警視庁本部。警視である淳一は上層部に大知から教わったデジモンに関する情報を説明していた。
「デジタルモンスター。通称デジモンは6段階の世代に段階分けされています。」
プロジェクションマッピングにはデジモンの進化段階が映し出され、その映像に解説を入れながら淳一は説明する。
「まずは警戒レベル1の幼年期Ⅰ。これはデジタマから孵化したばかりのデジモンの姿であり、戦闘力はほとんどないとの事です」
戦闘方法には泡や体当たりと映像に記載しているが戦闘力がほとんどないのは事実だ。
「次にレベル2の幼年期Ⅱ。孵化してからしばらく時間が経過した姿でここから、少しですが戦闘力が上がっていきます」
攻撃に酸の泡と記載されていて、ここから上層部の人間達がザワザワとし始める。
「そしてレベル3成長期。子供達のデジモン達が基本としているのはこの段階です。我々警察が拳銃で対処できるのは現時点ではここが精一杯と考えられます」
「衛宮君、それは流石に誇張し過ぎではないかね?」
拳銃で対処できるのはここが限界。その発言に上層部の一部から反感を買ってしまう。
「いえ、既に次の進化段階で拳銃が効かなかった事実があるので」
「なんと!?」
画面は変わってそこには先日のクワガーモンが映し出される。
「成長期の上がレベル4成熟期。先日のクワガタの怪物、クワガーモンがその段階に当たります。クワガーモンには既に銃弾は弾かれてしまい、我々は戦力にすらなりませんでした」
次に映し出されたのは機械化した恐竜のようなデジモン。メタルグレイモンだった。
「成熟期から進化するのがレベル5完全体。デジモンの多くはこの段階で成長が止まるようです。この段階の強力な個体は一撃が核弾頭クラスの爆発となるようです」
「そんなものまで」
上層部は驚きのあまり言葉を失う。
「その完全体をさらに超えた進化がレベル6の究極体。この姿となったデジモンの戦闘能力は凄まじく、上位の存在は容易く世界を滅ぼせるほどだとあるようですが、子供達は究極体には遭遇経験がないらしく、真意は不明です」
「ふ、フン。所詮子供の戯言だ」
一部の上層部は完全体の戦闘力こそ信じられたが、流石に究極体の世界クラスとなると信じられないと反応する。
「究極体はデータ容量が大きいため、そう簡単にはこちらの世界に来られないと予測できるため、今すぐに警戒しなければいけないという訳ではないと思いますが、成熟期や完全体は要警戒に値するものかと」
「それはまあ、そうだが」
「警戒するにしても、どうする?我々では成熟期とやらにも対処できる手段がないのだろう?」
「その手段に関しては既に動いています」
「例の子供達かね?」
「はい。彼らの力を借りる他ないと判断し、現在その1人である土御門大知君と協力体勢を取れる状態となっています」
「未知の生命体、デジモンにはデジモンで対処するというわけか。だが協力体勢と言っても相手は中学生だぞ?」
前列のない事案に対して民間人と協力体勢というだけでも危険が伴うのに、ましてや中学生程度の子供に協力してもらうというのは万が一のリスクが大きいため、その点でも上層部は騒ぎ出す。
「そもそも土御門家と言えば少し前まで政界にも通じていた家柄ではないか。万が一には誰が責任を取る?」
万が一の時の責任のなすりつけ合いが始まろうとすると、淳一がそれを鎮める言葉を告げる。
「子供達に万が一があった場合の責任は自分が取ります。ですので皆さんには子供達が安全に対処できるような体勢を整える為の協力をなにとぞお願い致します」
こうして選ばれし子供達がデジモン事案に対処できるように警察が動き出したのだった。
「今日は、よし。いないな」
下校時刻。中学校を後にしようとしていた大知は周囲を確認して誰かがいないことを確認して帰路を辿ろうとすると・・。
「大知さん。一緒に帰りましょう」
そこを1人の少女に見つかり、一緒に帰ろうと言われてしまう。声をかけてきた少女の名は夜見島永流。1つ下の学年で同じく選ばれし子供の1人だ。
「あ、あのさ永流。俺はさ、お前の事は別に嫌いではないけど、お前と付き合っているってクラスの連中にからかわれるのは嫌だからさ。こう毎日一緒には・・・」
