海上自衛隊TS護衛艦隊 ―男児は少女となりて咆哮す―   作:えぴっくにごつ

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航跡3:「中身男児なるも、姦しく」

 人類に予期せず与えられた、「ハーム」に抗う力。

 それは、一度は災厄により失われた兵器・装備類。戦車、戦闘機、軍艦などなどの「力」を再び呼びこし。

 そして人の身に「装備」し携えることを可能とする。いや単純にそれだけでなく、ハームを「討つ」ことを成し得る、驚異的な神秘の力を上乗せするものだ。

 

 しかし、この新たな力にはある驚きの「特性」が伴った。

 呼び起こした武器装備の装着者が「男性」であった場合。彼らは装着装備に伴い一つの例外も無く、「女性」の身へと性転換してしまったのだ。

 おまけに絶対でこそ無かったが、多くの場合に若返りを伴うケースが見られた。

 

 この驚異の現象については、現在も解析解明が進められているが、未だに多くの部分が未知。

 

 しかしこの異なる特性を伴えど、絶望の淵にあった人類に舞い込み与えられた希望。脅威に対抗しうる「力」に「術」。

 選択の余地など無いと、実用化に配備が強行されるに至ったのであった――

 

 

 [はたかぜ]始め、今の作戦任務に従事した皆も。

 その本来の姿は男性。しかし今の変貌した可憐な姿は、そんな事情に経緯からのものであった。

 

 

 ハームの対応任務を終え。

 [はたかぜ]を作戦旗艦として[むらさめ]と[おやしお]の三名で編成されていた戦闘群は。

 一応の警戒隊形を今も維持しつつも。拠点、母港に帰投するための航路についていた。

 

 補足すると、彼女たちの「航行」は。足に装着されそこから伸びているスクリューシャフトに操舵翼を、海面に沈め入れる形で推進を得ている。

 

「……しかし。相変わらずこの、異様に際どい服装はなんとかならないのか……?」

 

 穏やかな潮風にその長い黒髪を優美にたなびかせながら。

 しかしその元で[はたかぜ]は、端麗なその顔をしかしまた難しくも気恥し気に染め。そんな言葉を零す。

 

 先の戦闘の最中で、も見せつけるまでのそれであったが。

 [はたかぜ]の服装姿は、軍服の特徴を併せ持った女学生制服のようなもの。

 なのだが。それにしては胸元は覗いているし、腹周りは丸々出ているし。スカートは短く下着、ショーツが簡単に覗いてしまう程。

 何か、とにかく露出が多い。

 

 砕けて表現してしまえば、妙に凝って作られたコスプレのようであった。

 

「落ち着かない……」

 

 心地の良いはずの潮風が。しかし先程から際どいスカートを揶揄い、丸出しの腹周りや太腿を悪戯に擽り。

 [はたかぜ]をソワソワと苛んでいた。

 

「見てる分には、大変に嬉しい光景なんですがな~っ♡」

「まったくですな~っ♡」

 

 しかし、そんな[いそかぜ]に他二人は。そんなふざけた口調で宣いながら。

 「眼福眼福」といったような、揶揄いながらも隠さぬ下心を見せる顔で、視線を注いでいる。

 

「自前のモノで満足してろ……」

 

 そんな二人に、[はたかぜ]は呆れた色で。そう突き付ける言葉を返す。

 [むらさめ]に[おやしお]もまた。それぞれ[いそかぜ]に負けず劣らずの、発育の良い豊かな体つきだ。

 その所から。別に人様の体を鑑賞しなくても、それぞれ自身の体を堪能していれば良いだろうと、皮肉を混ぜて突っ込むもの。

 

「ふふっ、[はたかぜ]は可愛らしい反応が面白くてなぁっ」

 

 しかしまた[むらさめ]悪びれずにそんな言葉を返す。

 

 

