前回の最後から。
「空母…セイ、キ…?」
「深海棲艦、上位個体…?」
突然流し込まれた大量の情報に、海斗も美香も理解が追いつかない。だがそんな事はお構い無しに“空母棲鬼”は続ける。
「ソレニシテモ、大胆ナ判断ダ。己ヲ囮トシテ我々機動部隊ヲ釣リ出シ、アメリカ艦隊ガ海兵隊ヲ収容スル時間ヲ稼ゴウトスルトハ!」
彼女の言う通り、今ここに米海軍の艦隊は居ない。損害の大きさから作戦が中止された為に、現在ミッドウェー島に上陸している海兵隊を収容しなくてはならないからだ。その時間を稼ぐべく、「建御雷」は日の出から今まで、敢えてその姿を晒し続けながらミッドウェー島から遠ざかり、沖合に機動部隊を誘引していたのだった。
「マァ、ソノ海兵隊ガ無事カドウカ、分カッタモノジャ無イガナ……」
「どう、言う事だ…?」
“空母棲鬼”の呟いた意味深な言葉に、「建御雷」乗組員達は更に大きな不安に駆られた。
その頃
ミッドウェー島 沿岸部
「はぁ…はぁ…逃げ切れたか…?」
彼は米海兵隊所属、ある分隊の分隊長。
今は部下を連れて隠れられそうな窪みまで逃げて来た所だ。何故に逃げて来たのかと言うと…
「聞いてねーよ!あんな、あんな移動砲台が居るなんて!」
怯え切った声色でそう叫んだ。
『移動砲台』そう彼が呼ぶ存在は今、海兵隊を迎え撃つべく沿岸部に展開していた。その数実に50体以上。その火力を持って、揚陸艦を撃沈した後海兵隊員に対して砲撃を浴びせ続けていた。それに加え陸上と海上の双方向からの戦艦・重巡クラスによる砲撃も行われており、そのせいで上陸作戦は遅々として進まず、損害が拡大して行くばかりだった。一応持って来た新兵器『特殊徹甲弾』によってその『移動砲台』や重巡クラスの個体を複数体撃破してはいるが、戦果が損害に全く釣り合っていなかった。
さて、そんな『移動砲台』とは何なのか?
「良イ感ジネ。砲台小鬼達モ頑張ッテルジャナイ」
“中間棲姫”は相変わらず満足気だ。何故かと言えば、出撃を命じた“砲台小鬼”達がかなりの活躍を見せているからだった。“砲台小鬼”達は沿岸部を縦横無尽に移動しながら、戦艦並みの高火力を発揮していた。無論この“砲台小鬼”こそ『移動砲台』の正体である。今回の侵攻作戦に際して、人類側の反撃を警戒して連れて来ていたのだ。その固い装甲と戦艦並みの大火力は、まさに『移動トーチカ』と呼ぶべき代物だ。そんな存在がゾロゾロと大量に出て来るのだ、海兵隊が苦戦するのも当然だった。
そんな中、海兵隊員達に新たな命令が届く。
「総員撤退!撤退せよ!これより艦隊が諸君等を回収に向かう!海岸に集合せよ!」
その文言こそ無かったが、これは要するに『作戦失敗』を示す命令。だが文字通りの全滅の危機に瀕している彼らにとって、作戦失敗などもうどうでも良く、早くこの地獄から脱出したい一心だった。無論彼らは勇敢な兵士であり『決死の覚悟』と言うものは持っているし、初めから逃げ腰だった訳でもない。だが、現状を鑑みればこのまま引き下がらずに応戦したとてその先に待つのが『敗北』以外無いのは誰にでも分かる。今は逃げるべき時なのだ。
そんなこんなで撤退するべく海岸に集合した海兵隊員達。だがそれを見逃す程深海棲艦も甘くは無い。当然集合地点を砲撃し一網打尽にすべく大勢が集まってきた。
それが狙いだった。
「「Fire!!!」」
ドォォォン ドォォォン
深海棲艦のいる地点に砲撃が降り注ぐ。それなりの数がまとめて吹き飛んだ。続けざまに何発もの砲弾が深海棲艦のいる地点に降り注いだ。
46センチ砲にも匹敵する破壊力を持つ「アイオワ」「ミズーリ」の16インチスーパーヘビーシェル砲弾による艦砲射撃が、数十隻の深海棲艦の水上艦や半分以上の「砲台小鬼」を消し飛ばしたのだ。
援軍の到着に海兵隊員達は歓喜で包まれたが、喜びに浸る暇は微塵も無い。間違いなく来るであろう追手から逃れるべく即座に彼らは収容され、ハワイへと撤退した。
一方こちらは沖合の「建御雷」。
