今後も不定期ですがよろしくお願いします。
「綾小路、どうして会おうとしてくれないんだろう?」
江東区での事件の翌日。学校を終えた大知達は公園に集まって何故宮春が自分達の前に姿を現してくれないのかを話し合っていた。
「シンプルに考えると親から僕らと関わるのを止められているからだと思いますが」
「私の考えとしては家の事情で私達に迷惑をかけたくないと会わないようにしてるんじゃないかと」
「1人で抱え込みやすい綾小路のことだからどっちもあり得るな」
デジタルワールド時間で数カ月共に旅をしていたからこそ、宮春の性格を理解しているつもりの3人はきっと1人で背負わされて潰れかけてるのではと心配していた。
「少なくともワームモンは陰陽師の家系の綾小路家に排除対象にはなってないみたいのは安心したけど」
「綾小路さんは自分の事を一族の落ちこぼれだと話していました。もしかしたらワームモンは綾小路さんの足りない部分を補うものとして認められていると考えていいのかもしれません」
「ですがそれは利用や束縛でしかなく、愛のない日々をワームモンは送っているかもしれません」
「確証がないからこそ、やっぱり確かめないと」
宮春とワームモンがどんな日々を送っているのか心配する3人は何とか彼らの現状を確かめたいと考えたが、それを確かめる術をいくら選ばれし子供といえども世間では小中学生でしかないため持ってない大知たち。ここでこれ以上考えても答えは出ないと結論付けた大知らはひとまず解散して各々帰ろうとしたタイミングで偶然にも下校途中の宮春が乗った車が公園前を通りすがった。
「綾小路!」
「え?綾小路さん!?」
宮春の乗った車はあっという間に過ぎ去っていったが、こちらが宮春に気づいたように宮春もこちらに気づいていた。それを確信した大知達は車を追いかけようとするものの、人間の、ましてや中学生程度の脚では到底追いつく事など到底不可能であっという間に車は見えなくなってしまった。
「どうしますか大知さん」
「綾小路の家は分かるけど、行ったところで合わせてもらうどころか入れてもらえるかも怪しい」
宮春は自分の事を一族の落ちこぼれだと蔑んでいて、実際その事もあり家族関係はハッキリ言ってあまり良くない。自分達が綾小路家に行ったとしても解決に繋がらないどころか事態が悪化してしまう可能性もある。
「たぶん綾小路はデジモン事件が起きるとワームモンと出てくると思う。昨日あの場に来ていたのは偶然じゃない。そうじゃなければ無断で綾小路がワームモンと外で行動は難しいはずなんだ」
もし仮に無断で昨日江東区に来ていたのなら今頃は軟禁されて先ほど車に乗って移動してなかったはず。そう考えた大知は今は宮春と接触する事を諦めるとスマホに01課の淳一から連絡が入った。
「もしもし土御門です」
『衛宮だ。今何処にいる?』
「帰り道の公園の辺りです」
『デジモン案件だ。既にブイモン達は車に乗せているので、そちらに向かう。詳しいことは合流して話す』
数分後。特殊車両に乗り込んだ大知達は千春から詳細が説明される。
「事の発端は今から約1時間ほど前。東京駅正面の前にデジタルゲートが出現して橙色の恐竜型デジモンと青い狼型デジモンの出現を確認しました。最初は2体とも大人しかったのだが、動揺した一般市民が青い狼型デジモンに刺激を与えてしまい、やむなく交戦状態となり警察だけでは対処が難しいと判断。君達を招集する事になったの」
「状況は把握しました」
「驚いたからってデジモンを刺激するなんて、愛が足りない人ね」
永流が招集理由を把握するとエリザモンはデジモンを刺激した人間を愛が足りない人だと評する。
「おそらく出現したデジモンは2体共成熟期。恐竜型デジモンはグレイモン。狼型デジモンはガルルモンだと推測できます。2体共見た目ほど凶暴ではないデジモンなのですが」
「野生動物と同じく刺激を与えてしまったのはよくありませんよね」
「素早いガルルモンは俺とブイモンが対応する。グレイモンは任せていいか?」
「任せてください」
「最善を尽くします」
