海上自衛隊TS護衛艦隊 ―男児は少女となりて咆哮す― 作:えぴっくにごつ
特定に至ったハームの出現元――「巣」。
「ネスト」と呼称されたそれを、攻撃し無力化するための作戦がついに発動され。
その準備段階が開始。今となっては数少なくなった海上自衛隊の各拠点、基地にて。必要な各準備行動が始まっていた。
「――壮観だな」
「それだけ、大きな作戦ということだね」
[はたかぜ]や海将補の彼女の所在する基地も、その作戦の拠点と指定された一つであり。
準備行動期間が始まってから、作戦に参加するための各護衛隊・部隊、護衛艦少女たちが順次到着。
間借りの形ではあるが、基地はそんな仲間たちが続々と集まり増え。賑わいを見せていた。
今にあっては[はたかぜ]と海将補は。
護衛艦少女たちの登場より、その「整備」のために。本来の艦船整備のためのドッグ形態から変わって新たに建設整備された。
潜水艦用のブンカーに類似するか、もしくは性質としては航空機用ハンガーに近い。大きな格納整備用の建造物施設内に身を置いていた。
そしてその施設内にて、他基地より訪れた護衛艦少女たちが。装備火器や、さらには自身の身の「調整」を行っている様子を。言葉を交わしつつ見学していた。
「――やぁ、頼もしい顔がいるじゃないか」
そんな二人へ背後から。誰かの、透る声色での言葉が掛かったのはその時だ。
「?――あっ」
掛けられた声に、聞き覚えを感じつつも振り向いた[はたかぜ]の目に映ったのは。
その向こうに並び立つ、複数の女――美女に美少女たち。
護衛艦少女たちの姿であった。
「ホントかっ、お前らも来たのかっ」
「ハハ、正直会えるのではと期待はしていたがな」
そしてその彼女たちは、いずれも[はたかぜ]知る者たちであった。
その護衛艦少女たちの姿を目に留めて驚く[はたかぜ]。それに対して一人の護衛艦少女が代表して、凛々しくも温和さを含む笑みでそう返した。
その彼女は、外見年齢は二十代前半程。
美麗な長い黒髪をポニーテールの結い。その髪の元に、端麗でしかし武人然とした雰囲気の顔立ちを飾っている。
それから受ける印象は、まさに「武人女子」。
そして纏うその服装はと言えば。
[はたかぜ]等にも同じく見られる、軍服ないし女学生制服にも見えるような服装であるが。
だがそれはお約束というか、そこかしこ妙に丈が短く、造りが際どく。
その下の素肌にはインナー類を纏っているが。しかしそれが逆に彼女の艶やかなワガママボディのラインを、これみよがしに強調主張していた。
そして、今にあっては基地の敷地施設内であるため、武装装備の類の多くは外しているようだが。
その身の一部には装着したままの、装備用コネクターやプロテクタの類が見え。
その一点には白色の文字での記される、173の数字。そして[こんごう]という名称が見えた。
――こんごう型護衛艦 DDG-173 こんごう。
彼女は、呼び起こされたその[こんごう]の力を携える護衛艦少女だ。
「久しいな。今は貴方は[はたかぜ]の名であったか?」
「お久しぶりですね、センパイっ」
「ふふ、びっくりだね~」
さらに[こんごう]に続くように、同じく並び立つ美女に美少女たちが。[はたかぜ]に向けて続けてそれぞれ言葉を寄越してくる。
その彼女たちを順に、見て行けば。
まず一人、少し堅苦しい言い回しで言葉を寄越したのは。ショートボブの髪が映える、静かな雰囲気で「できる女」といった印象の美女。
服装は[こんごう]のそれに類似しつつも意匠が異なり、しかしやはり艶やかさを演出するもの。
その身の一点に装備するプロテクタに記されるは、184の番号に[かが]の名称。
いずも型護衛艦 CVM-184 かが。
それは、その[かが]の力を携える護衛艦少女の証明。
次に、悪戯っぽく言葉を寄越したのは。長く美麗な金髪を結って遊ばせ、その元の可憐な顔を巧みなメイクで飾り。
また軍服ないし女学生風の制服を、しかし大胆に弄ってファッションとしている、お手本のような「ギャル娘」。
身の一部に着けるプロテクタには、115の番号に[あきづき]の名称が記されている。
あきづき型護衛艦 DD-115 あきづき。
その力を受け継ぐ護衛艦少女の証明。
最後に、少し間延びした、そして艶のある声で答えたのは。美麗な茶髪のセミロングの美女。
あか抜けたお姉さんといったその美女は。黒を基調とする競泳水着のみを身に着け、その抜群のプロポーションを見せつけている。
そして競泳水着にロゴと合わせてプリントで記されるは、501の番号と[そうりゅう]の名称。
そうりゅう型潜水艦 SS-501 そうりゅう。
その力を授かった護衛艦少女の証明。
と、その彼女たちのいずれもが。
それぞれの見目麗しく、いささか嬉し恥ずかしい姿格好を主張しつつも。しかしその中に、護衛艦の力を受け継ぐ護衛艦少女の証を見せていた。
また明かせばその彼女たちは、[はたかぜ]にとっての同期や後輩たち。
「海上自衛隊特殊装備学校」――人類の敵たるハームに、抗うための力を求めた者たちに。護衛艦の力を携え、戦う術を叩き込むために新たに創設された学び舎。
そこで訓練の苦楽を共にし、同じ釜の飯を食った仲間たち。
そしてその正体は皆。[はたかぜ]と違わず、護衛艦の力を得るに伴って性転換した「男性」なのだ。
細かくを言うと、[こんごう]たち一同は[はたかぜ]と同い年ないし年下なのだが。
[こんごう]たちの今の美女や美少女姿はいずれも、[はたかぜ]より年上に見え。そして健康的な発育の[はたかぜ]の身体を、しかしさらに越えるワガママボディの持ち主。
護衛艦少女となった際の外見年齢の変動は、各護衛艦[モデル]ごとに大なり小なり差異があり。そしてその法則性は今だに良く分かっていなかった。
「そうか、お前らも今回の作戦のメンツだったかっ」
「あぁ。こいつ――[かが]を主役とする「航空護衛群」として参加させてもらう」
そんな仲間たちの登場、その再開に[はたかぜ]は声を弾ませつつ言葉を返し。
それに[こんごう]は、隣に立つ[かが]を示しながら詳しくを伝える言葉を返す。
彼女たちは、「航空護衛群」。
元は航空機搭載護衛艦であった[かが]を。その力を受け継ぎ携え、航空戦力の運用を担う彼女(かが)を中心として作戦展開を行う、事実上の「空母打撃群」だ。
「頼もしいな」
「ふふ、お互いにな。こちらのエース艦、[はかたぜ]の噂は聞いているぞ?」
そんな強力な仲間たちの参陣に、[はたかぜ]は歓迎の声をまた向け。
それに[こんごう]も少し揶揄いつつも。[かたかぜ]の側の活躍を聞き及んでいるらしい旨をまた返し。
同期同士の再開を喜ぶ姿を見せ、会話に華を咲かせる。
「――お前たち、馴れ合いはそのくらいにしておけ」
しかしそこへ。美麗ながらも鋭い声が割り込まれたのは、直後であった。