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では、スタート!
人は必要に応じて究極の選択を迫られる。
例えば就職や結婚、ポケモン博士に「その三匹の中から一匹選んでくれ」と言われたときなど、人間には選択を強いられる機会がいくつもある。
……そして学生の進路もまた、究極の選択の一つである。
10月。
中三の俺にとって、進学する高校を選ぶのは極めて困難なものになり、部屋で頭を抱えていた。
「お兄ちゃん、まだ志望校決めてないの?」
「うるせえな、俺だって色々探してるけど見つかんねえんだよ。条件に合う高校が」
大体の高校のことは調べた。もはや高校に関する情報のデータベースと化している。
だが悲しいかな、データベースは結論を出せないのだ。
どんな高校に行けば将来専業主夫になれるのか、誰か推理してくれないかな?
俺、気になります!
なんてことを思っていると妹の小町がきょとんとした表情で俺に聞いてきた。
「条件って、なに?」
知りたいのなら教えてやろう。
この絶対防衛ラインを!
①俺を知ってる奴がいないこと。
②一人暮らしをしない距離。
「うわぁ……」
「なかなか無いんだよ……。両方に当てはまる高校って」
小町が若干引いていたが仕方ない。
絶対に譲れないものがそこにはある!
過去のトラウマを高校で言いふらされて肩身の狭い思いはしたくない。
かと言って一人暮らしなんて面倒なことが多そうでやりたくない。
ほとんどの奴がこの千葉県内で進学するだろうから必然的に県外を目指すことになるが、今度は一人暮らしをする距離になってしまう。
なにこの解決されない矛盾。
俺はどうしたらいいんだろうか。
「なんかいい案ないか?」
もうここまでくると何も思いつかない。誰かに聞いても仕方ないレベル。
将来はこの経験を生かして最初から他力本願でいこうと思います。
「んー、なくはないかな」
「マジか!」
受験生の俺でも知らない情報を持っているとか、小町マジ博識。データベースの称号はお前に譲ろう。
「で、どこの高校だ?」
「絃神島の私立彩海学園」
小町ちゃん話聞いてた?絃神島って本土から離れたほぼ外国じゃねぇか。
絃神島。別名、魔族特区。日本で唯一魔族、つまり人外の存在が許されている人工島だ。
確かにそこなら知り合いがいる可能性は限りなく低いだろう。
けれど、確実に一人暮らしをすることになる。
それ以前に入島は大分規制が厳しいらしく、入れるかどうか……。
「知らないの?今度お母さんが仕事の都合で絃神島に転勤するんだよ?」
何も聞いてない。えっ、そうだったの!
今初めて知る衝撃の新事実。
母さん、そんな大事なことは息子にも話そうよ。
「確かにそこなら両方の条件に一致するな」
「うん、中高一貫だから小町も通えるし!」
……ただ一人取り残される親父が哀れで仕方ない。
「校舎はおんなじ敷地にあるから学校でも会えるよ。ココ小町的にポイント高い!」
哀れだと思ったがそんな理由なら親父のことは諦めざるを得ない。さらば親父ぃぃぃ!
こうして俺の志望校は決まった。
後は合格出来るように必死に勉強しようと思う。
「絃神島か~。小町は魔族ってどういうのかよく知らないから楽しみだな~」
勉強しようとは思ったが小町が気を遣ってどっか行くとかしてくれないので、しばらく会話することにする。
「そんないいモンじゃないと思うぞ」
「なんでそう思うの?」
「魔族は個々が強い力持ってるからな。島の人々からすれば核兵器がそこらじゅうを歩いてるような感じだろ」
少なくとも俺はそう感じる 。何年か前も黒死皇派とかいう奴らが暴れたらしい。いくら島の管理を徹底しても危険なのは変わらない。
「……よく行く気になったね」
「人間、諦めが肝心なんだよ」
過去、何回も俺は諦めてきた。それどころか諦めようが最後まで粘ろうが変わらなかったことなんていくつもある。
例えば数学のテスト。適当に終わらせて寝たら十二点、最後まで粘ったら九点だった。
おい、なんで点数下がってんだよ。
「ふ~ん、あっ、そういえば知ってる?」
……軽く流された感があるが、気にしないことにする。
「何をだよ」
「第四真祖の噂」
なんだそりゃ、真祖は三人って聞いてるぞ。
一応、魔族関連の話も有名なところは本土まで入ってくるが今のは初耳だ。
「ネットで見たんだけどさ、絃神島に四人目の真祖がいるらしいよ?」
「……あり得ないな。真祖クラスの力があるなら噂なんかで済む訳がない」
真祖とは“始まりの吸血鬼”と言われる強大な力を持った吸血鬼のことだ。
曰く、完全な不死。
曰く、強力な眷獣をいくつも従えている。
など真祖に関する噂は尽きない。
ちなみに眷獣とは吸血鬼のみが使役できる核にも勝る異界からの召喚獣のことだ。
これが吸血鬼を魔族の王たらしめている存在である。
かつて、三人の真祖は互いの力が拮抗していたこと、人類の戦争介入を恐れたことが原因で不戦条約を結び、今は自らの帝国に留まっている、ということを厨二病だった頃に俺は知った。
そこに四人目の真祖が登場すればどうなるか。力のバランスが崩れ、一気に人類を巻き込んだ戦争が始まってしまう。
つまり、四人目の真祖は存在してはいけないのだ。
……もし、いたとしても会いたくねえな。
「まっ、そうだよね。お兄ちゃんの中学での存在くらい信憑性に欠けるもんね」
失礼な。ちゃんと存在は認められてるぞ。
この存在感を生かしてパスの中継役になれるくらいには。と思ったが俺にはパス自体来ませんでした!
ナニソレカナシイ。いつか俺の存在が噂になりそうだ。
この学校には、幻のぼっちがいる!とかありそうで怖い。
「……とりあえず勉強するわ。一人にしてくれないか?」
「わかった、じゃあ小町テレビ観てるから♪」
「……音量だけ下げといてくれ」
小町は俺のセリフを聞くやいなや居間に向かって駆け出した。
これからが受験シーズン本番だ。
噂がどうであろうと進学だけはちゃんとせねば。
そんな思いを胸に机の上に問題集を広げる俺だった。
ついに、ついに完成したぞ!
これは不定期更新です。
次回は一気に夏になります。
ストブラのキャラを出していく予定。
ミスは後で修正します。