「ここが人間世界。リアルワールドってやつか。空気はそんなに良くねぇが、空気中のデータ成分は悪くないじゃんか」
デジタルワールドからのゲートが開き、人間世界へとやってきた竜のようなデジモンはまるで空は自分の物だと言わんばかりに飛び回る。
「デジタルワールドじゃ、完全体のムカつく奴らとか他の空を飛べる連中が空を飛び回る雑魚共と一緒になってて、空を独り占め出来ないからな。この世界の空は俺だけのものにしてやるぜ!」
自分だけの空を求める竜のようなデジモンは空を我が物顔で飛び回り、他の空を飛ぶ鳥や虫達を怯えさせ、時には捕食をして空を占領しようとし始める。
「デジタルワールドから来たデジモンがこの世界の食事を摂取出来る事は把握してましたが、生きたままの生物を捕食する光景を生で見られるとは。これはいいデータが取れそうだ」
竜のようなデジモンを観察していた怪しげな人物は、デジモンの行動一挙手一投足に注目しながらも集まっていく資料データに興奮を隠しきれていなかった。
「この空は俺の空だぁぁぁぁぁっ!!」
そのデジモンの咆哮は周辺に嵐を巻き起こし、嵐の中心で竜のようなデジモンはその空は自分のものだと宣言する。
「デジモンによる気候の変化。これは実に良いデータだ」
嵐や鳥達の被害などまるで気にしてない怪しげな人物はただただデジモンのデータが集まっていく事に喜びを感じていたのだった。
「そういえば気になっていたんだけどさ」
グリズモンの事件が解決してから2日後。千晴は気になっていた事を大知に尋ねる。
「ブイモンのアーマー進化は成熟期なの?」
「あー。違うんですけど、どう説明しようかな」
千晴はアーマー進化のフレイドラモンやライドラモンを成熟期と考えていたようだが、大知はアーマー体の事をどう説明しようか悩んでしまう。
「アーマー体には世代といった扱いはないです。だけど強さで言えば俺の持っている勇気と友情のデジメンタルで進化するフレイドラモンとライドラモンは成熟期相当だと俺は考えてます」
アーマー体は成熟期や完全体といった進化の概念に縛られない特殊な進化の立ち位置だ。基本的には古代型のフリー種しかアーマー体へとデジメンタルによる進化は出来ないが、偶然や突然変異で通常種がアーマー体に進化する事が稀に発生する。しかしながらアーマー体は特殊進化であり、進化世代にカウントされないのだ。
「エリザモンもデジメンタルを使えばアーマー進化出来たりするの?」
「アーマー体への進化が全く出来ないといった訳ではないけれど、少なくとも大知と宮春の持ってるデジメンタルに私は反応しなかったわ」
エリザモンは選ばれし子供達が持っているデジメンタルに自分は対応しなかった事を告げる。
「宮春君というと・・・」
「彼らがデジタルワールドから帰還して以降、まだコンタクトが取れていない少年だな」
会話に入ってきた淳一は選ばれし子供達の中で綾小路宮春のみが唯一コンタクトが取れていない事を告げる。
「俺達もラインの交換とか出来てなくて、会ったりするどころか全然やり取りできてないんです」
「綾小路家は財界にも派閥を利かせている旧家。我々も迂闊な干渉が出来ないのが厄介な所だ」
「宮春君の情報は何もないんですか?」
「一応学校には行ってると情報は上がっているので軟禁状態では無いようだが、彼のパートナーデジモンの方は分からん」
宮春が無事なのは分かってはいるが、パートナーデジモンの安否確認は出来てないと聞かされて大知達は心配していると、彼らのもとに一組の少年とそのパートナーデジモンがやってきた。
「大知さん。お久しぶりです」
「皆々様、お久しぶりであります!」
「清麿!それにプテロモンも!」
現れたのは選ばれし子供達の中で唯一の小学6年生である神楽坂清麿と緑の鳥型デジモンのプテロモンだった。
【プテロモン】
【成長期】【鳥竜型】【データ種】
【広大な森林の空へ自由に飛ぶ鳥竜型デジモンです。ツノは柔らかく攻撃ではなく感覚器官としての役割が大きいです。ツノにあたる風で気候の変化を察知できます】
【必殺技は腕の羽を振り抜き、風の刃を飛ばすウィンドスライサーです】
