自我持つ兵器の英雄譚   作:Nyappy-

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明けましておめでとうございます。新年早々に色々と起こってますが、平和な一年である事を祈ります。

前回の続きです。空母艦娘についての独自解釈あり。
描写については、投稿者のWar Thunderにおける経験が元になっている部分があります(空/陸RB、海AB)。あと一応WOWS(blitz)も。



17. 艦娘版・空母運用

 

約2時間後 演習場

 

ここは、艦娘技術研究所併設の演習場。かつて“出雲”が1人訓練に励んでいたこの場所は、当時より洗練された訓練施設へと改装されていた。

今では巨大なプールの中を縦横無尽に動き回る砲雷撃訓練用のターゲットは勿論、魚雷を改造して作った海中のターゲットによる対潜訓練、敵の空母個体との戦闘記録を反映した対空戦闘の訓練まで行えるようになっている。

(対空戦闘訓練の内容は研究所所属の九〇式水偵に曳航される布製の吹流しを目標とした射撃訓練。戦間期の頃の戦闘機パイロットがやっていた訓練に似ている)

 

今では建造・大規模改装直後の艦娘の慣熟訓練に用いられる事の多いこの場所で、“鳳翔”による空母艦娘の運用データ収集が開始された。

 

 

 

 

「所長、配置に付きました」

 

「よし、じゃあ作業を開始する。まずは艦載機の発着艦から、だな」

 

「了解しました」

 

初日の内容は、空母運用の基本とも言うべき艦載機の発着艦。これに限らず今までは通常の空母における運用を踏襲して空母艦娘は運用されてきたのだが、こうして改めてデータ収集をした結果、判明した事があった。

 

 

「全機、着艦完了。2機ほど着艦失敗してしまいましたが……」

 

「まあ、『制御された墜落』とも言われるくらいだ。それは仕方ないだろう。それよりも、飛行甲板から落ちそうになった機体を手で掴んで落ちないように出来るんだな」

 

「ええ、はい」

 

“鳳翔”の艤装は左肩に飛行甲板が装着されており、艦載機は着艦時、彼女が左腕を水平に伸ばす事で着艦可能となったその場所を目掛けて降りてくる。だが、その際上手く着艦できずに飛行甲板から落ちてしまう機体も少数ながら存在する。

そもそも空母への着艦が高い技量を必要とする高難度の物である事に加え、実戦においては損傷により操縦が不安定な状態で戻ってくる機体もいる為、よりそう言った事が起きやすい。

そうして起きる着艦時の事故を防ぐために、飛行甲板の端に網が貼ってあったり、落ちた機体からパイロットを救助する『トンボ釣り』を担当する駆逐艦が居たりした訳だが、どうやら“鳳翔”は、飛行甲板から落ちそうになった機体を右手でキャッチする事でその問題を解決しているようだった。

 

「こうする事で、余程の事が無ければ全機無事に着艦させられる訳です」

 

「ほう……、だとすれば空母艦娘にはトンボ釣り担当が必要無い訳だな」

 

「はい。もしキャッチし損ねて海に落ちてしまったとしても、自分で救助すれば良いですから」

 

「そう言う事なら空母艦娘のみでの機動部隊運用も……いや、どっちにしろ防空艦は要るか。まあそうだよな」

 

将来、確実に編成されるであろう空母艦娘複数人による機動部隊を、空母艦娘のみで編成出来れば、空いた随伴の巡洋艦や駆逐艦を他に回せる……そう考えた秋吉だったが、その考えは防空艦の必要性によって打ち消され白紙となった。

 

この後、数回発着艦を繰り返して初日は終わった。

 

 

 

2日目

 

「今日のメインは艦載機だ。航空戦術の構築だな」

 

「了解しました。……ですが、空対空戦闘そのものは変わらないと思うのですが」

 

