれてしまったようだ。

その邪な気持ちをゲンドウで発散したところやはり物足りぬようで悶々とただ仕事をしている振りをしながら碇シンジ(3rdチルドレン)のプロフィールを見るしか無かったのだ。

 

そして、渦中のゲンドウはと言うと。

結局のところ危なげも無く勝ってしまった初号機の戦果と息子をそれに乗せたということが気に食わないSEELEの連中による人類補完委員会の会議という名目で尋問を受けていた。

 

「此度の第3使徒の殲滅ご苦労であった。」

 

「…ありがとうございます。」

 

とはいえ、被害が出ていないということはそれだけ費用が嵩まないという事でもある。

ただでさえ小国であれば買収できてしまうほどのコストがかかるエヴァンゲリオンを2機も保有し、剰えその1機は事故による凍結によってココから修繕やら再調整やら大幅に予算が掛かるのは目に見えている。

だからこそ、敢えてSEELEは褒めと労いから話を始めることにした。

元より、人の善意に慣れていないゲンドウは悪意を受け流すことには長けているものの、善意を素直に受け取るという事がどうしてもできないのである。

だからこその、嫌味も含めた労いだったのである。

 

「だが、自分の息子にあれを与えたとなると話は別だ。」

 

「左様。何より訓練もしていないズブな素人があの様に街に被害を出さずに勝つなど不可能に近いのではないか?」

 

「…原因は現在調査中です。」

 

面白くない。自分の思い通りに話が進まない、何よりシンジがあの様に取り乱すことは想定内であった。だが、まさか、まさか人類補完計画やユイが消えた理由を覚えているなど予想だにして居なかったのだ。

それにどこまでNERVの根幹に関わることを知っているのかも定かではない上にそれを説明できないのだ。

吐かせようにも吐かせられない。ただの子供だと自分の息子は歩兵にしか過ぎぬと思っていた。だが蓋を開けてみたら上から押さえつけることも叶わぬ化け物だったのだから。

 

「そして、碇よ…息子が大層お前に対して御冠らしいな。」

 

ギクッと、普段表情を崩さないゲンドウが驚いたような表情を浮かべたのをSEELEの面々は見逃さなかった。

ニヤリと不敵な笑みを浮かべた面々は口々にゲンドウを攻め始めたのだ。

 

「碇 何やらお前の息子は人類補完計画のことを知っていると言う。」

 

何故それをと言わんばかりの表情を浮かべたため余計に面白くなった役員は。

 

「由々しき事態だな。我々以外、しかもそれの関係者の子供にバレているとは…。」

 

「左様、ましてや、あの碇ユイの息子でもある。我々にとっても無碍にできる存在ではないのだよ。」

 

「…重々承知しています。」

 

報告書通りの内気な少年のままならばどれほど良かったか。

こうして議題に上がることも無かったはずなのにと奥歯を噛み締める。苦悶に満ちたそのサングラスの奥ではシンジに対する怒りと憎しみが燃える。

おのれシンジ…と。だが、初号機は確実にシンジで無ければ覚醒する事も概括の段階に入ることもない。

そして何よりもあの内気な瞳の奥にはゲンドウに対する復讐心

が見え隠れしている。

そして何よりも異常なのはあの強さ。イメージだけで動くエヴァをあれだけ自由に駆り立て動き回る様を目の当たりにしてしまったのだから当然のことでもある。

 

「だが、当然の報いでもある。10年も息子との関わりを否定していればグレても仕方ない。」

 

「左様。息子との関わり方を考えた方がいいな。」

 

「もう良い。今後の活躍も期待しているぞ。」

 

「…我々はゼーレの仰せのままに…。」

 

酷く憔悴しきった碇ゲンドウ。その噛み締めた歯茎からは血が滲んでいる。

 

「…無様なものだな…。碇。」

 

「…。」

 

「黙っていては何も分からぬよ。如何せん、サードチルドレン上手く使う他あるまいな…。何がともあれ我々よりも使徒については詳しそうだからな…。」

 

「あぁ…。」

 

何がともあれ、シンジとは上手く付き合う他ないと気付いたゲンドウであるが。そのような見え透いた嘘に乗じるような息子ではない。

兎にも角、手を取り合うことは出来ずとも、睨み合うではなく同じ方角くらいは向けるはずだと思うことに決めた碇ゲンドウであった。

 

 

転入手続きも終わり、転校手続きもミサトさんが済ませて暮れていた為、休み明け早々に学校に行くことになったのだった。

嫌な思い出も多い学校だが、被害は最小限に食い止めたはず。

きっとトウジの妹も怪我をしていないはずだ…。この時まではそう思っていた。

 

「碇、シンジです。よろしく!」

 

当たり障りのないように愛想笑いを浮かべながら挨拶をする。

 

「ねえねぇ!碇くん!碇くんはなんでこんな時に転校してきたの??」

 

一番聞かれたくないワード1位だと思う。上手い言い訳を考えておけばよかったかな…。

 

「それは…親の仕事の都合っていうか…。」

 

 

「えー!?第三新東京市で??人がどんどん減ってるって言うのに…?という事は…NERVの関係者なの!?」

 

悪手だったね…。そりゃあそうなるか…。

どうしたもんか…。トウジの奴も来てないみたいだし…。

何より、NERVってワードにピクリと反応した奥のメガネをかけてる奴が1番面倒くさいんだよなぁ…。

ほら、言わんこっちゃない…こっちに近づいてきた。

 

「まあまあ諸君。碇くんも困っているではないか…。寄ってたかって質問攻めは転校初日、慣れない中疲れてしまう。だろう?」

 

…ケンスケお前はそんなに良い奴だったか?

