デジタルモンスター、デジモン。デジタルワールドと呼ばれているコンピューターネットワーク上にある電脳空間に生息する電子生命体の総称だ。
デジモン達はデジタルな存在。これまでの人間世界では接触することはおろか、観測する事すら出来ずに互いが互いを認識出来ない。それが当たり前だった。
しかし人類の急速とも言える電子機器の発達により、その『当たり前』が変わりつつあろうとしていた。
人間世界を観測する事に成功した悪のデジモン、デビモンは人間世界を掌握しようと動き出した。
そんな世界の均衡を守るべく、デジタルワールドのメインサーバーで神とも呼べる存在であるホメオスタシスは人間の子供達から『選ばれし子供達』をデジタルワールドに召喚し、パートナーとなったデジモン達とその危機に立ち向かうよう要請した。
選ばれし子供達は様々な出会いと別れ、そして成長の冒険をして、デビモンという危機を乗り越えたのだった。
『人間世界を狙う脅威はデビモンだけではない。君達選ばれし子供達はパートナーデジモンと共に人間世界へと戻って、これから遅いくるであろう脅威に備えてほしい』
デビモンを倒した後、ホメオスタシスは選ばれし子供達にさらなる成長脅威に備えるべく人間世界に戻ってほしいことを伝えて人間世界へのゲートを開く。
「ゲームみたいに敵のボスを倒したら、ハイお別れって展開じゃなくて良かったよ。プテロモン」
「今後も清磨殿と一緒で小生は嬉しいであります!」
4人の選ばれし子供の1ペア。神楽坂清磨とコマンドラモンは今後も一緒にいられる事に喜ぶ。
「ねぇ、エリザモン。まだ私の愛、足りてないよね?」
「そうね、デジモンも愛も同じ。進化するものよ」
選ばれし子供の紅一点、夜見島永流とエリザモンは愛を語る。
「あれ?宮春コンビは?」
「ミヤハル達ならもうゲートを潜って人間世界に行ったぜ」
「アイツ、大丈夫かな?アイツの家って名家だし、デジモンを受け入れて貰えないかも」
先んじて人間世界に行ってしまったコンビを心配したのは土御門大知とブイモンのペア。選ばれし子供達はこれからの事に期待と不安を抱きながらもパートナーデジモンと共に人間世界へと戻っていくのだった。
選ばれし子供達が人間世界に帰還してはや6ヶ月。彼らの冒険は3ヶ月もの長旅だったはずだがデジタルワールドと人間世界では時間の流れが異なるようで、3日間行方不明となっていた事になっていた。とはいえ12歳から14歳程度の少年少女達が3日も行方不明になるのは当然事件としてニュースとなり、警察も彼らに聴取やデジモン達も1度は研究機関送りとなったが、名家とされる土御門家と勘解由小路家の干渉で早々に打ち切られた。
世間的にはデジモンの存在は非公表とされることとなってはいるものの、選ばれし子供達の帰還を期に度々それらしき存在の目撃情報が日に日に増え始め、人々はそれを怪異やUMA、SCPなどとして恐れ語り草にした。
そんな人知を越えた存在を祓うことを今も尚生業とする勘解由小路家は、忙しくなったのか勘解由小路宮春と連絡が取れなくなった。
「今日も宮春と会えなかったか〜」
宮春と同じ電信中学校に通う大知は帰り際に学校で彼と会えなかった事を残念だったと独り言で愚痴っているとブイモンが家の前で待っていた。
「大知〜!」
「ブイモン!?え?外に出ていいのかよ!?」
土御門家の者はブイモンの事を認知している。だからこそ周囲を驚かせないためにブイモンを極力家から出さないようにしていたのだが、何故かブイモンは外に出ていた。
「うん!この近所なら最近毎日掃除したりして見知った顔になってるから大丈夫だぜ」
「俺が学校に行ってる間にそんな事をしてたのか」
「君、土御門大知君だね」
「少しお時間いいかな?」
学校に行ってた間のブイモンの行動に驚いた大知。するとそのタイミングで黒いスーツの男女に声をかけられた。
「はい。そうですけど、貴方達は?」
「自分は電子超常犯罪対策室01課の衛宮淳一。階級は警視だ」
「私も同じく対策室01課の三柳千晴です!階級は警部補!」
「警視に警部補。警察の方が何かご用ですか?」
大知は警察が尋ねてきた事に内心では驚きつつも、それを表に出さないまま会話をする。