2日目に行うのは、航空戦術の構築。だが、艦娘の特異性が顕著に現れる発着艦と違い、空対空戦闘自体は艦載機も艦娘サイズになっている事によるスケールの縮小以外に変化は無い。複葉の戦闘機が行う戦闘方法と言えば、格闘戦の他に無い。

……だが、対深海棲艦における人類側の航空戦力は、何も艦娘の運用する艦載機だけでは無い。空母艦娘投入以前から活躍する者達が居る。

 

「場合によっては、通常空母のF/A-18Jや空軍飛行戦隊のF-2、F-15Jとの連携を取る場合もあるだろうから。そういった時に取る戦術の構築が必要なんだ」

 

「そういう事でしたか。了解しました」

 

「とはいえこの演習場で実際に模擬戦をする事は出来ないから、今からやるのはシミュレーションだけどな」

 

そう言って秋吉は“鳳翔”に少しゴツめのゴーグルを手渡す。

 

「これは?」

 

「最近希空ちゃんが暇つぶしに作ってたVRゴーグルって代物さ。取り敢えず着けてみな、そうすれば分かるから」

 

言われるがまま着けてみると、目の前には大海原が広がっている。五感からも自らが真水のプールでは無く海水の上に居るのだと感じ取れる。彼女はまるで自分が瞬間移動した様に感じていた。

 

「凄い!まるで本物の海の上に居るようです!」

 

「そうなのか?やっぱ凄いな、このゴーグル。……って聞こえてないか。耳塞がってるしな」

 

(凄い物作ったよな、希空ちゃん。確か……艦娘が装着すると装着者の五感をゴーグルとリンクさせて意識を完全に仮想現実へと飛ばす事が可能なんだっけ。所謂フルダイブ型ってやつか。……それを可能にする為には装着者の艤装として認識される必要があるせいで普通の人間には使えないのが勿体無いけど)

 

 

希空の発明品を評価しつつも、それを自ら試せない為に少しばかり艦娘を羨ましく思う秋吉。

 

「……けどまあ、モニターから装着者視点や自由に移動可能な観戦者視点を見る事は出来るし、それで良いか……っと、マイクセット完了。マイク音量大丈夫か?チェック、1、2……」

「……じゃあ模擬戦を始めるぞ。戦闘開始!」

 

 

 

このシミュレーション上での模擬戦は、数日に渡って行われた。ある時はF-15Jと共同の空対空戦闘、またある時はF/A-18JやF-2スーパー改と共に空対艦戦闘を、また何故かデータが収録されていた米軍のA-10と共に空対地戦闘をした事もあった。

このシミュレーションにおける“鳳翔”航空隊の機体を駆るパイロット達も、同じくVRへダイブしている本物だった為、彼らの技量向上にも大きく貢献したという。

 

 

そうして模擬戦を繰り返していた、ある日。

 

 

この日は、味方の艦娘との共同作戦というシチュエーションでの模擬戦を行っていた。

“鳳翔”の攻撃隊は敵艦隊の前衛艦を削り、その後に突入する味方艦隊の露払いをするのが役目だった。

彼女とその航空隊はその役目を完璧にこなし、CPUボットの味方へと繋いだ。その艦娘達もボットとはいえ各艦種の精鋭達の戦闘データをインプットしている為、動きは良い。

 

そして、味方艦隊と深海棲艦の残存艦との間で砲撃戦が始まったのだが、ここで予想外の出来事が起こった。

 

 

「……敵空母が砲撃している……?」

 

モニターから観戦していた秋吉は、追い詰められた敵の“ヲ級”が高角砲で砲撃しているのを見た。

実はこれは、希空がこのシミュレーションを製作した際に、水上艦艇に砲撃を行うようにプログラムを組んだ「艦砲」カテゴリにうっかり「高角砲」も入れていた為に起きた現象だった。なので希空にとってはこの現象はバグなのだが……秋吉がこの『バグ』に気付く事は無かった。彼は最初こそ驚いたが、この現象を『仕様』だと思ったからだ。

 

 

 