 ここで補足を挟んでおくと。

 「彼ら」には元となった護衛艦の名称の前に、もちろん元の姿の時の名前がある。

 しかし昨今では。元の各護衛艦の名称は――同時に「SATネーム」(Surface Action Task、水上戦闘任務の略。空軍、空自のTACネームを模したもの)と、コールサインとなり。

 そして彼女(彼)らは日常より、それで互いを呼ぶ文化ができつつあった。

 

 これはかつて日本の海を護った護衛艦を、その運用を任された乗組員たちの意志を。

 自分たちが継ぎ背負っているのだと強く刻むために。ある一つの護衛隊より始まり、そして普及した文化であった。

 

 

「はぁ……そうこうしている内に着いたな」

 

 そんな、可憐な中身男性の美少女たちが姦しくやり取りをしている間に。

 しかし同時に進めていた帰路は、目的の帰る拠点へと辿り着き。

 洋上の向こうに、日本本土の陸地が。そして彼女(彼)らの拠点である海上自衛隊の港、基地が見えた。

 

 

 港、港湾管制からの誘導に従い、三人は入港。

 桟橋への接岸――を本来の船舶の形であったならする所であったが。

 今の形態ではその必要は無くなり。

 三人は港施設の一角に設けられた、陸揚げ用のスロープより。飛行艇、ないし上陸舟艇よろしく。足に装着するスクリューと舵を上げて格納した後、そのまま上がって足を地面に着いた。

 

「ふぅ――ん?」

 

 スロープを上がり切って港の上に立った[はたかぜ]は。帰着の安堵から小さな吐息を零したが。

 次には向こうより、近づいてくる人影を見た。

 

「――よくやったね、みんな」

 

 近づいて来て、[はたかぜ]たちを出迎えたのは。黒を基調とする海上自衛隊の制服に身を包む、若い女性女性。

 

 ロングの茶色が掛かった黒髪が映え、その元に優しくも凛々しい顔を飾る。美少女の面影が残る美人。

 

 高めに見積もっても年齢20代半ばと思しきその女性。しかし、その制服に着けて見せるは、「海将補」の階級章。

 彼女は[はたかぜ]たちの所属する護衛隊群の司令官であった。

 

 本来、護衛隊群レベルの司令官には経験豊富で老練な上級幹部は着いたものだが。

 現在のご時世。自衛隊、いや日本、世界の事情にあっては。

 災厄の被害からの致命的なまでの人手不足から。スキル、手腕が認められれば若手であってもそのポストに就くことが可能――いや、実際の所は問答無用で指名されている程であった。

 

 ちなみに彼女にあっては、元よりの女性であった。

 

「司令、ただいま帰還しました」

 

 [はたかぜ]とその女海将補は、相対してまずは敬礼を交わし合い。併せて戦闘群の指揮を務めていた[はたかぜ]は、まずは帰還した旨を報告。

 

「該当の要塞型ハームの排除は完了、戦闘群の各員に損耗はありません」

「了解、こちらもコントロールから状況は見守っていた。見事だったね」

 

 [はたかぜ]は続けて、堅苦しい口調で言葉を連ね。今先のハーム対応作戦の結果、各事項を報告。

 それに女海将補も同じくの厳正な声色で受け取り、そして評し称える言葉を返す。

 

「――ふふ、疲れたでしょう?」

「え――ぁっ」

 

 しかし次には、女海将補はその荘厳な表情を、崩して和らかな笑みを見せると。

 労う言葉を紡いだかと思えば。同時に[はたかぜ]に歩み寄り、少しだけ自分より背丈の高い[はたかぜ]の身を、手を回して抱き寄せた。

 

 衣服越しにも、互いの体温に柔らかな感覚が伝わる。

 それは、己が部下を労わる温かい抱擁。慈愛に満ちたもの。

 

 ……と。過去に始めての作戦の帰還から、この抱擁の出迎えを受けたとき。[はたかぜ]は思ったものだったが。

 

「……っー」

 

