ニューニコチュウ襲来-完全版-   作:R.C.S.

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Episode3x:狂戦士の晩餐会

 ニューヨークでのホームステイを始めてから2ヶ月、「雅史」は今でも浮かない顔でいる。幼馴染2人はもちろん、「ハンナ」や「清子」が恋しくなった、とのことである。なんとか彼を元気づけようと「ラファエル」や「ドロシー」はありとあらゆる方法を模索している一方、「アレグロ雪郎」と「ハルミ」、「ミュゼット」はパトロールが終わり、道中で出会った2人「ヒメ」「ロドゆい」とともに日本支部へ向かった。本部にいる3人「レベッカ」「ミント彩香」「ミコ」を含めて8人でワープゾーンを潜り、イングランドへと転移した。

 ところが、8人とも転移したちょうどのタイミングで「バサカ」が日本支部のワープゾーンから出てきた。ワープゾーンの通信機能を通してノウエツまで脱走してきた彼を唆し、「ガジュ」を始末するよう仕向けられた「コチウニ」の謀略である。日本支部を出て、「ガジュ」を探すために行動を開始する「バサカ」だが、何も食べてないらしく空腹で本調子じゃない。食糧を求めて凶行に走るのであった。

 

 6月9日(水)16時

 

 日本支部を出たばかりの「バサカ」は腹を満たすために、人の食糧をくすねていた。学生が持ち歩いているハンバーガー、お菓子...夕飯の惣菜。さらに、マーケットでの万引きも。彼の属性は「あくタイプ」だ、こうやって道を踏み外してるのも無理もない。もちろんオドし用のカッターナイフを持ち歩いている。

 

「(バサカ:)こんなんじゃ、腹の足しにならないっぺ...。」

 

 2010年当時ではこの時間帯で食糧を持ち歩いている学生があまりにもいないのだ。

 

「(バサカ:)まあ...いいっぺ。メチャメチャになった世の中でバサカは何をしてもいいっぺ。絶対捕まらないっペ。」

 

 2010年の日本は無法地帯になっていて、何をしてもいいことと悪いことの区別などない。好き放題で破壊を繰り返すだけである。

 

 翌日...6月10日(木)15時30分

 

 「バサカ」はついに学校の食糧に手を伸ばす。樋串武学園校内に入り、グラウンドフロア(1階)の購買のお菓子やパンを盗む。無論、購買部クルーを脅してだ。

 

 放課後帰宅するために放送室から出てきた「杏璃」がこの場で見知らぬバンダナ少年「バサカ」を目撃する。

 

「(バサカ:)おっと騒ぐな、バサカの言う通りにするっぺ。」

 

 スタッフにカッターナイフを突きつける「バサカ」。どう見ても大騒ぎになる寸前である。周囲に人がいるのに。

 

「(バサカ:)何人たかろうと、バサカは捕まらないっペ。」

「(女子帰宅部A:)知らない男の子がいる...。大変...。」

「(女子帰宅部B:)学園長に知らせないと...。」

「(バサカ:)...やっぱ出るっぺ。だが次は来るっぺ。」

 

 「バサカ」は購買パンやお菓子を手に持ち、ここを去る。対策しない限り、彼は再び食糧を求めてここに来るのであろう。

 

 山の中にある彼の本拠地「山小屋」は、食糧を貯蔵する建造物だ。盗んだ食糧をこの小屋に貯蔵するなり、ここで食することなり、なんでもありだ。

 

「(バサカ:)へへっ、この地域なら何でもやりたい放題っぺ。誰もバサカを止められないっペ。」

 

 彼の悪行は来たるべき日が来るまで、終わることはない。翌日の11日金曜日、樋串武学園に限らず、フォルテ中学校の給食までに手を出した。中学校の教師の目を掻い潜ってまでの盗み食いである。

 

「(バサカ:)他の学校の給食も悪くないっぺ。」

 

 給食の量がいつもより少ないことに気づくフォルテ中学校風紀委員「和子」。

 

「(和子:)あれれ?給食の量が少ないですね...どうしたのでしょう?」

 

 放課後16時、「和子」は今日の給食について意見交換するために「清子」と会談することに。

 