と思っていたのも束の間に、ケンスケの手からポロリと丸められたメモ用紙が出てくる。

拾えと?

くしゃくしゃに丸められたそれを開く。

 

俺の父さんもNERVの関係者さ。

相田ケンスケって言うんだ。宜しくな!

ところで碇って…。あの総司令の息子ってことだよな!?

すげー奴だな!!あ、誰にも言わないから安心してくれ!

 

と。うん。めっちゃ良い奴じゃん。

 

「ふぅ…。巻いたな…。」

 

「あの…ありがとう…相田くん…?」

 

「良いってことよ!宜しくな碇!」

 

がっと握手をする。まぁ仲良くできるのはわかっているけどさ。にしてもなーんか裏がある気がするんだよね…。

それに…気になることはもうひとつある。

 

「あの…相田くん…?あそこの空いてる席って…。」

 

「あぁ、あそこは鈴原トウジって奴がいるんだけどソイツの妹がこの間のドンパチのせいで怪我ぁしちゃったみたいでさ。」

 

…はい?あの戦い方でどうすれば負傷者が出る!?

NERV側からも死傷者数は0と…。

隠蔽されてる…?

 

「…お前まさか…。」

 

ケンスケが何かを言いかけた途端に教室に入ってきたのはトウジだった。

その顔は酷く曇り、何かを恨んでいるようにさえ思える。

 

「よぉ!トウジ!妹さんの容態は?」

 

「…なんやケンスケぇ…。まぁ足ぃ怪我しただけやからの。そこ以外は元気や…。?ほんで…お前誰や。」

 

「え…あ…。」

 

「転校生だよ。」

 

「ほーん…。じゃあなんでこいつはバツの悪そうな顔しとるんや…?」

 

「…。」

 

「…転校生面ァ貸せや。」

 

…。確かに売られた訳では無いですけんど…。どうにかなりませんかねぇ…。

 

「ッ!」

 

何度殴らても痛いんだよね…トウジの拳って…。

でもまぁ、訓練の成果じゃないけど、受け方って有るんだなって思った。

それこそ今世での訓練経験は少ないにしても前世での知識というのは活きるものである。

倒れることも無くほぼひとつで受けてしまったためか気に食わないトウジがもう1発、もう1発と。

 

「お前んせいでわしの妹がケガぁしたんじゃ。ワシはおまえを殴らなアカンねや…すまんな転校生。」

 

…うん。まさか怪我してるだなんて思いもしなかった。

でも何発もはやりすぎたとは思うよ?

 

「……。」

 

 

「なんやその目ぇは…。文句でもあるんかいな。」

 

「…文句なんてないよ。僕が怪我をさせてしまったのだから。謝るよ。ごめん。」

 

「なんやえらい素直やの…。せやかてワシはお前ん事を許すことは出来ん。たかだか2発で気が済むわけないやろ。」

 

「2発までは受けるよ。でもそれ以上は、僕だって嫌だ。」

 

キッと睨みをきかす。だが、それに動じるトウジではない。

 

「言うてくれるな!転校生!怪我した妹はこんなんじゃすまんのや!!」

 

もう一度振りかぶられたその拳を掴む。

ぐぐぐとその拳をおろして睨む。

トウジの気持ちも分からないわけではない。でも、僕だって痛い思いを苦しい思いをしながらもエヴァに乗っている。それは理解してもらわないと僕が困る。

 

「…鈴原くん。僕だって初めての戦いだった。周りにそこまで気も配れなかったんだよ…。」

 

「んなもんどうでもええわ!それでのうのうと普通の顔して生きとるお前が気に食わんのや!」

 

「…。NERVからの報告で僕は死傷者は0だって聞いたんだよ。だから安心してた…。」

 

「…関係あらへん。お前がしたことはした事や。」

 

「ごめん。謝るよ。あんなのが上に立つ組織だからそれぐらい隠蔽するのは簡単なことだって思えばよかったんだ。」

 

「るさいわ!ボケ!面と向かってそんな顔で謝られたらワシはどうせいっちゅう…。」

 

うーうーと鳴り響く緊急避難警報のサイレン。

蟠りも忠告も出来ぬままに第4の使徒シャムシエルがこの街に攻めてきた。

呆然とする僕の頬をもう1発殴り倒したトウジはズカズカと校舎へと戻っていく。その去り際に…。

 

「こんなとこん居ってワシまで怪我ぁさせられたら溜まったもんやないからの。行くで…ケンスケ。」

 

「…悪いな、碇…。カッカすると止まれなくなっちゃうんだよ…アイツも…。行くんだろ?頑張れよ。」

 

…最悪だ…。




遅くなりました。
1話丸々書いてから分けての投稿を心掛けているので、多少遅れま。
引き続きよろしくお願いします。
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