身動きが素早いガルルモンは大知とブイモンが、パワータイプのグレイモンは永流達という振り分けをして現場に到着すると、ガルルモンとグレイモンは同じデジモンであるブイモンらを見て一旦落ち着いた。
【ガルルモン】
【成熟期】【獣型】【ワクチン種】
【青白い毛皮に覆われた狼のような獣型デジモンです。その体毛はミスリルより硬いうえに、肉食獣のような俊敏性と標的を確実に追い詰める知能も持ち合わせています】
【必殺技は口から吐き出す高温の青い炎のフォックスファイヤーです】
【グレイモン】
【成熟期】【恐竜型】【ワクチン種】
【頭部の皮膚が硬化して甲虫のような殻に覆われた恐竜型デジモンです。鋭い爪に巨大な角を持つ攻撃的デジモンですが知能も高いです】
【必殺技は超高熱火炎で焼き払うメガフレイムです】
「君達もこっちの世界に迷いこんだの?」
「よく見ろグレイモン。人間のパートナーがいる。彼らは俺達のデジタルワールドを救った者達だ」
落ち着いたおかげで戦闘にならずに解決出来る。そう大知達は考えていたのだが・・。
「中々に強そうなデジモンが2体も。これはいいデータが取れそうだ」
何処かで何者かがそう呟くと、その人物はレーザーガンのようなものでガルルモンの眉間を射貫いた。
「えっ!?」
突然の事に驚きを隠せない大知達だったが、驚いたのもつかの間にガルルモンは先ほどとはうって変わって見境無く暴れだしてしまう。
「清麿!」
「どうやら先ほどのレーザー光線でガルルモンのプログラムに異常が発生し、暴走してしまっているようです」
「元に戻すには?」
即座に解析した清麿だったが、元に戻す手段を今の段階では持ち合わせておらずに首横に振った。
「そうか。なら、仕方ない」
倒してデジタマに戻すしかガルルモンを救う手立ては無い。そう判断した大知はブイモンと目を合わせると、ブイモンも倒す覚悟を決めて頷き返す。
「待ってください大知さん。前回同様この場所も人通りが多いです。目立った行動は得策ではないはず。せめて人払いの後に」
「分かってるけど、いつまでも隠し通せる訳ない。それにガルルモンの暴走が人間の責任なら、その責任は俺達で何とかしないと」
大知の言葉に納得した清麿も覚悟を決めてデジヴァイスを手に握ると、大知はブイモンをアーマー進化させる。
「ブイモン!アーマー進化!ライドラモン!」
ライドラモンに進化したブイモンは見境無く暴れ回るガルルモンと素早さこそ張り合うものの、お互いに素早い動きなために必殺技の狙いを定める事が出来ずに決定打に欠けていた。
「追いつけはするのに狙いが定まらない」
「ガルルモンの体力も無限じゃない。こっちも消耗覚悟で追い回すんだ」
攻撃を当てる事ができないライドラモン。大知は周囲がスマホ等で一部始終を撮影している事を気にしないようにしながらも、ライドラモンに指示を送る。
「こうなったら電子陰陽術で」
「それはやめたほうがいい」
周囲の目もあり早めに決着をつけたいと考えた大知は電子陰陽術を発動しようとしたが、流石にそれはいけないと淳一に止められた。
「ただでさえデジモンという一般的には未知の生命体と行動をしている子供達というだけで目立っているというのに、デジモンの技を使う少年がいるとなると悪目立ちが過ぎる。警察でも君達の立場を守るのが難しくなってしまう」
「そう・・ですね。すみません。焦っていました」
冷静さを取り戻した大知はグレイモンのほうを見る。今のところそちらは相方のガルルモンを心配し、大人しくしている。だかまレーザー光線が照射されてないがいつ先ほどの人物に狙われるか分からない状況なため早急な決着は急務だった。
「・・・僕とプテロモンでガルルモンの動きを鈍らせます。その隙に必殺技をお願いします」
清麿とプテロモンは空からの攻撃でガルルモンの機動力を奪う作戦を提案すると、そこに先ほど宮春を乗せていた車が停車した。
「あのデジモン。助けられないの?」
車から降りてきた宮春はワームモンを抱えながら大知に尋ねる。
「綾小路、ここに来て大丈夫なのか?」
「爺やには無理を言ってここに来ちゃったけど、今は気にしないで」