米海兵隊は間一髪全滅を免れたが、それはそれ。こちらの危機が過ぎ去った訳では無い。
「今マデオマエ達ノ作戦ニ付キ合ッテヤッテイタガ、茶番ハ終ワリダ…。コノ海ニシズムガイイ!」
その言葉と同時に“空母棲鬼”麾下の深海棲艦達が動き出した。「建御雷」へと突っ込んで来る。
「くっ…!応戦するんだ!全艦娘、突撃せよ!」
海斗の命令と共に、二特艦の艦娘達も動き出す。数は有利、質も基本的には有利な筈だが、“空母棲鬼”の実力次第では幾らでもひっくり返る可能性はある。決して楽な戦いでは無い。強いて言うなら撤退戦である以上無理して敵を倒さずとも足止め出来れば十分なのだが、それさえも簡単な事では無いと言えた。
「空母棲鬼……ヤツはどう出てくるんだ…?」
海斗達は今の所上位個体とは如何なるものか測りかねている。後方で指揮に専念するのか、自らも戦うのか…。空母タイプである“空母棲鬼”がファーストコンタクトとなってしまった事も、要因の1つではあった。
だがここで『もしも』に備えて“出雲”を待機させておいた事が功を奏した。
戦闘開始からしばらく経った時、
「思ッテイタヨリヤルデハ無イカ……ナラバ!」
「あっ!空母棲鬼、突っ込んで来ます!」
「やっぱりか!出雲頼む、抑えてくれ!」
「了解!」
突撃してきた“空母棲鬼”を抑えるべく、戦闘に突入した“出雲”。だが1つ、疑問に思わないだろうか。
『何故空母タイプなのに接近戦を挑んで来るのか』
空母は、黎明期の例外を除き接近して砲撃戦を行う事は想定されていない。それは深海棲艦にとっても同じだと言える。無論人型である以上そのパワーを活かして肉弾戦をする事も出来るが、そもそも『比較的装甲が薄い』空母タイプでは不向きだ。
じゃあ、その装甲が固かったなら?
……それこそ、“空母棲鬼”が接近戦を挑んできた1番の理由だ。彼女は自らの装甲に自信を持っていた。今の艦娘達に自分の装甲を貫けるだけの火力は無いと踏んでいたのだ。そして、まともな砲撃力を持たない彼女が如何にして戦うのかと言えば───
「ハァァァァ!!」ブゥン
バギィィィ
「ぐぅぅっ…!こんのおお!!」バゴォォ
「ガハッッ…!コイツゥ!」
───そこにあったのは、海上をリングにノーガードで殴り合う2人の少女の姿だった。鈍い音が鳴り、鼻や口から血が噴き出す。互いの艤装を盾に使い、凹み、オイルが漏れ出す。辺りには硝煙の匂いも漂っている。この状況になる前に“出雲”が主砲を撃ち込んだからだった。だが彼女の全力砲撃も“空母棲鬼”には全て弾かれ、今に至る。
「なんで、こんな、殴り合うのよ?!…アンタ空母でしょ!?」
「貴様達ニ艦載機ヲ叩キ落トサレタカラダ!ヨクモヤッテクレタ、ナ!!」ブゥン ブゥン
バギィ バゴォォ
「ぐぁっかはぁっ……へぇ、ずいぶんと脆いのね?そっちの航空機はさ!」シュッッ
ザシュッッ
「ク、空母ガ居ナイ癖ニヨク言ウナァ!」
“出雲”の指摘に“空母棲鬼”は激昂する。図星だったのだ。彼女達が現在使っている艦載機は実際脆かった。
突然だがここで、現在の深海棲艦の技術力について見てみよう。彼女達は現在艦娘達よりも高い技術レベルにいる。ではそのレベルとは何処なのか?と言うと…簡単に言うなら1930年前後。戦間期、又は海軍的には『海軍休日』と呼ばれる時代と同じくらいのレベルと言うことが出来るだろう。その時代の軍事技術の特徴と言えば、水上艦艇に関しては第二次大戦期とそこまで差はないものの、航空戦力はまだ発展途上といったところか。
要するに何が言いたいのかと言えば、現在の深海棲艦は、空母自体は持っているが、肝心な艦載機がまだ布張り固定脚の複葉機レベルだったのだ。満足に敵艦を沈めるには速度も火力も足りていない。その為、航空攻撃のみでの日米艦隊の殲滅には至らず、逆に殆どの艦載機を撃ち落とされてしまったのだった。
