「デジメンタル。それは俺達が冒険したデジタルワールド、正式名称デジタルワールド・イリアスではかつて世界を救った神々の1体とされているウルカヌスモンが作り出したと伝承にある伝説のアイテムなんです」
エアドラモンの事件を解決させた翌日。大知達はデジメンタルの説明をして欲しいと研究施設Butterflyに呼び出されていた。
「デジメンタルが何個あるのが、同じ物は存在するのかは分かりませんが俺が手に入れたデジメンタルは3つ。『勇気のデジメンタル』と『友情のデジメンタル』。そしてデビモンとの戦いでしか使用出来なかった『運命のデジメンタル』です」
デビモンとの戦いは熾烈を極めた。デビモンと同レベルの成熟期であるディメトロモンやゲイルモンの攻撃だけでなく、大知達の持っていた『勇気』『友情』『希望』『光』のデジメンタルの力すら及ばないほどの力を振るうデビモンは一段階進化して圧倒的な力で選ばれし子供達とそのパートナーデジモンを追い詰めた。
絶対的窮地の中で4つのデジメンタルが2つのデジメンタルを呼び覚ました。それが『運命』と『優しさ』のデジメンタルだ。2つのデジメンタルの力で奇跡の逆転を果たした大知達だが、その時以降運命と優しさのデジメンタルは一切の力を発揮しなくなったという訳だ。
「単にエネルギー切れか、使用回数に制限があったのか、はたまた精神的な問題か。様々な可能性があり気になりますね。少しデジヴァイスを見せて貰ってもいいですか?」
「はい。どうぞ」
晃司は運命と優しさのデジメンタルが使用不能になった理由を考察しながらも大知のデジヴァイスを借りてその中のデータを確認する。
「デジヴァイス。デジタルワールド・イリアスの管理者であるホメオスタシスから授けられたデジモンに進化をもたらす特殊な端末。先日デジヴァイスのデータを確認しましたが、構成物質は未知の物質。おそらく表記される通りデジゾイドと呼ばれる物質で作られている。そのデジゾイドも気になりますが、やはり内部データです」
内部データをタブレットの画面に表示できるのかを試してみると、タブレット画面には大量の0と1が表示された。
「これは解析出来なかったという事ですか?」
「逆だ。解析出来たんだ。内部データは至ってシンプル。0と1のみで全てのデータがなりたっているんだ」
テンションが上がって淳一にも敬語が外れた晃司は意気揚々と語りだす。
「シンプルながらもまるで呼吸をしているかのようにその羅列が変化し続けている。パートナーデジモンの進化条件は子供達の感情エネルギーと言っていたね。つまりこのデジヴァイスは感情をエネルギーに変換してデジモンに送り込んでいるという事になる」
「感情をエネルギーに変換。その役割を担うのがデジヴァイスとしてデジメンタルはどういった物なんだ?」
「ハッキリと断言はできないが進化を補助するアイテムなのは間違いなさそうだ。感情エネルギーをほとんど使用しないが、使用条件がある。それ故に今までに一度しか使用出来ていないと推測できる。・・・おっと、つい熱くなってしまいました。すみません」
熱く語り過ぎた晃司は少し落ち着くと、話に割り込むように室内に裕二が入ってきた。
「衛宮室長、話の最中で申し訳ありませんが報告です。たった今江東区でデジモン同士の争いが起きていると通達がありました」
「了解した。和多さん。今回はここまでだ」
「そうですね。皆さんは事件解決を優先してください」
大知達は淳一の運転する特殊車両で江東区へと向かうと、そこでは四足歩行の恐竜のようなデジモンと青い昆虫のようなデジモンが争っている光景があった。
【モノクロモン】
【成熟期】【鎧竜型】【データ種】
【鼻先にサイのような角を生やした鎧竜型デジモンです。角の部分と体の半分を覆う物資はダイヤモンド級の硬度を誇ります。一度怒らせると重戦車のような体から恐ろしい技を繰り出します】
【必殺技は口から放つ火球のヴォルケーノストライクです】
【カブテリモン】
【成熟期】【昆虫型】【ワクチン種】