 次に[はたかぜ]がその顔に浮かべたのは。気恥ずかしくも同時に何か苦い色。

 

「ふひひ……♡」

 

 そして、すぐ耳元に聞こえるは。女海将補の彼女の声での、しかし何か品なく怪しい呟き。

 そしてだ。その彼女が[はたかぜ]に回したその両腕の行き先を辿れば。

 なんと彼女の両手は[はたかぜ]の「尻」に周り。短く際どいスカートを何の遠慮も無い様子でたくし掻き上げ。

 そして[はたかぜ]の。男性の時のものから一変した、発育良く豊満な尻肉を。指を沈めて思いっきり揉んで楽しんでいたのだ。

 

「君はホントに……たまらないね……っ♡」

「……」

 

 そしてまた聞こえる、その美麗な容姿を台無しにするまでの。女海将補の変態的な呟き。

 それを聞き、そして己が尻肉を一時的に好き放題にされながら。[はたかぜ]はその顔に大変に渋い色を作っている。

 

 女海将補の彼女は、「こういう人」であった。

 時勢とはいえ、この若い身空で海将補に任命されるほどの優秀さの持ち主であったが。それとして変態であったのだ。

 

「いつもながら、中身が雄々しい男性と思うと尚のこと……――痛いっ!?」

 

 そしてまた怪しく己がフェチズムを呟きながら、[はたかぜ]の尻肉を揉みしだき楽しんでいた彼女だったが。

 そこでようやくストップが入った。

 見れば女海将補の伸ばした手の甲を、[はたかぜ]が遠慮なく抓り上げていた。

 

 それに女海将補は涙目になって悲鳴を上げて、怯み。その隙に[はたかぜ]は、手加減こそしたが彼女を押して離し退けた。

 

「何をしている逆セクハラ上司」

 

 そして[はたかぜ]はその彼女を、隠さぬ軽蔑のジト目で刺し。そんな詰問の言葉を向ける。

 

「いたた……今は同姓セクハラだろう?」

「どっちにしろ悪い」

 

 しかし女海将補はそれに悪びれず、明後日の部分を指摘する言葉を寄越し。

 [はたかぜ]はそれにまたツッコミを返す。

 

「あっははっ」

「相変わらずの漫才夫婦ですねー」

 

 そんな二人のここまでのやり取りを。背後では[むらさめ]と[おやしお]が生暖かい色で見守りながら、同時に笑い揶揄う声を飛ばしてくる。

 

 このやり取りは今に始まったことではない。いつもの「お約束」のやり取りであったのだ。

 

 災厄前のコンプライアンス基準から言えば問題だったが。

 中身の性別こそ違えど、今は互いに女性同士の身体となっている事。そして災厄以降の厳しい日々の中に、温かさに欲求の解消を求める人々の心情の変化など。

 時勢からこの辺りの線引きは、良くも悪くも緩くなっていたのだ。

 

「あはは……戦闘後の残る緊張を、解そうとしたんだよ」

「まったく……」

 

 女海将補は抓られた手の甲を摩りながらも。尚も悪びれずに、緩んだ顔でそんな適当な言い訳を寄越す。

 それに最早突っ込む気すら無くなり、[はたかぜ]はため息交じりの一声だけを零した。

 

「冗談はさておき。無事に帰って来てくれたのは本当に嬉しいよ」

「もちろん。それも含めて任務だと心している」

 

 女海将補はしかしそこから。笑みは保ちつつも真面目な色を戻し。

 今度は純粋に、三人の無事の帰還を喜ぶ旨を伝える。

 その言葉にあっては[はたかぜ]も真面目に返し。自信を律する意味も含めて、矜持とする所を口にして見せる。

 

「流石だね――まずは帰還後のチェックを受け、それから体を休めてくれ」

「了解」

 

 そして互いは、ここでのやり取りは一旦ここまでとして。

 帰還から必要とされる動きに移る事とした。

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