結果、“空母棲鬼”は接近戦を挑まざるを得なくなったのだ。だがそれでも彼女は上位個体、『鬼』だ。その身体に秘めるパワーは並みの艦娘を凌駕する。“出雲”でさえ神崎流による身体強化が無ければ殴り負けていただろう。
その後も2人は殴り合い続け、戦況も膠着状態に。だが「出雲」の損傷が増える一方、流石上位個体、“空母棲鬼”に目立った損傷は無い。やがて彼女は余裕な表情を浮かべ、話し始めた。
「流石、貴様達ノ艦隊ノエースナダケハアル…ケド、ソンナ大事ナ戦力ガ、コノママココデ時間ヲ潰シテテ良イノカシラ?ネェ?」
「どう言う…ことよ?」
「コノ戦イ、楽シマセテ貰ッタカラ教エテアゲル。…貴様達ノ本拠地、日本本土ニ向ケテ別働隊ガ出撃シテイルワ…」
「えっ!?」
彼女の話によれば、現在二特艦が留守にしている隙を突いて深海棲艦の別働隊が日本へ向け出撃したと言う。それも数日前。
「早ク帰ッタ方ガ良インジャナイカシラ?」
「それは、そうだけど…。アンタはなんで…?」
“空母棲鬼”の言動を疑問に思う“出雲”。何故敵にここまで情報を流すのか?その上で逃がしてまでくれるのか?
「ソノ方ガ都合ガ良イカラヨ。サァ、早ク行ケ。私ノ気ガ変ワラン内ニナ!」
「…分かったわ…」
「…との事です、司令官」
「ああ、逃がしてくれるって言うならそうさせて貰う。本土の事も気になるしな。…全艦娘帰還せよ!撤退だ!」
実は戦闘開始からずっと、“出雲”の通信回線は「建御雷」と接続したままだった。この戦いを通して初めて遭遇した上位個体の情報を少しでも集めようと考えたからだ。その為に“出雲”は“空母棲鬼”と殴り合いながらも積極的に会話していたのだ。この通信記録は今後しばらくの間、SUE改め『深海棲艦』の生態研究において重要な資料となるのだが、それはまた別の話。
“空母棲鬼”の好意に甘え(?)撤退する事にした第二特務艦隊。全艦娘収容後、“建御雷”は最大戦速で海域を後にした。
「何故コンナ事ヲ…カ。コノ方ガ都合ガ良イノヨ…本当ニ」
自らの行動を振り返って“空母棲鬼”はそう呟く。
「別ニ『本気ノ私』ならアレ位ドウッテ事無カッタケレド、約束シタシネ…」
「サァ、貴女ノ言ウ通リ獲物ハ残シテオイタワ。…感謝シナサイヨ、戦艦棲姫」
彼女が二特艦を見逃したのは、彼らを自らの手で殲滅したいと望む『友人』の願いを叶える為だったのだ。
「ニシテモ、可哀想ネェ…アノ艦隊ノ司令官モ、アノ艦娘モ。アンナニ必死ニナッテ戦ッテルノニ、ソノ軍ノ上層部モ政府モ、民間人ダッテ最早内通者バッカリダモノネ…。今回ノ『第二次 AL・MI 作戦』ダッテ元々ハ日本本土ヲ攻メル為ニ『我々深海棲艦ガ』計画シタ作戦ダモノ。味方ガ味方デ無イ事ニ何時ニナッタラ気付クノカシラネェ…?マァデモ、気付ク前ニ死ンデシマウカモ知レナイワネ。ソノ方ガ幸セカモ知レナイケレド」
彼女は憐れみながらそう言った。
その頃 東シナ海
“空母棲鬼”の言葉通り、今ここでは日本本土へ侵攻しようとする“戦艦棲姫”率いる艦隊と、その動きを阻止すべく出撃した第一特務艦隊との戦闘が繰り広げられていた。だが主に二線級の艦娘の集まりであり、更にその中からも今回の作戦の為に臨時で二特艦に編入され出撃した為今不在の艦娘(敷島型戦艦等)もいる為、一特艦には厳しい戦いだった。激しい攻撃を受け、次々に落伍艦が出ている。
「本艦を盾にして戦え!相手だって無敵じゃない、上手く立ち回るんだ!」
洋平がCICから指示を出している。彼が乗り込んでいるこの艦は、一特艦用に建造された建御雷型艦娘母艦二番艦「
だが、流石に今回は戦力の差があり過ぎる。いくらなんでも戦術面でカバー出来るレベルを超えていた。
「駆逐艦娘に損害多数!このままでは沈んでしまいます!」
「巡洋艦娘達ももう限界だ…!沈んじまうぞ!」
「長官!」「長官!!」
「………」
艦娘達はもう長くは保ちそうに無い。洋平に指示を乞う声がCICを飛び交っている。そんな中黙り込んでいる洋平は…
(新型はまだなのか…?!急いでくれ、秋吉!)