【どのような経緯で昆虫型に進化したのか不明な特異な昆虫型デジモン、それがカブテリモンです。蟻のようなパワーと昆虫が持つ防御能力を併せ持ちます。頭部は金属化していて、鉄壁の防御を誇ります】
【必殺技は角に電気を集めて光球を作り発射するメガブラスターです】
「モノクロモンにカブテリモン。どちらも成熟期のデジモンがこんな街中で争うなんて」
「室長どうします?これじゃ警察組織だけで隠し通すなんて不可能ですよ!目撃者が多すぎます!」
モノクロモンとカブテリモンの周囲には動画や写真で撮影をしている者達だけでなく、既にテレビ局までもがカメラを回している始末だ。こんな状況で子供達を前線に出してしまえば、再び世間の注目の的になる事は目に見えている。
「警察組織や政府が叩かれるのは我々大人の責任だからまだいい。しかし君達が世間から危害が及ぶようでは・・・」
淳一の指揮次第で今後の選ばれし子供達の運命が決まってしまう。その事を重く考えていた淳一は答えを出せずにいると、まだ昼前で天気も快晴だったというのに、急にしゅうが夜のように暗くなった。
「急々如律令、陰。常世」
何処からか聞こえた陰陽術を唱える詠唱。それを聞き逃さなかった大知はまさかと思いながら周囲を見渡すも、探している相手を見つける事は出来なかった。
「大知さん。これってまさか」
「綾小路さんの陰陽術なんじゃ?」
永流と清麿もこの陰陽術は仲間の1人である綾小路宮春が行ったものなのではと考えていると、暗闇の一角が光を発する。デジモンの進化の光だ。
「ワームモン!アーマー進化!クワトルモン!」
【クワトルモン】
【アーマー体】【幻獣型】【フリー種】
【光のデジメンタルのパワーで進化したアーマー体の幻獣型デジモンです。翼を持つ白蛇の姿をした太陽と風の化身とされ、神聖なな存在でありますが、迂闊に怒りをかうと呪わると言われてます】
【必殺技は体を螺旋状に回転させて発生する光線で、相手の息が止まるまで締め上げるフリーズウェーブです】
進化の光から飛び出てきたのは空を飛ぶ白い蛇のようなデジモンであるクワトルモンだった。クワトルモン、そして進化したデジモンがワームモンだという事で大知達は近くにワームモンのパートナーであり、選ばれし子供達の仲間である綾小路宮春を特殊車両の車内から探そうとするものの、夜のように暗くなっている周囲に野次馬である人々の多さもあって宮春を探す事は難しかった。
「ダァ!」
そんな暗闇を照らすように飛ぶクワトルモンはモノクロモンとカブテリモンの間に割って入ると、その尻尾でカブテリモンの首を巻き上げてモノクロモンへと投げつける。
「儂らの喧嘩にケチつけやがって!」
「なにもんじゃおんどれ!」
自分達の喧嘩に割って入ってきたクワトルモンを互いに敵視したモノクロモンとカブテリモン。するとクワトルモンは尻尾を一振りして地面をベチンと強く叩いて威圧した。
「ボクはクワトルモン。君達の喧嘩に興味はないけど、この場所で暴れられるのは迷惑だ。今すぐ止めてこの場所を去らない限り、君達どちらとも制裁を与える」
「制裁じゃぁ?強い言葉を吐くの若造が」
「やれるモンならやってみいや!」
まずは喧嘩の決着の前に結託してクワトルモンを倒す事にしたモノクロモンとカブテリモンは左右から突進してくる。
「どぎゃん!?」
「ごばぁ!?」
モノクロモンとカブテリモンの突進をヒラリと回避したクワトルモン。するとそのせいでモノクロモンとカブテリモンは正面衝突する結果となった。
「テメェ!何処見て走っとるんじゃ!」
「それはこっちの台詞だ!」
互いに怒りをぶつけている2体にクワトルモンは尻尾による打撃を振るうと、怒りが頂点を迎えたモノクロモンとカブテリモンはもはや一時休戦すらも破り合い暴れ出す。それにより周囲の人々や建物にも危害が及びそうになると、それらが当たりそうな攻撃は謎の光によって防がれてた。
「あれは陽の陰陽術。まだ近くに綾小路が」
まだ近くに宮春がいるかも知れないと考えた大知は特殊車両の外へと出ると、宮春を探そうとするもののすぐに淳一に止められた。
「気持ちは分かるが、今は周囲の目も多い。今は我慢してくれ」