「(和子:)清子さん、何か変わったことはありませんか?」

「(清子:)...そういえば、昨日の放課後購買に小6くらいの児童が盗みをしたと聞きますかね...。」

「(和子:)聞いてくださいよ、わたしの学校の給食の量が少ないですよ。来週からこのようなことになったらわたし、飢餓で倒れてしまいます。ミュゼットさんはここにはいないですし、どうしましょう...。」

「(清子:)...とりあえず、来週から学校の警備員に給食室ならびに購買を見張るようお願いしてみますかね...?ラファエルさんが言ったあの言葉...『雪郎先生の言うことは正論であり、日本の警察はあてになりません。』それが正論であるなら、日本の警備員なぞあてにならない可能性は否定できないかもしれません。それを考えると答えはそう、単独で出現ポイントを見張るしかないようですわ。」

「(和子:)授業をサボってでもそうするしかありませんね。事後処理としての言い訳を考えないとですね。」

 

 6月14日(月)11時45分 フォルテ中学校

 

 給食室を見張るために授業をサボって現場に足を運ぶ「和子」。食糧を嗅ぎつけて来た「バサカ」は中学校の給食を盗み食いしようとするが、現場に「和子」が立っているため断念。すぐに出て逃げていった。

 

「(和子:)やっと帰ってくれましたね。...さて、どう言い訳すればいいだろうか。」

 

 「バサカ」を退けたはいいが、教師にこっぴどく叱られる「和子」。その分、給食の量は元通りになっており、教師は授業をサボってまで給食室の見張りをした彼女を評価せざるを得ないはめになった。

 

「(バサカ:)この学校で食べに来るのは困難っぺ。他を当たるっぺ。」

 

 フォルテ中学校の給食を食べ損ねた腹いせに、他の学校こと樋串武学園に侵入し、給食を食い荒らすとする。昇降口に「清子」が待ち構えていた。

 

「(清子:)あなたがたが噂の小6くらいの児童ですかね?よくもわたくしらの学舎を好き勝手にしてくれます。購買部クルーを脅してお菓子やパンを盗るとは、あなたがたは立派な問題児です。強盗罪ならびに恐喝罪で補導しなければなりませんわ。警察に通報しておきますわ。」

「(バサカ:)バサカ、もう捕まらないっペ。」

「(清子:)...生徒会風紀委員として、わたくしはテリーまがいなことをするあなたがたの悪行を見逃すわけにはいきませんが、補導されるといっても、お縄につける気はありませんのでご安心を。」

「(バサカ:)...。」

 

 諦めたかのような顔をする「バサカ」。

 

「(バサカ:)...後悔することになるっぺ。」

「(清子:)泥棒児童にしては、思い詰めたような顔...あなたがたの事情はどのようなものかは存じありませんが、どうかテリーの真似事はしないでほしいですわ!!」

「(バサカ:)...もう手遅れっぺ。世の中全部無法地帯っぺ。おかっぱにバサカの何がわかるっぺ?」

「(清子:)たとえ無法地帯だとしても、良心が残っているならそんなこと、おやめください。」

「(バサカ:)...みんなとはもう相容れないっぺ。信じられるのはバサカだけで、バサカはバサカの信じる道を突き進むだけっぺ。...じゃあな。」

 

 信じられるのは自分だけ、自分の道を突き進む、素直に出ていく「バサカ」であった。以後、学校での盗みを働くことはなかった。

 

 数日後、山小屋の食糧が尽き、飢餓寸前の「バサカ」は再び食糧を求めて通学路を彷徨っていた。24日木曜日のことである。

 

「(バサカ:)...これが万引きを止めた結果だっぺ...おかっぱめ...。」

 

 一週間食べてなかったため、空腹で行き倒れる。放課後帰宅する「杏璃」とその仲間たち「健太」「典子」「源郎」「魂二」が行き倒れの彼を発見する。皆は「バサカ」を自らの集合住宅まで運んだ。

 

「(バサカ:)...ここは......。」

 

 彼は目を覚ます。ここは帰宅部の集合住宅、「杏璃」の号室、彼女の部屋。20V型液晶テレビ(TH-20LX70)のほか、自分用のラップトップ(LL370/MG OS:Longhorn Vista)が置いてあり、一見すると不自由のない環境だが、しょせんはエコノミー。ただの一般生徒レベルであることに変わりはなく、貧困である。

 

「(杏璃:)...やっと気が付きましたか。」

「(バサカ:)...バサカをこんなところまで連れて、どうする気っぺ?」

「(杏璃:)お腹空いてるでしょう。遠慮なく食べてください。」

 

 「杏璃」が出したものは、購買で購入したお菓子やパン、てんこ盛りである。空腹の「バサカ」は何の躊躇もなく頬張る。

 

「(健太:)すごい食べっぷりだね...僕はとうにやめたけどね。」

 

 「健太」の体重は100Kgまで減量した。「雅史無き」以降に始めた無理なダイエットの結果だろうか?