「そんなもの言わせておけば良いじゃないですか。私達は前世からの仲なんですし」
永流はデジタルワールドで初めてあった日から大知の事を前世からの運命の相手だと言い張り、大知はそういう設定だと流していたが、人間世界に帰ってから同じ学校と知った彼女のアプローチはさらに過熱し、ほとんど毎日一緒に帰ろうとしてくるようになった。
「またそういう設定を・・・俺は前世の事なんて知らないぞ」
「記憶はなくとも魂には刻まれているはず。でなければあの日私を見捨ててもおかしくなかった」
デジタルワールドで初めてあった時、まだパートナーデジモンと出会う前だった永流はデジモンに襲われそうになっていた。自然と身体が動いていた大知は彼女を助けていたというのが2人の出会いという訳だ。
「貴方は勇敢だけど理知的な人。無縁な相手は見捨てる判断もできる人。なのに助けてくれたという事は、やはり貴方も魂の何処で私の事を覚えている」
「陰陽師の家系だからキッパリと魂関係は否定しきれないのが痛いところだな。だが前世からの付き合いだとしても、俺は俺だからな」
「そうですね。大知さんは大知さんです。だから大知さんに私の事を好きになってもらえるように頑張ります!」
「コイツ、無敵か?」
何を言ったとしても彼女が折れる事はない。そう判断した大知は諦めて永流と一緒に帰る事にする。
「帰ってきたわね。永流」
永流の家より100メートルほど手前で永流はパートナーデジモンのエリザモンに声をかけられた。トカゲのような見た目だが、猫に紛れることで出歩いていたようだ。
【エリザモン】
【成長期】【爬虫類型】【ウィルス種】
【布のように柔らかな襟が特徴的な爬虫類型デジモンです。周囲の些細な音にも反応できる集音能力があります】
【必殺技は高速回転させた襟で相手を切り刻むフリルドカッターと襟の高速回転で滑空し、その勢いを利用した尻尾の一撃のヘリコプテイルです】
デジヴァイスはエリザモンに反応して解説をすると、大知達の前に1台の車が停車する。
「下校中にすまない大知君。また今回も君の力を借りたい」
淳一と千春の乗った車だ。
「衛宮さん。今回はどんなデジモンですか?」
協力する気の大知は車に乗り込もうとすると、永流は大知の手を掴む。
「待って。1つ確認させてください。大知さん」
「言いたい事は分かってる。だから先に答える。・・・俺はこの人達に協力する事にした」
「分かりました。なら私も協力します」
「永流、いいの?」
一度は大知が協力するならと断っていた永流だが、エリザモンの問いに頷いた。
「うん。大知さんが協力しないなら私も協力しないつもりだったけど、大知さんが協力するなら」
「フフっ、愛ね。永流。なら私もその愛を支えるわ」
永流とエリザモンも電子超常犯罪対策室01課に協力する事を決めると、千春が車のドアを開く。
「話は纏まったみたいね。なら乗って」
大知と永流、そしてエリザモンが車に乗り込むと、淳一は車を現場に急行させる。
「永流。悪いけど今回は君らだけで頑張ってほしいんだ」
「えっ?女の子に任せて、大知君は何もしないの?」
千春は永流とエリザモンに任せようとしている大知に理由を尋ねると、淳一は溜息をつく。
「お前は後ろの席を見て、気づきもしないのか?」
「気づきって何を?あっ!」
そこでようやく千春は気付く。この車にブイモンが乗っていないことに。
「俺の電子陰陽術は成熟期デジモンを倒せるほどの威力はありません。ですが今から俺の家に向かってブイモンを乗せるのは時間が勿体ないし、そもそも乗せるスペースがないですよね?」
「何で特殊車両じゃないんですか!?」
特殊車両ならもっと乗れるのにと騒ぐ千春に淳一は呆れながらも答える。
「まだ出来立ての課で予算設定がまだなんだ」
「だから人員も4人だけだったんですね。てっきり少数精鋭に選ばれたと思ってたのに」
少数精鋭に選ばれたからにはとやる気を出していた千春だったが、ただ予算の都合だったと知ってガッカリしていると、車は現場近くに停車する。現場は鉄塔が近くにある林でどうやらその林の周辺に今回のデジモンが出現したらしい。