「清麿も協力してくれるのか?」
「はい。大知さん達が協力する事を決めたのに、僕だけ協力しないというのは気が引けますし」
「清麿が協力するのなら小生もお供するであります!」
清麿とプテロモンも協力者としてチーム入りすると話していると、淳一のスマホに連絡が入る。
「竜のような未確認飛行物体が空に?分かった。現場に向かう」
「デジモンですか?」
「おそらくな。ひとまず現場に向かおう」
淳一は政府から譲り受けた特殊車両の運転席へと乗り込むと、選ばれし子供達3人とそのパートナーデジモン達、そして千晴も乗り込む。
「室長。警察上層部が予算を下ろしてくれないからって、政府公認の協力研究室に車を手配してもらうのはどうなんですか?」
「向こうも快く手配してくれたからいいだろ」
研究室Butterflyも『これでお力になれて、研究が捗るなら』と特殊車両を1台すぐに用意してくれた。その事に淳一も後ろめたい気持ちがない訳ではないが、仕方ないと自分を納得させていた。
「場所は東地区周辺。住宅地が近いですね」
「今はまだ人への被害は確認されていないが、周辺地域では食い荒らされた鳥や昆虫の死骸が確認されているようだ。こういったものは子供である君達にはあまり見せたくないのだが、いつ人への被害があるか分からないため、死骸の処理対応も出来ない。すまないが我慢してくれ」
カーナビを確認してみるとデジモンらしき存在が目撃されているポイントは住宅地が近いようで一同は警戒心を強める。そして十数分後、現場である東地区へと到着すると確かにその上空には竜のようなデジモンが飛んでいた。
【エアドラモン】
【成熟期】【幻獣型】【ワクチン種】
【巨大な翼を生やした幻獣型デジモンです。空からの攻撃を得意として、その咆哮は嵐を呼び、翼を羽ばたかせる事で巨大な竜巻を巻き起こします】
【必殺技は翼を羽ばたかせて鋭利な真空刃を飛ばすスピニングニードルです】
「エアドラモンか。空を自在に飛べる相手となると、こっちで飛べるのは・・・」
「僕らの出番と言う事ですね」
「お前ら、デジモンか!!」
清麿とプテロモンはさっそく自分達の出番だと前へと出ようとすると、エアドラモンは仕掛けられる前に仕掛けると考えたのか、いきなり急降下して襲いかかってくる。
「電子陰陽術!金遁、フリスビッカー!」
咄嗟に電子陰陽術で2つの宙に浮かぶ盾を呼び出した大知はその盾で全員を守ると、即座にブイモンが前へと出る。
「ブイモンヘッド!」
エアドラモンに頭突きを叩きこんだブイモンだったが、大したダメージにはなっていなかったようで、エアドラモンの尻尾に叩かれて、地面に叩きつけられてしまう。
「大丈夫かブイモン!」
「いって〜。コイツ、俺のブイモンヘッドを受けても全然怯まないなんて、この間のクワガーモンみたく強い個体だぜ」
「みたいだな。清麿、結構強いと思うけど行けるか?」
「相手のレベルが高くても相手がデジモンという生物である以上は攻略出来ない理由にはなりません!それに相手はワクチン種ですし問題ありません。行くよプテロモン!」
「任務開始であります!」
プテロモンは飛翔したエアドラモンを追って空へと飛び上がる。そして狙いを定めて風の刃を飛ばす必殺技を放つ。
「ウィンドスライサー!」
ウィンドスライサーがエアドラモンに命中すると、エアドラモンはその敵意をプテロモンに向ける。
「なんだお前?やろうってのか?」
「先に攻撃してきたのはそっちからでありますが、大人しく引いてくれるなら見逃してもいいでありますよ?」
「成長期の雑魚のクセに威勢がいいな。雑魚は雑魚らしくデータのチリになれ!」
翼を強く羽ばたかせたエアドラモンは真空刃を形成し、それをプテロモン目掛けて放つ。
「スピニングニードル」
エアドラモンの放った真空刃はプテロモンの翼を掠めると、バランスを崩したプテロモンは地上に落下してくる。
「プテロモン!進化だ!」
「高まってきたであります!プテロモン!進化!!」
進化の光に包まれたプテロモンはエアドラモンと戦える姿に、成熟期へと進化する。