 

「(典子:)こんな泥棒ガキンチョを拾って帰ってどうするのさ?」

「(源郎:)この泥棒小僧、おれとは違うタイプの不良か。」

「(魂二:)わかるように説明してくれよ杏璃先輩。」

「(杏璃:)...哀しい目をしているからです。空腹とは違う意味で。」

「(典子:)...さっさと放り出そう。平気で悪さをするガキンチョが何をしでかすのか、わかったもんじゃない。昨年の私でもそうだったように。」

「(源郎:)盗んでばかりじゃあ、ろくな男になれんぞ。小僧、男を見せろ。」

「(魂二:)君、何年生?僕は中1だよ。12歳。」

「(健太:)噂によると小6で11歳か12歳くらいらしいよ。」

「(魂二:)ははっ、そうだっけ。このバンダナ男が噂の泥棒児童ってことか。」

 

 異様な食欲で完食した「バサカ」は、「杏璃」の母親の写真を見る。

 

「(バサカ:)...姉さんのかあちゃんはどうしたっぺ?家にいる気配がしないっぺ。」

「(杏璃:)あたしの母さんは...今年の3月下旬に死んでしまいました。」

「(健太:)自殺に見せかけて...な。そういう心のないヤツが人の家族まで手に掛けたんだよ。僕の家族はなぜか存命してるけどね。」

「(典子:)...学園長に呼び出されて、処遇を名目に生徒会3人同様、外に放り出され、テリーとかいうおかしなやつに殺されてしまうかと思ったが私の場合は、風紀委員とともに生徒会長に封じ込められた。1日中監禁されたおかげか、命だけは助かった。それと、そのせいか私の両親は生きている。事態を見越してのことだろうな...。」

「(バサカ:)...とおさんはいるっぺ?」

「(健太:)あのね、杏璃ちゃんは3月末までは母子家庭だったんだ。父親がいるっていう話聞いたことないし。...これ以上の詮索はよしとこうか。」

「(杏璃:)...小さい頃にいた父さんのことですね。とっくの昔に別れました。1998年のことです。姓は『黒澤』っていうんですけどね。あたしの母さんの姓は『杉本』であるように。」

「(バサカ:)生まれたときから両親はいない。バサカの両親の顔はわからない。でも姉さんの気持ち、共感するっぺ。」

「(杏璃:)あたしの父さんは今どこで何をしているでしょうか...。元夫にもかかわらず告別式に参列せずに...。」

「(魂二:)僕、新入生だから知らないし、わからないよ。」

「(源郎:)湿った話はこのへんにしとけよ。おれら、ここでお泊りすることになっている。明日からは食糧を調達してやるから、小僧はここにいな。いい子分に育て上げてやる。」

「(バサカ:)...みんなはそこまでしてバサカに優しくするっぺ...先生とは違って...。」

「(杏璃:)...哀しい目をしている人を救うためです。今日からあなたを世話しますので、よろしくお願いします。」

「(健太:)おかっぱ風紀委員とは違って、僕達帰宅部は優しいよ。へぇ、典子と親分?」

「(典子:)2人がそこまでするなら付き合ってやるよ。風紀委員に勘付かれるまではな。」

「(源郎:)ま、しばらくの間、おれが指導してやるからよ。」

「(魂二:)次の日もまたの次の日も、毎日先輩ンちに来るから、よろしくね。」

「(バサカ:)...恩に着るっぺ......。」

 

 こうして、「バサカ」は帰宅部に助けられた。自分に優しい「杏璃」とその仲間に囲まれて、ぬくもりを感じたのか「ガジュ」に対する怒りを忘れてしまいそうであった。...そのぬくもりは数ヶ月までしか続かないことを留意してほしい。

 

 7月16日(金) 樋串武学園

 

 夏休み前日に起きた、忍び寄る魔の手...。生徒会5人の中に裏切り者がいるが、それは別の話である。続きは『シティスクールストーリー第二部』でお楽しみください。

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