爺やとはあの車を運転してきてくれた人物の事だろう。爺やは大知達に一礼すると大知達も礼を返す。
「話を戻すけど、あのデジモンは助けられないのかな?」
「何者かのレーザー光線でガルルモンのプログラムが正常に機能出来なくなっています。僕らにはガルルモンを元通りにする術は持ち合わせていなくて」
「いや、1つあるよ。僕とワームモンならね」
自分とワームモンには暴走するガルルモンを鎮静化する手段がある。そう言った宮春はワームモンを降ろしてデジヴァイスを取り出す。
「こっちの世界に戻ってきてから家族には学校以外の外出は禁止されていたんだけれど、多発するデジモン事件で綾小路家は名をあげようと僕とワームモンを現場に出そうとし始めてね。それで江東区の事件は動けたんだ。まぁそれでもしばらくの間君達と会えなかった僕とワームモンは自分達と向き合って、ようやくこの力を使いこなせるようになれたんだ」
デジヴァイスを操作して『優しさのデジメンタル』を選択した宮春はその輝きをワームモンに与える。
「ワームモン!アーマー進化!」
ワームモンに優しさのデジメンタルの力が宿り、ワームモンは妖精型のデジモンへと進化する。
「プッチーモン!」
【プッチーモン】
【アーマー体】【妖精型】【フリー種】
【優しさのデジメンタルのパワーによって進化したアーマー体デジモンです。力は強くはありませんが相手を和ませる不思議な力を持っています】
【必殺技は相手の心を和ませて戦意喪失をさせる柔らかな光線のハートナービームです】
「デジメンタルは心の形。大事なのは自分の心と向き合うことだったんだ」
「自分と向き合う・・」
自分と向き合って、自分を受け入れたことで優しさのデジメンタルを使いこなせるようになったと語る宮春。その言葉が深く刺さった大知はまだもう1つのデジメンタルのことを考えていた。
「ミヤハル、君の優しさ。いっぱいいっぱい伝わったよ」
プッチーモンへと進化したワームモンは宮春に優しく語りかける。
「だからボクはミヤハルの優しさに応える。この優しさであのコを助ける!」
フワリと浮かび上がったプッチーモンは我を失って暴れ狂うガルルモンに飛んでいく。
「ハートナービーム!」
プッチーモンが放った柔らかい光線がガルルモンに命中すると、ガルルモンは暴れるのを止めて正気を取り戻した。
「あれ?俺は何をしていたんだ?」
「よかった」
元通りに戻ったガルルモンに安堵したプッチーモンは宮春のもとに向かおうと振り返った瞬間、背後でドスリと鈍い音が聞こえた。
「え?」
ガルルモンの腹部に刺さっていたのは黒い悪魔の右手。そう、デジタルワールド・イリアスで大知達が激闘の末に倒したはずのデビモンの右手が魔法陣から飛び出て、ガルルモンを貫いていたのだ。
「ガルルモン!」
状況が飲み込めていないグレイモンだったが相方であるガルルモンを心配して駆け寄ろうとするも、グレイモンの心配の声も虚しくガルルモンはデータとなって散ってしまいそこにはガルルモンだったデジタマが残った。
「そんな・・・」
「よくもガルルモンを!!」
せっかく助けられたガルルモンをデリートされたグレイモンはデビモンの右手を掴んで魔法陣から引っ張り出そうとすると、グレイモンは魔法陣を通して暗黒のエネルギーが与えられてしまう。
「うぅ・・ッ」
「マズイ!グレイモン、耐えるんだ!」
「暗黒エネルギーに負けるな!」
デジタルワールド・イリアスでデビモンの暗黒エネルギーを与えられたデジモン達の事を知っている大知達は暗黒エネルギーに耐えるようグレイモンに告げるも、グレイモンはその力に呑まれてしまい、目を赤く光らせながら暗黒エネルギーに全身が包まれる。
「グレイモン!超進化!」
それは進化の光。それも成熟期をさらに1段階先にいく完全体への進化。そう、超進化の光だ。
「超進化。完全体への光、これは最高にいいデータが取れそうだ」
レーザーガンでガルルモンを暴走させた謎の男は更なるデータが集められると喜びながらその様子を眺めていると、消えゆく光から出てきたグレイモンの姿は肉や皮膚がない骨だけの姿へと変貌していたのだった。
「復活の悪魔 デビモン」