「・・・分かりました」
もしここで自分も行動を起こしてしまったら警察組織だけでなく、研究施設のButterflyにまで迷惑をかけてしまうかも知れない。それは避けなければと判断した大知は早る気持ちを我慢したのだった。
「ヴォルケーノストライク!」
モノクロモンは火球を放つ必殺技のヴォルケーノストライクでクワトルモンを撃ち落とそうとしてくると、クワトルモンは後ろの人々をチラリと見て攻撃を避ける事なく直撃してしまう。
「ぐっ・・・」
「メガブラスター!」
続けてカブテリモンも電気を集めた光球のメガブラスターをクワトルモン目掛けて放つ。それもまたクワトルモンは避けられずに直撃してしまう。
「ここに人が多すぎて、人々に被害を出さないために攻撃を避けられないんだ」
「さっきまでみたく綾小路君の陰陽術でバリアは出来ないの?」
「俺はデジモンの技を応用した電子陰陽術をデジヴァイスを媒介に発動してますが、綾小路は御札を使う正当な陰陽術。成熟期レベルの必殺技を防ぐのは俺の電子陰陽術でも難しいのに、デジモンの技に対応していない正当な陰陽術ではたぶん無理だと判断してるんだと思います」
電子陰陽術は対デジモン用に特化させた陰陽術。成熟期レベルのデジモンの通常技までなら対処可能だが、必殺技となると完全に相殺できる程の精度は今現在はまだ持ち合わせていない。
そしてその基盤となった陰陽術はそもそも電子生命体であるデジモンの技に対応が難しい。物理的なものならまだしも、デジモンが必殺技として発動した火球や光球には対応出来ないのだ。
「やっぱり俺も綾小路の加勢に行かないと」
宮春とクワトルモンだけでは民衆を守りながらモノクロモンとカブテリモンの対処は難しいと考えた大知はブイモンをアーマー進化させようとデジヴァイスを取り出す。
「ライドラモンで速攻を仕掛けるぞ。ブイモン!」
「オウさ!ブイモン!アーマー・・」
ブイモンがライドラモンにアーマー進化しようとすると、防戦一方になっていたクワトルモンが動きを見せる。
「フリーズウェーブ!」
クワトルモンは螺旋状に体を回転させる事で発生させる光線で相手を締め上げる必殺技のフリーズウェーブでまずはカブテリモンをダウンさせたのだ。
「よし!」
ワームモンに戻ったクワトルモンは再びアーマー進化の光を浴びる。
「ワームモン!アーマー進化!ブルモン!」
【ブルモン】
【アーマー体】【哺乳類型】【フリー種】
【希望のデジメンタルのパワーによって進化したアーマー体の哺乳類型デジモンです。闘牛のような姿をしていて、その突進力と破壊力は凄まじいものがあります】
【必殺技は猛スピードで突進して2本の角で敵を突き上げるマタドールダッシュです】
宮春の所持する希望のデジメンタルの力で闘牛のようなデジモンであるブルモンに進化したワームモンはパワー勝負と言わんばかりなモノクロモンに正面から突進する。そのパワーはほぼ互角でぶつかり合った瞬間、その衝撃が周囲に広がる。モノクロモンはフラフラとしながら後退すると、ブルモンは脚に力を込めてダッシュの構えを取る。
「マタドールダッシュ!」
猛スピードで突進してモノクロモンを突き上げたブルモン。その突進に負けたモノクロモンはデータとなって散り、その場にはカブテリモンだったデジタマとモノクロモンだったデジタマが転がった。
「デジタマは私が回収してきます!」
千春はデジタマを回収しに向かうものの、野次馬である人混みが激しく1つは回収できたがもう1つのデジタマは何者かによって持ち去られたのか回収出来なかった。
「ワームモン!アーマー進化!クワトルモン!」
モノクロモンにも勝利したブルモンは再びクワトルモンにアーマー進化して空を飛び去っていく。
「待ってくれ!クワトルモン!」
大知の声が人混みにかき消されて聞こえていないのか、クワトルモンは大知の声に振り向きもしない。クワトルモンの背中には誰も乗ってないようで、宮春は人混みに紛れてこの場を去ってしまったようだ。
結局大知達は宮春と再会する事は出来なかったのだった。
次回「君の優しさ プッチーモン」