(空母の艦砲射撃……「龍驤」が高角砲で水上戦闘をした事例があったとは聞くし、空母が砲撃戦をする事自体は別に不可能ではないんだろう。それに、「赤城」や「加賀」は最終時においても数門の20センチ砲を装備していた。つまり重巡並の火力はあった訳だ。……まあ両舷合わせれば、だがな。片舷のみの火力としてはそうでも無い。でも、気軽に単一目標への両舷全門指向が可能な艦娘ならそれは大した問題にはならない。

だとすれば、空母艦娘が積極的に砲撃戦に参加する、というのもあり得ない話では無いのかもな)

 

そう考え、シミュレーションが終了するまでの間、将来の空母艦娘運用を考察していた秋吉だったが。

 

(……ん?そう言えば……)

 

不意にゴーグルを外したばかりの“鳳翔”の方を向く秋吉。そして、

 

「鳳翔、お前、14センチ砲は使えるのか?」

 

いきなりそう言った。

 

 

「ええ、はい。一応使えますが」

 

「……だよな、そうだよな!考察なんかする前に実演出来るじゃないか!」

 

 

「鳳翔」は空母黎明期に建造された為、その当時空母に求められていた役割の影響で4門の14センチ砲を装備していた(無論、敵に捕捉された際の自衛用でしか無かったが)。そしてその火力は“鳳翔”の艤装にも受け継がれている。

“鳳翔”に限らず、艦娘の艤装は搭載するほぼ全砲門を前方へ指向可能な構造になっている事が多い。その為、単一目標への同時投射火力が基となった艦艇を上回っているケースもある。“鳳翔”もその1人だった。

 

 

 

30分後

 

「ターゲット配置完了。砲撃を開始してくれ」

 

「はい」

 

急遽プールの奥側へと展開した海上ターゲットを目標に、“鳳翔”の砲撃が開始された。艤装の構造上4門全てが単一目標を指向可能な為、その投射火力は天龍型軽巡と同等である(艦娘としては未建造の為推測だが)。

 

……ただまあ、その砲撃は中々当たらないのだが。空母が水上戦闘の訓練をしている訳が無いのだから仕方ない。

だがそれでもやっていれば慣れてくるもので、40発ほど撃った所で1発がターゲットへと命中し、広範囲に塗料を撒き散らす。流石は軽巡の主砲、当たりさえすればそれなりの破壊力を発揮した。その勢いのまま立て続けに2発が命中し、ターゲットを撃破した。

 

「ターゲット撃破。やるじゃないか!」

 

「意外と難しいですね……鍛練しなければ」

 

「ははっ、無理してやる事でも無いさ。空母の本職は艦載機運用。砲撃能力なんて無くても良いんだから」

 

 

そう言いつつ、秋吉は「空母艦娘の砲撃能力」に可能性を感じていた。防御力に難があるのは確かだが、「当たらなければどうという事は無い」のだから。「空母」には無理でも、“空母艦娘”ならそれが出来ると彼は思った。

 

 

これにてデータ収集は一旦の終わりを迎え、“鳳翔”は洋平の待つ国防省へ帰投した。

 

 

 

 

 

 

続く





あ と が き

いきなりですが、War Thunderって楽しいですよね。陸海空なんでも出来るし。私の持ってる普通のノートパソコンでも満足に動いてくれるのも嬉しい点。主にプレイするモードは空/陸RBです。
好きな機体(=戦果の多い機体)は
二式水戦(フロートパージ)と40mm鍾馗、バトルパス流星にブルーインパルスセイバーです。
ロマンある機体が好きかも、ですね。
実力は全然ですが、逆境であればあるほど活躍出来るかも。セイバー in ボトムマッチで特にそう感じます。

空母の砲撃描写は以前遊んだWOWS(主にblitz)由来。飛龍の高角砲で接近してきた敵駆逐艦(&味方全滅で逃げるサイパン)をボコってた経験から描きました。
blitzのティア7は伊勢最強、異論は認める。

次回 日常回(?)
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