「最近、人間の仕業や自然現象では起こり得ない事件が頻発している事は知ってるかい?」
「まあ、ニュース程度には」
「我々はそれを電子生命体、デジモンが関与しているものと考えて、警視庁本部は我々、電子超常犯罪対策室01課を設立したんだ」
警察が、もといただの人間がデジモンに対処するのは難しい。デジモンの世代が上がれば上がるほどその難易度が上がる。その事を踏まえて警察が大知は声をかけてきた理由を考えた。
「勧誘、いえ、協力要請と考えた方がいいですかね」
「話が早くて助かる」
どうやら本当に協力要請のようだ。
「ところで先ほどから君の隣にいるデジモンは?」
「オレ、ブイモン!よろしくな!」
【ブイモン】
【成長期】【小竜型】【フリー種】
【デジタルワールドの創世記に繁栄した小竜族の生き残りで、成長期にしては珍しく飛び道具技を持ちません】
【得意技は両腕をグルグル回して殴るブンブンパンチ】
【必殺技は強烈な頭突きのブイモンヘッド】
ブイモンが自己紹介をすると、デジタル携帯端末『デジヴァイス』がブイモンの情報を解説した。
「ブイモン君って言うのね。よろしくね」
「オウ!よろしくなチハル!」
「やはり君もその端末を持っているのだな」
「俺も・・・?」
「いや、君の友達にも声をかけたのだが、君の返答次第で決めると言われてしまってね。それで君は協力してくれるだろうか?」
偶然だが自分が最後に声をかけられたと理解した大知は返答を迫られる。
「家はこういった事への協力を断ると思いますが、俺個人としては協力したいと考えます」
それがパートナーデジモンとともに戻ってきた自分達のやるべき事だと考えた大知は協力を承諾する。
「感謝する」
淳一が感謝を言葉にした直後、彼のもとに電話がかかってくる。
「失礼。何かあったのか?・・・承知した」
「室長、事件ですか?」
「あぁ、巨大な赤いクワガタのような怪物が暴れていると通報があった」
「赤いクワガタ。・・・あいつか」
少ない情報ながら話の怪物がどんな相手か見当をつけていた大知はブイモンは2人の乗ってきた車に乗り、現場へと向かってみると、大知の予想通りのデジモンが暴れていた。
「やっぱりクワガーモンか」
【クワガーモン】
【成熟期】【昆虫型】【ウイルス種】
【昆虫由来の硬い装甲と怪力、一度挟んだ相手をダウンするまで離さない凶暴な性格です】
【得意技は大顎で2つに敵を切断するパワーギロチン】
【必殺技は大顎での切断技シザーアームズ】
クワガーモンに気付くと同時にデジヴァイスがクワガーモンの解析をする。
「わ、分からないけど君達は下がって!」
淳一と千春は拳銃を構えてクワガーモン目掛けて発砲するも、クワガーモンの硬い装甲は銃弾を容易く弾いた。
「やっぱり普通の拳銃じゃクワガーモンの装甲には通用しないか」
「ならいったいどうやって対処したら・・・」
「早速俺らの出番かな。ブイモン!デジメンタル進化だ!」
「オウ!」
大知はデジヴァイスの画面を操作して『勇気のデジメンタル』を選択し、そのデータの光をブイモンに送る。
「ブイモン!アーマー進化!」
ブイモンはデータの光に包まれ、その姿を赤いアーマーを纏った竜人となった。
「フレイドラモン!」
【フレイドラモン】
【アーマー体】【竜人型】【フリー種】
【ブイモンが勇気のデジメンタルで進化した竜人型デジモンです】
【得意技は爪を振るって攻撃するクローエクスプレス。炎を纏ったパンチのナックルファイヤ】
【必殺技は炎を身体に纏って突進するファイヤロケット】
デジヴァイスはこの人間世界で初めて進化したからかクワガーモンと同じく自動でフレイドラモンの解説をすると、フレイドラモンはクワガーモンに飛びかかる。
「クローエクスプレス!」
フレイドラモンは得意技のクローエクスプレスを振るうと、銃弾をも弾く硬い装甲のクワガーモンは怯んだ反応を示す。
「ジャブでそんなに怯むなんて情けないぜ」
クローエクスプレスはジャブだと言い切ったフレイドラモンは続けて両手に炎を纏う。
「ナックルファイヤ!」
燃え盛る炎のパンチを受けたクワガーモンはその場に倒れ込むとフレイドラモンは拍子抜けしたかのような反応をした。