彼は待っていた。この状況を打開出来るかも知れない『切り札』を。二特艦の出撃には間に合わなかった彼女達だが、昨日、「最終調整が終わった」と秋吉から連絡を受けていたのだ。その為、今日の出撃直前に支援要請を送っていたのだった。
(無茶を言ってるのは重々承知だ…それでも頼む、来てくれ!)
こうしている間にも少しずつ戦力が削られていく。島嶼部を上手く使った遅滞戦術で粘って来たが、防衛ラインはこれ以上下げられない所まで来てしまっていた。
ここで「建御名方」のレーダーが、高速で接近してくる機影を捉えた。
「敵航空機と思われる反応確認!距離10キロ、方位50度!数多数!」
「航空機だと!?」
「あの話(前話参照)は本当だったのかよ…!」
まだ二特艦からの報告は届いていない為、一特艦の面々はここで敵航空機の存在を初確認した。
「よりによって、今かよ!!」
そう叫んだ乗組員が居たのも無理はない。つい先程まで艦隊上空には那覇基地から直掩の為F-15Jが派遣されて来ていたのだ。もし敵編隊を確認したなら、対深海棲艦用に敢えて飛翔スピードを落とした上で近接信管を強化した対空ミサイルによる面制圧を行う手筈になっていた。だが敵機が確認出来ぬまま、燃料が底を尽き帰還して行ったばかりだった。
無論、このタイミングで敵編隊が飛来したのは深海棲艦側の作戦通りだ。軍上層部に潜り込んだスパイによって作戦計画が筒抜けだったから、その対応も容易だった。
「作戦通リダ、ソノママ叩キ潰ス!行ケ、機動部隊!」
“戦艦棲姫”が指示を飛ばしている。日本本土へ侵攻する絶好のチャンスな為気合いが入っていた。
「第一次攻撃隊、敵艦隊上空到達!」
「スベテ…シズメテシマエ!!」
彼女の言葉を受け、多数の艦載機が一特艦の面々へと迫る。激しい戦闘で損傷した彼女達には最早満足に対空戦闘を行う力は残されていなかった……。
だが思い出して欲しい。これまで国防軍は『艦娘に関する機密』に関しては、その秘匿を全て守り切っている事を。これは艦娘に関する研究が秋吉率いる艦娘技術研究所に一任されているからだ。つまり、この体制のままであれば、これまでも、そしてこれからも『実戦投入前の艦娘関連技術』は秘匿し切れると言う事だ。
そしてそれは、当然今回も当てはまる。
ダダダダダダダダダダダ
攻撃態勢に移ろうとしていた敵編隊へ、さらに上空から無数の光条が突き刺さる。一瞬で十数機が炎や黒煙に包まれて落ちて行く。そうしてガタガタになった編隊の隙間を、何機もの航空機が下へと抜けて行った。その機影は魚のような形をした深海棲艦の航空機と違って、人類にとって馴染み深い上下二枚の翼を持っていた。
「敵機が…落ちていきます!!」
「撃墜、したのか…?」
敵機撃墜の報告が「建御名方」CICへ飛び込んで来た。突然の事に混乱しかけたが、何が起こったのかはレーダーが教えてくれていた。
「IFFの反応が…!間違いありません、あれは味方の航空機です!」
「機種識別……A2N?」
聞き慣れない略符号にレーダー手が戸惑っていたところに通信回線を通して回答があった。
「第一特務艦隊、無事か!我々は
だ!これより艦隊直掩任務に入る!艦攻隊は間に合わなかったがその分戦闘機満載で来たからな、空の守りは任せろ!」
そう言いながら、彼らは敵機をバタバタと落としている。
「鳳翔…そうか、間に合ったんだな、サードロット!」
安心したように洋平が叫んだ。彼の言う通り、今戦闘海域に接近する艦隊がいた。つい昨日調整が終わったばかりの新型であり、第一世代艦娘の決定版『サードロット』の艦娘達だ。