「目撃情報によれば今回は青い熊のようなデジモンだ」
【グリズモン】
【成熟期】【獣型】【ワクチン種】
【獣型デジモン。体格はデカいが素早い動きで攻撃や防御も可能。鋭い爪と牙が武器です】
【必殺技は相手の力を利用して急所を突く当身返しです】
「グリズモンは格闘能代こそ高いけど、デジヴァイスの説明だと大人しいタイプのデジモンなはず。あんな暴れ方をするなんてきっと何かあるんだ」
大人しいはずのグリズモンが暴れ回るのは理由がある。そう判断した大知は危険を顧みずグリズモンに近づこうとする。
「大知君!危険だ!」
「下がって大知君!」
淳一達の言葉すら気にせず近づいた大知はグリズモンに問いかける。
「グリズモン、何をそんなに暴れているんだ?」
「弟のベアモンが人間に捕まってしまった!俺は弟を助け出すんだ!」
クワガーモンとは違い、言葉を話す事が出来るグリズモンは兄弟関係のベアモンが人間に捕まった事で暴れていると教えてくれた。
「分かった。俺達がベアモンを探して連れて来る。だから暴れるのは止めるんだ」
「人間のすべてが悪い訳ではないと理解はしている。頭では理解しているが、やはり感情が、心がベアモンを攫った人間を許せないのだ!」
人間を許せないとグリズモンは再び暴れ出す。
「これはベアモンを連れ戻さない限り、暴れ続けるな」
「ならば我々がベアモンをさがしてくる。君達はそれまでこのデジモン足止めして置いてくれ!」
ベアモンの捜索を引き受けた淳一と千晴はすぐさま聴き込みへと向かう。
「さて、どれだけの時間稼ぎをしなきゃいけないのか」
淳一達がベアモンを探す間もの時間を稼がなければいけない大知達はひとまずどうすべきかを考える。
「今の状態じゃ説得なんてできない。仕方がないけど多少は弱らせないと」
「分かりました。行こうエリザモン!」
「えぇ!あの弟思いのグリズモンに私達の愛をぶつけましょう」
愛をぶつけてグリズモンを止める。そう決めた永流とエリザモンは戦うために前へと出る。
「俺もできる限りのサポートはする。だから頑張ってくれ」
「はい!」
「まずはグリズモンの注意をこっちに向けないと」
大知は林でも使って問題ない電子陰陽術を選ぶ。
「電子陰陽術、水遁。ウォーターブレス」
電子陰陽術でシードラモンのウォーターブレスを発動した大知は強烈な放水をグリズモンに浴びせた。
「エリザモン!」
「フリルドカッター!」
エリザモンは襟で斬りつける攻撃をグリズモンに与えるも、大したダメージにはなってなかった。
「やっぱり成長期での攻撃は手加減し過ぎだね」
「愛は全力でぶつけるものよ。永流」
「そうだね。愛の真価、進化だよエリザモン!」
「エリザモン進化!」
エリザモンは永流のデジヴァイスからの光を受け取るとその姿を四足歩行の恐竜のような姿へと変化させた。
「ディメトロモン!」
【ディメトロモン】
【成熟期】【爬虫類型】【ウィルス種】
【フリル状の背びれが特徴的な爬虫類型デジモンです。鈍そうな見た目ですが、フリル状の鱗が広がる事で体を大きく見せています。そのため実際の質量は少なく俊敏に動けます】
【必殺技は背びれに充電・増幅させたエネルギーを熱線として放つルミナスヒートと身軽さを活かして飛び上がりながら回転し、エネルギーを纏った背びれを立てて突撃するセイリングスピンです】
「唸る愛の一撃、受けてご覧なさい!セイリングスピン!」
ディメトロモンは進化するなり初手から必殺技のセイリングスピンをグリズモンにぶつける。
「おい、ディメトロモン。今回は衛宮さん達がベアモンを連れて戻るまで時間を稼ぐだけなんだから全力じゃなくても」
大知は全力で攻撃するディメトロモンに加減するように話すが、ディメトロモンは首を横に振る。
「愛は常に全力で。加減なんて必要ないわ」
加減する気はないディメトロモン。するとグリズモンはそれなりのダメージを受けてもなお立ち上がる。
「俺は許せん。人間を」
「まだ愛が足りないみたいね。いいわ。もっと私の愛をぶつけてあげる!」
次回「ベアモンを取り戻せ」