「ゲイルモン!」
【ゲイルモン】
【成熟期】【鳥竜型】【データ種】
【大きな翼と刃のようなツノが特徴的な鳥竜型デジモンです。硬質化したツノは感じとった風から第六感的に周囲の異変を感じ取れます】
【必殺技は羽を使って大きく鋭い風の刃を飛ばすハリケーンスライサーと口から竜巻を発生させて相手を吹き飛ばすトルネードスロワーです】
「清麿!」
「うん!行こうゲイルモン!」
ゲイルモンへと進化したプテロモンは一度地上に着陸すると、その背中に清麿を乗せて、再び飛び上がった。
「え?背中に乗って?あ、危ないんじゃ!?」
「確かに危ないですけど、人間のパートナーの感情エネルギーで進化するパートナーデジモンは近くで戦う事でそのパワーを最大限に発揮出来るんです」
「デジモンは感情エネルギーで進化する。・・・なるほど!じゃああのデジメンタルのアーマー進化も!」
「あれは・・・さっきも言いましたが特殊な進化なんです。俺と綾小路は2人と違って、パートナーデジモンを進化させるだけの感情エネルギーを出せなかったので、デジメンタルのアーマー進化はそれを補う外付けアイテムみたいなものなんですよ」
大知は自分と宮春は感情エネルギーが足りずにパートナーデジモンを進化させられなかった事を千晴に話す。
「外付けアイテム・・・というかそもそもデジメンタルって何なの?いくつあるの?」
「俺と宮春の持ってるデジメンタルは全部で6つなんですが、詳しい話は後にしますね。今は清麿とゲイルモンです」
話を中断した大知は清麿とゲイルモンがエアドラモンと戦う空を見上げる。
「雑魚は進化しても雑魚なんだよ!落ちろ!」
「ハァッ!」
エアドラモンが振るってきた尻尾を両足の爪で受け止めたゲイルモンは勢いよく回転してエアドラモンを地上へと投げ飛ばす。
「グゥ!?スピニングニードル!」
なんとか空中で堪えたエアドラモンは下からスピニングニードルを飛ばすも、中途半端な体勢から放った必殺技は勢いが鈍っていたようで、ゲイルモンの翼に叩かれ打ち消された。
「そんな半端な攻撃じゃ僕とゲイルモンは落とせないよ!」
「ダアッ!」
プテロモンの時より硬いツノを突き刺すように突撃したゲイルモンはエアドラモンの翼を貫く。その一撃で飛行困難になったエアドラモンは地上へと落下すると、ゲイルモンは追撃を仕掛ける。
「トルネードスロワー!」
口から放った竜巻でエアドラモンを吹き飛ばして、地面を数回バウンドしたエアドラモンは起き上がり、再び飛び上がろうとする。
「クソ、雑魚なクセにこの俺をよくも」
「最終警告だ。大人しくこの場を去って人間にもう迷惑をかけないなら見逃してもいいよ」
「誰がそんなものに従うかよ!」
大人しく警告に従うのないエアドラモンはゲイルモンの背中に乗っている清麿に噛み付こうと飛び掛かってくると、ゲイルモンはトドメの一撃を放つ。
「ハリケーンスライサー!」
風の刃を飛ばす必殺技のハリケーンスライサーが直撃したエアドラモンはデータとして散って、デジタマがその場に転がった。
「お疲れさま。ゲイルモン」
「状況終了であります!」
ゲイルモンはプテロモンへと退化すると、デジタマを拾い上げて回収する。
「データ種はワクチン種に有利に立ち回れる。今回エアドラモンがワクチン種だったから有利に戦えたね」
選ばれし子供達の中で最年少ながらも、最も分析力に優れている清麿は相性有利な相手だったからさほど苦戦せずに済んだ事に一安心する。
「デジモンには相性があるのか?」
「は、はい。今言った通りデータ種はワクチン種に強く、ワクチン種はウィルス種に強く、そしてウィルス種はデータ種に強い三すくみになっているんです」
「へぇ、じゃんけんみたい」
清麿はデジモンの相性三すくみを淳一達へと説明しつつ、デジタマを千晴に預けた。
「デジタマの回収を確認。撤収する」
デジタマ回収を確認した淳一は特殊車両へと戻り、皆を乗せて帰還していく。
「フフ、今回もいいデジモンのデータが取れました」
そんな彼らの姿を観察していた怪しげな人物の存在に大知達は気づく事はなかったのだった。
次回「江東区三激突」