その陣容は、河内型戦艦2隻や春日型、鞍馬型といった装甲巡洋艦を中核とした、現在の人類が用意出来る艦娘戦力としては文句無しの最強クラスだ。また、あの“出雲”の妹という事で過度な期待がされつつも、見事それに応えるだけの能力を示した出雲型2番艦“磐手”がいるのも大きい。
そして何より日本、いや世界初の空母艦娘“鳳翔”の存在だ。今回彼女と補助戦力として随伴している水上機母艦“若宮”“能登呂”の搭載している航空戦力は戦闘機と水上偵察機(九〇式二号)のみだが、それでも戦況に大きな影響を与えられる可能性を秘めていた。
先行した第一中隊が奮闘している頃、周りの艦娘達が見守る中、“鳳翔”が戦闘機隊第二中隊の発艦作業に入る。
「風向き、よし。航空部隊、発艦!鳳翔航空隊、行きなさい!」
そう言いながら彼女は目一杯引っ張った弓の弦を離す。放たれた矢はやがて複葉の戦闘機隊へと変化し、出撃していく。
同時に“若宮”“能登呂”からも九〇式水偵が発艦する。偵察機ではあるが、軽快な運動性を持つ機体だ。今回は九〇艦戦隊の補助としての完全な防空戦闘機運用を目的としていた。
「攻撃隊ガ敵戦闘機ニ襲ワレタ、ダト!?」
あまりに想定外すぎて驚いた表情のまま固まっている“戦艦棲姫”。その見た目からは『姫』の威厳も何も無いが、その姿は機動部隊の総意でもあった。
「我々しか持たぬ空母戦力で艦娘達を殲滅する、奴等は対抗手段を持たないのだから一方的に潰せるだろう」
と言うのが彼女達、正規空母“ヲ級”と軽空母“ヌ級”で編成された機動部隊の考えだった。その考えは搭載する艦載機の編成にも現れている。対艦攻撃力を優先し過ぎるあまり、戦闘機を1機も積んで来ていなかったのだ。
護衛も無しに突っ込ませたせいで編隊はズタズタになり、鳳翔戦闘機隊が無双していた。隊長から末番機まで全機がエースの条件を満たすほどだった。鳳翔戦闘機隊の面々は今回が初陣ではあったがずっと猛訓練に励んできており、対して深海棲艦の攻撃隊は爆弾や魚雷を搭載したままで満足な回避運動も取れていない。これではそうなってしまうのも当然だ。だがそうこうしている間に鳳翔隊の射撃が止む。
「チッ、弾切れか!良いところだってのに!」
「仕方ない、帰還するぞ!後は第二中隊に任せるんだ!」
その言葉通り、第一中隊が帰ったと思ったら入れ違いで第二中隊(+数機の水偵)がやって来て射撃が再開される。編隊が乱れに乱れた結果攻撃どころでは無くなった深海棲艦攻撃隊は、各機バラバラに逃げ回った末に悉く落とされてしまった。
「制空権の重要性を改めて思い知らされたな…」
洋平はそう独りごちる。
「鳳翔に感謝だな」
自らを含めた艦隊皆を救ってくれた“鳳翔”に感謝しつつ、次の指示を出す。
「態勢を立て直す為に援軍と合流するぞ!大破した艦娘の収容急げ!」
この時点で一特艦の艦娘達は半壊状態にあった。小型艦を中心にかなりの損害が出ており、今にも沈みそうな艦娘もいた。その為、そういった艦娘を収容し残存艦で艦隊を立て直す。またこのタイミングで新型艦娘達と合流し、敵艦隊との戦闘に備える事にした。
だがそれを黙って見ている“戦艦棲姫”では無い。艦隊の合流の為に動きが鈍くなるそのタイミングで全力攻撃を仕掛けてきた。
続く
あ と が き
前々から早期の登場を匂わせてはいた“鳳翔”、遂に登場です。“赤城”や“加賀”などと比べれば流石に見劣りするスペックな彼女ですが、作中の技術レベルならまだまだ十分活躍出来ます。ご期待ください。
次回 姉の重圧を跳ね除けて