「本当にこの程度かよ。拍子抜けだぜ」
勝利したと戦闘体勢を解こうとするフレイドラモン。するとクワガーモンがピクリと動き出す。そしてクワガーモンはフレイドラモンではなく、デジモンより弱いと判断した大知達に襲いかかる。
「電子陰陽術、火遁。メガフレイム」
大知がそう告げた瞬間、デジヴァイスから強烈な火球が放たれてクワガーモンに命中する。
電子陰陽術。それは代々陰陽師の家系である土御門に生まれた大知がデジタルワールドで生き残るためにプログラムとして組み上げた陰陽術をデジモンの技を再現するという形に仕上げた陰陽技術だ。
「やれやれ。油断大敵だぞフレイドラモン」
「ごめん大知」
「大知君。今のはいったい?」
「デジタルワールドで生き残るために、俺の陰陽術を電子コードにしてデジヴァイスに組み込んだ電子陰陽術です。とはいえ現時点じゃ成熟期クラスの威力再現が限界ですけど」
電子陰陽術はまだ洗練されたものではなく、成熟期クラスの技の再現までと大知は説明したが、そもそもデジモンの『進化』の概念を理解していない淳一と千春にはそもそも何がどうなっているのか分からないままだった。
「大知!あいつまだ動くぞ!」
「加減してない炎の攻撃をこれだけ受けてまだ動けるか。中々タフだな」
フレイドラモンのナックルファイヤだけではなく、実際のグレイモンではないとはいえ、電子陰陽術で再現されたメガフレイムまで受けてもまだ動く気力があるクワガーモンをタフだと評価した大知は周囲を見渡して被害を確認する。
「クワガーモンにやられた場所は電柱に家の屋根。これだけじゃ、アイツがタフな理由には繋がらないな」
タフな事にも理由があるのではと考えた大知だったが、周囲を確認しても、その手がかりになりそうなものはなかった。
「ただの偶然なのか。ゲートを潜ってこっちの世界で活動できる個体に条件があるのか。気になる事はあるけど・・・これ以上被害を増やす訳にはいかないからそろそろ決着をつけよう。フレイドラモン!」
考えても今ここで出てくる答えではないと切り替えた大知はフレイドラモンにデジヴァイスを向ける。それは彼らにとって勝負を決めるという合図のようで、フレイドラモンは必殺技のタメに入った。
「ファイヤロケット!」
炎を纏ってロケットのような勢いで体当たりをする必殺技のファイヤロケットを放ったフレイドラモンはそのままクワガーモンにぶつかる。
その一撃で力尽きたクワガーモンは倒れ込むとデータが散り散りになり、その場にはデジモンの卵であるデジタマが残った。
「デジタルワールドだとデジタマはブラックテイルモンが回収しに来てたけど、こっちの世界までは回収に来れないよな」
大知は目の前のデジタマをどうしようかと悩んでいると、淳一が声をかけてくる。
「デジモンは倒されると卵となるのだな」
「はい。デジタルワールドなら回収されて、然るべき場所で再び産まれるんですけど・・・」
「この世界では回収されないという事だな」
淳一の言葉に大知は頷く。すると淳一はしばし考えてから一言。
「ならばデジタマは自分達電子超常犯罪対策室で預かろう」
「それは助かりますけど、本当に大丈夫なんですか?研究室送りだったり、孵化した場合の対処だったり・・」
大知は研究材料にされてしまわないか、そうでなくとも孵化した場合の対応などを心配すると、淳一は答える。
「対策室の許可なく関連機関がデジモンの研究をするのは禁止となっているので研究室送りに関しては絶対とは言い切れないが問題ない。だが孵化した場合となると話が変わってくるな。ベビーシッターや飼育員を要請すべきだろうか?」
「研究室送りでないなら、後の対応は任せます」
「大知、そろそろ帰ろうぜ」
フレイドラモンはブイモンへと戻ると、淳一と千晴はその事にも驚く。
「デジモンは退化も出来るのか」
「条件付きの進化だったり、力を使い果たした場合はですね。年月をかけて成長進化したのは基本的には退化しません」
進化退化の説明に納得した2人は大知とブイモンを家に送り届け、大知の家族に大知を協力者として迎える事に関しての説得に骨を折るのだった。
次回「愛の進化 ディメトロモン」